ぽぉぽぉたんのお部屋

季節の移ろい、道ばたの草花、美味しい食べ物、映画や友人のこと、想いがいっぱいの毎日をお話します

枯れ葉

2024-01-23 | 映画のお話
第76回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した、
フィンランド映画界の巨匠アキ・カウリスマキ監督の新作「枯れ葉」

最初の曲は
まさかの 聞き覚えのある曲
いまいち聞き取れないのだけれど
これ日本語でしょ~と思った民謡調のゆったりした曲
竹田の子守唄だった。

ラジオから逐一流れてくるウクライナ侵攻のニュース

まるで昔の日本のような質素でシンプルなくらし
むだなものが何もない
こんな世界がまだあったのだろうか・・・

しかも北欧で
社会保障が素晴らしいはずなのに・・・

どうしてなのか、みんな見張られているみたいに
何かきっかけになるものを見つけてはすぐ首にしてしまう

贅沢もせずにつつましやかに暮らしていたのに

不思議な空気がただようような世界感

ロシアと接している国境は想像もできないくらい長くて
平和ボケの日本人の私には
フィンランドってこんな国じゃないよね?の
?マークがどんどんつらなっていくばかり

ささやかなしあわせを慈しんで
生きていけたのなら何もいらないなんて
昔思ったはずだったと思いだした。
本当は今もそうだったはず
すっかり忘れていたのかもしれない

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PERFECT DAYS パーフェクトデイズ

2024-01-15 | 映画のお話
ずっと見たかった映画がやっとやってきた。

カンヌで役所広司が主演男優賞を受賞して話題になってから随分と待った気がする。

最初の映像はごちゃごちゃしていて 一瞬 ミドリムシかと思った
それが木漏れ日だとすぐわかったが、
私の好きな木漏れ日とはちょっと感じが違っていた。

陰影のある木漏れ日は彼の人生の象徴なのだろう・・・

私の好きな 美しく透ける緑の葉の隙間からキラキラと光がこぼれる
あの宝石のような葉もれ陽とは違うのだ。

トイレの清掃員として寡黙に働く男
早朝、竹ぼうきの音で目を覚まし、いつも窓にはカーテンがない。
ないと思いこんでいたカーテンはちゃんと束ねてあり、
朝日を感じたいためなのだろうかとも思ったが
遅い日の出の季節も 夜も昼も 終始カーテンはひかれたことはなかった。

毎日車の中で聴くカセットテープは妙に懐かしい曲ばかり
どれも彼の境遇や心情を歌っているようだった。

小さなフィルムカメラでのぞかずにシャッターを切る
思うように映っていない写真は破り捨て
それ以外は大切に保存した缶がごっそりしまってある。

毎日の木漏れ日のわずかな違いは 
彼のかわり映えのしない暮らしの中で唯一無二なのだろうか

出かける前に 自動販売機で買う朝食代わりのコーヒー
そして、ベンチで食べるお昼はいつもサンドイッチだ。

自転車で行く風呂屋帰りによる駅なかの飲み屋
いつもおかえりなさいの声と共に
お決まりの一杯とつまみが置かれる。
休みの度に通う古本屋、部屋いっぱいの本棚に並ぶ本たち

突然現れた女の子は「おじさん」と彼を呼んでいた。
ママと別れた住む世界が違う父親を
どうしてそんな風に呼ぶのだろうかと思っていたが
電話をもらって迎えにきた裕福そうな母親は 
彼をお兄さんと呼んでいて
久しぶりの再会と別れを惜しむようにハグする場面は
わかるようでいてやはり違和感があった。

認知症でもう何もわからなくなった父親にも
二度と会いたくないようだ・・・

彼にいったい何があったのか 
どうしてこんな暮らしをしているのか
平山という男のこれまでの人生をあれこれ逡巡しながら観終えた。

早朝のいろいろな物音、鳥のさえずり
優しい風景と懐かしい音楽が彼を包む

カーテンもドアの鍵も開けっ放しで暮らす毎日
彼の周りにはもう悪人はいないようだ。

木立の葉擦れの音さえ聞こえてきそうなのに
朝っぱらから
The House of the Rising Sunの擦れたような物悲しさが漂う

アニマルズが歌い、
浅川マキが「朝日樓」と歌い
常連客のあがた森魚のギターで
石川さゆりのママが唄う

聴いたことはあるけれど ぼんやりと 記憶の奥深くに 
澱のように沈んでいた曲ばかりのような気がして
ひとつひとつ掬い上げてもう一度聴いてみたいと思った。

トイレがきれいすぎて あまりにも現実味がないのだが
東京・渋谷区内17カ所の公共トイレを
世界的な建築家やクリエイターが改修する「THE TOKYO TOILET プロジェクト」
それに賛同したベンダース監督がこの作品の舞台にしたようだ。

