【平成30酒造年度全国新酒鑑評会 金賞銘柄一覧(仙台国税局)】
〈宮城〉 宮寒梅/寒梅酒造
ご先祖様は真剣にお酒と遊んだ人でした。
私たちのお酒が生まれたのは、大正7年(1918年)。およそ百年前のことです。
地主だった創業者の岩﨑碩次郎が、地域の米をよりすぐり美味しい清酒をこしらえたのが、
今にちの事業の始まりでした。碩次郎は、遊びごころを大切にしてお酒をつくったと伝わっています。
お酒づくりはひとつひとつの工程が地道で、ともすると職人のこころも厳めしくなりがちですが、
それでも私たちは楽しくつくろうと思っています。真剣に、情熱的に、勤勉に、でも楽しく。
ほがらかな明るい気持ちがお酒の味にもきっと伝わると思います。
春はまず梅の小枝に目覚めます。冬の季語「寒梅」は、その実、一足早く人々に舞い込む 春の報せだと思うのです。 宮寒梅とはどんなお酒かと聞かれることがあります。 そんなとき、私たちは昔から決まって「一杯で旨いお酒」だとお答えしてきました。 たった一杯でたっぷり贅沢したような、明るい気持ちになれるお酒です、と。 この「明るい気持ち」をぜひ大事に思ってこれからもお酒づくりにいそしみたい。 おこがましくも、春を告げる寒梅にあやかり、ぽかぽかと幸せな人々のこころを、 お酒を通じてこしらえたいと願っています。
1.家族で小さくお酒をつくっています。
宮寒梅をつくる私たち寒梅酒造は、創業した百年前から家族で営むこじんまりとした蔵元でした。仕込み蔵は今も変わらずとても小さく、ですが、少ない人手でこまごまと目を配るにはちょうどいい程度です。2018年、親から子へと晴れて代がわりが果たされます。こんな風に銘は連綿と受け継がれ、その度に味わいがこつこつと深まってきた。大仰に申し上げれば、大切な家宝のようなお酒です。酒蔵の隣にはささやかな家宅があり、庭先で4人の幼子がいつもはしゃぎまわっています。とびきりの宮寒梅を、いつの日か次の代へと胸を張って譲り渡したいものです。
2.自社田で、ほしい米を仕込んでいます。
同じお酒にもその年ごとに出来の違いがあるのには、ひとつには米のしわざと言ってよいかと思います。手の掛け方で、あるいは気候や土壌で、米の機嫌はころりとひっくり返るので、自然は気難しいものです。いい味のお酒をつくりたいと思っています。そのために必要な理想の米があります。私たちは自らの手で稲の世話をあれこれと焼き、米をよく学び、米をよく整え、そうして思い描くお酒の旨さに近づきたいと切に願っています。うまくいかない年もあります。でも、うまくいく年が増えてきました。
お米についてもっと詳しく
私たちのお酒づくりは、つくしがのぞく春の手前に酒蔵の表で始まります。 稲の種もみを土に播きつけ、いい苗床を養うことから。日本酒とは、米の果実酒です。 美味しいお酒はつまるところ、美味しい田の実の輝かしい生まれ変わりに他なりません。 私たちは、自社田で米を育てています。 秋も暮れを迎える頃、寒梅酒造の小さな蔵は、ゆれる金の稲穂の真ん中にあります。
1.自社栽培米を使用しています。
酒蔵の前には、先祖伝来の田んぼがのそりと横たわっています。天から授かった土と水は、私たちのひそかな誉れ。寒梅酒造のお酒は、その2割に自社田育ちの酒米を使用しています。酒づくりは米づくりからと、創業時より伝えられてきました。米を知り、そうして酒を知るとも。稲作に労をかけ、米というこの不思議な穀物について理解を積み上げてゆくのが、この蔵元の昔からのよき習わしのように思います。今年も良米に恵まれますよう。
2.4種類の酒米を育てています。
私たちの田んぼでは「美山錦」「愛国」「ひより」「山田錦」の4種類の酒米を手がけています。ずいぶん多いと思います。「山田錦」は酒米の雄として、広くその名が知られるようになりましたが、もちろん実際の味わいは、品種ごとにそれぞれ個別の美質があります。米の個性を丹念に研究して、さまざまな品種の深いところを、ひとつひとつ日本酒にうつしかえられたらと願っています。
3.自社米のほかは、すべて宮城県産の米です。
蔵元はいずこも地元に愛着があるものです。その土地の水や空気が日本一とまっすぐ信じて日本酒をつくっています。私たちもまた宮城を深く愛しています。多少の身びいき込みとはいえ、水や空気のみならず宮城の大地が生む酒米の豊かなポテンシャルに惚れ、宮城県産の米にこだわって日々醸造しています。かつて震災で蔵が崩れた私たちは、地元の慮りに存分に助けられました。微力ではありますが、今度はそんな地元を支え、盛り上げてゆく一助になりたいと考えています。
