風が、強い日だった。
ピーコートの青年が、ビルを繋ぐブリッジから、
身を乗り出して、街道を見下ろしていた。
「まさか、死ぬつもりじゃないだろうな。」
私は、遠目に見守っていたが、
やがて青年は、足を降ろし、
いったん、向かいのビルへ行きかけた。
私は気になって、立ち去る事ができず、
青年が、今度は、こっちのビルに向かって、
歩いて来るのを見届けて、やっと安心した。
家族に、この話をしたら、
「風で、何か飛ばされたんじゃないか。」と、
あっさり言われた。
そうかもしれない。
ブリッジの上は、すごい風だった。
私も、ハンチングを押さえたくらいだ。
雇用問題で、死にそうな気分だった私は、
青年の行動に、「自殺」を連想したが、
普通は、「落とし物」か。(笑)
病んでるな、私。
ブリッジを渡って、私が行こうとしていた書店に、
目当ての本は無く、
後日、その本が売られていた別な店に、
もう一度、行った。
ドンキのように、商品が、
うずたかく積まれた、怪しい雑貨店。
レジ袋には、BOOKの文字。
でも、本以外の商品の方が多い。
死角になっているのに、万引き防止で、
店員がウロウロする事もなく、ゆっくり物色できる。
変わった物が多いので、まず、手に取ってもらう事を、
コンセプトにしているのかもしれない。
隅にある書籍コーナーで、私が、再度手にしたのは、
テレンス・リーの、
「3秒おいて、慌てなさい。」
10月18日にも書いたように、
竹山に対するアドバイスに、感動した私は、
彼に、一目置いていた。
レジの若い男子店員が、
すごく嬉しそうに、「ありがとうございました!」と言った。
久しぶりに、本が売れたからか、
元々、そういう子なのか、分からないが、
それだけで、何だか、この店が気に入った。
テレンス・リーの危機回避本は、とてもリアルだ。
最終的には、直感と、臨機応変だと言う。
本人は、「ずっと死にたいと思って生きてきた。」らしい。
「だろうな。」と思った。
傭兵に行くぐらいだから。
でも、他殺はイヤだと。
なるほど。
戦争に行くと、今度は、
「死んでたまるか!」に、なるわけだ。
きっと、テレンス・リーには、過去に、
ホンマでっか!?なトラウマが、あるんだろうけど、
震災後に来た、4000通のメール全てに、
返信したと言うのだから、すごい。
面倒見いいなぁ。
この本は、私にとって、頼もしい1冊になった。
迷走する未来
電車の中で、金の指輪をした、オシャベリな年寄りが、
向かいの席の親子に、子供の年令を尋ねた。
母親が、「2才です。」と答えると、
「72才も違う。オレぁ、74才だから。頑張れよ!!」と、
子供に向かって言った。
本当にそうだと思って、胸が熱くなった。
この子が、大人になった時、
世の中は、どうなっているのだろう。
それを見る事も無く、先に逝く者は、
「頑張れよ!!」としか、言いようがない。
明日の責任は、誰も取らない。
テレンス・リーが、パワースポットについて、触れていたので、
何となく、近所では有名な神社の境内を、待ち受け画面にし、
ピンクのお守りを、ストラップにしてみた。
気休めか、命がけか。
いなくなる
気づいたら、Rちゃんが辞めていた。
コンバースも、無くなっていた。
Rちゃんには、彼がいたが、
あの人の事も好きだったのを、私は知っている。
いつのまにか、ロッカールームの名前が、
いくつも剥がされていた。
元カノは、まだいる。
私は、まだいたい。(笑)
みんな、よく平気で、仕事を辞められるもんだ。
未来が恐くないのか?
見られてる
私が早朝、出勤する時、1階で、
「キュルキュルキュル~、ピシャッ。」と音がするので、
何だろうと思っていたが、
それが、毎回だという事に気づいた。
ダンナが死んでから、周りが気になるのだろうか。
ブーツの音を、気にして歩いても、同じだった。
正直、気持ち悪い。
ああやって、噂話のネタを探しているのかと思うと、ゾッとする。
しかも、普段は愛想良くしてるくせに。
こっちは、1人暮らしの年寄りだから、
気にかけてあげなきゃと思っていたのに、気が失せた。
未来に、会話は無い。
LINEは、スタンプだ。
しゃべりたい人は、手話か、鈴木奈々になるだろう。