今日も穏やか春の日が暖かく、入笠が来いと呼んでいる。もう、座頭沢の日陰に残っていた雪は融けただろうか。まだ吹く風は冷たいだろうか。前回行ったときは、入笠山の西側の斜面には早くも鹿が出ていたが、その後はどうなっているかと気になる。
そんなことを書いているうちに、ついふらふらと入笠に出かけてしまった。 山へ行くと、ここにいるよりも人に会う。赤坂口で食料を調達に行くという山奥と偶然に出会い、上ではマナスル山荘に昼飯に立ち寄り、山荘の主人や家族、居合わせたお客さんなどと無駄口をたたいてきた。そして帰り、種平小屋(たねへいごや)にも顔を出し、眺めのよい縁側に腰をおろしながら、お互いの近況などを話したり聞いたりして今戻ってきたところだ。
高遠の桜は、まだほんのわずかだが咲き始めていた。今日のような陽気が続けば、来週の半ばから花見ができるようになるだろう。他所の桜よりも花の色の濃さが喜ばれているようだが、その枝の向こうに、まだしっかりと残雪を付けた中央アルプスの山並みの見えるのが、今年もまた花のよい引き立て役になってくれるはずだ。
それにしても、ここを訪れるたくさんの花見客の中で、どれほどの人たちがこの城の歴史についても、興味を持ってくれているだろうか。「天下一」と誰が言ったかは知らないが、ただ花を眺めて帰るだけなら、わざわざ遠くから来るほどの花かと思えなくもない。やはり、信州の山深い里に残る古城の話のひとつふたつ、知ってから来てもらえたら、花だけでなく、この土地への愛着はさらに増すだろうに。
明日も入笠を話題にするつもりです。種平小屋にもクリックしてみてください。