二銭銅貨

星の数: ☆良い ☆☆すごく良い ☆☆☆激しく良い ☆☆☆☆超激しく良い ☆☆☆☆☆ありえない

あした来る人

2007-10-30 | 邦画
あした来る人 ☆☆
1955.05.29 日活、白黒、普通サイズ
監督:川島雄三、脚本:菊島隆三、原作:井上靖
出演:月丘夢路、三橋達也、山村聰、新珠三千代、三國連太郎

メロドラマのようで、
そうでも無いような、やや硬めの物語。
出て来る人が皆まじめ。
恋に真剣、
仕事に真剣、
人生に真剣。

月丘夢路はお嬢様。
山村聰はお父様。
新珠三千代は職業婦人。
三橋達也は登山家。
三國連太郎は「かじか」の研究者。

古い価値観の山村聰の世代から見た、
若い人々の新しい価値観。
驚き、また、
その将来に期待する物語でもある。

冒頭の山村聰が暗い長い廊下を歩いて来るシーン、
ラストの廊下を歩いて去るシーンが印象的。
07.10.21 神保町シアター
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洲崎パラダイス・赤信号

2007-10-29 | 邦画
洲崎パラダイス・赤信号 ☆☆
1956.07.31 日活、白黒、普通サイズ
監督:川島雄三、脚本:井手俊郎 、寺田信義、原作:芝木好子
出演:新珠三千代、三橋達也、轟夕起子、芦川いづみ、河津清三郎

矢がすりの着物を薄く着て、
艶かしい雰囲気の新珠三千代は、
額を出したヘアスタイルの、いつものきっちりした様子ではなく、
ちょっと、しなやかな細い線。
崩れた感じ。

三橋達也は、やや気持ちの弱そうな若者で、
元気なく、やる気なく、ふてくされていて、
そうかと思うと、しつこく、一途で、向こう見ず。
こちらも、いつものシャキッとした様子とは違うキャラクター。

刺すような雨に降られ、暗く、どんよりとした空気の中、
東京に残る花街の、州崎パラダイスの入り口に、
たどり着く。
男女の2人の若い連れ。
入り口の橋のたもとの一杯の飲み屋の女主人に厄介になる。

女主人は、ふっくらした轟夕起子。
人生に疲れているけれど、
でも、頑張っています。
2人の子供と頑張っています。
3年前に逃げた夫が戻って来た時の、
ふっくらと嬉しそうな顔、たたずまい。

切っても切れない2人の仲。
下駄に着物。
靴に鞄。

蕎麦屋の店員に芦川いづみ。
電気屋のおやじに河津清三郎。
07.10.21 神保町シアター
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アパートの鍵貸します

2007-10-21 | 洋画
アパートの鍵貸します ☆☆☆☆
The Apartment
1960 アメリカ、白黒、横長サイズ
監督・脚本:ビリー・ワイルダー、脚本:I・A・L・ダイアモンド
出演:シャーリー・マクレーン、ジャック・レモン、
   フレッド・マクマレイ

大晦日の夜、
いつもの中華のお店。
どんちゃん騒ぎのパーティ。
そして、いつものブース。
シェルドレイク取締役の向かいに座っているのは、
フラン・キューブリック。
エレベータ・ガール。
頭にかんむりをかぶり、楽しそうだ。
今日はハッピー。

もうすぐ新年。
カウントダウンが始まる。
そして、
シェルドレイクが、C.C.バクスターが会社を辞めたと告げる。
フランは一瞬、
思いだし笑い。
彼のキャラクターを思い出したように、
ゆっくりと微笑む。
そして、それは急に真剣な眼差しに変化する。
何か深刻な事を思い出したような。

新年とともに照明は落ち、
ハッピー・ニューイヤーの大合唱。
真っ暗闇の中、
人々のキス。
新年の、幕開けの、どんちゃん騒ぎ。

深夜、
街路を走るフランのハイヒール。
照明に照らされる、
フランの足。

ステンド・グラスのシェードのスタンドを左に、
ソファーにゆったりと、観客の方に正対して座る2人。
右にシャーリー・マクレーン、
左にジャック・レモン。
白のゆったりとしたドレスのシャーリー。
すっかり元気で、
いつものキビキビしたお姉さんのような表情で、
ジャック・レモンに指示する。
幸せそうな唇。
楽しそうな瞳。
何か真剣なことを言うジャック・レモンには、
きっぱりと、
shut up and deal、
と言って、カードを渡す。

カットしたカードを2山にして、
テーブルに置いたカードを次々に取って行く2人。
ゆったりとしていて楽しそうだ。
微笑みながらカードを取るシャーリー。
シャーリーを見るジャック・レモン。
ジャック・レモンを見るシャーリー。
2人を取り持つカード。
やさしくて、
ふんわりとしている。

最後のセリフは、次のようなものらしい。
"Did you hear what I said Miss Kubelik? I absolutely adore you."
"Shut up and deal."
07.10.08 新文芸座、過去にTV・レンタルVTR・名画座で数回
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情婦

2007-10-20 | 洋画
情婦 ☆☆
Witness for the Prosecution
1957 アメリカ、白黒、普通サイズ
監督・脚本:ビリー・ワイルダー、脚本:ハリー・カーニッツ
原作:アガサ・クリスティ
出演:チャールズ・ロートン、マルレーネ・ディートリッヒ
   タイロン・パワー

