「ここが、ファスナーじゃなくて、ベルトのがいいんだよ。」
お薬手帳入れにしている多機能パースを、
私に見せながら、父が言った。
物を無くしやすい母の為に、
同じ物を使わせたいのだが、
どこの店に行っても、みつからない。
父自身も、
どうやって入手したのか、覚えていない。
ベルトボタンに、ブランドロゴが入っていた。
検索すると、ブランドサイトではなく、
メルカリに、同商品が、たくさん出品されていた。
あんなに、足で探しても無かったのに、
この市場には、こんなにあるのか!!
色や状態を見ながら、
良いのがないか、探しまくった。
正直なのはいいが、
傷の写真ばかり載せている人や、
写真の向きが悪く、シワシワなのに、
高値をつけている人もいる。
これでは、買う気がしない。
革製品は、ただでさえ擦れやすい。
ボロ過ぎる中古品を安く買っても、
すぐに、ダメになってしまうだろう。
自分で使い古したならともかく、
他人がボロくした続きを、
何で使わにゃならんのだ。
母が使うので、美品に限る。
すると、未使用新品、
高齢の母に合う、茶色の多機能パースが目に入った。
写真撮影が上手くて、綺麗なので、
商品の取り扱いも、丁寧なのではないか。
他より、やや高めだが、
美品に見合う金額設定だと思われる。
いいなぁ、これ。
私は、スマホで、何かに登録するのが嫌い。
しかし、滅多に欲しい物など言わない父が、
相談してきたのだ。
ここは、私が入手するしかあるまい。
必要事項を記入して、
いざ購入と思ったら、次の画面に進まない。
手続きは、いったん中断。
しばらくして、よく読んだら、
郵便番号に、いらぬハイフンを入れていた。
「購入する」ペチッ!!
これでよし。
その瞬間、左上に「SOLD」がついた。
メルカリは、想像していた以上に、
しっかりしたシステムだった。
期日も、明確に指示。
何かアクションした後は、
相手にメッセージを送るよう、コミュニケーションを促す。
ネット上の売買でも、事務的ではない。
購入手続きを終えた翌日の午後、
コンビニ支払いをしたら、
出品者が、その日のうちに発送してくれ、
夜には、その地域のベースに移動していた。
そして、その翌日の午前中には、
「ネコポス」で、ポストに投函されていた。
早っ!! すごっ!!
臓器移植の移送でもあるまいし。
出品者とのやり取りで、
私は、商品購入に至るいきさつまで書き、
「本当に使いたい人に使われたら、人も物も幸せですよね。」と、
喜びを語ると、
「私も、幸せな気持ちになりました。」と、
返信いただいた。
さっそく父に、購入した事や、届いた事を報告すると、
一度目は、「いくら? 何色?」で、
二度目は、「ハイハイ。」だけだった。
どうやら、初の取り引きで、コーフンしているのは私だけで、
小さな親孝行は、自己満足だったようだ。(笑)
買うより、売る方が難しそうだが、
フリマって、正しくやれば楽しい。
メルカリって、面白い。