二銭銅貨

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魚影の群れ

2006-03-07 | 邦画
魚影の群れ  ☆☆
1983.10.29 松竹富士、カラー、横長サイズ
監督:相米慎二、脚本:田中陽造、原作:吉村昭
出演:緒形拳、夏目雅子、十朱幸代、佐藤浩市

透き通る青い空、濃くて深い海。白いしぶきの中の白い漁船。
赤い漁師、透明なテグス、光る紺のマグロ。
テグスを通した漁師とマグロの長い闘い。
揺れる船。揺れる海。
漁師も疲れている。マグロも疲れている。
漁師の気持ち、マグロの気持ち、
哀しい闘いの結末。

別の、人々のドラマと、漁師とマグロの闘いが重なり合います。

吉村昭の小説は、しっかりした取材に基づく記録文学、ドキュメンタリ
タッチの良いものが多いけれど、この映画もその性格をしっかり
引き継いで出していたようです(原作は読んでいませんが)。

トークショー付き:(赤線地帯との併映で)
澤井信一郎監督、宮島秀司(魚影の群れプロデューサー)、
ホスト:坂本礼監督

トークショーのテーマは「長回し」。澤井監督の言葉が印象的でした。若い出演者や若いスタッフなら「長回し」はうまく行くけれど、若くないスタッフや出演者では難しいという趣旨。若い人は馬力があるから長回しの取り直しにも耐えられるけれど、短いショットの撮影に集中力を高めて完成度の高い芝居を1発で演じようとする年取った出演者の場合には、長回しは不適切という事らしいです。スタッフや出演者によってショットの取り方にも適切・不適切がある、というのが興味深かった。

宮島プロデューサの話で興味深かったのは、監督には撮影したフィルムをカットすることができないという話。「魚影」は6時間のものを2時間半にしたらしいですが、編集時に撮影フィルムを短くするため、撮ったショットをカットするのですが、監督にはそれがなかなかできなかったらしいです。最後は宮島さんがカットしたとのことです。苦労した撮影仲間や俳優のことを思うとカットできないらしい。そうだろうなと思った。

魚影の群れは、総てのカットが長回し。それぞれのカットにそれぞれの工夫があって、すごいと思った。この映画の漁師とマグロの闘いの部分では、その長回しが効果的だと思いました。漁師とマグロだけでなく、見ている方もくたびれましたから。ジットリとした緊張感、それが途切れる事無く続くのですから。

06.03.05 新文芸座

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