早い遅いの違いだよなあ。みんなここを離れて行く。見えないところへ旅立って行く。見送った者もやがて見送られることになる。死んでしまうまではこちらにいる。死んでしまうとこちらにはいなくなる。フランスからドイツへ入る。国境を越えるその一瞬だけ、人は死を体験することになる。でも、死は出国・入国の手続きだけですんでしまうだろう。一瞬のことだ。そこから先はまた新しい国での新しい旅になる。早く旅立っていった者がしばらく休憩していると、遅れていた者が合流する。そういうこともあるかもしれない。死ぬまでは不安だ。寂しい。悲しい。そして苦しい。辛い。それが極点にまで高まる。するうちにそれが瓦解する。ほどける。熔ける。沸点になって軽く軽くなり大空へ舞い上がる。そこからはもう不安はない。楽になる。浮き上がる。