二銭銅貨

星の数: ☆良い ☆☆すごく良い ☆☆☆激しく良い ☆☆☆☆超激しく良い ☆☆☆☆☆ありえない

黒い雨

2006-03-24 | 邦画
黒い雨  ☆☆
1989.05.13 今村プロ、林原グループ、白黒、横長サイズ
監督:今村昌平、脚本:今村昌平、石堂淑朗、原作:井伏鱒二
出演:田中好子、北村和夫、市原悦子、三木のり平、小沢昭一
   大滝秀治、殿山泰司

原爆の被害に遭った広島。
そこで二次被爆にあった人達の苦しみを描いた映画。
二次被爆とは、直接、原爆の放射線を浴びずに、
被災地に被災後に行って放射能を浴びてしまうこと。
主人公の1人は黒い雨、灰を含んだ雨を浴びて二次被爆します。

1つ1つの構図、1枚1枚の絵、1カット1カット、
しっかりできている。
バランスがいい。
表現がいい。
落ち着いていて、よどみがない。
抜けてるところも無いし、無駄もない。無理もない。
シーケンス、カット、流れが美しい。
人々の動き、心の動き、カメラの動き、構図の動き、
調和がとれて美しい。安心できる。落ち着ける。

人々の気持ちを映す構図、構図を映す人々の気持ち。
人々の心を描く映像、映像を描く人々の心。
今村昌平監督、撮影の川又昂がうまいと思った。

映画の作りとは逆に、物語は、ちっとも安心でない。
落ち着かず、重くて、苦しいです。
原爆に対する怒りが、美しい映像の背景に、
くっきりと撮影されています。

田中好子が、石を彫って地蔵のようなものを作っている
戦場帰りの若い男の話を聞くシーンは、すごいと思った。
その男の心の中を映し出すようなシーンです。

田中好子の2度目のお風呂のシーンは物語的にも動揺しますが、
別の意味でも動揺します。
06.03.21 新文芸座
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第五福竜丸

2006-03-23 | 邦画
第五福竜丸  ☆☆
1959.02.18 近代映画協会、白黒、横長サイズ
監督:新藤兼人、脚本:八木保太郎、新藤兼人
出演:宇野重吉、乙羽信子、小沢栄太郎、千田是也、清水将夫、
   稲葉義男、殿山泰司

1954年3月1日未明、ビキニ環礁での水爆実験に巻き込まれて
遭難した、遠洋漁業の漁船、第5福竜丸の実話。

記憶喪失の私たちの為に、当時の悲劇を克明に記録した、
ドキュメンタリ・タッチのドラマです。
分かり易く、しっかりと事実を記録しています。
はっきりとした構図、くっきりとしたカメラワーク、
淡々と、あった事を述べています。

被爆した第5福竜丸が悲しそうでした。

トークショー付き:(黒い雨との併映で)
ゲスト:新藤兼人監督、武重邦夫監督
ホスト:プログラムから変更

新藤監督:当時、予算が無くて大変だった話。旅館に払う金が無く、旅館側がおかず抜きの食事にしたので、しょうが無く、玉ねぎを買って来て鰹節をかけて醤油で食べたこと、ギャラを払えなくて、俳優も無一文となり、電車で来れなくて徒歩で来て1時間半遅刻をした話、船主が逃げて居なくなって船長と機関長だけが居残っている船を190万でうまく借りることができた話など。この映画の次の「裸の島」が賞を受賞して、資金が入ってきて、当時の旅館などの借金は返したそうです。貸し布団屋はつぶれていたそうですが、追っかけて行ってちゃんと返したそうです。

原爆については、当然、社会的に許せないものであるが、自分自身が広島出身なので、特に個人的に許せない、と思っていると言っていました。

武重邦夫監督は今村プロの監督さんとのことで、今村プロの話をしました。黒い雨は、今村昌平監督がその独立プロダクションを起こした時から作りたがっていた映画なのだそうです。
2006.03.21 新文芸座
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

放浪記

2006-03-22 | 成瀬映画
放浪記  ☆☆☆☆☆
1962.09.29 宝塚映画、白黒、横長サイズ
監督:成瀬巳喜男、脚本:井手俊郎 、田中澄江、原作:林芙美子
出演:高峰秀子、田中絹代、宝田明、加東大介、小林圭樹、中谷昇、
   草笛光子、伊藤雄之助

映画の冒頭、東宝マークとともに、夜汽車の音で始まります。
機関車のゴーゴーいう音。

最初に映るのが、少女の顔。
放浪する3人の家族、おかあさん、おとうさん、そして娘。
少女は、いつも本を読んでいます。
おかあさんとおとうさんは行商で、苦労しています。
九州北部一円、尾道かな?放浪の旅。

少女は海岸で、遠くを見つめています。何を思うのでしょう?
彼女の将来?彼女の未来?
まだ、何も知らない林芙美子。

晩年の林芙美子は本の執筆で疲れています。
戦後、生き急ぐかのように大量に小説を書き続ける林芙美子は、
精神も体も本当に疲労困憊です。
女学校時代から本当に頑張り続けて来ましたから。
逆境、不運、不評、めげずに頑張り続けて来ました。
負けないで、ねばり続けました。

やさしい夫の手塚緑敏は、
机に伏して眠っている林芙美子に毛布を掛けてやります。
ゆっくりお休み、
疲れたんだろ。
本当に疲れたんだろ。
眠っている彼女は何を思っているのでしょう?
何を夢見ているのでしょう?
遠い昔、海を見つめていた少女を思い浮かべているのでしょうか?

