二銭銅貨

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11国立劇場1月/四天王御江戸鏑/歌舞伎

2011-01-30 | 歌舞伎・文楽
11国立劇場1月/四天王御江戸鏑/歌舞伎

四天王御江戸鏑(してんのうおえどのかぶらや)

相馬御所の場
一条戻橋の場
羅生門河岸中根屋格子先の場
同、二階座敷の場
同、花咲部屋の場
二条大宮源頼光館の場
同、寝所の場
北野天満宮の場

菊五郎、時蔵、松緑、菊之助

能天気な冬の空みたいに明るく底抜けに楽しい芝居が気持ちいい。腹に何にもない。屈託もない。菊之助が綺麗。ただただ綺麗。色気もあったりしてで、困る。相手役のお父さんも大変だろうな。

菊之助の撒く紙製らしい雲の糸が美しい。花火のしだれ柳のようで美しい。江戸の華。パッと咲いて、時を惜しむことなくパッと散る。白く美しいのが菊之助に良く合う。宙乗りでも撒いていた。

AKB48もどきとか、戦場カメラマンとかが出てきたり、挙句の果ては幕引きがぶっ倒れてしまって、菊五郎が幕を引くなどという大うけのサービスも満載だった。ちなみに戦場カメラマンと一緒に、劇場の係員風のユニホームの女性(多分)も舞台に乗っていた。

右近、梅枝、松也、萬太郎の若手が活躍した。それぞれ若侍や姫様をやって清々しく、声が強くて気持ち良かった。右近は最初の姫様の元気な踊りと若侍の二役だった。

松緑もいつもどおり気風が良く、時蔵の二役のうちの1つは茨木の婆で一所懸命下品にやっていたけど、それでもどうしても上品な茨木になっていた。

11.01.23 国立劇場
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親鸞・白い道

2011-01-29 | 邦画
親鸞・白い道 ☆☆
1987.05.09 松竹、カラー、横長サイズ
監督・脚本:三国連太郎、脚本:藤田博
出演:森山潤久、大楠道代、三國連太郎

雪道とか、
烈風の中とか、
砂原とか、
足跡を残して黙々と進む親鸞の姿が、
この物語の主題であるようだった。

民衆は、人々は、
右往左往しているようだけれども、
それでも、よじけながらでも前向きに、ひたすら、
黙々と歩んでいく。
生物の進化が、のろのろと、試行錯誤を繰り返しながら、
大量の生命を費やして前へ進んで行く様に、
人々また、強くたくましく前へ進んでいる。

それでも、くじけそうな人々とか、
生きて行く場所の無い人々とか、
前の見えない人々とか、
あるいは、強欲の虜となって無限地獄に落ちている人々とか、
いろいろと困難な人々もいる。

あらゆる人々に、進むべき道を照らしてあげることが、
僧侶のプロフェッションだと、
映画の中の親鸞は、そう思っているようだった。

物語の説明が粗っぽくて、親鸞を良く知らない人には分かりにくい映画であったが、映像が美しかった。その映像の中に、親鸞の精神らしきものは感じることができた。

ドキュメンタリ作家の佐野眞一氏と共同通信編集委員・立花珠樹氏のトークショーがあった。飢餓海峡、内田吐夢、三国連太郎などについて多くのエピソードが語られた。特に満映(満洲映画協会)での、甘粕正彦の自決に内田吐夢が遭遇する話などが興味深かった。

11.01.15 新文芸座
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警察日記

2011-01-25 | 邦画
警察日記 ☆☆
1955.02.03 日活、白黒、普通サイズ
監督:久松静児、脚本:井手俊郎
出演:二木てるみ、森繁久弥、沢村貞子、坪内美子
   三島雅夫、殿山泰司、十朱久雄、織田政雄、宍戸錠、
   小田切みき、伊藤雄之助、東野英治郎、
   三國連太郎、岩崎加根子、杉村春子、飯田蝶子、多々良純
   千石規子、左卜全、三木のり平、稲葉義男

ふんわりとした空気、
ふんわかとした景色、
暖かい日差し、
のんびりとした人々、
思いやりの響き、
ゆるい気持ち、
優しいリズム。

弟の茂ちゃんを思いやる二木てるみは、
涙をほほに浮かべて、
いたいけな、可哀相な、心配そうな顔が
悲しそう。

柱の陰からこっそりと、
茂ちゃんを見つめる眼がいじらしく、
振り返り、振り返り、
ちっちゃな女の娘の、黒髪が悲しげ。

男の子っぽい表情が
かわいらしい。
めんごい、かわいい、いじらしい。
沢村貞子でなくとも、
森繁久弥でなくとも、
どうにかしてやりたいと思う。
なんとかしてやりたいと思う。

捨てたは母親はなんなんだと。
森繁久弥でなくともそう思う。

それがどうにも坪内美子で、
こちらはこちちらで可哀相。
なんとも、どうにも、しようがない。
森繁久弥のはからいには思いやりが、たっぷりとあって、
それが森繁久弥らしくて良い。いい人だ。
森繁久弥のカミさん役の人も、
病気で伏せっていたけれど、優しくていい人だった。

合津磐梯山の麓ののんきな警察署の話。
貧乏な人たちの貧乏なエピソード。
合津の青い空のように抜けていて明るい。
爽快で前向き。脚本が良い。

いい役者が大量動員で、素晴らしい出来の映画になった。ラストの磐梯山の麓を走り抜ける汽車の車列、たなびく煙が美しい。

音楽は団伊玖磨。冒頭の民謡「会津磐梯山」の、クラシック音楽的な強力な歌声で始まるところが印象に残る。

宍戸錠は若い警官だったらしいが、それとは分からない。
十朱幸代も出ていたらしい。

11.01.15 新文芸座
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トリスタンとイゾルデ/新国立劇場10-11

2011-01-24 | オペラ
トリスタンとイゾルデ/新国立劇場10-11

作曲:ワーグナー、演出:デイヴィッド・マクヴィカー
指揮:大野和士、演奏:東京フィル
出演:トリスタン:ステファン・グールド
   マルケ王:ギド・イェンティンス
   イゾルデ:イレーネ・テオリン
   クルヴェナール:ユッカ・ラジライネン
   ブランゲーネ:エレナ・ツィトコーワ

空間に浮かぶ幾筋もの細いリング。円形のネオン管を不規則に束ねた鳥の巣のような構造。2人の愛が燃え上がる時に合わせて舞台を漆黒に変え、その暗闇を強力なシアンの光で妖しく照らし出す。ネオン管らしきものが凄いストレスで青白く透明に光輝く。愛の最高点をやや薄めの強い青、シアンの純粋な色で表現していた。このリングを突き抜けるように太い、上に行けば行くほど序々に細くなる柱が突き抜けている。柱の切れ目は無く、天まで届いているかのようだ。

崇高で深遠な舞台美術のようにも、単なるシモネタのようにも見えて面白い。ワーグナーって、こういう風にも解釈できるのかと感心した。

物語の舞台のコーンウォールはイングランドの南西の端、ケルト文化の地域の1つらしい。輪も柱も道祖神のような意味があるのかも知れない。演出のマクヴィカーはケルト文化の別の地域のスコットランド出身。

幕開けは左端からゆっくり登る大きな月。序曲のゆっくりした音楽に合わせて登る。舞台の向こうから小さな構造物が近付いてくる。こちらまで来ると、それが骨組みだけの船と分かる。朽ち果てた幽霊船のようないでたち。青白く光る月に朽ち果てた幽霊船。そこに幽霊のような恋愛が異常に青光りするのだ。

他の幕でもこの月は出ていて、赤くなったり白くなったりする。

最後の幕はどこか遠くの宇宙の星の地平のような岩山の風景。何かぶっ飛んでいるような印象で面白かった。英国の作家は面白い。やや単調な演劇だけれども、美術を見ているだけで退屈しなかった。

ステファン・グールドとイレーネ・テオリンは強靭なトリスタンとイゾルデ。高いエネルギーを最後まで維持した。特に二重唱はオーケストラの演奏ともあいまってすごい迫力だった。め一杯演奏し、め一杯歌っていた。エレナ・ツィトコーワのブランゲーネは優しく柔らかで細やかな芝居、メリハリのある強い歌いかたで印象深かった。良い歌手だと思った。ユッカ・ラジライネンは1幕では不遜な感じ、3幕では誠実な感じで、その印象は全く違うものだった。

オーケストラの演奏は強くエネルギッシュだと感じた。

11.01.10 新国立劇場
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ドン・カルロ/MET10-11舞台撮影

2011-01-22 | オペラ
ドン・カルロ/MET10-11舞台撮影

作曲:ヴェルディ
演出:ニコラス・ハイトナー
指揮:ヤニック・ネゼ=セガン
出演:カルロ:ロベルト・アラーニャ
   ロドリーゴ:サイモン・キーンリーサイド
   エボリ公女:アンナ・スミルノヴァ
   国王:フェルッチオ・フルラネット
   エリザベッタ:マリーナ・ポプラフスカヤ

アラーニャは甘くてせつない、美しい響きの歌声ながら、武人の王子らしく決然としたところを見せて、また、お坊ちゃまな印象を織り込んだ芝居で清々しかった。キーンリーサイドには甘い所が無いけれども、声に張りがあって華があり、キラキラしたところもあった。アラーニャとのデュエットが美しく良いアンサンブルだった。ポプラフスカヤは直線的で素朴な印象のソプラノ、アラーニャとの二重唱のアンサンブルは声質が合わなくてイマイチの感じがしたけれども、ソロは素直で良かったと思う。フルラネットは重くて厳しいバス。スミルノヴァは強く安定したメゾで、パワーのある男声に負けていなかった。しっかりと劇全体を締めていたように思う。やや太めの人なのに、絶世の美女役の「自分の美貌が憎い」と言うような歌詞のある歌を歌う。似合わないけれど堂々と歌っていて、それが若干喜劇的な要素を生じさせ、かえって明るく楽しい雰囲気になって良かった。全体に暗い感じのストーリィの中の息抜きだった。

11.01.08 109シネマズ川崎
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