キリスト教関連の団体からも
人間の内面を豊かに描いた作品だとしてエキュメニカル審査員賞も受賞したそうだ。

『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』は好きな作品だった。


 





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理想郷

2023-11-21 | 映画のお話
スペイン映画、
冒頭のシーンが印象的だ。
男3人がかりで馬を捕まえ、押し倒す。
これが何を意味しているのか、
後半は夫がいつそうなるのかと気が気ではなかった。

最初は「理想郷」だと思っていたがそうではなかったという作品だと思って観たのだが
どうしてこの邦題をつけたのか・・・
いつも、映画を観ていると原題をそのまま持ってこないことに違和感を感じることが多い。

原題の「As bestas」は「獣たち」の意味だそうだ。

観光名物になっているお祭り
サブセドのラパ・ダス・ベスタス(猛獣の毛刈り)を思い起こすとぞっとする。

そうしてこの作品は
1997年に終の棲家を求めてスペインの小村に移住したオランダ人夫婦を襲った事件を基にしたフィクションだという。

風力発電の問題が起こらなかったらどうだったのだろうか。
風力発電誘致で補助金を得たい兄弟はその金を一日中タクシーを乗り回して街じゅうをまわると答えたのだ。

もう根本から違うのだと思った。

52歳と45歳の兄弟は一生変わらないだろう貧しい生活の中で
毎晩店でいっぱいやるぐらいしか楽しみはない。
結婚もできず失うものなど何もない行き詰まりの毎日なのだ。
そんな惨めな息子たちの行動を年老いた母は黙認しているように見えた。

想像だにしない嫌がらせで収穫もほごになり
貯えも底をつこうというのに、諦めて出ようとしない夫の頑固さ

最初から最後までずっと漂う不穏感がとても重苦しく
移住者と村人のお互いに歩み寄れないもどかしさ
対話がまったく噛み合わないぎこちなさ

勝手に田舎に憧れる夫婦と できることなら田舎なんて捨ててしまいたい村人たち
だが今の生活を捨てて出るにもお金がいるのだ

狩りのように押し倒され絞められる場面で
顔面が口以外見えなくなり、消えてゆくシーンがすべてを物語っているような気がした。

夫が殺されても遺体を探しながら村に住み続ける妻の強さが恐いくらいだ。
それでいてやり返さない、
村で暮らし、農作物を育て、その合間に夫の遺体を探す執念
地図を塗りつぶすように計画的に進めていく強靭な意志

殺した兄弟の母親に「私と同じように孤独になるのよ」と言い放った彼女

発見された遺体を見に車に乗った時の表情のない顔もただただ私には理解しがたかった。
彼女はこれからもこの村で暮らしていくのだろう、きっと












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「旅するローマ教皇」

2023-11-07 | 映画のお話

移民船事故が起きた2013年のランペドゥーサ島でのスピーチから始まり
ブラジル イスラエル、パレスチナ
アメリカ、キューバ、ケニア、中央アフリカ共和国、フィリピン
アルメニア、キューバ、メキシコ
チリ、アラブ首長国連邦、日本、マダガスカル
イラク、カナダ
2022年のマルタ共和国まで
37回、53カ国を訪れたローマ教皇に密着したドキュメンタリー映画
 
アルゼンチン生まれの 第266代 ローマ教皇 フランシスコは
初のアメリカ大陸出身として
また、イエズス会初選出の教皇として話題になった。

どこの国でも
防弾ガラスのないオープンカーのようなつくりの車に
立ったまま乗り、群衆の中をかき分けるように進む

ちょこんと載せるようにかぶった小さな白い帽子は
どうして落ちないのだろうかといつも思っていたが
そうではなかった
風が強ければ、帽子も飛んで落ちるし
ケープもまくれ上がり覆いかぶさるのだ

そんな風に彼もひとりの人間であり、様々な表情が映し出されている。
積極的に異教徒の指導者との交流をする姿や
カトリック教会で起きた性的虐待について謝罪する姿
自らの至らない発言について謝罪する場面もあった

教皇の旅はいままさに世界の様々な問題を映し出していて
コロナパンデミック、難民問題、紛争の絶えない中東やアフリカ
イスラエル、パレスチナ、移民問題

熱狂的に歓迎する人々がいて
バラバラと人の並ぶ場所もあり、それは様々だ
熱狂している人たちに教皇の言葉はちゃんと届いていたのだろうか

囚人ひとりひとりとの触れ合いは抱き合う相手もいれば
冷淡な態度をとる人もいてとても象徴的だ。

特に印象的だったのは
カナダの先住民の子供たちが家族と離され寄宿学校に強制的に入れられた問題だ
インディアンたちの独特の声のうねりのような音の集まりは何だろう
傍観していた教会側の行いを率直に謝る姿があった


「皆さんがベストを尽くせばこの世界はかわるかもしれない」
「常に夢を追い求めなさい。恐れずに夢に向かいなさい。
 世界の夢はまだ目にみえていなくとも、必ずいつか実現します」
という彼の言葉が今も胸に響いている。











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「ロスト・キング 500年越しの運命」

2023-09-30 | 映画のお話
久しぶりのイギリス映画

座席の背中部分に後ろから何回も足をぶつけられる不快さに
落ち着いて観ていられなかった。

後から駆け込んできた老夫婦だろうか・・・

後ろを観ていないからわからないが
この劇場の最後尾席は狭いのを知らないようだから
初めてなのかもしれない~

それにしても集中して観ることができなかったのが残念だ

まあ、それでも何とか観終えた。

フィリッパは
子どもと観たリチャード3世の劇中のシーンに疑問を持ち
正当に評価されていなかった彼の遺骨を掘り出すことに成功した。

DNA鑑定で本物だとわかる現代

彼女の探求心と霊感のようなものはすごいと思う。

特殊な病気を持っていることで
同様に周りからはよく思われていなかった彼女は
夫と別居中のシングルマザー

他の女性と暮らしている夫は
男の子二人の子供をよく見てくれるし
温厚でいざとなれば彼女の応援に回るのだから
不思議なものだ。
 
遺骨が発掘された後に、フィリッパの功績を大学が横取りしてしまい
現実なんてこんなものだと思った。

ただ、リチャード探しのために
仕事で理解してもらえていない彼女が長い休みをとり
あちこち動き回るのは気が気でなかった。

お金も気持ちも余裕があるのだろうか・・・
私の感覚ではとてもできそうもないから
やはり普通の人ではないのだろう、きっと

正当に評価されていない人々の中のふたり

でも、わが道を行くような彼女のたくましさが素敵だ。



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エリザベート 1878

2023-08-30 | 映画のお話
第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で最優秀演技賞
原題「Corsage」

ヨーロッパ宮廷一の美貌と謡われたオーストリア皇妃エリザベート

なるほど、肖像画はどれも美しく
172cmの長身に、ウエスト51センチ、43キロのしなやかさだ

この映画は
1878年の
エリザベートの40歳の1年間にスポットを当てている。
今でこそ不惑の年だが
この時代では普通の女性の平均寿命だったようだ。


薄っぺらなオレンジのスライスを食みながら維持した体型を
コルセットで締め上げ
ドレスで着飾り
長い長い髪を結いあげて大勢の前に現れる。

皇帝フランツ・ヨーゼフ1世に
16歳で見染められた名門出の彼女は
若さと美しさの象徴の王妃としてだけ存在する
コルセットで締め付けられるように
縛り付けられたうつうつとした毎日

