二銭銅貨

星の数: ☆良い ☆☆すごく良い ☆☆☆激しく良い ☆☆☆☆超激しく良い ☆☆☆☆☆ありえない

タウリスのイフィゲニア/MET10-11舞台撮影

2011-03-28 | オペラ
タウリスのイフィゲニア/MET10-11舞台撮影

作曲:グルック
演出:スティーヴン・ワズワース
指揮:パトリック・サマーズ
出演:イフィゲニア:スーザン・グラハム
   オレスト:プラシド・ドミンゴ
   ピラード:ポール・グローヴス

オレストの友人ピラード役のポール・グローヴスは素直でまっすぐな感じのテノールで、音楽とのアンサンブルも良いように感じられた。熱演だった。スーザン・グラハムとプラシド・ドミンゴは風邪をおしての出演だった。スーザンは途中のインタビューでセキをしていた。舞台では特に問題はなさそうで、こちらもやはり熱演であった。スーザン・グラハムは率直で力のある歌、ドミンゴは容量の大きな迫力のある歌だった。演出はやや舞台上の人物の動きが過剰な感じだったが、これはワズワースの特徴のようだ。音楽はバロック調。演奏にメリハリと迫力が感じられた。女性の合唱が美しく、層の厚さが感じられた。

11.03.20 109シネマズMM横浜
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

外套/ジャンニ・スキッキ/新国立劇場オペラ研修所公演2011

2011-03-27 | オペラ
外套/ジャンニ・スキッキ/新国立劇場オペラ研修所公演2011

作曲:プッチーニ、演出:デイヴィッド・エドワーズ
指揮:ドミニク・ウィラー
演奏:トウキョウ・モーツァルトプレーヤーズ
出演:
(外套)
ミケーレ:西村圭市、ジョルジェッタ:立川清子
ルイージ:村上公太、タルパ:北川辰彦、フルーゴラ:堀万里絵
(ジャンニ・スキッキ)
ジャンニ・スキッキ:高橋洋介、ラウレッタ:木村眞理子

暗い闇の中から1枚のドアをかすかに開いて、
その隙間からこちらにこっそりと、
1人の若い女性が抜け出てくる。
不安そうに心配そうに。
数年前に小さな子を亡くした蒼ざめた黒い記憶、
夫の嫉妬を思う暗い不安な気持ち、
そして若い男に惚れる新しいエネルギー。
その暗い輝きからこの音楽が始まる。

フタの無い黒い大きな箱を、開いた口をこちらに向けて横倒しにして作ったような形のセットがメイン。舞台脇の両サイドに背の高い黒い鉄骨の骨組みがある。天井からは太い真新しい銀色のチェーンが3本くらい下がっている。その先に太いフック。ダークな印象の美術の中から、何やら心配そうなジョルジェッタが出て来て、そして「外套」の音楽が始まる。

飾り気が無く庶民的で生活感のあるジョルジェッタを立川清子が演じ、それも含めて演出全体が何かイタリア映画のネオ・リアリズモを思わせる印象のものであった。立川清子の歌唱は強くて良かった。若い男に想いを馳せる人妻の不安と希望、恐怖と絶望の放心したような表情の芝居も良かった。西村圭市のミケーレは暗い芝居と暗い歌、村上公太のルイージは若々しく張りのある声で芝居も若々しかった。タルパとフルーゴラは年配の夫婦役で安定した歌と芝居だった。特に堀万里絵は役者なみの芝居をする人だと思った。

演出は細かいところまで行き届いたもので、特に最後のシーンは印象に残った。ミケーレがゆっくりと大きな引き戸を開けると、そこに逆さ吊りのルイージ。ジョルジェッタの絶叫。

休憩の後、同じセットを使い、置物を変えることによって引き続きジャンニ・スキッキの公演があった。こちらはうって変わって明るいパステルカラーの雰囲気。それでも遺産相続のトラブルだから、背景にはかなりの暗さは秘めている。「ブォーゾは実は死んで無い、死んだ振りをしていただけ」、あるいは「幽霊か何かになって生き返った」というような明るいオチがこの演出の面白いところ。芝居ではケチケチ婆のような腰の曲がった婆さん、ツィータ役の塩崎めぐみの芝居が良かったように思う。ジャンニ・スキッキの高橋洋介は芝居も歌も安定していて迫力もあって良かった。スキッキらしさが良く伝わった。ラウレッタは木村眞理子で背の高い良家の娘さんな感じ。白のドレスが良く似合っていた。歌も美しい。

舞台が一周回転している前で父親を追いかけながら、袖を捕まえながら「私のお父さん」を歌うラウレッタがいじらしく美しい。美しい演出。

O! mio babbino caro, mi piace, e bello, bello; ...

