二銭銅貨

星の数: ☆良い ☆☆すごく良い ☆☆☆激しく良い ☆☆☆☆超激しく良い ☆☆☆☆☆ありえない

午後の遺言状

2007-09-29 | 邦画
午後の遺言状 ☆☆
1995.06.03 近代映画協会、カラー、横長サイズ
監督・脚本:新藤兼人
出演:杉村春子、乙羽信子、朝霧鏡子、観世榮夫、
永島敏行、倍賞美津子、麿赤児、津川雅彦

ぼーと宙を見つめている朝霧鏡子の黒い帯の入った純白のドレス、
太く長く生き続けているような杉村春子の、ふと出る、
細い弱い気持ち、
棺おけにクギを打ち付ける滑らかで大きな丸い石、
しぶとく、目立たず、強い芯と、自信と信念で、
しっかりと生き続ける乙羽信子の強さ、
観世榮夫の端整な所作、たたづまい。
それらが、うっすらとした自然の空気の中で息をして生活をしている、
というドラマ。

人間、年をとっても、しっかりと強く生きなければというメッセージ。

死ぬまで、仕事をし続けるという考えは、映画のメッセージというだけでなく、監督、出演者たちの生き方そのものです。
07.09.08 NFC
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

07国立劇場9月/菅原伝授手習鑑/文楽

2007-09-22 | 歌舞伎・文楽
07国立劇場9月/菅原伝授手習鑑/文楽

(第2部)
初 段 加茂堤の段
    筆法伝授の段
    築地の段
二段目 杖折檻の段
    東天紅の段
    丞相名残の段

簑助は奴宅内(やっこたくない)。裸になってどぼんと威勢良く池に飛び込み、死体をあげる。舞台の左端へ行くと、水で濡れた体を手ぬぐいで拭く。背中をゴシゴシ、手足をゴシゴシ。ヒョウキンな動きで、悲劇の場面にかまわず、寒くなってブルブルと震えながら、ちょうちんにまたがって体を温めたり。ちちちらと死体をあげた現場の方を見ているが、その後、死体を見つけた褒美をもらおうとして中央に出ていく。しかし、逆に犯人にされて取り押さえられ、じたばた、じたばた。もがく、あばれる。シリアスなシーケンスの中に愉快な表現がめいっぱい。

文雀は伯母覚寿(かくじゅ)。強靭な婆さん役。娘を殺され、婿を殺す。二段目の物語全体の主軸を成す。
 
勘十郎は宿禰(すくね)太郎で悪者。覚寿の娘婿で、覚寿に殺される。刀で刺される瞬間、衣装が緑から赤に変わる。その赤に重ねて、その大きな赤い顔。顔がゆがみ苦しそう。悪行が苦しみとなって周囲に発散していくような、分厚い大きな悪辣と、その報いの表現。
 
文司は左中弁希世(さちゅうべんまれよ)でピエロの役。悪だくみが一杯でいつも失敗ばかり。どつかれまくり。倒されまくり。悪い奴だが、楽しくて、きっぱりとした、愉快な表現。
07.09.16 国立劇場
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

足にさわった女

2007-09-11 | 邦画
足にさわった女 ☆☆
1952.11.06 東宝、白黒、普通サイズ
監督・脚本:市川崑、脚本:和田夏十
原作:沢田撫松 「足にさはった女」
出演:越路吹雪、池部良、山村聡、伊藤雄之助、沢村貞子、加東大介

軽快な、テンポのいい映画。
当時の漫画の構図とか、人物の姿勢とか、動きとか、
そういうものを意識した演出なのか、
喜劇というよりも、
当時のコミックの感じ、
手塚治虫のような。

池辺良は元気のいい若者刑事で、
世に出たばかりで威勢がいい。
越路吹雪は元気のいい、大柄な女。
何も気にせず、何にも負けず。
でも、ちょっと陰がある。
山村聡は、女コトバの小説家。
全然似合っていないところが面白い。
伊藤雄之助は馬面の一度会ったら顔を忘れないという、
歳のわりに精神年齢が低い少年のような男。

岡田茉莉子がチョイ役で出てきます。元気いっぱいのお嬢様。
人の良さそうな熱海の巡査の加藤大介、
人の良さそうな熱海のスリの沢村貞子。
人の良さそうなロイドめがねの見明凡太朗は新聞を見ながら、
越路吹雪の足をチラ見します。
池辺良におぶさる、
人の良さそうな三好栄子は、実はその逆のおばあさん。

大阪から東京までは満員電車。
列車の旅、
飛び去る風景。

列車に行かれてしまって、
長く続く軌道の上に一人残され、
その上、
財布をすられたことに気がついて、
両手を上にあげてびっくり、
そして途方に暮れて、
ペッタリと線路の上に座り込む池辺良。

景気のいい音楽、軽快な演技、軽い演出、楽しい物語。
07.08.26 NFC
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2007-09-06 | 邦画
卍  ☆☆
1964.07.25 大映、カラー、横長サイズ
監督:増村保造、脚本:新藤兼人、原作:谷崎潤一郎
出演:岸田今日子、若尾文子、船越英二、川津祐介

カラー、横長の画面いっぱいに広がる顔のクローズアップが、
欲望、苦しみ、怒り、嫉妬を表して、
テンポ良く、
よどみなく、物語は進んで行きます。
息を抜くところがありません。

首を横にかしげて、じっと相手を見つめる若尾文子。
何かに取り付かれたように、
相手に引き込まれていくような眼の岸田今日子は、
せつないけれども子供のような脳天気を感じます。
魔女2人に襲われるがごとし、
世に擦れていない、純情、無垢な船越英二は、
2人の女のトルネードに巻き込まれ、上昇して行きます。
何をたくらむのか、
ひとクセの、ありそうな、川津祐介。

コンパクトでセリフの多い、
よどみの無い、
スキの無い、
無駄の無い映画です。
07.08.26 NFC
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする