美しいメルセー教会の屋上には日本のお寺の鐘同様紐までついている鐘があり、引っ張るとゴーンと懐かしい音が響く。四方の眺めは最高!コロン公園、カテドラル、ニカラグア湖、筆者の好きな中南米独特のオレンジ色のスレート瓦のその古さと情緒にうっとりする。夏の中米の教会の屋上で鐘楼の下に一人佇む中年?の女、映画のシーンみたいでしょ。誕生日に外国で「除夜?の鐘」を撞く嬉しさ。吹き抜ける風の心地よさ。
夜は公園脇のレストランで魚のバター焼き。公園では世界詩人会議が開かれ世界各地からの代表が次々挨拶している。韓国代表の詩人の挨拶を聞きながら夕食を始めた時なんとマリアッチがやってきた。2、3のテーブルで断られ私の席に来た。勿論頼んだ。誕生日ですもの。彼らはニコニコして「ベッサメムーチョがいいでしょ?」と勝手に決め、演奏してくれた。手元に3ドルしかなかったがとても喜んで代表が「日本人大好き!」と言ってハグしてくれた。私が皮切りになり、次々とお呼びがかかり、彼らはハッピー、マリアッチの音楽で誕生日の夕食が盛り上がった筆者もハッピーだった。素晴らしきかな、ニカラグアの誕生日。
レオン市までまたマスクして得意の長距離バスに乗った。右手にモモトンボ山を見ながら。安宿に泊まり足が棒になるほど歩き回った。先に述べたルベン・ダリオの家、レコレクシオン教会、カルバリオ教会、ソモサ将軍の撃たれた家、革命に命を捧げた若者の写真が並ぶ英雄記念館、サンディニスタ民族解放戦線の事務所等を訪れ、ウナン・レオン大学を訪問して暫し大学生との会話を楽しんだ。革新的と言われるこの町だが、中米最大のカテドラルに心を奪われた。内部にはキリストが処刑され十字架から下ろされるまでの絵画が何枚も、魂を奪うようなタッチで描かれキャプション付きで展示されている。夕方の5時だった。キリストのドラマに心を吸い取られて座っていた時ミサの鐘が鳴り、司教の説教が教会内に響き渡った。次の説教も次の説教も波紋のようにこだましていく。人生観が変わるほど心に響いた。この感動は英国のヨークミンスター以来だった。「以後は清廉潔白に生き、正義を忘れないぞ!余生は平和に身を捧げるぞ!」と青年のように誓い、燃える心で立ち上がったのだった。(彩の渦輪)