二銭銅貨

星の数: ☆良い ☆☆すごく良い ☆☆☆激しく良い ☆☆☆☆超激しく良い ☆☆☆☆☆ありえない

2008-08-31 | 洋画
崖 ☆☆
Il Bidone
1957 イタリア、白黒、普通サイズ
監督・脚本:フェデリコ・フェリーニ、
脚本:エンニオ・フライアーノ、トゥリオ・ピネリ
出演:ブローデリック・クロウフォード、リチャード・ベイスハート
フランコ・ファブリッツィ、ジュリエッタ・マシーナ

殺伐たる白い石片だけしか無い嶮しい崖を、
必死の思いでよじ登るブローデリック・クロウフォード。

痛々しくも、息も絶え絶えに、
もう少しで、上の道に出る。
道に上には、軽々しい足取りの3人の農村の家族。
貧しい姿だけれども、
柴を背負って、それで幸福そうだ。
崖の下のブローデリック・クロウフォードには気付かず、
何か話しながら楽しそうに去っていく。

軽快な音楽と共に進行する、
数人の詐欺グループのエピソードを追っかけた話。
軽快なテンポと、
お気楽な人生観。
ダメと思っていても止められない。
それらの人の宿命か、何の因果か。

映画を作る人々を詐欺師にたとえているのか?
それともこの世の人々全部をたとえているのか?
人生全部をたとえているのか?

劇中に出てくる足の不自由な娘が
この映画の扇の要。

フェリーニの映画のいつものように、
シナリオの表層の底に、深さを感じる物語だけれど、
いまひとつその真意が分からない。

08.07.27 シネマヴェーラ
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復活

2008-08-28 | 洋画
復活  ☆☆
RESURREZIONE
2001 イタリア、カラー、横長サイズ
監督・脚本:パオロ・タヴィアーニ、ヴィットリオ・タヴィアーニ
原作:トルストイ
出演:ステファニア・ロッカ、ティモシー・ピーチ、マリー・ボイマー
セシール・ボワ、マリナ・ヴラディ、ジュリオ・スカルパティ

ロシア文学のイタリア映画。

ロシアのボウボウとした殺伐と、
甘い華やかなイタリアの甘美が
まぜ合わさって、
まるで、
カプチーノのようだ。

全体に豪華。
物語も美術も衣裳もみんな豪華だ。
ステファニア・ロッカはしぶとい強い女性、
悲しいけれど強いカチューシャの役。
ティモシー・ピーチは実直な青年。

冬のシベリア行き列車の道行き、
冷たい風、雪のつぶて、
冷酷な空、峻厳な大地が、
この物語の悲しくて、侘しくて、
寂しい情景を良く写し出している。

カチューシャの物語は数多く映画化されている。
いろいろと見てみたい。

08.07.27 シネマヴェーラ
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雪之丞変化・総集編

2008-08-27 | 邦画
雪之丞変化・総集編 ☆☆
1935.06.27 松竹、白黒、普通サイズ
監督・脚本:衣笠貞之助、脚本:伊藤大輔、原作:三上於菟吉
出演:林長二郎(長谷川一夫)、嵐徳三郎、堂國典、千早晶子

3つの映画を1本にし、長い話を1/3に圧縮したものなので物語の筋を追っかけるのが大変。フィルムがあるものならば、全編を是非じっくり見てみたい。

長谷川一夫は女形がイタについている。歌舞伎の幾つかの演目の、野崎村のおみつや紅葉狩りの鬼女らしきものを演じていて、テキパキとしたおみつの身のこなし、大きな存在感の鬼女の振る舞いなど、ほんのちょっとの時間だけれども、歌舞伎の上演としても楽しめる。衣笠貞之助自身が元女形なんだそうです。

長谷川一夫のもう1役の「闇太郎」は際限無くいい男で、雪之丞の女形全開の芝居振りとは全くちがう。立ち役も女形もできる、歌舞伎で言えば幹部級の役者の印象だ。ちなみに、さらにもう1役は雪之丞の母役で、これはほんのちょっとの登場。

