二銭銅貨

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夜の女たち

2007-08-28 | 邦画
夜の女たち ☆☆
1948.05.26 松竹、白黒、無声、普通サイズ
監督:溝口健二、脚本:依田義賢、原作:久板栄二郎「女性祭」
出演:田中絹代、高杉早苗、角田富江、浦辺粂子

戦後間もない、大阪の街。
ガレキの山に、崩れた家屋、汚れた町並み。
人の心も同様に、
殺伐として、荒々しくすさんで、憎々しげで、
暗い画面の底辺に、間断となく続く慟哭と、
女をもてあそぶ男たちへの強い怒りの音響が、
ザラザラとしているような、
キリキリしているような、
厳しい、手厳しい話です。

戦争で夫を亡くし、
戦後のドサクサの中に子を失い、
人にだまされ、世に躓き、
振り回され、おとしめられて、
最後には、夜の女、
売春婦にまで成り下がる。

田中絹代が気丈な感じで強く太く生きていく、
そんな女性を演じる社会派ドラマです。

田中絹代が後に監督する「女ばかりの夜」は、この映画の読編であるかのような感じです。おそらく、この映画での女たちの生活に何か強い思いを感じて、強く更生して欲しいと願って作ったものなのではないかと思った。
07.08.18 NFC
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07歌舞伎座8月/裏表先代萩/歌舞伎

2007-08-25 | 歌舞伎・文楽
07歌舞伎座8月/裏表先代萩/歌舞伎

裏表先代萩(うらおもてせんだいはぎ)
出演:勘三郎、扇雀、三津五郎、勘太郎、七之助、
   福助、彌十郎、亀蔵

時代ものの「先代萩」と世話ものの話を合体した、混ぜ合わせオムニバスの構成で、それぞれの話はほとんど独立している。勘三郎の政岡は、真っ赤な衣装で子を殺された母の気持ち、慟哭を強く粘りのある芝居で演じています。掟に従う理性と、人としての情の荒れ狂うありさま。殺すほうは扇雀の八汐で、真っ白の衣装に青白い妖気を漂わせ、人の心の恐ろしさを表現しています。

勘太郎の荒事のサムライはねずみを踏みつけにして、きっぱりと強く、手強い感じです。強いサムライのすっきりした様子。じめじめとした夏の夜に清々しい。

勘三郎がやる三役の1つ、小悪党の小助は目付きが悪く、常に世のスキをうかがい悪事をたくらむ。大悪党では無いけれどもイヤな奴。それでも、劇の中では常に滅ぼされる悪党一味なので、最後はちょっと可愛そう。勘三郎は大悪党の仁木弾正もやっています。こちらは元気いっぱいに暴れまくります。

07.08.15 歌舞伎座
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陸に上った軍艦

2007-08-21 | 邦画
陸に上った軍艦 (評価なし)
2007.07.28 ピクチャーズネットワーク、カラー、横長サイズ
監督:山本保博、脚本:新藤兼人
出演:蟹江一平、滝藤賢一、大地泰仁、池内万作、若松力、加藤忍
   二木てるみ

 新藤兼人の1年前後の軍隊生活の経験を、本人の証言、再現ドラマ、当時の写真などで構成したセミ・ドキュメンタリー風映画。当時のごく普通の軍隊生活の経験で、特にすごいという事も無いけれども、それでも今から見れば異常な世界です。戦争のむごさと同時に、人の心の醜悪さもさらけ出されているような感じがする。人が醜悪だから戦争が起こるのか、戦争が起こるから醜悪になるのか。いずれにせよ、戦争は醜い世界、無駄で無残で無意味な世界だ。

 当時、一緒に入隊した100人のうち、残ったのが新藤兼人を含む6人だけだったという悲しい世界の物語です。

 映画の構成としては、「さくら隊散る」と同じスタイルのものであった。
07.08.12 ユーロスペース
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真空地帯

2007-08-11 | 邦画
真空地帯  ☆☆
1952.12.15 新星映画、白黒、普通サイズ
監督:山本薩夫、脚本:山形雄策、原作:野間宏
出演:木村功、下元勉、西村晃、三島雅夫、神田隆、加藤嘉

優しそうな三島雅夫は中隊事務室の古参将校で准尉。
実は一筋縄では無く、中隊長の神田隆の方が単純かも。
この中隊長は、気位は高いが、能力が有るのか無いのか、
悪くも無く、良くも無く、中間色の印象。

兵隊の内務班では、
西村晃は悪る賢い古年兵。
下元勉は事務室勤務のいいもん古年兵。
木村功は陸軍刑務所出の謎の古年兵。
その他、多数、様々な兵隊。
こうした兵や将校を模様に、
内地の駐屯地での軍隊生活の理不尽不条理を、
速射砲のように次々と映像に映し出して行きます。
陸軍不条理の物語。

許しがたき大きな不正を背景に、
人を、社会を崩壊させる
諸悪の典型が、
所狭しとうごめいている空間。

最後の南方へ向かう船の中のシーンは悲しいです。
こうやって、幾多の兵隊が、
何することも無く、
何も知らずに、
船もろとも海底に沈んで行ったのですから。
軍隊の不条理。戦争の理不尽。
許し難し。
07.08.05 新文芸座
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野火

2007-08-10 | 邦画
2007-08-10 / 邦画

野火  ☆☆
1959.11.03 大映、白黒、横長サイズ
監督:市川崑、脚本:和田夏十、原作:大岡昇平
出演:船越英二、ミッキー・カーチス、滝沢修

フィリピンの戦場は岩山、ジャングル、
空気が渇き、情けが無く、
地獄と狂気の模様があり、人気がない。
殺伐としていて、湿り気が無く、無残で、むごい。
人の世でない、動物の世でも無い。
鬼の棲む、水の流れぬ地獄の河原。

浮世離れした船越英二の兵隊は、
魂の抜けた、精神の無い、
茫然自失の、フラフラした印象。
それでも、
殺伐とした中に、何か救いのある性格で、
地獄の物語の全編を貫いて行きます。

しつこくて、ネバリのある大岡昇平と、
洗練されて、軽快な市川崑は、
混ぜても混ぜ合わさらない。
不調和なバランス、印象が、
戦争、地獄の恐ろしさをじんわりと私たちに教えてくれる。
07.08.05 新文芸座
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