みなさま、明けましておめでとうございます。
少し遅れ気味ではございますが、新年のご挨拶申し上げます。
日の出の美しい絵がないかどうか、探そうと思いましたが、今は思い当たらないので春を思わせる文を紹介したいと思います。
嵐と冬の季節から、うららかでおだやかな天候への、暗く停滞した時間から、明るくはずむような時間への変化は、万物が告げる、ひとつの重大な転機である。それは見たところ、最後の瞬間に忽然と訪れる。夕暮れがせまっており、屋根の上にはまだ冬の雲が重くたれこめ、軒からはみぞれがしたたっているというのに、突然、わが家はさしこんでくる光に満たされた。私は思わず窓のそとを見た。するとどうであろう。昨日まではつめたい灰色の氷のほかにはなにもなかった場所に、早くも夏の夕べの静けさをたたえつつ、希望にあふれた透明な湖が、まだ頭上には見えない夏の夕空をふところに映しながらひろがっているではないか! まるで、湖がどこかの遠い地平線と意を通じあっているかのように。遠くでコマドリの声がした。私はそれを何千年ぶりに聞いたような気がして、その調べ──むかしながらの美しく力強い歌声──を、さらに何千年も忘れることはないだろうと思った。
H.D.ソロー『森の生活(下)』(岩波文庫)p254
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