ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

ビーバーーダム

2025-03-05 09:15:19 | 社会・政治・一般

この記事読んで微笑ましいと感じる感性は分かる。

しかし、報道として評価するとあまりに浅い。ただ単に翻訳して転載しただけの駄文である。

実はビーバーは自然界屈指の環境破壊獣である。木を齧って倒し、川にダムを作ってそのダムの中で巣作りをする。それはビーバーが長年やっていた本能に基づく行為である。しかし、ビーバーを狩る獣がいないと、森は枯れて荒野と化す。ビーバーの伐採能力は人間の建築重機並みである。しかも家族で昼夜兼行で行うから凄まじい。

ビーバーはげっ歯類であり、その繁殖力は高く、それ故にダムも至る所に作り出す。その結果生態系が崩壊して荒地となり、ビーバーの作ったダムのせいで土砂崩れが起きて他の生物の生息域を損ない、最終的に生物が棲めなくなる枯れ地と化す。これはアメリカで実際に起きたことだ。

ビーバーを捕食する狼やコヨーテが十分居れば、ビーバーもそうそうダムを作れないから森の枯れ地化は起きない。アメリカでは牧場の牛や羊を食べる狼やコヨーテを絶滅させたことからビーバーが大量に繁殖し、川にダムを無制限に作り、結果的に森を枯らし、他の生物を追いやり、荒れ地となった。

止む無くアメリカではカナダから狼の群れを移殖させてようやく緑豊かな森と綺麗な川を復活させた。ただし牧場の牛や羊の犠牲もあったし、狼に襲われたと思われる殺人事件さえ生じてしまった。だから今でも狼の駆逐は議論の的である。今のところ頭数制限して狼を駆除しているらしいが、ビーバーもしぶとく繁殖しているので狼は欠かせないのが実情だ。

単なる観光資源として緑豊かな森と綺麗な河川は望ましいものだが、それ以上に人間が使う飲料水や農業用水の供給源でもある。森から流れ出るミネラルなどが河川に流れ込み、魚や貝、プランクトンなどを育み、それは海に流れ出でて豊かな漁場を作り出す。

人間だけが自然破壊をする訳ではなく、無制限に増えたビーバーなども人間並みに環境破壊をやってのける。自然界は微妙なバランスの元に成り立っている。そのおとに触れずに、可愛いビーバーちゃんがダムを作ってくれて助かったよ、なんて記事を垂れ流すマスコミの幼稚さが不愉快です。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする