二銭銅貨

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12国立劇場5月/八陣守護城、契情倭荘子/文楽

2012-06-08 | 歌舞伎・文楽
12国立劇場5月/八陣守護城、契情倭荘子/文楽
(第1部)


八陣守護城(はちじんしゅごのほんじょう)
 門前の段
 毒酒の段
 浪花入江の段
 主計之介早討の段
 正清本城の段

加藤正清の息子の清郷を勘彌、婚約者になる娘の雛絹を清十郎。すがすがしく美しい恋愛。雛絹は積極的な若い娘で、清郷に惚れてメロメロ。きめこまかい動きで柔らかい。対する清郷は真っ直ぐでやや硬い感じ、律儀で若々しい。ともに明るい若さのあるカップルで滑らかで丁寧な動きだった。ロミオとジュリエットのよう。

玉女の正清は憂いのある、やや陰を持った豪傑。玉佳の遣う悪党の鞠川は、そのコミカルさをやや抑え気味にした、悪党ぶりを強調した動きだった。

演奏では琴と三味線の2重奏があった。同時に同じ旋律を弾くとちょっと合わない感じであったが、クライマックスの掛け合いは盛り上がる演奏だった。拍手も出た。舞台でも雛絹が超絶っぽい琴の演奏を頑張っていた。三味線が清介。琴が清公。

契情倭荘子(けいせいやまとぞうし)
 蝶の道行

男性の蝶を幸助、女性の蝶を一輔。かなり動きの激しい踊りで、人形ならではのダイナミックな動きも多かった。「蝶の道行き」のクライマックスで出てくるモチーフは、以前もそう思ったが、成瀬監督の「流れる」の最後の場面の三味線の演奏と同じような気がする。「蝶の道行き」の最後は、2羽の蝶の最期のこと切れる寸前の強烈な輝きを表現したものであるが、「流れる」でもそのような意図があったのかも知れない。

12.05.27 国立劇場
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椿姫/MET11-12舞台撮影

2012-06-01 | オペラ
椿姫/MET11-12舞台撮影

作曲:ヴェルディ、演出:ヴィリー・デッカー
指揮:ファビオ・ルイージ
出演:ヴィオレッタ:ナタリー・デセイ
アルフレード:マシュー・ポレンザーニ
ジェルモン:ディミトリ・ホヴォロストフスキー

クリムゾンレッドの
丈が短く活動的な
元気で軽快な袖なしドレス。
真っ赤な命を噴出す衣裳と
ヴィオレッタの赤い唇、
冴えない顔。

男も女も黒いスーツ、
白い壁、
壁に立てかけられた丸い巨大な時計。
nano second オーダーで激しく追いかけ廻す。
忙しい現代の人々と
情報機械、ビジネスモデル。
仮面舞踏会の無表情。

かすれたデセイの声、
哀しそうなデセイの歌、
つらそうなデセイの芝居。
それでも強くてエネルギッシュで、
パワフルで元気。
現代を強く生き抜く。
ぶっ倒れようと、よろけようと、何をしても、
それでも元気に生きていく。
デセイと、それと
あの真っ赤なクリムゾンレッドの袖なしドレス。

濃い赤の丈が短く活動的な袖なしドレスはヴィオレッタ。壁に立てかけられた丸い巨大な時計は現代の人々を忙しく追いかけ回す情報機械あるいはビジネスモデル。男も女も黒のスーツに身を包み、仮面舞踏会で無表情な面を被る人々は、そのビジネスシーンでもがく人々。ジョエルモンは厳しい上司、アルフレードはとまどう新入社員。ベテラン管理職のヴィオレッタは若づくりでアルフレードに恋をする。恋を取るべきか仕事と自由を取るべきか。ああ、どうしよう、「ああ、そはかの人か」の歌詞のように激しく動揺する。悩んだあげくにぶっ倒れてしまった。決してそのような意図で演出されたプロダクションではなかったが、そんな風に感じられて面白く印象に残った。読み替え版をさらに勝手に読み替えた。

赤のドレス、白の壁、黒のスーツ。鮮やかな色が印象的でグラフィックデザイン的な美術。演出はそれ程、読み替えているということは無いかも知れないが、あまりオリジナルのトラヴィアータの哀しい雰囲気は出ていないように思う。

NY TIMESのウェッブ上の劇評によると、デセイは病気で初日の4月6日を交代、4月10日に出演し、その時の出だしは不安定で荒れた声だったらしい。すぐに良くなったとあるが、撮影されたのは4月14日で、まだ声の調子はイマイチだったのかも知れない。「ああ、そはかの人か」のコロラトゥーラで最高音あたりが出なかったり、全般にややかすれる部分が所々あったりした。インタビューでも音をミスしたことをわびていた。若干の不調にもかかわらず良い演技と歌で集中力の途切れない舞台だった。声の不調はむしろヴィオレッタの本当の病気を感じさせて演技的にはかえって良かった。

ポレンザーニはとても綺麗な声で迫力もある良いアルフレードだった。ホヴォロストフスキーはかなり厳しい感じのジェルモンで、「プロヴァンスの海と陸」もやや厳しめで硬い印象のものになった。そのため、ジェルモンの優しいお父さんという感じより、むしろ厳しくスパルタな上司というような感じがしてしまった。

本来の椿姫を想定すると的外れなプロダクションだが、面白いプロダクションで印象深い。

12.05.13 東劇
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