二銭銅貨

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サムソンとデリラ/MET18-19舞台撮影

2018-12-31 | オペラ
サムソンとデリラ/MET18-19舞台撮影

作曲:サン=サーンス、指揮:マーク・エルダー
演出:ダルコ・トレズニヤック
美術:A・ドッジ、衣裳:L・チョー
出演:デリラ:エリーナ・ガランチャ
   サムソン:ロベルト・アラーニャ
   大祭司:ロラン・ナウリ
   ヘブライの長老:ディミトリ・ベロセルスキー
   ガザの太守アビメレク:イルヒン・アズィゾフ

金あるいは真鍮色をした鉄板のような質感の板で、単純な図形だけれども様々なパターンを均一にくり抜いて、レースのような網目模様にしたものを、ほぼすべての部材に使った美術だった。各幕ごとに異なる大型セットが出てくる。最初は城塞の下部分、2幕目は屋敷内、最後が牢獄のような場所と、そこから転換して人型の大きな彫像。スクリーンも網目模様の鉄板風。絢爛豪華にして贅沢な装置と衣裳の公演だった。

ガランチャは安定して美しい低い声。アラーニャは若々しく情熱的なテノール。ナウリはそつのない美しいバリトン。ベロセルスキーは落ち着いた感じのバス。

演奏も重みのある豪華な感じだった。

2幕の有名な歌、「あなたの声に私の心も開く」(on caeur s'ouvre a ta voix)は後半に若干サムソンの歌声が入る2重唱。3幕目にはそれまでとはガラっと変わったヘンデル風の大祭司とデリラの重唱がある。全体的に様々な雰囲気の曲が使われているのが特徴で、それが楽しいのかも知れない。でも、楽しいとは言っても、ソプラノのいない、低音の多い、曲の調子にはうねるような粘るような、ねっとりした雰囲気が感じられる、怪しい妖しいオペラだ。

18.11.18 横浜ブルグ13
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アイーダ/県民ホール2018

2018-12-29 | オペラ
アイーダ/県民ホール2018

作曲:ベルディ 、指揮:アンドレア・バッティストーニ
演出:ジュリオ・チャバッティ
原演出:マウリツィオ・ディ・マッティア
美術:アンドレア・ミーリオ、衣裳:アンナ・ビアジョッティ
演奏:東フィル
出演:
アイーダ:木下美穂子、ラダメス:城宏憲
アムネリス:サーニャ・アナスタシア、アモナズロ:上江隼人
ランフィス:斉木健詞、国王:清水那由太

巨大な円柱の柱が6本、下にキャスタが付いている。これらは他に階段などを備えた壮大なセットで、カラカラ浴場遺跡で行われる野外公演のプロダクションを持って来たらしい。行進の場面では東京シティ・バレエ団を中心としたダンサーたちによるディベルティスマンがあり、またアイーダトランペットは両袖で演奏された。捕虜となった人たちにはちゃんと役者を使っていた。グランドオペラ形式での公演で、7つの団体が共済することでこれだけ豪華なプロダクションになったようだ。

演奏は力強く、ど迫力。行進のところの金管がよかった。特にアイーダトランペットがいい。強烈な高音フォルテッシモ。重低音のトランペットもどこかで使われていて。金管に特徴のあるオペラだと思った。

木下は高音がしっかり出て美しい。難なくという感じ。城は端正な美しいテノールで良く声が出ていた。アナスタシアは声量のあるメゾ。声が強い。上江は「どすこい」な感じのおじさん役ではっまていた。声も良く出ていた。斉木は硬質な感じのバリトンで、清水は落ち着いた感じ。全体に大音響に負けない声が出ていた。

当初予定されていた西村悟に代わり城宏憲が出演した。他の劇場での公演も交代だったようだ。

おそらくカラカラ浴場遺跡でのプロダクションのレンタル。神奈川県民ホール、札幌文化芸術劇場、兵庫県立芸術文化センター、iichiko総合文化センター、二期会、札幌交響楽団、東フィルのグランドオペラ共同製作。

18.10.21 神奈川県民ホール
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コジ・ファン・トゥッテ/国立音大2018

2018-12-22 | オペラ
コジ・ファン・トゥッテ/国立音大2018

作曲:モーツァルト、指揮:阪哲朗
演出:中村敬一、演奏:国立音楽大学オーケストラ
装置:鈴木俊朗、衣裳::半田悦子
出演:
フィオルディリージ:長田真澄、ドラベッラ:谷本雅
フェルランド:高柳圭、グリエルモ:島田恭輔
ドン・アルフォンソ:大川博、デスピーナ:千葉菜々美

大川は良い声と良い芝居、堂々として安定感と貫禄がある。芝居全体の土台となった。千葉は良く動く芝居が楽しい。アリアは演劇的な歌い方で、動きながらの歌唱だったが安定していた。長田は強い声、高柳は美しい声。谷本と島田は安定した声だった。全体に重唱は今ひとつの印象だったが、最後の女声2重唱と男声2重唱は良くアンサンブルしていた。多重唱は概ね良かった。

美術は過去のものとほぼ同じだったのではないかと思う。クリーム色の柱に格子状のアーチが付いた装置を背景として、これを動かしていくつかの場面設定をしていた。舞台変換の時には全面に四角い茶色の板を下してその前で歌手が歌うようにしていた。衣裳はフィオルディリージが水色、ドラベッラが花柄ピンク、アルフォンソは黒と銀の重厚な色合い、男性は青と赤と白の軍服。変装後は中東風のキラキラした豪華な生地の衣裳、銀と金の色合いだったように思う。

演出は譜面をそのまま舞台化したような感じで、動きが音楽に良く合っていた。歌手の位置取りにこだわりがあるようで、重唱では重唱の構成が分かりやすいような配置になっていて分かりやすかった。チラシの画像を見ると床がチェックになっていて、また舞台前面にチェス盤が置いてあったので、歌手の立ち位置は登場人物をチェスの駒に見立たものだったのかも知れない。

演奏は弦に元気があって活発な印象だった。

18.10.20 国立音楽大学講堂大ホール
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魔笛/芸大2018

2018-12-15 | オペラ
魔笛/芸大2018

作曲:モーツァルト、指揮:高関健
演出:直井研二、演奏:藝大フィルハーモニア
装置:鈴木俊朗、衣裳:西原梨恵
出演:
ザラストロ:伊藤純、夜の女王:小川栞奈
タミーノ:上ノ坊航也、パミーナ:佐藤初音
パパゲーノ:後藤駿也、パパゲーナ:横山和美
侍女1:荒木里佳子、侍女2:山下裕賀、侍女3:野間愛
弁者、僧侶1:谷友博

伊藤は堂々としたザラストロで低音がしっかり出て安定している。小川の第2のアリアは、やや乱れる感じがあったものの高音はしっかり出ていた。上ノ坊は端正な感じのテノール。佐藤はいくらかビブラートのかかった美しいソプラノ。あまりはっきりとはしなかったがかなり良い声だったかも知れない。後藤も端正な感じのバリトン。重唱は侍女も童子もアンサンブルが美しかった。童子は少年の重唱というより、美しい女声3重唱だった。そのまんまこの人たちが侍女の3重唱でも良いような感じで、面白かった。童子の3重唱は侮れない。

演奏は調和の取れた、うねるような弦の美しさを感じるものだった。

装置は金色の柱を数本立てた簡素なもの。合唱団の衣裳はくびれの無いストンとしたワンピースで、全体に荘厳さを出したものだった。タミーノは日本の神話時代のイメージ。パパゲーノとパパゲーナは鳥の羽を体中に付けたイメージのもの。オーソドックスな美術・衣裳だった。

18.10.07 芸大奏楽堂
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ファルスタッフ/昭和音大2018

2018-12-08 | オペラ
ファルスタッフ/昭和音大2018

作曲:ヴェルディ、指揮:ニコラ・パスコフスキ
演出:マルコ・ガンディーニ、演奏:昭和音楽大学管弦楽団
美術:イタロ・グラッシ、衣裳:アンナ・ビアジョッティ
出演:
ファルスタッフ:田中大揮、アリーチェ:中村芽吹
フォード:程音聡、クイックリー:宇津木明香音
フェントン:戴宸、ナンネッタ:中井奈穂
メグ:北薗彩佳、カイユス:髙橋大
バルドルフォ:駿河大人、ピストラ:山下友輔

女声4重唱や3重唱は女声のペチャクチャおしゃべりを連想させる凝った造りの重唱で上手に歌えていた。フィナーレの多重唱、合唱も凝った造りの重唱で華やかに終わる。全体に重唱に重点のあるオペラだ。

ファルスタッフは悪党だけれども、彼の言動には何か、体制とか時代とか偽善とかに対する風刺や批判が感じ取られる。自由を強く主張しているようにも感じる。原作のシェークスピアにもそれがあるとすれば、自由主義は西洋の文化、あるいはギリシャ・ローマから続く文化の根幹なのかも知れない。悪党は自由の読み替えなのかも知れない。

田中のファルスタッフは演者の若さを感じさせない堂々としたものだった。声は低く落ち着いて迫力があった。芝居もファルスタッフになりきっていた。戴は繊細な感じのテノールで、程はまじめな感じのバリトン。駿河はコミカルな芝居を頑張っていた。1人で歌うアリアが少ないため、他は特に印象に残らなかった。

演奏は力強く、特に歌手とのアンサンブルが良かった。オーケストラも重唱の一員なんだ。

2011年の昭和音大の公演と同じプロダクションで、その時に製作されたものと思われるが、2018年2月にスペインのセビリアにあるマエストランサ劇場でも上演された。2011年当時、3幕目で木が天井から吊り下げられてゆらゆらしていたものが、地面に固定されるなど若干の改定はあったようだ。衣裳も装置も本格的なプロダクション。

程、戴は日中韓 新進歌手交流オペラプロジェクトより参加した上海音楽学院OBと学生。

18.10.06 テアトロ・ジーリオ・ショウワ
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