時折 挟まれる
傷病兵士や、精神病院への慰問

それでも、きままに長旅を繰り返しながら
乗馬を楽しみ、湖で泳ぎ、
本来の大胆で自由な性格を垣間見れる。

旅先の 従兄ルートヴィヒの城での
「わたしの湖で死ぬなよ」
という彼のことばがとても印象的だった
きっと同類の彼も死ねないひとりなのだろう

何のために生まれてきたのだろうか・・・

孤独で大勢の中でポツンと浮いているような毎日
葛藤と抵抗の末、選んだ道は意外だった。

だんだんに分厚い黒いベールで顔を隠すようになり
髪を短く切ったり、ケーキをつまんだり
やっとけりをつけて諦めたのかと思ったのだが・・・

イタリアの旅に向かう真っ白の船から海にとびこんでしまう
影武者を残して

実際のエリザベートは大きな時代のうねりの中で
60歳で暗殺されたのだが
こんなふうに
自由に自分で死を選んだ方が幸せだったのかもしれない

もっともっと破天荒に生きていってほしかったが
どこかに流れ着き、
普通の一人の女として生きていたかもしれないと思わずにはいられない






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ナチスに仕掛けたチェスゲーム

2023-08-22 | 映画のお話


邦題って どうして こう とんちんかんなんだろう・・・

チェスはいつ出てくるのだろうと随分待ったし
精神が破壊される寸前で
チェスの本を手に入れたあたりから
やっと現れて
彼の生きるよりどころとなってゆく

監禁されていたオーストリアのホテルも
アメリカに向かう客船の船室も
窓がなくて狭くて暗くて 部屋番号も同じ

船に乗り込むときにやっと出合えた妻のアンナも
いつの間にかいなくなっていて

ああ、これは幻想なんだなあと思った。

全く変わっていないアンナに違和感があふれ
だから船のシーンはすべて幻想だと思った。

船に乗っていた世界チャンピオンが
ゲシュタポに取り上げられたはずの時計をしているなんて
ああ、きっと
相手はあのゲシュタポの将校なんだなあと思った。

悪夢のような戦争が
ナチの強引なやり方が恐ろしい

オーストリアが併合される場面は
サウンドオブミュージックでも
あっという間だった・・・

何もかも奪い取ろうとするなんて
だから戦争は嫌なんだ
欲の塊の人間たちの悪行でしかない

それにしてもドイツの俳優たちは素晴らしい
主演のオリバーは幻想と現実のシーンを演じるために体重をコントロールしたらしいし
演技も表情も圧巻だった。

そして、冷徹なゲシュタポ役の
アルブレヒト・シュッフという
東ドイツ出身の俳優がとても気になった。

郷ひろみと渡部篤郎をミックスしたような
お顔の印象だけどちょっと私の叔父にも似ていて

それが客船のチェスチャンピオンの若者役では
すっかり別人になっていてなんとも不思議だった。

1985年生まれだから
また他の作品でお目にかかれるかもしれない

原作とは大いに趣の違った作品となったが
生きるためにチェスにのめり込んで
金持ちたちの銀行口座さえも忘れ果て
チェスの棋譜を書き込んだというあたりが
「ナチに仕掛けたチェスゲーム」にあたるのだろうかとも思えた。

わたしは原作のツヴァイクというユダヤ人の作家を知らない。
反戦運動をしながらも危険を感じて英国に亡命し
やがて、アメリカに逃れ
さらにアメリカからブラジルに渡ったという逃亡の果て

この作品を書いたのち、
終わりのない戦争を悲観して
1942年に妻と自死したという・・・

そんな悲惨な運命の彼がもし、
生きていたならと思う
否、戦争がなかったなら 
この作品は生まれなかっただろうが

あまりにも悲しい

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「怪物」

2023-08-17 | 映画のお話
怪物なんてどこにもいなかった。
いたのは、こころに暗闇をかかえた大人たち
ちっぽけだった暗闇が不安でどんどん膨れ上がってゆく
そんな大人たちに気を遣いながら生きてゆかざるを得ない子供たち
どうして、もっと、
どうしてふつうに、本当の事を言わないのか

みんな本当の事を言っていたら
こんな風にはならなかったはずだ

子どもに本当の事を話せない親に
やっぱり本当の事なんか話せないかな

でも、勝手に思い込んでほしくない
子どもの本当の思いをくみ取ってほしかった。
これでもかというくらい向き合って
本当の事を聴いてほしかったと思う

どうしてこうなってしまったのか
話が引き戻されていくうちに
普通だったことがどんどん折れ曲がっていくことに気づく
怪物って何だろう

たぶんみんなの心の奥底に眠っている何か
その澱のようなものが、ふんわりとわき上がって
どんどん拡がってゆくと
おかしくなってしまうんだよね
 
事実は一つしかないのに・・・

お母さんも先生もやっと気づいたけれど

ふたりが飛び出した
明るい日差しのきらきらする場所はどこだろう

行き止まりだった古い鉄橋を渡った先には何があるのか

夢だったらいいのに

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K.G.F

2023-08-05 | 映画のお話
とっても強いのだけれど、
母親の思い出の言葉は魔法のように刷り込まれている。
男の子ってやっぱりかわいいなあと
母親としては思うのだよね~~
暴力だらけなのに 爽快で
あまり嫌な気分にならなかったのは不思議

こんな風に何でもぶっ飛ばして
やっつけられたらいいのになあって思いながら
観終えると現実に戻る。
結構な長い時間、観てしまった。

パート2がインドでは相当な人気らしいが
わたしにはパート1だけで充分かなぁ



「K.G.F: CHAPTER 1」あらすじ】  チラシから

◇◇◇1951年、スーリヤワルダンはコーラーラ近郊で金鉱(KGF)を発見し、
採金ビジネスに乗り出す。
全てを一族で管理して巨万の富を築くいっぽうで、
労働者は外部から遮断された環境で奴隷のように働かされ、
苦しい生活を強いられていた。
同じ年にスラム街でひとりの少年が生まれる。
少年は唯一の身内であった母を10歳のときに亡くし、
生き残るためにマフィアの下で働き始める。
ロッキーと名乗った少年は、マフィアの世界でのし上がっていく。
やがて最強のマフィアとして恐れられるようになったロッキーは、
ボスからKGFの実質的な支配者である
スーリヤワルダンの息子を暗殺するよう指令を受けるのだが◇◇◇
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「大いなる自由」

2023-07-30 | 映画のお話
2021年製作/116分/R15+/オーストリア・ドイツ合作

カンヌ映画祭、ある視点部門審査員賞
アカデミー賞 国際長編映画賞オーストラリア代表
ドイツ映画賞 最多8部門ノミネート 作品賞・メイクアップ賞受賞
ヨーロッパ映画賞 撮影賞・作曲賞受賞



本当に信じられないのだが、ドイツでは1871~1994年まで
男性の同性愛を禁止する法律があったという。
ドイツ刑法175条
1969年に21歳以上の男性同性愛は犯罪ではなくなったが
120年間に14万人ほどが処罰されたという。

刑法175条で繰り返し投獄されていたハンスの人生は何だったのだろう・・・

またつかまることが解っているのに
どうしてやめようとしなかったのか、
もっとうまいことやれたのではなかったのかという思いが渦巻く

ユダヤ人としてアウシュヴィッツに送られていたハンスは
終戦で命拾いしてドイツの刑務所に送られてきたはずなのに・・・

わたしには理解できないことばかり

でも、はかり知れない彼の生い立ちとそれまでのできごとを思うと
自分の、人を愛する自由だけは貫き通したかったのかもしれない

1945年、同房になった殺人犯ヴィクトールはハンスを毛嫌いするが
ハンスの腕に彫られた番号を見て
彼がアウシュビッツから刑務所へ送られてきたことを知る。
そうして、その番号を消してやろうとその上から大きく入れ墨を入れた
どうやら、そのウサギの入れ墨は
自由と解放、独創性とセクシュアリティを意味するようだ

殺人犯のヴィクトールがずっと刑務所にいる間
ハンスは何度も出入りを繰り返す
そんなかたくなで危なっかしいハンスを
ヴィクトールは静かに見守りながら忠告するのだが
自分を曲げず、恋人をかばって懲罰房に入れられるハンス
パンツ姿でバケツだけを持って入る狭い暗がり
差し入れされたマッチやたばこのあかりがどれだけ希望になっただろうか
そんな一筋の光を求めて20年以上の間 追い求めていた本当の自由

アポロの月面着陸の様子が流れ
鉄格子の外の月を観るハンスのまなざし
刑法175条が改正されハンスはやっと無罪放免になる

最期の日、看守に頼み込んで同室にしてもらうヴィクトールだったが
出所直前の自死
愛する妻のためにその愛人を殺したヴィクトールにはもう帰る場所がなかった・・・

高級品の並ぶショーウインドウを壊して盗み、
その場に座り込むハンスの姿

今度こそ 自由になったはずなのに
自由とはいったい何なのだろう

20年以上の時を経て
生き場のなかった二人の姿が
そうして随分前に屋上から飛び降りたハンスの恋人の姿と相まって
なんとも言いようのない悲しい映画だ

本当は誰も何一つ悪くはないのに・・・

どうしてこんな人生を送ることになってしまったのか
2人にとって刑務所は、逃げ場ではなかったはずなのに・・・

差別の中で生き抜くことは辛く苦しい
ずうっと昔から変わることのない世間
それでも愛し愛され、いつかいつかと希望を持ち続けながら生きてきた人々の物語
刑務所の窓から見える月のもの悲しい美しさ

ユダヤ人としてアウシュビッツを逃れたハンスの人生は何だったのか

重苦しく暗い刑務所の中で
年を経て変わってゆく二人の様相が実にリアルで別人のようだった。

深く静かに心に沁み込み考えさせられる、
最近見たにぎやかなインド映画にもアカデミー賞の中国映画にもない
重厚さが素晴らしかった。
観客はみな深い余韻に浸っていて、すぐ席を立つ人はいなかった。

まだ、こんな人たちがどこかにいるのかもしれない







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