デカダンとラーニング!?
パソコンの勉強と、西洋絵画や廃墟趣味について思うこと。
 



今年は、調べ物をする際にいろいろな本を繰った年だった。よって完読できた本はあまりない。今年の完読本は以下の通り。
 ・『ジャン=クリストフ』(ロマン・ロラン)
 ・『ファウストゥス博士』(トーマス・マン)
 ・『優雅でみだらなポンペイ』(本村凌二)
 ・『田沼意次の時代』(大石慎三郎)
 ・『地雷を踏んだらサヨウナラ』(一ノ瀬泰造)
 ・『こころ』(夏目漱石)
 ・『星の巡礼』(パウロ・コエーリョ)
 ・『日はまた昇る』(ヘミングウェイ)
 ・『ベラスケス』(ノルベルト・ヴォルフ)
 ・『すぐわかるギリシア・ローマ神話の絵画』(千足伸行監修)
 ・『すぐわかるキリスト教絵画の見かた』(千足伸行監修)
 ・『日本人とユダヤ人』(イザヤ・ベンダサン)
 ・『にせユダヤ人と日本人』(浅見定雄)
 ・『ゲーテとトルストイ』(トーマス・マン)
 ・『国家の品格』(藤原正彦)
このなかで個人的に一番印象に残った本をジャンル別に挙げるとすると、小説は『ジャン=クリストフ』、歴史書は『田沼意次の時代』、ノンフィクションは『地雷を踏んだらサヨウナラ』、トンデモ本は『日本人とユダヤ人』になる。
一つずつ感想を書いていこう。
『ジャン=クリストフ』
…作曲家を主人公にした長編小説は初めてだったこともあってか、とても新鮮な気分で読めたと思う。登場人物が多いのだが、クリストフを巡る登場人物は作品の中で走馬灯のようにどんどん亡くなっては新たな人物が生まれる。その万物が流れ行くさまが本当に上手く描かれていると思う。
『ファウストゥス博士』
…これもアードリアン・レーヴァーキューンという作曲家を主人公にした長編小説だが、古典(中世ドイツの民間伝承)を踏襲している点がうまいと思った。小説の中で、現実と幻想を取り違いかねない恐ろしさを登場人物たちが体現しているところは怖いけど、引き込まれずに入られなかった。
『優雅でみだらなポンペイ』
…この本は数年前にも読んだので再読。考古学という学問の魅力をポンペイの落書きから余すところ無く伝えてくれる。人は古代も現在も大して変らないことを分かりやすい言葉を用いて書かれている良書。
『田沼意次の時代』
…「教科書から教えられた歴史の常識」が覆ることは最近珍しくなくなったが、あらゆる文献を慎重に検討し田沼意次という人物像に様々な角度から光を当てた良書。歴史を覆すことをテーマにしたTV番組だけでは飽き足らない人にお薦め。どんな結論が得られたにせよ、それを導くためにはあらゆる方面のことを知っておかねばならないということを教えられた。ぜひいろんな方に読んでほしい。
『地雷を踏んだらサヨウナラ』
…やなぎ鮨さんからのお薦め書。後の祭りかもしれないが、どうせならこれを読んでからホーチミンの戦争証跡博物館に行けばよかったと思っている。戦場での証人なることは並大抵ではできないことが伝わってくる。
『こころ』
…全く予習無しに読んだ。心理小説としては一級ではと思う。個人的な思いとしては、Kはイタイ人物だと思う。
『星の巡礼』
…スペインの巡礼道を舞台にしたスピリチュアリティな物語。とはいえ説教臭い小説でもある。巡礼道で小説にあるようなことが本当に起こったら困るどころではない。
『日はまた昇る』
…スラスラと読めた。冷静な気持ちで読めた。ロストジェネレーションというキーワードがあるが、これはいつの時代でも登場し焼きなおされるようなものかもしれない。そこを上手く衝き描いてあると思う。
『ベラスケス』
『すぐわかるギリシア・ローマ神話の絵画』
『すぐわかるキリスト教絵画の見かた』
…上の3冊は、いくら小説に登場した絵画に興味を持っても、それだけでは絵画鑑賞のときに他の重要なことを見過ごしてしまうことが多々あるように思ったのがきっかけで、基本的なところから知識を埋め合わせるために入門書として読んだ。正直、私は何も知らないまま、いろんな絵をさも分かった風に見ていたことが多々あったと思う。
『日本人とユダヤ人』
…一昔前の「教養人」ならば必読であったろう書。だが残念?なことに迷書・怪書である。おもしろいことにこの本の書きっぷりは人を雄弁にしたり、行動に駆り立てたりする力がある。これからこの本を読もうとする人は、内容をよく検討し冗談本のつもりで読んでほしい。少なくとも私はこれを若い頃?に手がけないままでよかったと思うし、もしこの本の内容を真に受けた状態で外国に行ってたら恥をかいて帰ってくるだけではすまなかったろう。
『にせユダヤ人と日本人』
…『日本人とユダヤ人』の内容の検証し、その虚偽性を書きつらねた本。『日本人とユダヤ人』を読んだ人には一読を薦める。
『ゲーテとトルストイ』
…トーマス・マンの講演集。内容については、ほとんどが分からなかった。ただ、一つだけトルストイがいくら「崇拝」されるような存在になっても、”だんな”であり続けたというのは、ひどく納得できた。
『国家の品格』
…立ち読みで済ました。この手の本が流行るのは数年(十数年)に一度の周期があるように思う。本を読んでいるうちに、著者がドン・キホーテみたいに思えてきた。それを言っちゃあおしまいかもしれないが、そう思えた。

越年読書は『ブッデンブローク家の人びと』(トーマス・マン)。まだ上巻を半分。道は長い…。

次回は今年見た映画について書こうと思う。

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