二銭銅貨

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名もなく貧しく美しく

2007-11-28 | 邦画
名もなく貧しく美しく ☆☆☆
1961.01.15 東宝、白黒、横長サイズ
監督・脚本:松山善三
出演:高峰秀子、小林桂樹、島津雅彦、王田秀夫、原泉
   草笛光子、加山雄三

純真で思いやりのある心。
まじめで、一生懸命な気持ち。
どんなに苦しい時でも、
つらい時でも、駄目な時でも、
それでも、前向きに、明るく、
歩いて行く。2人一緒に。

ガタゴト揺れる通勤列車、
満員の電車。人ごみを。
かき分け、かき分け、進む小林桂樹。
やっと車両の端まで来ると、
窓越しの向こうの車輌に高峰秀子。

最初は気付かない。
でも、なんとか、
バタバタやって、やっと気付いてもらう。
こっちを見てもらう。
それから、必死の思いで、
手まねで気持ちを伝える小林桂樹。
眼で、心で、想いを伝える。

かたくなな気持ちだった高峰秀子も、
やがて、ゆっくりと、
小林桂樹の優しさに包まれて、
それから、
うんと、うなずく。

陸橋の上をゴーと走り去る通勤電車。
パーッと撒き散らされる白い紙吹雪。
小林桂樹がちりぢりに破った高峰秀子の置手紙だ。
10.01.23 神保町シアター、07.11.24 新文芸座
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父ちゃんのポーが聞える

2007-11-27 | 邦画
父ちゃんのポーが聞える ☆☆
1971.09.24 東宝、カラー、横長サイズ
監督:石田勝心、脚本:笠原良三、原作:松本則子
出演:吉沢京子、小林桂樹、藤岡琢也、司葉子、佐々木勝彦

難病の1つ、ハンチントン病と戦う少女の物語。
脚本のベースとなった原作の詩集の一節を「復刊ドット・コム」に見つけた。

ポー
汽笛がこだまする
空に小さく消えていく
午後4時45分ちょうど
父だ
父の引いている列車が高山線を走っているのだ
ポー
胸の奥でひそかに
則子も声ない汽笛をあげる
涙が頬をこぼれ落ちた
(昭和40年4月9日の日記から)

映画の中では、その詩集の詩が数多く朗読される。最後の一節は病気で戦っている人々へのメッセージというだけでなく、もっと広く一般に通用するメッセージだと思った。言葉は正確で無いが、以下のような趣旨。

失ったものの数を数えるのではなく、
残されたものの数を数えよう。

映画の中で、少女に詩を書くことが生きていることの証だと、先生が薦める場面がある。それが、こんなふうに映画になって、銀幕上の光の明滅として、その少女の精神が生き続けていることは、興味深いことだと思う。

07.11.24 新文芸座
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妻の心

2007-11-26 | 成瀬映画
妻の心 ☆☆
1956.05.03 東宝、白黒、普通サイズ
監督:成瀬巳喜男、脚本:井手俊郎
出演:高峰秀子、小林桂樹、三船敏郎、中北千枝子、千秋実

戦後まもない田舎町。
古い町の古い薬屋さん。
その薬屋さんの奥さんは、
苦労している。

妻役に高峰秀子。
亭主役に小林桂樹。
高峰秀子が頼りにする銀行マンが三船敏郎。
その妹が杉葉子。
高峰秀子の姑が三好栄子。
その家の長男で、若い頃に家出した義理の兄が千秋実。
その嫁が中北千枝子。
この2人が子連れで、この家に転がり込んでくる。
なんとはなしに、デレッとした感じの中北千枝子。
ずるずると、たより無さそうで、
それでいて嫁には強い三好栄子。
だらしのない千秋実。
頼りにならない小林桂樹。
うすぼんやりとした田舎の空気。
にぷい光と影。
キリッとした高峰秀子。

ごくありがちな、
家族の、ちょっとした渦巻き。
夫婦喧嘩の渦巻き。
07.11.17 新文芸座
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小早川家の秋

2007-11-25 | 邦画
小早川家の秋 ☆☆
1961.10.29 東宝、カラー、普通サイズ
監督・脚本:小津安二郎、脚本:野田高梧
出演:中村鴈治郎、原節子、新珠三千代、司葉子、小林桂樹

空の青にレンガ色の煙突、
森の緑、白い煙、優しい風。
川の水色、石のねずみ色。
清清しい空気。

もんぺ姿の望月優子に農夫姿の笠智衆。
川で何か作業をしている。
のんびりした風景の中に、
ちらほらと居る、真っ黒なカラス。

これはまた見事なオールスターの勢ぞろい。
中村鴈治郎、原節子、司葉子、新珠三千代、小林桂樹、森繁久彌
浪花千栄子、団令子、杉村春子、加東大介、白川由美、宝田明
山茶花究、藤木悠、笠智衆、望月優子

全体的に、落ち着いた様子の淡いパステルカラーのような色使い。
のんびりと、ゆったりとしていて、几帳面な感じ。
07.11.17 新文芸座
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パンズ・ラビリンス

2007-11-05 | 洋画
パンズ・ラビリンス  ☆☆
El laberinto del fauno
2006 メキシコ、スペイン、アメリカ、カラー、横長サイズ
監督・脚本:ギレルモ・デル・トロ
出演:イヴァナ・バケロ、マリベル・ヴェルドゥ、セルジ・ロペス

湿り気の多い、奥深い緑の森、
大木の傍らに、枝にかけられた深緑のドレス
少女のドレス。
スペイン内乱時のフランコ将軍の政府軍大尉が義理の父。
そのパーティに着ていく衣装。

木の根の下で、
大蛙と戦う少女は、
地下の王国の、平和の国の王女。
夕立のすさまじさの跡。
泥だらけのパーティのドレス。
もう着て行けない。
着て行きたくもない。
バスタブにつかる少女。

フランコ独裁に抵抗して戦う民衆の姿、
無情と非情に精神を蝕まれる大尉の姿、
残虐な場面の多い物語と、
ちょっと怖くて、気持ち悪いけど、
妖精や魔法の出て来る子供向けファンタジーの、
奇妙な取り合わせ。
独裁に対する強い怒り。
暴力に対する強い怒り。
ファンタジーの清らかな心。
大木に咲く一輪の花。
ハクモクレンのような花。

蜜に辛子をまぜたような、
人の心の邪悪さと、
ファンタジーの無邪気を取り混ぜた、
何か心にひっかかりもののある映画です。
07.10.28 シネコン映画館
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