二銭銅貨

星の数: ☆良い ☆☆すごく良い ☆☆☆激しく良い ☆☆☆☆超激しく良い ☆☆☆☆☆ありえない

女の中にいる他人

2006-08-30 | 成瀬映画
女の中にいる他人  ☆☆


1966.01.25 東宝、白黒、横長サイズ
監督:成瀬巳喜男、脚本:井手俊郎、原作:エドワード・アタイヤ
出演:新珠三千代、小林桂樹、三橋達也、長岡輝子、草笛光子

白と黒のサスペンス。
照明の光と影で人物の心を捕らえようとしています。

冒頭の小林桂樹が道路の舗道に立つシーンから、
喫茶店に至るシーケンスが妙に記憶に残ります。
サスペンスもスペクタクルも何も無い、ただの普通の面影。
普通の生活、普通の表情。
嵐の前の静けさ。

停電、ろうそく、嵐、
闇の中に浮かびあがる顔、心。

トンネル、トラック、静寂、
告白する闇の中の心。

花火の夜。閉塞した夜。
閉じ込められた心。

白と黒の中に封印された物語。
05.09.11 NFC
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

花のうず潮

2006-08-29 | 邦画
花のうず潮  ☆☆
1958.04.01 松竹、カラー、横長サイズ
監督:大庭秀雄、脚本:柳井隆雄、馬場当
出演:岡田茉莉子、佐田啓二、小山明子、大木実、宮城千賀子
   田村高広、高千穂ひづる、笠智衆

メロドラマ。

恋の多重三角関係、
片方向にしか矢印の無いベクトルが行き交う、錯綜した恋の空間。
解がなかったり、不定だったり、
もつれたり、ずれたり、一致しなかたり。
難解な数学の問題のような関係。
ベクトルの向きは、あっちに向きこっちに向きで、つながらず、
線形空間にもなりません。かと言って、
非線形という訳でもなく、ただただ難問で解析不能な恋の物語。
どうやって解決されるのでしょう?

たくさん衣装を変えて出てくる岡田茉莉子が主役なのでしょうか?
鋭いベクトルのような視線で画面を切り裂きながら、
恋がよろめく心の物語を形作っていきます。
苦悩する大木実。
人生に打算的で、適当に生きている宮城千賀子。
いつでも明るい佐田啓二。
清楚で、京都美人の小山明子。
笠智衆はいつも通り。

まじめで真摯な田村高広。
高千穂ひづるは忠実で素朴な女中役。
こちらの話は素朴でまじめな恋のドラマ、
この人物が一番メロドラマっぽかったかも知れない。

全体として、絵の構図がしっかりしていると感じた。
映画の中でテレビ塔というのが出てくる。
東京タワーができる前にあったものなのでしょうか。

上映ではフィルムの色があせて、ほとんど赤しか色しか残っておらず、事実上のモノクロ状態だった。
2006.08.26 川崎市民ミュージアム



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

帰郷

2006-08-28 | 邦画
帰郷  ☆☆
1950.11.25 松竹、白黒、普通サイズ
監督:大庭秀雄、脚本:池田忠雄、原作:大仏次郎
出演:佐分利信、津島恵子、木暮実千代、徳大寺伸、三宅邦子、山村聡

赤と白で決する運命のルーレット、
赤と白で決する運命のトランプ、
元、海軍軍人の佐分利信、
佐分利信を好きな木暮実千代、
佐分利信の娘役の津島恵子、
かわいらしいお嬢様。
親思いで、しっかりしている。
この娘役がドラマの中心。

恋のドラマ、
親子の絆のドラマ、
運命を描く大河ドラマ、
いくつかの要素が交じり合った物語。

絵の構図がしっかりしていて、
安心感のある構成です。
06.08.26 川崎市民ミュージアム
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

赤いハンカチ

2006-08-27 | 邦画
赤いハンカチ  ☆☆
1988.08.13 日活、カラー、横長サイズ
監督・脚本:舛田利雄、脚本:小川英、山崎巌
出演:石原裕次郎、浅丘ルリ子、二谷英明、桂小金治、金子信雄

「アカシアの花の下で、
あの娘がそっと瞼を拭いた、
赤いハンカチよ」
と始まる歌にのせて展開して行く、恋とアクションの物語。

構図とカメラワーク、絵が良い。
長い突堤の端から眺めた構図は消失点のある画像。
消失点を挟んで裕ちゃんと浅丘ルリ子が立っている。
この2人の関係を良く表現している。

冒頭の犯人を追っかける夜のシーン、
犯罪捜査の定番、蛍光灯スタンドの尋問シーン、
岩山の岩壁をドリルで穴開ける裕ちゃん、
警察に囲まれた安ホテルの部屋の中のシーン、
しっかり構成された良い映像、
しっかり構成された良いコンテニュイティー、
心地良いです。
06.08.16 NFC
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

TOMORROW・明日

2006-08-24 | 邦画
TOMORROW・明日  ☆☆
1988.08.13 ライトヴィジョン他、カラー、横長サイズ
監督・脚本:黒木和雄、脚本:井上正子、竹内銃一郎、原作:井上光晴
出演:桃井かおり、南果歩、佐野史郎、仙道敦子、岡野進一郎、
黒田アーサー、伊佐山ひろ子、馬渕晴子、長門裕之、原田芳雄
   田中邦衛、賀原夏子

長崎に原爆が投下されるまでの、人々の普通の暮らしの断片断片。

原爆の物語は、たいがい投下後のことについて語られるのが
普通だと思いますが、この映画はその逆を突き、
投下前の物語を描いて、かえって、
その酷さを強調しています。

一瞬で消える人々の命、人々の人生。
賑やかな暮らし、
賑やかな日々、
大人も子供も、
あとかたもなく。
06.08.16 新文芸座
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする