読むタイミングを間違えた。
そう思わざるを得なかったのが表題の作品だ。ホラー小説の大家であるクーンツが、冒険小説の大家であるマクリーンに捧げたオマージュである。
このような作品は冬に読むのが相応しい。暖かい部屋や炬燵に入っての読書では物足りない。火鉢でもコンロでも良いが、小さな暖房器具で寒さを耐えしのぎながら読めば、この作品の真価が分かる。
私がアリステア・マクリーンの「女王陛下のユリシーズ号」を読んだ時がそうだった。お喋りで賑やかな母や妹たちが炬燵に入って談笑しているのをしり目に、私は台所の片隅でちゃんちゃんこを着込んで読むのに夢中であった。
暖房はお鍋用に座卓の上に置くコンロを足元に置いて、無理やり暖房器具として使っていた。やはり足元から冷えが上がってくるのが一番辛い。それでも作品中、冷たい強風と冷酷な敵の包囲に追われるユリシーズ号の船員たちの辛さには遠く及ぶまい。
これがマクリーンの最高傑作との出会いであった。だからこそ、この作品は寒さの中で読むべき作品だった。
クーンツといえばホラー小説の大家であり、エンターテイメント作品の名人でもある。唯一欠点はその映像化作品が揃いもそろって良くてB級、大半がC級映画であることだ。そのせいか、我が国での認知度は低い。実に残念でならない。
駄作の少ない作家でもあるので、是非とも一度は読んで欲しい作家なのです。
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