年上の女が、自分より若い男を好きになったら、
常に「どこへでもお行きよ。」というスタンスで、いなければならない。
年上の女の良いところは、「色気」と「寛容」で、
つまり「大人」である事だから、それを失えば、
ただの「オバサン」になってしまう。
逃げるから追われる
新吉が、そんなに悪いだろうか。
色男だから、勝手に周りの女が、寄ってくるだけじゃないのか。
自分でも「つまらぬ男」と言っている。
私もそう思う。
でも、ただ「美しい」というだけで、目立ってしまうのだ。
菊之助のお尻のラインは、女のように色っぽかった。
強いて言えば、悪いのは「別れ方」である。
「師匠の為にならない。」だなんて、
「その男が全て」になってしまっている女に、そんな言い訳が通用するはずがない。
お久にアジサイを渡そうとした新吉に、恋愛感情は無かった気がする。
彼女が可哀想だから、優しくしていただけだろう。
でも年上の女は、近寄る全ての若い女に嫉妬する。
ヒステリックにしがみつかれたら、新吉でなくても振り払いたくなるだろう。
だから一緒に逃げる相手は、誰でもいいのだ。
お久でなくても。
放ったらかしている間に、豊志賀が死んでしまい、戻ってみれば、
このあと 女房を持てば 必ずや とり殺すから そう思え
最期のラブレターがこれでは、涙どころか冷や汗が出てしまう。
でも新吉はこの時、それなりに受けとめたんじゃないだろうか。
お久の恋心
「なぜ、そんなに綺麗なお顔なの?」
「なぜ、そんなに優しいの?」と言われても、
「冷たくした方がいいのかい?」そう聞き返すしかない。
井上真央の若さそのものが、お久の情熱と重なって、それなりに良かったが、
お久には、新吉の相手は無理だろう。
お累の愛情
助けた娘が、その男に恋してしまう…。
よくあるおとぎ話のようだが、考えてみれば、
両親を使って、泣き落としで結婚を迫るってすごいよねぇ。
慎ましいんだか、強引なんだか…。
だったら自分で言えよっ!(笑)
どうして「黒木瞳」になってしまうのか
「年上の女」と言うと、いつも主演は「黒木瞳」。
私は、彼女にそれほど魅力を感じないが、
40代で可憐に見える女優が、他にいないからだろうか。
有望視している木村多江は、イジワルな女を演ったら本当に恐いのだが、
主演としての存在感は、まだ足りないかなぁ。
瀬戸朝香は、見た目は綺麗で迫力もあるけど、しゃべると色気がない。
シンプルで品の良いホラー
場内の冷房のせいもあって、ホラーなシーンでは本当にゾクッとした。
特に最初の籠の中。(きゃ~っ、いない…。)
後はほとんど、新吉の幻想による恐怖で、
それがほど良い割合で、表現されていたと思う。
というのも、私はホラーを観たかったわけじゃないから。
満足してない人は、エンターテインメント性を求めるからでしょ。
(私は、大作でも心理が描けていなかったら、良いとは感じない。)
「怪奇現象」より「人」の方が恐いんだから…。
女が順番に出てくるのもわかりやすいし、「因縁」というのも感じられた。
新吉が最後に、大立回りをするのも、
「もう行き場が無い」というのが、すごく伝わってきた。
豊志賀が抱きかかえていた新吉の顔を見て、
「これで気がすんだ? もう逃げないよ。」
というような穏やかな表情に涙が出た。
…なのに、エンディングで浜崎あゆみの歌はないだろう。
興ざめだ…。
これが一番、寒い。