二銭銅貨

星の数: ☆良い ☆☆すごく良い ☆☆☆激しく良い ☆☆☆☆超激しく良い ☆☆☆☆☆ありえない

こうもり/新国立劇場11-12

2011-12-18 | オペラ
こうもり/新国立劇場11-12

作曲:J.シュトラウスⅡ、演出:ハインツ・ツェドニク
指揮:ダン・エッティンガー、演奏:東京フィル
出演:アイゼンシュタイン:アドリアン・エレート
   ロザリンデ:アンナ・ガブラー
   フランク:ルッペルト・ベルクマン
   オルロフスキー:エドナ・プロホニク
   アルフレード:大槻孝志
   ファルケ博士:ペーター・エーデルマン
   アデーレ:橋本明希
   ブリント博士:大久保光哉
   フロッシュ:フランツ・スラーダ
   イーダ:平井香織

橋本明希(あき)のアデーレが、はきはきと軽快で楽しい小間使い。明るい軽い綺麗なソプラノ。仕草や動きも軽快で、しなやかで動きの形がとても美しい。堂々としていて舞台慣れしていて、歌にも動きにも芝居っけがたっぷりとあって、ぴりりとした感じ。

アドリアン・エレートは真面目で何か英国紳士のような雰囲気の人だった。ペーター・エーデルマンは堂々とした優しい老紳士。エドナ・プロホニクは体格が良く、荒々しいロシアの若者といった風情。面白かった。「私はお客を呼ぶのが好き」はドスが効いてる感じで、とても良い。アンナ・ガブラーも大柄な人で、堂々とした感じの歌と芝居。大槻孝志はトボケた感じのキャラで芝居が面白かったが、歌はかなりのイタリアンで美しく熱い良いテノールだった。ルッペルト・ベルクマンは人のよさそうな好々爺な感じだった。ほとんど歌の無いフランツ・スラーダはかなりの喜劇役者ぶりで、沢山のアドリブで会場を笑わせていた。

歌手というよりも役者と言ってもいい全員の歌と芝居のアンサンブルが良く、舞台の上も会場も、みんなこのサプライズパーティを楽しんでいるようだった。

明るい色合いの美術や衣裳が軽快な感じで、薄めのパステルカラーを多用していた。とてもリラックスした感じだった。多分20世紀前半の雰囲気らしく、アール・デコ調とのことだった。

演奏は元気が良くて軽快で早い。メリハリがあって、迫力もある。ワルツの音、弦の音、太鼓、小太鼓の音が良い。時々、調子っぱずれな太鼓の音が聞こえて来たが、こちらは指揮者の足の音だったらしい。

ウィーンなワルツは楽しくて楽しい。クルクル回るワルツがいっぱいで、これは本当に大好き。橋本明希の歌と芝居が良かった。

オルロフスキー役のアグネス・バルツァとフランク役のギュンター・ミッセンンハルトと他1人が当初予定から変更となった。バルツァとミッセンンハルトはご夫妻。

11.12.04 新国立劇場
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ルサルカ/新国立劇場11-12

2011-12-17 | オペラ
ルサルカ/新国立劇場11-12

作曲:ドボルザーク、演出:ポール・カラン
指揮:ヤロスラフ・キズリンク、演奏:東京フィル
出演:ルサルカ:オルガ・グリャコヴァ
   イェジババ:ビルギット・レンメルト
   王子:ペーター・ベルガー
   ヴォドニク:ミッシャ・シェロミアンスキー
   外国の公女:ブリギッテ・ピンター
   森の精:安藤 赴美子、池田香織、清水華澄
   森番:井ノ上了吏、料理人の少年:加納悦子

濃いブルーに染まる舞台に、
ややくすんだオレンジの月。
ひとり密やかに歌われる「月に寄せる歌」が、
極端に美しい。

イェジババがカッコ良く、
背が高く、体格が良く、態度がでかい。
魔笛のツェルビネッタみたで、
歌も強く、クリアで気持ちがいい。
濃い紺なのか細かい模様の入ったドレスがとても美しい。

森の精の3重唱はハキハキと元気良く楽しそう。
顔もグリーン、衣裳もグリーン。
子供たち、子供役たち、みんな楽しそう。

王子は真面目でやや繊細そうな美しいテノール。

料理人の太っちょの少年役の加納悦子が面白かった。お尻に手をやってその手を嗅いだり、股に手をやってパンツのずれを直すような仕草をしたり、その他、面白いアクションが色々とあって愉快だった。後で加納悦子だと知って、とても驚いた。相方の井ノ上も面白かった。

美術は曲線の壁に木が幾つも描かれたもの。そこにゆらゆらとした水面を表したような照明が当てられて、湖の底のような、湖の水面のような不思議な雰囲気が表現されている。セットは最初と最後の家の場面以外は、同じこのセットを使っていたけれども、照明で場面転換を行って単調にならないようにしていた。

幻想的で楽しい。

11.12.03 新国立劇場
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ドン・ジョバンニ/日生劇場(二期会)2011

2011-12-11 | オペラ
ドン・ジョバンニ/日生劇場(二期会)2011

作曲:モーツァルト、演出:カロリーネ・グルーバー
指揮:沼尻竜典、演奏:トウキョウ・モーツァルトプレーヤーズ
出演:ドン・ジョバンニ:宮本益光
   レポレッロ:大塚博章
   エルヴィーラ:小林由佳
   ドンナ・アンナ:文屋小百合
   オッターヴィオ:今尾滋
   ツェルリーナ:盛田麻央
   マゼット:近藤圭
   騎士長:斉木健詞

