二銭銅貨

星の数: ☆良い ☆☆すごく良い ☆☆☆激しく良い ☆☆☆☆超激しく良い ☆☆☆☆☆ありえない

地獄の饗宴

2006-11-28 | 邦画
地獄の饗宴  
1961.09.29 東京映画、白黒、横長サイズ
監督:岡本喜八、脚本:池田一朗、小川英、原作:中村真一郎
出演:三橋達也、団令子、池内淳子、田崎潤、中北千枝子、佐藤慶

団令子はワルモノ。
三橋達也もワルモノ。
田崎潤も佐藤慶もワルモノ。
つでに、中北千枝子もワルモノで、何故か信心深く、
新興宗教にハマっているらしい奥様。
ワルモノで無いのは池内淳子だけ。

ラストに妙なヌーベルバーグっぽい雰囲気があり、
全般にテンポは良いのだけれど、
何か、抜けている部分があって、そこが変調な喜劇の味わい。
それに、団令子と三橋達也の逢引の場面は、
何故かアップテンポな「旅の夜風」、つまり愛染かつら。

団令子は太めの妖精のよう。
黒の衣装で、ちっとも悪そうでなく、かわいらしい。
一生懸命、悪女ぶっているけれど、ちっとも、そんな感じではない。
三橋達也もタフガイぶっているけれど、
実は、かなりのオヒトヨシで、肝心な所が抜けている。
そんな似たもの同士の二人だ。

他のワルモノ達も全員、何だか、間が抜けています。
そのせいで全般に、ゆったりした、丸っこい感じが漂っているのです。
なのに、映画は、本来、テンポの良い派手で切れるアクション映画。
ですから、調子が妙で、変な味わいのする映画なのです。
06.11.23 NFC
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江分利満氏の優雅な生活

2006-11-27 | 邦画
江分利満氏の優雅な生活  ☆☆
1963.11.16 東宝、白黒、横長サイズ
監督:岡本喜八、脚本:井手俊郎、原作:山口瞳
出演:小林桂樹、新珠三千代、東野英治郎、矢内茂

小林桂樹のナレーションに乗せて、
山口瞳がモデルらしき江分利満氏を演ずる小林桂樹は、
黒ぶちの眼がねの奥で、眼をパチパチさせながら、
何か粘りつくような調子の主張を、
しつこく、しつこく述べたてようとしています。

酔っ払って、くだまいて、からみついて、かみついて、
よろめいて、座り込んで、
小言みたいな、へりくつみたいな、
ねじくれた世の中を叱るような主張を、
しつこく、しつこく繰り返しています。

テンポ良く、活気あるシーケンスに、
何かちょっとひねくれた、すねた感じがMIXされて、
奇妙な味わいの映画になりました。
山口瞳の小説、というよりエッセイを、
映画にするのは至難の技と思えますが、この映画、
なんとかうまい具合に成功していると思われます。

小林桂樹の、いつもの役には無い、
バランスの狂った人を演ずる芝居の見事さは、
見ていて本当に楽しい感じです。
歩き方、しゃべりかた、見つめ方、集中のしかた、
怒り方、酔っ払い方。だらしなさ。

全編、酔っ払っているような映画です。
役者も監督もスタッフも原作者も全員、酔っ払っているみたいです。
映像も構図もカメラワークもしっかりしているのに、
全編、何かクラクラ・フラフラしているような感じです。

山口瞳のサントリー社員時代のパートナーである柳原良平作の、
懐かしきサントリーCMの叔父さんも、ちゃんと出てきます。
下駄と靴のコマ撮りによる「残菊物語」のパロディ。
太平洋戦争で戦死した恋人に宛てた恋文を延々と読み続ける、
江分利満氏。
最後の方は、反戦の気持ちの色が濃い。
06.11.19 NFC
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楊貴妃

2006-11-24 | 邦画
楊貴妃  
1955.05.03 大映、カラー、普通サイズ
監督:溝口健二、脚本:陶秦、川口松太郎、依田義賢、成沢昌茂
出演:京マチ子、森雅之、山村聡、小沢栄、山形勲、南田洋子
   杉村春子、進藤英太郎、霧立のぼる、村田知英子、阿井美千子

庶民の家の台所の湯気の立つところに、
響き渡るような歌声で歌いながら炊事をしている、
田舎から来たばかりの京マチ子は元気良く立ち働いています。
短いからだにエネルギーを充満させて、
柔道着のような質実ないでたちで、
てきぱき、てきぱきと働いています。

映画の中で唐の美人画というのが出てきて、
これがふっくらとした美人。それで、精密な時代考証の結果、
主役が京マチ子のなったのか、などと納得しますが、
実際に、楊貴妃はふっくらとした人だったらしい。

白楽天の長恨歌に基づいて作られたシナリオで、
全体的に時代考証は一所懸命にやったんだそうです。
なんか、一所懸命さは伝わって来ます。

この映画の要素は歴史劇と恋愛劇。
この異質なものを調和させて、うまく持っていくのは難しい。
それが一緒になれなかったのは、玄宗皇帝と楊貴妃が、
一緒になれなかったのと同じことなのでしょう。
これもまた、もう1つの悲劇だったんですね。
06.11.12 NFC
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test

2006-11-24 | Weblog
放浪記 ☆☆☆☆☆
浮雲 ☆☆☆☆



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近松物語

2006-11-23 | 邦画
近松物語  ☆☆☆☆
1954.11.23 大映、白黒、普通サイズ
監督:溝口健二、脚本:依田義賢、
原作:近松門左衛門 「大経師昔暦」、川口松太郎 「おさん茂兵衛」
出演:長谷川一夫、香川京子、南田洋子、進藤英太郎、菅井一郎

夜の湿った緩やかな空気の中で、煙る川に浮かぶ一艘の船に
少し離れて座っている2人づれは、やがて、ひしと抱き合い、
もう離すまいと心に誓うのみならず、船の底へ、地底の底へ、
沈んで行くのです。2人だけで、2人だけで。

お歯黒姿の香川京子は別人のようで、貞淑な人の妻の形をして、
伸びやかな曲線とくっきりした直線からなる端整で豪華な美しい
着物を身にまとい、屋敷の中をなめらかに移動して行きます。
くっきりとした衣装。
でも、本当の気持ちは、奥底に、本人も知らない
はっきりとした思いが隠されている。

美男の長谷川一夫は太い線と細い線の混ざり合った美しい顔。
恋に落ちた後の香川京子は、いつものように汚れなく、
くりくりの無邪気な眼。
2人の美しい恋はかなわぬ恋。

美しい男優、美しい女優、美しい衣装、美しい映像。
落ち着いた構図、なめらかなカメラワーク。
きめ細かく、きちんとした仕上げの美しいセット。
なにもかにも美しい中に悲劇が隠されているのです。

2人はいつも一緒で離れない、
どんな事があっても、何が起ころと、
絶対に離れない。一緒に、死ぬまで、終わるまで、
いや、死んでも、離れることがない。
歩くときも、転ぶときも、寝るときも、喰うときも、逃げるときも、
いつでも、一緒に、ずっと離れない。ギュッと。
馬上で手をしっかり結びあう2人。
06.11.12 NFC

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