二銭銅貨

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十字路

2008-07-16 | 邦画
十字路 ☆☆
1926.09.24 衣笠映画聯盟、松竹、白黒、無声、普通サイズ
監督・脚本:衣笠貞之助
出演:千早晶子、阪東寿之助、小川雪子、相馬一平

自分の着物の襟をぐっと掴み、
襟を2度3度とかきよせるような仕草を見せて、
にじり寄るニセ目明しの邪悪さを身に感じながら、
この男を疑っているわけではないけれど、
危険から逃れるかのように、
じりじりと後ずさりする
姉役の千早晶子。

苦難と貧苦、
危険と邪悪、
孤独と絶望、
純粋さに一途さ、
希望と懸命、
いろいろな気持ちが
白と黒の端整な画像と
豊かに展開する美術の中に
アップテンポに写し出されていく。

引っ込み思案の中にも、
一分の魂があって、
女の芯から
ボワっと膨らみ、
乱れてバランスを失った前衛芸術のように見える日本髪が、
この若い女性の不安定な人生、
波乱の運命、
残酷な社会を印象付ける。

十字路とは、
どちらに行ってもイバラだらけの
酷薄で薄情な道の交差点。

弟役は阪東寿之助。
姉思いなのところは良いのだが、
めくらめっぽうで、
ヨロヨロしていて、
不安定で不安全だ。

同時上映が「天一坊と伊賀之亮」。1926年製作。44分。劣化した部分を監督自身が取り除いた縮小版。2代目猿之助が両方の役を二役でやっている。歌舞伎風の芝居が多い。歌舞伎の力の入った緊張感にあふれている。

08.06.29 NFC
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忘れられた子等

2008-07-14 | 邦画
忘れられた子等 ☆☆
1949.10.04 東宝、白黒、普通サイズ
監督・脚本:稲垣浩、原作:田村一二
出演:堀雄二、笠智衆

知的障害者の子供たちの学級を担任する先生の話。
堀雄二がその先生で、
笠智衆がその学級のある小学校の校長先生。

1人1人の子供たちは
それぞれ一芸に秀でていて、
それぞれの一芸にまつわる日々のエピソードが、
映画に中に順に積み重ねられていく。

当時の親は忙しかったのだろう。
ロクに面倒も見てやれず、
ほったらかしの子供たちは皆、
精神も衣服も身だしなみも汚い。

浜辺の歌を歌う素朴な少女の素朴な歌声。
コンクリの地面の上に、
白墨で数字の列を書き連ねていく数学者のような子供。
この子達の、
親代わりに面倒を見る堀雄二は、
本当に、この子供たちの親だ。

08.06.29 神保町シアター
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狂った一頁

2008-07-13 | 邦画
狂った一頁 ☆☆
1926.09.24 新感覚派映画連盟、白黒、無声、普通サイズ
監督・脚本:衣笠貞之助、脚本:犬塚稔、沢田暁紅
原作・脚本:川端康成
出演:井上正夫、中川芳江、飯島綾子

窓に叩き付けられる雨と風、
荒れ狂う嵐、
なぶられて、しいたげられる木の枝、
踊り狂う木々の葉。
宵闇、
稲妻、
切り裂くような非情。

踊り狂う狂女、若い女。
茫然自失の中年の女性。
心を蝕まれた男たち。
精神病棟の物語。

心を深く切り刻まれた老人は、
病棟の小使いにして、
狂った中年女性の夫。
何とか妻を救おうとして右往左往するけれど、
何ともならない。
重くのしかかってくるのは苦悩。

当時の前衛的な映画で、実験的で斬新な映像が次々と展開していく。音楽は戦後に付けられた前衛的なもので、良く絵に合っている。字幕無しなのでストーリーは非常にわかりずらい。

同時に上映したのが1925年製作の月形半平太。14分の縮小版。チャンバラの場面が激しい。「はるさめじゃ。濡れて行こう」の名文句あり。

08.06.22 NFC
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大阪の宿

2008-07-05 | 邦画
大阪の宿 ☆☆
1954.04.20 新東宝、白黒、普通サイズ
監督・脚本:五所平之助、脚本:八住利雄、原作:水上滝太郎
出演:佐野周二、乙羽信子、川崎弘子、水戸光子、左幸子
   三好栄子、藤原釜足、安西郷子、

ぐっと、流し目で睨むように見つめる乙羽信子の視線の先の、
佐野周二はそしらぬ振りの知らぬ顔。
気を取り直して乙羽信子は、
「やい、三田公、飲め」と酔った振りして、
グイと突き出すコップ酒。
その手つき、その言葉つきの侘しさ悲しさ。
深く惚れてしまった女の不覚か。
それにしても佐野周二の醒めていることよ。

この醒めきっているような佐野周二が、
除々に大阪の宿屋の女中たちや乙羽信子などの、
大阪の人々の渦の中で人の真心を感じるようになる。

それにしても乙羽信子は報われない。
いつもそういう役が多いです。
えくぼはいつもの様に、
くっきり、はっきりしていましたが。

三好栄子はケチで意地の悪い嫌なババア。
だが、ちっと憎めない感じ。
川崎弘子は人のよさそうな実直な中年女性。
水戸光子は踏みつけられても、痛めつけれらても頑張る、耐える女。
左幸子は調子の良い、いわいるアプレゲール。
この他に藤原釜足、多々良純、田中春男、安西郷子など、
いい俳優が多くいて楽しい。

08.06.22 神保町シアター
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