3.日本酒から近い人へ。日本酒から遠い人へ。
この頃のことかと思います。日本酒の印象が少しずつ変わってきたように感じています。より気軽で、よりモダンで、よりこころ楽しいものへと、少しずつ。率直に申し上げると、私たちは日本酒が向かいつつある新しい世界に賛成です。日本酒の好きな方々に宮寒梅をお届けしたい、それと同じくらいの思いの熱さで、日本酒から御縁の遠い方々にも気軽にお楽しみいただきたいと願っています。酒通が口にして味わい深く、また初めての方がのんでもすぐに美味しく。どちらもやっぱり私たちの目指す宮寒梅です。
4.宮城に、日本に、世界に、ありがとう。
宮寒梅は、東北は宮城県、その北西に位置する水のよく澄む大崎市のお酒です。地元を愛し、ありがたくも地元に愛され、近隣の営みの奥へ奥へとしみこむように、脈々と飲み継がれて今にちに至ります。望外なことに近年、県の境を遠く越え、全国各地に愛飲してくださる方が増えています。さらにアメリカやイギリスなどの諸外国からも扱いのご相談をいただくようになりました。私たちのような小さな蔵元には、身にあまる喜びです。そして同時に、身の引き締まる気持ちです。ありがとうございます。私たちは精進せねばなりません。
*http://abesake.com/column/article/20190618114455.php より
合名会社 寒梅酒造 宮城県大崎市古川柏崎字境田15
ブランド一覧
「宮寒梅」純米吟醸・純米大吟醸・純米大吟醸 贅撰・純米吟醸 おりがらみ など
「鶯咲」寸鉄・特別純米酒
酒米「ひより」
宮城県北東部に位置する石巻市は北上川の河口に位置するので、古くから仙台藩の米の積出港として知られています。そんな石巻市にはオリジナルの酒造好適米が存在します。
それが「ひより」です。
ひよりは、大吟醸専用の酒米として農家の方々が知恵と技術を結集させて完成した品種で、山田錦とササシグレの交配種であり、石巻市を中心に生産されている酒米です。平成16年に宮城県の酒造好適米として認可されて以降、需要が高まっています。*「日本酒のすすめ」HP より
宮城県岩沼市で、たった一人で米の品種改良を手がける平塚静隆氏。農業試験場のような設備や資金とも無縁の研究を続ける平塚氏が生み出した「ひより」。
平塚氏が酒米作りに取り組み始めたのは、今から20年ほど前だ。ササニシキの栽培圃場での突然変異株の発見がきっかけである。*記事がかかれたのが2005年03月01日
研究の一方、平塚氏は酒米にふさわしい性質をもった品種改良に取り組んだ。とは言え、農業試験場のような設備などはない。品種改良は独学で培った知識をもとにした手探り状態での挑戦であった。
平塚氏が目を付けたのは、父の代から自宅で細々と栽培を続けてきたササシグレだった。ササシグレはササニシキの父親に当たる品種である。味はよいがイモチ病に弱いため、現在ではほとんど栽培されていない。そのササシグレに、酒米としての素質があるのではないかと考えた。
「ササシグレは食味がよいだけでなく、コシヒカリと違って冷めてもふっくらしていておいしいコメです。しかも、タンパク質が少なく、わずかながら心白が入るという酒米としての特性も持ち合わせている。また、宮城の生んだこの優れた品種をなんとか残したいという気持ちもありました」
平塚氏は、父親をササシグレに、母親を酒米として有名な山田錦にして、両者をかけ合わせた。山田錦のような優れた酒米としての特性を持ちつつ、東北の気候に合わせて8月25日頃までに穂が出るものを作るのが目標だった。
所有する圃場90aのうち、1aを品種栽培用に充て、そこで出来たササシグレと山田錦を自宅のビニールハウスで受粉させるという地道な作業を続けた。
そして99年。9年がかりで、ついに新品種の開発に成功する。平塚氏はこの新品種をひよりと名付けた。穏やかな日よりのように笑顔の美しい女性という思いを込めた。
*https://agri-biz.jp/item/detail/2963 より
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