法廷劇。

年配のベテラン弁護士のチャールズ・ロートンは、
だだっこで、
付き添いの看護婦を困らせる。
有能で最優秀の弁護士だからプライドがあって、
さからう者なんていないから、
わがままにもなる。
心臓が悪く、とても弁護の仕事は無理だけど、
それでも、
眼を盗んで葉巻を吸ったり、
眼を盗んでウオッカをココアにすり替えて飲んだり、
仕事の鬼だから、
目の前にぶら下がった、興味深い仕事をのがすはずも無く、
この1回限りということで、医師の許可をもらう。
看護婦もしぶしぶ、認めざるを得なくて、
とにかく、薬を持たせ、
看護婦も傍聴席に陣取って、
監視する中で、
法廷劇が始まる。

被告にタイロン・パワー。
微妙に信用できるような、できないような。
被告の妻にマルレーネ・ディートリッヒ。
微妙に誠実そうな、そうでもないような。

軽妙なビリー・ワイルダーのタッチ。
チャールズ・ロートンの芝居が、
それを良く表現していて、とても楽しい。

チャールズ・ロートンと看護婦役のエルザ・ランチェスターはご夫婦なんだそうです。
07.10.08 新文芸座
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カビリアの夜

2007-10-17 | 洋画
カビリアの夜 ☆☆☆☆
Le Notti di Cabiria
1957 イタリア、白黒、普通サイズ
監督・脚本:フェデリコ・フェリーニ、
脚本:エンニオ・フライアーノ、トゥリオ・ピネリ
出演:ジュリエッタ・マシーナ、フランソワ・ペリエ
   フランカ・マルツィ、ドリアン・グレイ

ぼうぼうとした草、
荒涼とした河原、
手に手を取って走り来る若いカップル。
川の流れを見て喜ぶ女。
それに寄り添って、周囲を伺うサングラスの男。
女は一瞬のスキにカバンを奪われ、
川に突き落とされる。

マンボを元気良く踊るカビリア。
溺れ掛けても、金を取られても、
元気。
悪態を付き、ののしりあい、冗談をとばしあって、
あげくの果ては取っ組み合いの大喧嘩。
それでも元気。
どんな逆境でも、どんな絶望でも、どんなにどん底でも、
そのくりくりの目をあっちに、こっちに、動かして、
ぐっと、唇をかみしめて、
それからニッコリ微笑んで、いつも元気いっぱい。
めいっぱい。
都市のはずれ、場末の娼婦の溜まり場。
元気いっぱいの精神。
元気いっぱいの体。

巡礼が多く集まる大集会、
たくさんな人々が教会に来ている。
まつば杖の人、病気の人、不幸な人、貧乏な人、
みんな集まって、マリア様に願いをかける。
カビリアも友達のワンダも、長い蝋燭に火をともして、
一緒に願をかける。
始めての感動、経験に声を詰まらせるカビリア。
マリア様の清らかさ。
願いをかけるカビリアの心。
一緒懸命な群集の心理。
何か貴いもの。
表面的には分からない中核になるよりどころ。
このままでいいのだろうか?
こんな事をしていていいのだろうか?

告解の後の広場。
飲めや歌えの仲間たち。
カビリアは一人もの思いにふける。
まなじりを決して何かを決意している。

夜。
巡礼の集会の帰り。
奇術師が催眠術をかけるショウに、
カビリアは観客席からイヤイヤ引っ張りだされ、
催眠術を掛けられる。
悪魔のような角の生えた帽子を被る催眠術師。
その催眠術師が導くまま、
舞台の上で、群集の前で、
ワルツに乗せて、優雅に自分の夢を語り、踊るカビリア。
18だった頃の長い黒髪の思い出、
オスカルという若者との未来の出会い。
演ずるカビリアは、
傷つきやすい乙女の心。

森の向こうにある崖の淵から見える湖。
夕暮れの湖面に反射するキラキラ。
純粋で美しく、混じりけが無い。
しずかに細やかで、滑らかで優しい。
でも、
夕暮れの、薄く暮れ行く淋しげな反射。

地面に倒れて、のたうちまわり。
ごろごろ転がって、
くやしくて。
くやしくて。
ジタバタもがく。
「殺してくれ」「死にたい」と、
泣き叫ぶカビリア。
土にまみれ。
むごい仕打ちにあって。
泥だらけで。

やがて、時間もたち、
すっかり暗くなり、
カビリアはゆっくり立ち上がる。
魂の抜けた殻のようにゆっくりと歩き出す。
茫然として。
疲れきって。
森を抜け、
道路に出ると、
反対側から若い男女数人が楽しそうに、愉快そうに、
楽器をかき鳴らしながら歌い、踊り、景気良さそうに出てくる。
楽しい音楽にあわせて、
カビリアのまわりを囲むように、歌い踊る。
沈んだ、ずんと沈んでいたカビリアも、
その音楽に、その踊りに
ちょっとだけ元気を取り戻す。
ちょっとだけ、
少しだけだけど、
いつものように、
ニッコリと微笑みの表情が浮かんで、そして、その映画が終わる。
07.09.30 新文芸座、過去にVTR、テレビで数回
コメント (2)
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