二銭銅貨

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2009-02-24 | 邦画
馬  ☆☆
1941.03.11 東宝、映画科学研究所、白黒、普通サイズ
監督・脚本:山本嘉次郎
出演:高峰秀子、藤原鶏太(釜足)、竹久千恵子

馬が主役。
馬、馬、馬。

ちょっときかんぼうの娘が高峰秀子で、
その娘につらくあたるのが母の竹久千恵子。
その厳しい気持ちと、
また逆に娘をかわいく思う気持ちがストレートに交錯している。
父の藤原釜足の情愛も含めて、
明るく素朴な家族の物語が、
四季おりおりの風景を背景に描かれている。

特に冬の背景の真っ白な雪の厳しさが身にこたえる。

映画の冒頭に陸軍大臣・東条英機名義のコメントが出る。軍馬を育てることの重要性について述べたものだ。これには理由があるそうだ。この映画化について首を縦に振らない東宝幹部に対し、山本らが陸軍を動かしてこの軍馬を育てる映画の製作を東宝に厳命せしめたというのである。

製作主任に黒澤明とあり、彼がこの映画に深くかかわっていたのだろうと想像した。どういう関係があるかは分からないが、馬の群れが丘を駆けていくところ、高峰秀子(ではなくて代役だろうけれども)が馬を走らせ東京へ行く弟を見送る場面、森の中の祭りを木の間から覗き見るように横に移動しながら撮影する場面、雪景色の場面、最後の馬の行列など、後の黒澤映画を見るような雰囲気の場面が幾つかあった。基本的にカットが長めで、これでもかこれでもかとしつこく執拗に喰らい付くような感じで、見ているこちらからすると1.5倍くらい長い感じがするようなカットだ。

09.02.07 神保町シアター
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綴方教室

2009-02-23 | 邦画
綴方教室  ☆☆
1938.08.21 東宝、白黒、普通サイズ
監督:山本嘉次郎、脚本:木村千依男、原作:豊田正子
出演:高峰秀子、徳川夢声、清川虹子


娘時代の高峰秀子の顔の大写し。
未来に向かって明るくて、
元気がいい。

戦前の小学校の教室風景で、
女の子ばっかりだったので女子校と思ったが、
そうではなくて戦前は
男女は席を同じゅうせずだったんだ。
びっくり。

高峰秀子はくったくが無くて明るくて、
頑張っている姿が美しい。
父の徳川夢声は人のいい職人さんで、
ちょっと頼りないんだけど、
でもやっぱり一家の大黒柱。
母の清川虹子はハガネのように強いねばりがあって頼もしく、
この映画の芯になっていた。

豊田正子の小学生時代の綴方が原作の素朴な物語。

製作主任が黒澤明となっている。第1助監督らしい。

09.02.07 神保町シアター
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罪と罰

2009-02-22 | 洋画
罪と罰  ☆☆
1970 ソ連、白黒、横長サイズ
監督・脚本:レフ・クリジャーノフ、
脚本:ニコライ・フィグロフスキー、原作:ドストエフスキー
出演:ゲオルギー・タラトルキン、タチアナ・ベドーワ

ざらざらした空間の中の暗い塊。
長い長い横長の画面。
構図的に長い横長を使い切っていない感じがして、
左右に大きな余白を残しているかような印象を受けた。
おそらくそんな事は無かったのだろうけれども、
多分、
この物語の閉塞的な印象がそんな感じを持たせたのかも知れない。

婆さんを殺すところが印象に残っている。

主人公は、
罪とは何か、
犯罪とは何か。
そんな事を突き詰めて考え込んでいる。

ドストエフスキーって考えすぎだよな。
もっと気楽に行けば良いのに。

09.02.01 新宿武蔵野館
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つばめ/MET08-09舞台撮影

2009-02-21 | オペラ
つばめ/MET08-09舞台撮影

作曲:プッチーニ、演出:ニコラス・ジョエル
指揮:マルコ・アルミリアート
出演:アンジェラ・ゲオルギュー、ロベルト・アラーニャ
マリウーシュ・ブレンチュー、リゼット・オロペーサ

リゼット・オロペーサの小間使いが役にハマっていて最初から目だっていた。きりきり、きゃぴきゃぴ元気が良く、最初から最後までこの演劇を牽引している。役名とファーストネームが同じなのは何故なのだろう?

リゼットの相手役の詩人のマリウーシュ・ブレンチューは誠実に力強くリゼットをリードして頼もしく、この演劇の屋台骨を支えている感じだった。

アンジェラ・ゲオルギューは風邪をひいてるけど頑張るというコメントが劇場の責任者から最初にあって、それから始まる。けれども冒頭の歌は力があって気合が感じられた。

コンパクトで単純な恋の物語、かわいらしくて罪のない話。ロベルト・アラーニャが最後のところでマジ泣きながら歌っている。本当にかわいらしい。

2幕目の四重奏が見せ場のようだ。見ていて聴いていて心が揺れる、浮き立つ、元気がでる。この不景気の冬空を遥か天上に吹き飛ばすかのようで、明るく楽しい。多重のコーラス。出演者のインタビューによるとこの部分は非常に難しいらしい。4人がそれぞれ違う旋律を歌っているらしくて、それを合わせるのが難しいようだ。

09.01.31 東劇
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09国立劇場2月/女殺油地獄/文楽

2009-02-19 | 歌舞伎・文楽
09国立劇場2月/女殺油地獄/文楽

(第3部)
女殺油地獄(おんなころしあぶらのじごく)
徳庵堤の段
河内屋内の段
豊島屋油店の段

勘十郎の与兵衛。親に意見をされて、柱を背に座り込みプイとそっぽを向いて歯向かっている姿が寂しげで悲しそう。弱い性格の男が強がって見せる破滅的な人格の表現。人生とは悲しく世はせつない。親が可哀相だ。

豊島屋油店の段の最後はすさまじい。油がまかれた床を与兵衛がすべりまくっている。遣っている勘十郎や左遣い、足遣いは大変だ。右に左にと舞台を激しく走り回っている。与兵衛でなくて人形遣いの息が切れてしまうのではと思うほど。一方の紋寿が遣うお吉も元気いっぱいだ。襲ってくる与兵衛に対して必死の抵抗。こっちも激しく動きまくる。油桶の蓋を投げる。油桶を倒す。逃げる。防ぐ。戦う。

陰惨で厳しい場面だけれど、激しく動きまくる人形と人形遣いの元気よさが楽しかった。自分も元気が出る。

物語自体は厳しい。現代でも連日報道されているような陰惨な事件を扱ったもので、表面的には勧善懲悪の物語なのだろうけれども、深く見ればそう単純なものでは無さそうだ。人の世のそうした恐ろしい部分を表現しているのだろう。深刻に受け取ると難しい話だと思う。

4段目以降もあるらしく見てみたいと思った。

09.02.15 国立劇場
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