あけぼの

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自転車物語 スリーキングダム:王国の栄枯盛衰 角田安正著

2015-01-08 10:50:06 | 旅行記、多文化教育、国際

今日本でも世界の国々でも自転車の見直しが始まっている。エコ対策に、健康対策に。筆者夫婦も元旦の谷保天神初詣でには今年は自転車で行き、その勢いで正月、自転車物語を読んだ。この自転車物語の著者角田氏は、母校、鳥取県立米子東高校の数年後輩だが、なんと高校入学時の担任、国語と漢文を教わった恩師、角田先生のご高弟だった。角田先生は理路整然と講義をする眉目秀麗な女性でその後弁護士になられたが、安正氏の文体も簡潔(過ぎるぐらい)だ。200年にわたる自転車の歴史を調べ、自転車と人、経済、社会、国家との関わりが小説仕立てで書かれている大作だ。歴史書の好きな人も論文を読み慣れた人をも満足させるだろう。安全、安価、高性能の自転車製作に命をかけた知られざる男たちの物語は読者の心を引き込む。明治時代、長野県自転車小売組合浦里志部長の「憤激の拳銃自殺未遂事件」など、余韻が残る史実が続く。興味深々の小見出しは「世界最古の自転車を作った江戸の日本人」、「国産一号を『自転車』と名付けた名付け親」、「だるま自転車を愛用した最後の将軍」、「いまも語り継がれる伝説のレーサー」、「自転車恋愛で結ばれた人気役者と美妓」等々。国産ビッグスリー(宮田栄助/宮田製作所、岡本松造/岡本ノーリツ、岡崎久次郎/大日本自転車)の興亡ストーリーは一気読了疑いなし。(彩の渦輪)