紫色のライトに照らされた巨大パネルを見上げ、
後1時間で、ジョニー・デップが目の前に現れるのを、まだ信じられずにいた。
数日前、家族の仕事の関係で舞い込んだ一枚のカード。
試写会? 違う。
それは、帝国ホテルで行われる「チャーリーとチョコレート工場」の記者会見の招待状だった。
でも、本当に代行で入れるのか?
大好きなジョニデに会えるかもしれないというのに、半信半疑で素直に喜べず。
ムービーかスチールか
会場ロビーには早めに着いた。
脚立を持ったカメラマンが、すでに列を作り始めていた。
場違いなワンピースにパンプスで来てしまい、いきなり気後れする。
どうしていいかわからず、主催スタッフに聞くと
「ムービーですか? スチールですか?」
「スチールって?」
「ムービーは動画で、スチールはカメラです。」
「カメラ…。」
「じゃあ、こっちの列です。」
この格好で脚立に上って、ムービーを操るとでも思うのだろうか。
そもそも取材に見えるか?(笑)
いざチョコレート会見
最後尾にいた女性ライターにいろいろ教えてもらい、整理券をもらって受付けた。
その瞬間、代行の招待券は、チョコレート工場へのゴールドチケットに変わった。
座席をはさんで後方がムービー、前方がスチール。
中央からやや左、ひな壇から5mくらいに場所を取った。
怪しげなサントラが流れる中、両手を広げたウィリー・ウォンカのまなざしに引き込まれそうになる。
「あまり時間ないし、よく見えなかったら、いい写真は撮れないから。」と言われていたが、
使わないつもりで持ってきていた、画素の粗いデジカメをかまえる。
ジョニデ登場
一斉にフラッシュがたかれた。
えっ、こんなに撮れたの?
マーブルはさっきの彼女より、いいカメラを持ってたよ!
どこに?
家に…。(泣)
ああ、EOS10! こんな日の為に買ったんじゃないか! (5月12日のブログ参照)
決められていた5分は、思っていたよりも長かった。ショック。
入場前のうしろめたさは吹っ飛んで、欲と使命感でいっぱいになった。
でも、こんなデジカメでは、何をどう撮ろうと同じに思えた。
まずは観察
ボーターシャツと色の合わないチェックのシャツを腰に巻き、
いつもの帽子にバックスキンの茶のジャケットは、グラビアそのもの。
まるでフィルターがかかったようにぼんやり見えて、実感が湧かない。
ヒゲとメガネが表情を隠してしまう。
いばりもせず、媚びもせず、アウトサイダーのお兄さんは中央にゆるりと座った。
正直、ジョニデはちょっと恐い。
ティム・バートン監督は、アーチストのオーラが出ていておしゃれ。
ジョニデより背が高く、5才しか違わないのに保護者のように落ち着いていた。
ジョニデが信頼するのもうなずける。
二人は芸術家の感性で結ばれているのだろう。
プロデューサーのザナック氏は、髪も顔も真っ白で動かず。
ろう人形のようで恐かった。(笑)
テンション低い記者会見
集まって来た大半は、仕事としてでしか彼らを見ていない。
人数の割に質疑応答の挙手は少ないし、たいした質問も出ない。
手をあげてみたが、司会のクロにさされなかった。(笑)
「ポルノ映画に出演するという話があるようですが…。」
「ウソじゃないです。条件もいいし…。」
戸田さんはそのまま訳した後「冗談ですよ。」とフォローしていた。
映画と関係ない事は、無理に否定せず流す。
ガセネタにさらされても、のりこんで来なきゃならないのは、辛いものがあるかも。
ジョニデは時々、指先で小刻みに脚をたたいていた。
じれったくて飽きたのだろうか。
それでも映画に関してなら、決していいかげんな答え方はしない。
静かにしゃべってあまり笑わないが、戸田さんの通訳は熱かった。
でも、どんなにこだわって説明しても
「変な役が大好きなジョニー・デップ」としか書かれなかったりする。(笑)
英語がわかる人は、直接ドッとウケていた。いいなぁ。
ジョニデはやっぱり面白い
演じるキャラにいつも引き込まれ、知った気になっていたけれど、
実は何もわかっていなかった。
普段は淡々として「I'm Johnny Depp.」と、知らない者同士から始める人なのだ。
自分に何も足さず、何も引かず、ありのままで目の前に現れたジョニデ。
腰に巻いたシャツをヒラヒラさせて、去って行くワイルドな後ろ姿は
「とにかく映画を観てくれよ!」と言っているようだった。
蓮音、入れたよ。でもEOS10の他にも、テンション下がる事あったんだ。