客人あり。我が家で夕食をともにした。飲んだ。いい気持ちになっている。客人は帰った。風呂に入った。眠くなった。眠る。いい一日だった。このまますういと消えてもいい。
蚊に襲撃された。１１月というのにいるわいるわ。明日が雨だからだろう。僕は午前中も午後も農作業をした。蚊取り線香を焚かないで横着をした。顔の前、目の前を蚊が右往左往するので、ぱちんぱちんと手を打って厄介だった。
秋野菜の蒔き直しをした。今年はなかなか成長しない。虫に喰われるし病気にはなるし、成長が途中でぴたっと止まってしまったので、目の前の貧弱な野菜を次々抜いてしまって、もう一度初めからやり直すことにした。幸い、種はうんと余っていた。さて、この時機、うまく発芽をしてくれるやら。発芽しても霜の害にやられてしまうかもしれない。
お昼、食事の後で農協上峰支所まで玉葱苗を買いに行ったのだが、張り紙がしてあって、そこには「今年は天候不順のため玉葱苗の出荷が遅れています」と書いてあった。昨年、当地は土の中の病虫害のために玉葱の収穫がほとんどできなかった。今年もそうなるかもしれない。そうなれば玉葱の価格がうんと跳ね上がるだろう。どの客も玉葱苗を買いに来たのに買えずに戻って行くようだった。
ま、しかし、当方はどのみち遊びである。幼児の泥遊びに等しい。だから、切羽詰まってはいない。玉葱が育てられないのなら、花苗で代替してもいいのである。花作りも楽しいに違いない。
日曜。朝。７時を過ぎた。やおら起き出した。室内の気温１６度。布団の中があたたかい。しかし、そうとばかり言ってはおられない。今日は午前中釈信慧居士（生前の弟）の長女（東京在住）がその３歳の赤ん坊（女の子）を連れて我が家へやって来る。紅葉の仁比山神社にお詣りに行ってその帰りに立ち寄るらしい。晴れ着を見せてくれる。で、どうお接待をしたらよかろう。お茶を出して梨を剥いて、それから？ 晴れ着だから、芋掘り体験は無理。この頃よく来る三毛猫チビと遊ばせるか。晴れ着に毛がついてしまいそう。玩具はあるか。ない。仏壇の弟のお父さんお母さんに可愛い曾孫を見せてよろこばせるだけでいいか。それでよしとしよう。昨日の客人の土産の蓬団子がまだワンパック残っていたぞ。餡子がたくさんついていた。これだったら飛びつくかも知れない。帰りに畑の大根と根深葱を抜いて持たせよう。掘ったばかりのサツマイモもある。これもよさそう。小菊もある。これは弟の仏壇に飾ってもらおう。
我が家の畑に育った九条葱の初物をいただいた。うまいうまいを連発した。おそるおそるスコップで掘り上げて。茄子といっしょに油炒めのソテーにして。白葱がやわらかくて。甘くて上品で。われは満足満足。客人があったので掘り上げて差し上げ、その残りを我が家でも賞味した。まだまだ成長が見込まれるものを惜しげもなく。これがいいのだ。ほろほろとしてほろほろとして。
大分県中津市八面山神護寺は山寺。ここの大岩に彫り刻まれた釈迦如来の涅槃像を見て参りました。わたしごときのためにこの世の涅槃寂静をお見せになってくださいました。この世は涅槃しているということ、この世にあってものみな寂静しているということをみずからの死、みずからの入涅槃の姿でもってお示しくださったのでありました。この世はかように安らぎの世でありました。寝るおん身の像は7.8m。なんじ安穏なれのお声を耳にしたようでありました。周りに仏陀に侍る11体のお弟子衆の像も彫られてありました。
ブッダンサラナンガッチャーミー。佛に帰依したてまつる。佛がわたしに帰依したてまつるを見るがゆへに。平伏して帰依したてまつるがゆへに。あらかたじけなや。ダンマンサラナンガッチャーミー。佛が法を授けたまふがゆへに。わたしに法を授けたまふがゆへに。法灯明す。サンガンサラナンガッチャーミー。わたしを佛としたまふがゆへに。自灯明す。佛と佛と相照らし合ふ。今夜は佛の月と月に照らされるわたしとふたり。法華経は授記経。佛がわたしを佛にしてくださる教えの法華経をそのまま信じそのままよろこんで。
へえへえ。見させてもらいましたよ。あれもこれも。見よというて下さるものはこの目でたっぷりと。もうようございます。旅の土産はできました。そちらへ参りましたらお話が申し上げられます。山に上がる月も海に落ちる日も。わたしを明るくするためでございました。草を吹く風も。三百六十五日、わたしを涼しくすがしくするためでございました。わたしは見たのでございます。見よと仰せられたものは見たのでございます。この世を見たのでございます。美しくして見たのでございます。
へ。寝てばかり。喰うでばかり。怠けてばかり。それでもこの男の上には月が出ている。明るい月が出ている。半輪ではあるが、それでいい。あとの半輪はへそくり半輪である。こころにしまって赫かす。それを覚えてこの男はなおさらに寝てばかり。喰うてばかり。怠けてばかり。ほっついてばかり。
