雪 野山 風の音 草が揺れている
どこまでも続く大自然に物悲しい曲が流れて
兄弟の物語は始まった。
雄大なアイスランドの風景が何か懐かしくもある
隣り合っている兄と弟の家
40年も口をきいていない二人には何があったのだろうかと思いながら
淡々とした毎日の生活を追うように眺めていた
そうしてこの年老いた兄と弟にとってただ一つのの共通点は
羊に対する愛情なのだと知った。
2015年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門でグランプリ受賞
ひつじと犬と人間と広大な自然が同じ場所にある、そうしてとても近しい
橋を渡って町に出るシーンが何度かあった。
辺境の村なのだろう。
女性が少ないので二人は結婚もしていない
財産問題があり、それから40年も隣に暮らしながら一言も口をきいていない
それでも相手の存在はいつも意識して生活しているのだ
時には凶暴と思われるような行動をとる兄を
弟は抗うこともなく観察しているかのように暮らしている。
酒を飲んでは寝込んで凍死寸前の兄を助け、
ある時は、ショベルカーで飲みすぎて雪に倒れた兄を運ぶシーンが
何だか面白く物悲しい
ブラックとは違う不思議なユーモアの漂う物語の中で
深刻な状況がどんどん進んでいく
アイスランディック・シープというこの羊たちは何ともかわいらしい
純血の家畜用の羊としては世界最古の品種だというのだが
二人の髭のようにモサモサで、モコモコしたひつじとは全く違う姿だ
彼はいつもひつじに語り掛けている。
ここでは生活のすべてがひつじにかかっているばかりか、ひつじも人間と同じ存在なのだろう
兄の一番の羊が伝染病にかかり、村の羊すべての殺処分が決まった。
新鋭のハゥコーナルソン監督はまだ30代だという
あの吹雪の荒野の中を火山近くに羊たちを逃がそうとでかけた
年老いた兄弟はあれからいったいどうなったのだろう
兄がやっとお兄さんらしく「もう大丈夫だ」と
身をもって弟に語りかけるシーンが印象的だ
きっと小さいときはそうして二人仲良く暮らしていたはずなのだ
二人が守りたかったもの、一番大切なものがおんなじだったのだから・・・
大自然の風景をバックにまさに生かされている私たち人間を思う
暮らして行くことの 厳しさ
私たちが日々生かされていることの意味を思う