「不思議なできごと」

家をでたのは何時頃だっただろうか。
少し行くと、歩道側の助手席のドアを開け放したまま
道路に車が止まっていた。
ライトもエンジンもそのまま・・・

怪訝そうに仕事帰りの自転車の若者が通り過ぎて行った。

そうしてまた通りかかったのは２時間ばかり過ぎた頃、
えっ！と少し驚いた。
車は依然として、ライトを煌々とつけたまま、
開け放たれたドアもそのままだった。

運転席にも人はいない。
いわきナンバーのスポーツタイプの乗用車だ。
後部の座席にも人が乗っている気配はない。

何なんだろう。

４時間後、２度目に戻ってきた時は異常さを感じた。
途中強く雨が降ったので、
助手席のドアは濡れているようだった。

エンジンはまだかかったまま、
ライトも点いているようだ。
もう外は明るくなってこの不自然な車はやっぱりおかしい。

路地で見まわりのパトカーを見かけることがあるのだが
大通りは通らなかったのだろうかと思いあぐねる。

車が止まっているのはちょうど教会の前。

朝食をとろうとしていた家族に
懺悔でもしているのだろうかと話す。

そういえば昨夜９時過ぎに大きな地震があった。
こわくて逃げ出してしまったのだろうか。
よくバッテリーが上がらないものねと付け加える。

それにしても、平和な町だ。
よる夜中、エンジンもかけたまま、ドアもあけっぱなしの車が
ずうっとそのままあるのだから・・・

外国ならとっくに盗まれているはず
日本でも自宅から盗まれた話もあるのだからと
変にあきれてしまう。

それにしても持ち主はどうしているのだろう。
助手席のドアがあけっぱなしと言うのも合点がいかないのだ。

あれこれと勝手に想像をたくましくしていたが
家族の出る頃には車はもうなかったようだ。
本当に何だったのだろう・・・

実に不用心です。
危なく１１０番するところでした。