二銭銅貨

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カビリアの夜

2007-10-17 | 洋画
カビリアの夜 ☆☆☆☆
Le Notti di Cabiria
1957 イタリア、白黒、普通サイズ
監督・脚本:フェデリコ・フェリーニ、
脚本:エンニオ・フライアーノ、トゥリオ・ピネリ
出演:ジュリエッタ・マシーナ、フランソワ・ペリエ
   フランカ・マルツィ、ドリアン・グレイ

ぼうぼうとした草、
荒涼とした河原、
手に手を取って走り来る若いカップル。
川の流れを見て喜ぶ女。
それに寄り添って、周囲を伺うサングラスの男。
女は一瞬のスキにカバンを奪われ、
川に突き落とされる。

マンボを元気良く踊るカビリア。
溺れ掛けても、金を取られても、
元気。
悪態を付き、ののしりあい、冗談をとばしあって、
あげくの果ては取っ組み合いの大喧嘩。
それでも元気。
どんな逆境でも、どんな絶望でも、どんなにどん底でも、
そのくりくりの目をあっちに、こっちに、動かして、
ぐっと、唇をかみしめて、
それからニッコリ微笑んで、いつも元気いっぱい。
めいっぱい。
都市のはずれ、場末の娼婦の溜まり場。
元気いっぱいの精神。
元気いっぱいの体。

巡礼が多く集まる大集会、
たくさんな人々が教会に来ている。
まつば杖の人、病気の人、不幸な人、貧乏な人、
みんな集まって、マリア様に願いをかける。
カビリアも友達のワンダも、長い蝋燭に火をともして、
一緒に願をかける。
始めての感動、経験に声を詰まらせるカビリア。
マリア様の清らかさ。
願いをかけるカビリアの心。
一緒懸命な群集の心理。
何か貴いもの。
表面的には分からない中核になるよりどころ。
このままでいいのだろうか?
こんな事をしていていいのだろうか?

告解の後の広場。
飲めや歌えの仲間たち。
カビリアは一人もの思いにふける。
まなじりを決して何かを決意している。

夜。
巡礼の集会の帰り。
奇術師が催眠術をかけるショウに、
カビリアは観客席からイヤイヤ引っ張りだされ、
催眠術を掛けられる。
悪魔のような角の生えた帽子を被る催眠術師。
その催眠術師が導くまま、
舞台の上で、群集の前で、
ワルツに乗せて、優雅に自分の夢を語り、踊るカビリア。
18だった頃の長い黒髪の思い出、
オスカルという若者との未来の出会い。
演ずるカビリアは、
傷つきやすい乙女の心。

森の向こうにある崖の淵から見える湖。
夕暮れの湖面に反射するキラキラ。
純粋で美しく、混じりけが無い。
しずかに細やかで、滑らかで優しい。
でも、
夕暮れの、薄く暮れ行く淋しげな反射。

地面に倒れて、のたうちまわり。
ごろごろ転がって、
くやしくて。
くやしくて。
ジタバタもがく。
「殺してくれ」「死にたい」と、
泣き叫ぶカビリア。
土にまみれ。
むごい仕打ちにあって。
泥だらけで。

やがて、時間もたち、
すっかり暗くなり、
カビリアはゆっくり立ち上がる。
魂の抜けた殻のようにゆっくりと歩き出す。
茫然として。
疲れきって。
森を抜け、
道路に出ると、
反対側から若い男女数人が楽しそうに、愉快そうに、
楽器をかき鳴らしながら歌い、踊り、景気良さそうに出てくる。
楽しい音楽にあわせて、
カビリアのまわりを囲むように、歌い踊る。
沈んだ、ずんと沈んでいたカビリアも、
その音楽に、その踊りに
ちょっとだけ元気を取り戻す。
ちょっとだけ、
少しだけだけど、
いつものように、
ニッコリと微笑みの表情が浮かんで、そして、その映画が終わる。
07.09.30 新文芸座、過去にVTR、テレビで数回

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2 コメント

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生きる目的は一体何か (生と死を考える男)
2007-10-20 20:16:18
はじめまして。
ご迷惑でしたらお赦しください。

自分が日頃から考えていることですが
人は一体、何のために生きているのでしょうか?
人はどこから来て
何のために生きて
どこへ向かっているのでしょうか。

神の存在、愛とは何か、生きる意味は何か、死とは何かな
どの問題などについて、ブログで分かりやすく聖書から福音
を書き綴っています。ひまなときにご訪問下さい。
http://blog.goo.ne.jp/goo1639/

(聖書のことば)
「すべて、疲れた人、重荷を負っている人は、わたしのところ
に来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます。」
                   (マタイの福音書11:28)。
「わたしの目には、あなたは高価で尊い。わたしはあなたを愛
している。」(イザヤ書43:4)。

★私のブログから----------。
「生きる目的は一体何か」
http://blog.goo.ne.jp/goo1639/m/200705

「人生の目的と意味は何か」
http://blog.goo.ne.jp/goo1639/d/20060519

★彡★☆彡☆★彡★☆彡☆★彡★☆彡☆★

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フェリーニの映画 (二銭銅貨)
2007-10-21 23:44:28
フェリーニの映画は、人が生きていくことについて、何かメッセージを込めているように感じます。宗教的なことは分からない部分が多いですが、私達に、生きていくために大切なことを伝えていると思います。
返信する

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