今日は東京で「狩野川薪能」の申合を行いました。
子方の二人は緊張していたようで、謡も型もちょっと小さくなってしまったようでしたが、まあ今日で様子が分かっただろうから、本番に向けてまたよい経験になったことだろうと思います。
それにしても『一角仙人』の龍神の役は大変だ。今日は岩屋の作物が上演中に崩壊しかける、という事故が発生してしまいました。もともと作物はそれほど精密に出来ているわけでもなく、二つの岩が微妙なバランスで寄り添っているものなので、何かの拍子でそのバランスが崩れると、龍神の登場前にこういう事故が起こることも考えられます。今日は申合なのでよかったけれど、これが本番で起こってしまったら。。お客さんから失笑が漏れてしまいますね。しかも今回の『一角仙人』は野外での上演。突風だって起こるかもしれません。
そこで今日、申合が終わったところで龍神役の二人の子方には「当日は作物を自分たちでも内側で支えていて」と指示を出しておきました。「最後には自分の身は自分で守るんだよ」とまで言い添えて。と言うことは、龍神は作物の後ろで身を隠していながら、同時に作物を片手で支えている。さらにもう片手には剣をずっと携えていて、さて岩を割る直前に作物を支えている片手をパッと離し、瞬間的に剣をおっとり、岩が割れる瞬間にガバッと立ち上がって、すぐに舞働を舞い、そしてシテと格闘、最後は二人だけで舞台を締めくくる、というわけか。。こりゃ本当に大変な役だ。観世流がこの役を大人のツレとして勤めるようにした理由も、これなら納得がいきます。
それにしても。。今回の子方二人は、とても能の舞台に初めて登場するとはとても思えないぐらいの完成度を見せています。これぐらいの新たな要求にもきちんと応えられるだろう。我ながらよくまあ あそこまで指導できたものだとも思うけれども、また一方 囃子を聞きながら謡う、とか舞働を舞わせるとか、キリはシテがいない状態で二人だけで舞わせるとか、よ~~く考えると、アマチュアの小学生相手にずいぶん ぬえも無茶な要求をしたものだ。(^◇^;) ま、結果的にはできたんだから文句はありませぬが。
それと、小学6年生ともなると、やっぱり子方としてはかなり大柄ですね。結局振り袖の子方用の厚板には寸法が合うものがなく、これと法被は大人用の装束を流用する事になりました。半切はなんとか子方用を使いましたが、これは大人用のものを穿いてしまうと、もう作物の中に二人が収まることが不可能になってしまうからです。作物の後ろで、満員電車のように窮屈な状態で出番まで待ち続けるのはつらいでしょう。。しかも真夏の野外の舞台が会場だし。
今日の申合では子方二人には装束を着付けて勤めさせたのですが、終わってみると汗だらけで青い顔をしています。あちこちを紐で縛られて装束が着いていて、そのうえ今日の暑さ。でも本番はもっともっと暑いのです。このあたりの様子も今日はよくわかったでしょう。本番まであと3日。あさっての前日には ぬえは伊豆の国市に入って公演準備に取りかかり、子どもたちに最後の指導をして当日に臨みます。
あ~~神様、彼らがこれまでの稽古の成果を十分に出すことができ、薪能が成功しますように~~
タイトルの画像は、やっと仕上がった ぬえ作の「剣」。もうちょっと品よく作りたかったけれど、まあまあよく出来た部類に入るでしょう。しかしこれまた数ヶ月を費やして苦労して作り上げました~