北川辰彦は「外套」のタルパ役やスキッキの公証人役、また鼻にかかった潰れたような声でスキッキの医師役をやった。それらは同じ人がやっているとは思えないような芝居だったので達者な人だと思った。

演奏はメリハリがあって良かった。

公演は4日間だったが東日本大震災で、10、12日の組は12日が中止、11、13日の組は11日が途中で中止だったらしい。バイオリニストの松井利代子さんのブログによると「外套」の22ページ目までいったところで中止になったようだ。2時開演、2時46分地震なのでラストに近いあたりだったようだ。

11.03.13 新国立劇場、中劇場
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ばらの騎士/MET10-11舞台撮影

2011-03-26 | オペラ
ばらの騎士/MET10-11舞台撮影

作曲:R.シュトラウス
演出:ヘルベルト・ヴェルニッケ
指揮:クリスティアン・ティーレマン
出演:元帥夫人:ルネ・フレミング、
   オクタビアン:ゾフィー・コッホ
   ゾフィー:ディアナ・ダムラウ
   オックス男爵:フランツ・ハヴラタ

真っ赤なバラ、生きたバラを
銀のバラから持ち替えて、
ゾフィーとオクタビアンは幸せそうに寝転んでいる。
木立に囲まれ、
落ち葉に覆われ、
道は遠く長く続いている。

マリーテレーズまたはマルシャリン、
あるいは元レジの心の中は複雑。
恐れ、やすらぎ、嫉妬、喜び、あきらめ、
希望、悲しみ、自信、絶望、祈り。
いろいろな気持ちがまざりあって、
オーケストラのよう。

理性がそんないろいろな気持ちを押さえ付け、
落ち着きが心を支配して、
冷静さを装う。それでも、
一瞬でも気が緩めば、底からあらゆる感情が噴出して、
号泣してしまうかも知れない。
揺らぐ心を押さえつけ、しっかり押さえつけ、
そして涙も拭かずに、
ハンカチを地面に落とすと1人馬車で走り去る。

フレミングは美しく突き抜けるようなソプラノ。ダムラウは強靭だけれども年若いゾフィーを良く演じていてそれらしかった。活発でやんちゃな小娘の印象。コッホは誠実な青年で声が美しい。男装してもちょこっと女性的な感じだったが、女装した時の方が少年らしく見えた。この3人の最後の三重唱は演奏ともあいまってエネルギーが高かった。引き続く二重唱も美しいアンサブルだった。ハヴラタも大活躍。抑え気味の芝居できびきびとした印象だった。カウフマンがイタリア人歌手役でちょっと出演、代役だったらしい。

美術はハーフミラーの下に絵を張った大きな縦長の板のようなものを何枚も背景に使っていた。この光沢のある背景画が美しく、時々人の出入りの時に回転する。ちょっと角度が変わると絵が消えるし、そもそも絵が常に揺らいでもいる。うつろいやすい男女の恋のイメージなのだろうか。白が主体の衣装も美しく、特に2幕のゾフィーのドレスが豪華絢爛だった。これを着てピョンピョン飛び跳ねるゾフィーの仕草が可愛らしかった。演出は繊細で丁寧。輝くシュトラウスの音楽にぴったりだった。

11.03.06 109シネマズ川崎
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

サロメ/東京文化会館(二期会)2011

2011-03-21 | オペラ
サロメ/東京文化会館(二期会)2011

作曲:R.シュトラウス、演出:ペーター・コンヴィチュニー
指揮:シュテファン・ゾルテス、演奏:東京都交響楽団
出演:サロメ:大隅智佳子、ヨカナーン:友清崇
   ヘロデ:片寄純也、ヘロディアス:山下牧子
   ヘロディアスの小姓:田村由貴絵、ナラボート:大川信之

現代の退廃した風俗を過激に表現し読み替えた激しい演出で、演劇性の強い舞台だった。シュトラウスの美しい音楽とは調和しない殺伐とした、とげとげしいリズムで、歌や演奏を楽しむスタイルの演出ではなかった。ただ最後のサロメのアリアの所は歌手の芝居も少なくなって歌に集中できた故か、ソプラノの歌声が演奏の音色に良く溶け込んで美しいアリアとなっていた。またハッピーエンドな演出もその音楽に良く合っていた。オリジナルは悲劇だけれども、その音楽が実はハッピーエンドに良く似合うというのは興味深かった。

歌手の皆さんも芝居が沢山あって大変そうだったが、それぞれが普通の舞台俳優のように頑張っていた。その故なのか、歌にちょっと迫力が無いと感じたが、7つのベールの踊りあたりから全体的に迫力が出て来たように思う。

7つのベールの踊りの後半で、登場人物が壁に描いたドアから必死に逃げようとする。退廃から逃れ出ようとして逃れられない人々、何処でもドアのように描かれた複数のドアの寂しそうな線画が印象的だった。

舞台中央に置かれた長い食卓に登場人物が並んで座るという構図がダビンチの最後の晩餐のような印象の舞台美術だった。場の設定は核戦争後の核シェルターという事だったらしい。

11.02.26 東京文化会館
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

11国立劇場2月/芦屋道満大内鑑、嫗山姥/文楽

2011-03-19 | 歌舞伎・文楽
11国立劇場2月/芦屋道満大内鑑、嫗山姥/文楽

(第1部)

芦屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)
葛の葉子別れの段
蘭菊の乱れ

文雀が病気で休演の他、太夫も2人程の休演があった。葛の葉を文雀から和生、保名を和生から玉女。純情でまじめな玉女の保名が印象に残った。葛の葉は出番が多く動きも激しい。「蘭菊の乱れ」はほとんど踊り。

嫗山姥(こもちやまんば)
廓噺の段

玉女の煙草屋源七は、きりっとしてスマート。紋壽の八重桐は良く動いた。大活躍。

11.02.13 国立劇場
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする