二銭銅貨

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女ばかりの夜

2007-06-04 | 邦画
女ばかりの夜  ☆☆
1962.12.26 大映、カラー、横長サイズ
監督:田中絹代、脚本:田中澄江、原作:梁雅子
出演:原知佐子、北あけみ、浪花千栄子、淡島千景、沢村貞子
   香川京子、夏木陽介、桂小金治、中北千枝子

売春防止法後、その関係で捕まった女性を更正させるための施設に収容されている女達の生活を描いた作品。

浪花千栄子はちょっと頭のおかしいおばあさん、
お嬢さんのようなおさげ髪で、
妙に、はしゃいでいる。
気が触れていても、
騒いでいても、浮かれていても、
ジットリとした悲しみが底にある。

しっかりとしていて、優しくて、頼りになる寮長の淡島千景、
きびしそうだけど、思いやりのある、寮の管理者の沢村貞子、
やさしい、おば様の香川京子はいつものように人がよい。
中北千枝子は、せかせか、ギスギスした落ち着きの無い奥様で、
桂小金治が、その小心者の旦那さま。

主役は原知佐子。
強い視線で、何か世の中の醜い人々を睨み付けているようだ。
純粋で混じりけの無い、真っ直ぐな視線。
ねじくり曲がった世の中を真っ直ぐに生きて行こうとするような、
ネバリのある、ツヤのある強い心。

後半は、ちょっと夏木陽介とのラブロマンスで、
そのあたりでは、やさしく、浮き立つような
ふんわりした感じで物語は進んで行きます。
純情な原知佐子。

純情な田中絹代。
07.05.27 赤坂区民センターホール
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しとやかな獣

2007-06-03 | 邦画
しとやかな獣  ☆☆
1962.12.26 大映、カラー、横長サイズ
監督:川島雄三、脚本:新藤兼人
出演:伊藤雄之助、山岡久乃、川畑愛光、浜田ゆう子、若尾文子
   高松英郎、小沢昭一、山茶花究、ミヤコ蝶々、船越英二

マンションの部屋を舞台に、
8人の人が出たり入ったり。
伊藤雄之助と山岡久乃が夫婦で、そこの住人ですから、
この2人が他の8人を出迎えます。

舞台劇スタイルの脚本は新藤兼人で、
滔々とセリフが続くセリフ劇。
普通の音楽は使わずに、
わずかに能の楽曲を使うのみで、
あとは、
生活音とセリフが劇全体のリズムをなしている。

マンションの部屋をあちこちから覗き込むような、
面白いアングルのショットの連続で、
単調さを避け、
平凡さを排除している。
驚きの構図のオンパレード。

出だしは小沢昭一の妙な外国人風日本人の大々的なお出まし。
その後、俳優たちの競演が始まる。
その様子は、能の狂言のイメージなのか。
ただの舞台劇なのか。
途中、能の足の運び方をイメージしたシーンがある。

この家の兄弟が能の楽曲、鼓や笛の音に合わせて、
60年代のロックンロール/ツイストを踊るところは、
この映画、この物語の狂気の部分を表現しているように思えた。

人の欲情、人の欲望、
社会の腐敗、人生の堕落。
ぐちゃぐちゃ、ハンチャメチャなゴミタメ。みじめな思い。
ぐるぐるの渦巻き。そこに何か、真実があると、
そう言っているかのような。
何も無いような。偽物のルノアールの裸婦の像。
それにしても、
どうしょうも無い人達です。
07.05.27 赤坂区民センターホール
コメント (2)
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豚と軍艦

2007-06-02 | 邦画
豚と軍艦  ☆☆
1961.01.21 日活、白黒、横長サイズ
監督:今村昌平、脚本:山内久
出演:長門裕之、吉村実子、丹波哲郎、南田洋子、三島雅夫、小沢昭一

ひょろひょろで、
ぐにゃぐにゃ、芯が通っていない。
チンピラで、やくざの長門裕之。
責任感も無く、自覚も無い。思慮も無く、
右往左往して、
人のいいなり。

純真で、まじめ、
長門裕之をなんとかしようと思っている吉村実子の、
何とはなく乾いた感じ。
飢えた感じ。
ものたりない感じが、
映画の殺伐とした印象の背景をなしている。

何故かヤクザが横須賀で豚を飼育する物語。
ドタバタの喜劇の中のきつい風刺の下に、
重い、重い社会の腐敗が横たわり、
あふれ返る洪水のような豚の大群が、
その腐った社会を踏み潰していく。
07.05.06 NFC
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