桜、電車、猫。
桜、電車、猫。
私は真剣に覚えようとした。
数字は3つまでならいいが、逆から4つ言うのはむずかしい。
ハンカチと時計の間に、何かあった気がするが、いまだに思い出せない。
及川ミッチー医師の独特な滑舌は、いつにも増して、真摯だ。
アルツハイマーのテストは、私がやっても、かなりヤバイ。
そう言えば最近、むずかしい事を覚える気が、まるでない。
受け入れるしかない病の前で ただ泣くだけ
部下が、自分の名前を書いたポラロイドを渡すなんて、ありそうもないが、
「忘れないで。」を受け取ったら泣けた。
取り引き先の課長が、はげましの電話なんて、しそうもないが、
「忘れないよ。」が伝わってきて泣けた。
とり乱す主人公と一緒に、激しく泣けた。
やがて自分が入るであろう施設を見に行くのは、
大好きな小説「アルジャーノンに花束を」にもあったなぁ。
渡辺謙もすっかり、健康的なハリウッド・スターになってしまったかと思っていたが、
患う者としてのスタンスは、忘れていなかったように思う。
「脳」が笑う
祖父の弟は、食事中に倒れ、そのまま急死したが、
死ぬ直前に、笑ったような表情をしたと言う。
いつも静かで、最期まで面倒をかけずに、
ニヤリと笑って逝くなんて、粋な感じがしたが、
死因は「脳」にあったらしい。
まったく違うタイプの記憶映画「メメント」
前向性健忘症で、10分前の事さえ、覚えていられない男のサスペンス。
ストーリーが10分ごとに過去にさかのぼるので、1度観ただけではわかりにくいが、
すごく斬新で切なかった。
正常であっても 衰える自分を認めるのは辛い
「時事放談」の宮澤喜一氏は、退いてなお、インテリの風格を増し、
矢沢永吉の腹は、出ていなくてカッコイイが、
美しく老いる事は、ただでさえむずかしい。
できない事が増え、プライドがけずられていく。
頭も心も、すきまだらけになる。
「生きてさえいれば」なんて、本当に思えるだろうか。
忘れた事さえ忘れてしまえるなら、楽なのだろうか。
私は私の「メメント」をたどる
私は「記録魔」である。覚えてられなきゃ書けばいい!(笑)
自分を1番知っているのは、自分でありたい。
そしていつまでも、自分を覚えていたい。
関わった全てと共に。