花のいのちはみじかくて苦しきことのみ多かりき

06.03.17 パルテノン多摩、05.11.xx レンタルVTR、05.10.30 NFC、03.xx.xx レンタルVTR(2度見た)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

青春の門

2006-03-18 | 邦画
青春の門  ☆☆
1975.02.15 東宝、カラー、横長サイズ
監督:浦山桐郎、脚本:早坂暁 、浦山桐郎、原作:五木寛之
出演:吉永小百合、仲代達矢、小林旭、田中健、大竹しのぶ、小沢昭一

いろんな人が主役っぽく出てきます。でも、本当の主役は、
炭鉱の石炭達です。

その炭鉱を舞台に仲代達矢と小林旭がにらみ合います。
静かな呼吸、ねらいを絞って、じっとりと動かず、
すばいやい動き、そうして、さしで闘います。

物語の主人公は伊吹信介です。しかし映画は、何となく、
吉永小百合に始まり吉永小百合に終わります。
「休憩」の後の後半は、ほとんど出ていないのですが。
訴えかける目のインパクトが強いです。

大竹しのぶは公募でこの映画が初出演だそうですが、
最初から芝居がうまいです。
今よりコロコロしていてとっても若いけど、芝居は今と同じよう。

田中健は大物や若手、ベテランに挟まって、大変そう。
伊吹信介みたいだ。

小沢昭一は炭鉱の地底でいい思い。
でも、サユリストの逆鱗に触れて罰が当たります。
ひとさし指を口にあてて「地底の秘密は誰にも言わない」だって。
みんな画面でしっかり見ていますけど。

トークショー付き:(「おかあさん」との併映で)
小谷承靖監督、原一男監督、ホスト:緒方明監督

小谷監督は成瀬監督の晩年の作品の助監(サード=カチンコ係)をしたことがあるという事で、成瀬監督の撮影現場の雰囲気について語りました。フィルムを無駄にしない監督で、カチンコの部分を切ってつなげばそれで映画になる、無駄な部分が無い人だったらしいです。撮影も4時5時には終わるとのこと。撮影の合間合間、スタッフが監督に配慮して、なるべく音を立てないように次の撮影の準備にかかっている現場の隅で、一人静かにシナリオのページをめくって次の撮影の構想を練っているんだそうです。

緒方監督は浦山監督に関するドキュメンタリーを作った人で浦山監督については詳しいんだそうです。浦山監督は映画の上映時間の何倍ものフィルムを使うほうで(普通、上限2.5倍なんだそうですが、それ以上に使うということ)、フィルムを使えば使うほどステータスが高いと言っていたそうです。浦山監督には実母と義理の母が居て、美しい義理の母には特別な感情を抱いていたそうです。吉永小百合と田中健の最後の場面は、実際に浦山監督が体験したことを、脚本の早坂さんが取り入れた場面なんだそうです。ビックリ。
06.03.11 新文芸座
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

おかあさん

2006-03-16 | 成瀬映画
おかあさん  ☆☆
1952.06.12 新東宝、白黒、普通サイズ
監督:成瀬巳喜男、脚本:水木洋子、原作:全国児童綴方集
出演:田中絹代、香川京子、三島雅夫、岡田英次、加東大介、
   中北千枝子

おかあさんは、みんなのために働きます。
クリーニング屋のお父さん、娘2人、
それに預かっている妹の小さい男の子。
いそがしいです。何も考えている暇が無いほど。
次から次から仕事が、トラブルがやって来ますから、
フーって息つく暇もありません。

妹の中北千枝子、
美容師の試験の練習だと言って、
上の娘の香川京子をお嫁さんの髪に結います。
打掛を着せて本当のお嫁さんにしてしまいました。
うれしそうなお嫁さん。
でも、おかあさんはちょっと淋しい気持ち、かもしれませんね。

田中絹代は健気なおかあさんになりました。
若いときから健気だったものね。
フーって息をつきます。

岡田英二に「ポパイみたいな人が好き」と言っている
クリクリの目をした香川京子はオリーブみたいだった。

はっきり覚えていないのですが、
パン屋の息子の岡田英二が本を読んで、香川京子に
「純文学の猿飛佐助だ」と言ったような気がします。
もし、そうなら、林芙美子の「絵本猿飛佐助」の事かと思いました。

途中で、バッサリ映画が終わってしまうかのような場面が
あって、びっくりします。でも、これは監督のオアソビかな?
06.03.11 新文芸座
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする