スパイ小説の紙価を高めたといって良いのがイギリスのF・フォーサイスであろう。
なんといっても「ジャッカルの日」は傑作であった。映画化もされて大ヒットしたことで原作を読んだ人も多いと思う。ただし駄作も少なくないが、それでも「オデッサ・ファイル」「戦争の犬たち」は傑作だと思っている。
そんなフォーサイスの自伝が表題の作品だ。率直に言って下手なスパイ小説よりも面白い。挫折多き半生だと思うが、その多彩な経験が後の小説家としての資質に大きく寄与していると分かる。
ただし、この自伝は注意して読まないといけないと思う。おそらく情報提供者を守るため、あるいは守秘義務に関わる部分があるため、けっこう空白の部分があることが読み取れる。私、けっこう意地になって調べたりしましたが、無理ない気もします。
特にナチスの追跡や、アフリカのビアフラ戦争に関わる部分は書けないのだと思う。それだけフォーサイスが危険な場所、人物などと関わっていた証左でもある。同時にフォーサイスの作品にむらがある原因も分かったような気がした。
面白いアイディアがあったとしても、それがこれまでの彼の人生で知り合った人に迷惑となりそうになると、そこを誤魔化さざる得なくなり、結果的にツマラナイ作品になってしまったのだろうと思う。実際、フォーサイスは諜報活動に関わることがあったようだし、かなり危ない目にも遭遇している。
その経験を活かして小説を書くにしても、どうしても書いてはいけないことも多々あったのだろう。この自伝を読むとフォーサイス自身は自らの基礎をジャーナリストであるとし、小説家を余技としているように思えてならない。
多分、これこそスパイ小説家としてのフォーサイスの美点であり、かつ限界なのだと思います。
んで……ヌマンタ様の解説で、しっくりくる事多い。
まだら…というか出来にムラがおるんですよね。
ジャッカル、傭兵、オデッサファイルは確実に名作!
で、諜報員としても報道人としても、ソースを明かしたり
危険にさらす事はタブー。そこで書けないと。
同じ諜報活動出身にイアン・フレミングがいますが、彼の007は通俗エンタメに徹している事と、騎士道物語ののうな古めかしい酒(冒険譚)を、スパイという新しい容器に注いだものなので、リアリズムを基調とするフォーサイスとは別物でいられたのだろうなと。
フォーサイス、ご存命だったんだ😳と驚いてます。「ジャッカルの日」などヌマンタさんが挙げてたのは名作ですが、いろいろ駄作も引き当てて何度泣いた😭ことか…
この自伝は面白そうなので、図書館にリクエストしておきます。