外は大雨、陰鬱な、くすんだ灰色の空気が支配する古びた屋敷。
薄暗い部屋はホテルのレストランのよう。
左に給仕らしき人物が腰掛けて居眠りをしている。
音楽はまだ始まらない。
照明が入っても、まだ居眠りをしている。
雷、暴風雨。大変な日だ。
ノックの音。ノックの音。ノックの音。
えっ、騎士長が来たのだろうか。
まだ、音楽は始まらない。
豪雨、目を覚ましたレポレッロがドアを開けると、
現代の服装の若い2人づれが慌てて雨宿りに入って来る。
ピンクのスカートの若い娘、
紺の柄のセータの若い男。
少し落ち着いて、2人は食卓に招待される。
序曲が始まって、いよいよ始まる。

かなり読み替えている印象の演出で音楽とは合っていない。幽霊屋敷風のホテルにバンパイアのようなドンジョバンニが住んでいて、来訪者が来るとそれに喰いついて全員下着姿の幽霊にしてしまうといった趣向。それでもオチャラケタ雰囲気ではなくて、人間や社会について深くまじめに考察しているようだった。

舞台は傾いていて右に若干上がっている。これが錯覚によって水平に見えるので、逆にピットが若干右に下がっているように見える。オーケストラの人も大変だなどと時折思ってしまう。劇全体に神話の世界を描いたような横たわる女性と竪琴の絵画が出て来るが、奥の方の部屋が次々と現れるとそこにはその絵が壁一杯に飾られていて、しかもそれらの部屋も同様にさらに傾いている。面白い美術で楽しかった。

出演者の芝居の良さが印象的で、逆に素直な演出で無かった故か歌の良し悪しは分からなかった。歌が普通と違う。女性の歌は常にドンジョバンニを意識したものになっていたし、カタログの歌はやや遅いテンポで憂鬱な雰囲気で歌われた。確かにエルビーラの立場に立てばこの歌は憂鬱に聞こえる歌かも知れない。

特にマゼットとツェルリーナはほぼ出ずっぱりで主役陣の一部と言っても良い扱いで、近藤と盛田の芝居がとても良く、芝居という意味では主役の2人と言って良い出来だった。

文屋と小林は似たタイプの歌唱で強くクリアだった。結構動き回りながらのアリアだったが安定していた。宮本のメイクや芝居はバンパイヤみたいで面白く、歌ではシャンパンの歌が軽快、快速かつスマートな感じで良かった。大塚は安定した歌と芝居で物語の土台になっていた。今尾はトボケた表情で、ちょっとフォーク歌手のなぎらけんいちみたいで面白かった。歌は風貌に似合わず真面目で綺麗なテノールだった。斉木はラストの地獄落ちが良く、演奏とも良くアンサブルして大迫力だった。重唱はあまり動き回らないで歌った幕間前などの6重唱が良かった。

演奏はやや小さめな編成ながら迫力のあるきびきびした演奏で、特にラストの地獄落ちの迫力も十分だった。

だいぶ違和感のある演出だったが印象に残る舞台だった。

11.11.27 日生劇場
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

魔笛/日本オペラ振興会2011

2011-12-10 | オペラ
魔笛/日本オペラ振興会2011

作曲:モーツアルト
演出:横山由和
指揮:星出豊
出演:パミーナ:大音絵莉、タミーノ:藤原海考
   夜の女王:乾ひろこ、ザラストロ:東原貞彦
   パパゲーノ:大石洋史、パパゲーナ:枝松瞳

シンプルな舞台で、中央にストーンヘンジのような石3個でできた門があり、両サイドに傾斜のある長い台が付いている。これらを全幕で使用していた。女王の第2のアリアとそれに続くザラストロのアリアでは台の一方を客席方向に置き換えて桟橋のようにして使っていた。一段と高くなったその先端部分で過激なアリアを歌うのが効果的だった。この女王とザラストロのアリアを並置して、しかも同じポジションで歌わせたので、この2つのアリアの対称性が良く出て面白かった。全体に分かりやすいオーソドックスな演出だった。

衣裳や小物のデザインは日本固有のものを使っていたが、時代はバラバラで平安時代と弥生時代が混ざっているようだった。侍女3人が持つのは3種の神器、笛は篠笛風、鈴は神社で使う鈴が一杯ついた手持ちの道具のようだった。何故か、ザラストロの頭には中国の皇帝の角帽のような帽子が使われていた。歌手が先生風でガウンのような衣裳だったこともあり、名門私学の公式行事に出てくる幹部教授のようでもあった。色の統一感も乏しく、やや支離滅裂な衣裳美術であったが、魔笛の支離滅裂な雰囲気に合わせたのかも知れない。

演奏はゆっくりめ。特に序曲はきわだってゆっくりであるように感じた。全体的に、しっかりと歌手の歌に合わせて演奏されていた。タミーノとパミーナの試練の場でのフルートもしっかりと演奏されて、このオペラのタイトルロールがフルートである事が再認識された。コーラスも人数のわりには迫力があって良かった。

乾は貫禄十分のコシノ・ジュンコ風メイクで、それが特に目を引く特徴的な女王であった。面白すぎる。第2のアリアは迫力十分に歌われ、特に最後はパワフルで良かった。良いツェルビネッタだった。藤原は真面目なタミーノで、良く声も通っていた。大音は美しい柔らかなソプラノで、ジャンニ・スキッキのラウレッタが良く似合うかも知れない。東原は強力で厳格な感じのバス、大石はまじめでいくらか地味な優等生風パパゲーノ、枝松はスーブレット役が似合いそうなハキハキとしたパパゲーナ。パパパの2重奏は、演出は地味で普通だったが、歌はハキハキと元気良く楽しい歌だった。オレンジの衣裳のモノスタトスの長谷川雅敏が歌に芝居にすごく頑張っていたのが印象的だった。

11.11.20 テアトロ・ジーリオー・ショウワ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする