「京仏具」
Description / 特徴・産地
京仏具とは?
京仏具(きょうぶつぐ)は、京都府で作られている仏壇や仏具です。昔から仏教の中心地として栄えてきた京都では大小さまざまな宗派の寺院が存在しており、必然的に法要などに使用する仏具の需要が大きく、現在も全国の寺院の80%もの仏具が生産されています。
京仏具の特徴は、長い伝統により磨かれた品質や技術です。仏具は宗派によって様式が異なるために大量に生産することは出来ません。そのため、木工、彫刻、金工、漆芸などのあらゆる専門家の技術を集めて、各宗派に合わせた仏具を需要ごとに制作してきました。
高められた技術を駆使した京仏具は各時代の最高級品で、多くの国宝や文化財にその優れた品質が残されています。現在も京仏具の多くの工程は手作業で分業して行われ、それぞれの専門の職人が伝統技術と経験を活かした製作を続けています。
History / 歴史
仏具の歴史は6世紀の仏教の伝来とともに始まったと考えられますが、京都の仏具の歴史は794年に平安京に都が移された8世紀ごろからと推定されています。仏教の中心地でもある京都には各宗派の総本山が集まり、それぞれの宗派のための特別な仏具の技術や伝統が発展していきました。
平安時代中期には仏師の定朝(じょうちょう)が京都七条(しちじょう)に「仏所(ぶっしょ)」(仏師の工房)を設けました(七条仏所)。定朝やその一族、子弟などの仏工(ぶっこう)が集まって仏像の彫刻にはげみ、11世紀の初めごろからは本格的に京仏具が生産されたと言われています。
主に武士階級向けの仏具を生産していましたが、江戸時代の徳川幕府はキリシタンを禁制するための寺請制度(てらうけせいど)を設けたため、人々は寺院にキリシタンでないことを証明してもらって檀家となり、家庭には仏壇を置くようになりました。以降、京仏具の家庭用として仏壇の製作が本格的に始まりました。
*https://kogeijapan.com/locale/ja_JP/kyobutsugu/ より
明日につなげる伝統の技・京仏具
芸術品としても高く評価される京仏具。その荘厳な美しさは細分化された工程をそれぞれ担当する専門職人の技の結晶ともいえる。厳しい修行を経てきた職人と明日の職人を目指す若者たち。京仏具の伝統は確実に受け継がれていた。
高級仏具をつくる多岐な分業体制
各宗派百以上の総本山、三千数百もの寺院があり、国宝や文化財も数多くある京都。ここでは仏具は全国の約8割を生産し、その繊細かつ荘厳な技は、国内はもとより海外でも芸術品として高く評価されている。その品質を底支えするのは、多岐にわたる分業体制。細分化された工程を、それぞれの専門職人が担当するため、パーツの一つ一つに真剣な匠の技が施されるのだ。
安心できる京都の仕事
京都山科で仏像彫刻の工房を持つ須藤光昭さんも「京都の仕事は、ほんま安心できます」と胸を張る。「うちで仏像つくるときも、漆塗ってもろたり(=もらったり)金箔張ってもろたり、専門の職人さんとこでやってもらいますが、安心して任せられます。」さらに、京都では仏壇仏具の修理を頼むのも安心だ。「例えば、クスの木でできた仏さんに傷んでいるところがあれば、クスの木を継ぎ足して補修します。」あくまで、もとのお姿に戻す。それが京都の職人の修理の流儀だ。
京仏具職人の心意気
これだけ心をこめて丁寧に仕事するのは、何より注文してくれた方に喜んでいただきたいから。須藤さんは、「仏さんはありがたいもんですから、皆さんほんまに喜んでくださる。それに恥じないようにしっかりとした仕事をせなあかん、と思います。」須藤さんが心がけているのは「昔からのやり方をきちっとする」ということ。仏像を創作するときも、流行だけに流されない。昔からの優れたものを本や図版で十分勉強しなければならない。奥が深い仕事だ。それだけに仏壇仏具を買おうとしている人には「上辺だけの仕事を見ないでほしい」と願う。「われわれ、さすが京都やな、と思っていただけるようにやってるんですから。」「京都の仏壇仏具は値段が高いと言われますが、仕事の中身をよう見ていただけたら、かえって安いと思っていただけると思います。予算があるなら言うてもろたら、その範囲の精一杯をさせてもらう、それが京都です。」
父のあとを追う息子たち
ところで、工房では2人の息子さんを含めた男性3名、女性4名のお弟子さんたちが住み込みで修行に励んでいる。修行を始めて4年という須藤さんのご長男は、「ちっちゃい時からお父さんを見てたし、自然とこの仕事やるもんやと思うようになっていた」と言う。今、息子さんたちが目指すのは、やはり父のような腕のある職人だ。「ともかく親に追いつかな、と思います。」
いつか一人前に・・・ひたむきに彫り続ける
「今は一つずつの仕事を大事にするしかない」
高校卒業後、京都伝統工芸専門学校で仏壇・仏具工芸を学び、弟子入りしたという方は、「学校で学んだことを中途半端にしたくなくて、弟子入りの道を選びました。今は修行が始まったばかりで、与えられたことをこなしていくだけで精一杯だけど、頑張ってやっていきたい」と話してくれた。「いつになったら一人前になれるかなんて全然わかりません。とにかく一つずつの仕事を大事にやっていくだけです。」親方の須藤さんは「10年で、基本をようやくひととおり教えてもらったというところ。一人前になるにはもっとかかるでしょう。」やはり職人への道は遠い。須藤さんは修行中に釣りざおを買っただけで、ひどく叱られたそうだ。「そんなお金や時間があるなら仕事の勉強に使え、ということです。」
喜んでもらえる仕事、ごまかしのない仕事を
今はそれほど厳しくないが、須藤さんのお弟子さんたちも昼間は仕事、夜は自分の作品作りと忙しい日々を過ごす。「目で見て手で触ってしっくりくる仏さんを。」その感覚をつかもうと努力を重ねる。須藤さんに、弟子に期待する心構えを尋ねると「施主さんに喜んでもらえるような仕事をするということと、ごまかしのない仕事をするということ」という答え。ごまかしのない仕事とは、昔ながらのやり方をきちんと維持していくということ、何年か後には修理が利く、そんなやり方を守るということだ。
守り育てられる京の伝統
今はまだ手探りで職人への道を辿り始めた若者達。身に付けなくてはならないことは膨大にあるが、「一つ一つの仕事をきちんとやっていけば、あとから必ずついてくる。」そう信じて彫り続ける姿が、とてもすがすがしい。京仏壇、京仏具の伝統は、きっと彼らが守り育て、さらに飛躍させていくにちがいない。親方も厳しく暖かい眼差しで見守っている。
職人プロフィール
須藤光昭 (すどうこうしょう)
「手に馴染む感触が大事」と須藤さん
昭和20年生まれ。
彫刻家錦戸新観氏、仏師佐川定慶氏、仏像塗師小川謙吉氏に師事し29歳で独立。伝統工芸士。
*https://kougeihin.jp/craft/0812/ より
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