「皿鉢料理(さわち・さはちりょうり)」
主な伝承地域 県内全域
主な使用食材 すし、かつおのたたき、刺身、煮物、揚げ物など
歴史・由来・関連行事
高知県の代表的な食文化といえば「皿鉢料理」である。特定の料理名ではなく料理の様式のことを指し、36cmから39cmの大皿に高知県の恵まれた自然が生む山の幸、海の幸が贅沢に盛り付けられる。皿鉢に盛られる料理の種類はさまざまである。刺身や「かつおのたたき」などの旬の生ものの皿鉢、「姿ずし」や「田舎ずし」などのすしの皿鉢、組物と呼ばれる、すしと煮物、和え物、揚げ物、甘い物、果物などを盛りつけた皿鉢、そのほかに「蒸し鯛」やそうめん、ぜんざいといった一品盛りの皿鉢がある。
高知県は客を招いて宴会を催すことを「おきゃく」と呼び、いまも「おきゃく」文化が根づいている。その「おきゃく」で振る舞われるのが「皿鉢料理」である。「皿鉢料理」は一皿三人前ほどのボリュームでつくられ、皿鉢の料理が減ると補充される。皿鉢の枚数で「おきゃく」の規模がわかる。
「皿鉢料理」の起源は藩政時代にまでさかのぼる。武家の供宴の終わりに大皿に盛った料理が提供され、やがて明治以降になってから「おきゃく」料理として全域に普及したとされている。「皿鉢料理」は社会的地位を示す象徴でもあった。裕福な家庭では伊万里や九谷、有田焼などの高価な大皿を取り揃え、杯台や物据え(大皿を据える塗り物の台)といった付属品も蔵に所蔵していた。
食習の機会や時季
日常食ではなく、冠婚葬祭や出生祝い、還暦祝い、節句、新築祝いなど様々なハレの行事や客をもてなす際に提供される。料理は男性が魚を捌き、女性は煮炊きを担当する。下ごしらえに時間を要するため、つくるのに2日間かけるときもあるという。
昔の農村には、農作業を共同でおこなう「結(ゆい)」と呼ばれる集団が組織されていた。結は、さらに「汁組」という小グループに分かれ、「おきゃく」があれば、協力して調理、配膳、片付けまでを手伝った。その中には素人ではあったが「器用料理人」と呼ばれる腕に覚えのある人たちがいた。「あの家のすしは上手い」「たたきといえば、あの家のオヤジ」など地元民たちは、その腕を評定し合っていたという。
飲食方法
大皿に盛られた料理を大勢で囲み、各々で小皿に取り分けて食べる。好きな食べ物を自由に取って食べられるので「おきゃく」には欠かせない料理になっている。
保存・継承の取組(伝承者の概要、保存会、SNSの活用、商品化等現代的な取組等について)
時代を追うにしたがって、汁組のような集団は村から姿を消していった。一方、高度経済成長を迎えた昭和30年代(1950年後半)ごろから、各地に「皿鉢料理」を提供する仕出し屋が増えていった。それにともない、料理の規模も大きくなり、盛り付けもより豪華になっていった。生や組物が中心に構成されるのは古くから変わりないが、近年はローストビーフやエビフライなどの洋風の料理を取り入れることも少なくない。
高知県内の飲食店では、少人数用の「皿鉢料理」も提供している。
*https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/sawachiryori_kochi.html より
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