千早晶子は、こざかしい女の役で長谷川一夫にホレ過ぎてどうにもならない。十字路で見せた可憐の芝居とは全く違う。年齢がちがうからだろう。この千早晶子は衣笠貞之助と結婚したんだそうです。いい芝居です。

08.07.20 NFC
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火花

2008-08-26 | 邦画
火花 ☆☆
1956.05.01 大映、白黒、普通サイズ
監督・脚本:衣笠貞之助、脚本:相良準
出演:鶴田浩二、山本富士子、根上淳、船越英二、八潮悠子

サーカスの綱渡り。
ドキドキの展開。
ハラハラの成り行き。
いきなりのアクシデント。

張りつめた緊張。
凍りく静寂。

サーカスの楽屋の雑然とした姿を背景に、
特異な構図で、
人物の錯綜を描く。
とがったり、曲がったり、ねじくれたり。
重厚な美術。
深さのある映像。
むき出しの心情。

悲惨で寂しそうな山本富士子。
曲がったところの無い直線的な鶴田浩二。
ちょっと真面目で人の良い雰囲気の根上淳。
道化のような多々良純

08.07.20 NFC
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08歌舞伎座8月/紅葉狩、愛陀姫/歌舞伎

2008-08-16 | 歌舞伎・文楽
08歌舞伎座8月/紅葉狩、愛陀姫/歌舞伎

3部:
紅葉狩(もみじがり)
出演:勘太郎、橋之助、巳之助

 可愛らしい野菊は鶴松で柔らかい薄紫の日本舞踊。きまじめで一緒懸命。山神は巳之助で、こちらはちょっと硬派。緑と白のコーディネートが楽しい山神はアイリッシュの緑とリズムを思い起こさせる。橋之助が維茂(これもち)で堂々たる構えで美しく、勘太郎の鬼女は硬派なお姫様。長い難しい踊りを堂々と見せていた。紅葉美しく、扇子2枚の紅葉の色は良く合い、激しい鬼女と端整な維茂が良く映る。

愛陀姫(あいだひめ)
出演:七之助、橋之助、勘三郎、三津五郎、福助、扇雀

 福助、扇雀のコンビが祈祷師の役。これが狂言回しのようでもあり、舞台の芯のようでもある。あやつり人形のような軽快な動き、奇妙な発声は福助ならでは。そのオレンジの衣裳に、対する扇雀は水色。がっちり福助の動きを受け止める。名前が荏原に細毛。実在の人気占い師のパロディになっていて、「占いとは大衆の望んでいることを見抜いて言うことだ」なる趣旨の風刺のセリフがある。

 良く通る、張りのある声の七之助はアイーダすなわち愛陀姫で、これは舞台の大黒柱。強い気持ちで運命の残酷に立ち向かう。対する相方はラダメスすなわち木村駄目助左衛門(きむラダメスけ)で2枚目。2人の愛の物語だけれど甘い感じは無く、世の残酷、社会の無惨に対して強く抵抗している感じ。

 濃姫役は勘三郎。これは難しい役だ。まさにこの世の矛盾をそのまま体現するような役。まったく姫様の役で無いし、また悩める女性の役でも無い。抽象化された人間の悪循環を体現する役だ。隠れた本当の主役がこの濃姫だ。

 三津五郎は愛陀姫の父役。分かりやすいセリフ回しでこの世の無常を良く表現する。歌舞伎っぽくなくて普通の舞台劇の雰囲気だ。

 美術の一部となる群集の表現も含めて、舞台セットの動きが軽快で楽しい。美術の動きは舞踊のようでもある。神社のセットのブットイしめ縄が人を喰ったようなデザインで楽しい。ガキ大将な感じ。

歌劇アイーダのパロディ。有名な行進曲はそのまま出て来る。
演出は野田秀樹。
観客に若い人多し。

08.08.15 歌舞伎座(2F)
コメント (2)
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