デカダンとラーニング!?
パソコンの勉強と、西洋絵画や廃墟趣味について思うこと。
 



ローマの地下鉄
(画像は記事の内容とは無関係です)

外国で軽犯罪に遭いかけたり、目撃したりすると、日本という国は本当にすばらしい国であることを誇りに思える。ローマという都市に古代遺跡や美術品たちへの夢想はあったが、やっぱり先に来るのは都市のもつ現実感の方であった。

町をさんざん歩き回った日の夕方7時前、バルベリーニ広場から地下鉄A線でテルミニ駅へと向かおうとした。この日は歩き疲れたこともあり、ホームのベンチに即腰をかけたのだが、横四列の端に私、一つ間を置いて二人の女性親子?連れが座った。まもなくして空いている私の横に若い女性が座ったのであるが、男が隣ゆえか中途半端な腰のかけ方で列車を待っていた。
列車が到着したので乗車した。車内は少し混んではいたが右手で手すりをつかんで立っていても体が接触するほどの窮屈さではなかった。
次のレプッブリカ駅で列車が止まった。ドアが開いて降りる人は少なく乗ってくる人の方が多かった。その時だった。
ジーンズを履いたリュックを背負った中年の男性が、イタリア語で必至に「財布が無い!財布が無い!」みたいなことを言い出した。言葉は解せなくとも男性のアクションで、右のポケットに入れていた財布をスラれた!といったことは私でも分かった。周りは少しどよめき、被害に遭った男性がまず疑ったのは同じ駅から乗ってきた初老の恰幅のいい男性だった。スラれたおじさんは、初老の男性に身体検査をさせろといって、本当にやりはじめた。初老の男性は「なんのことだ?」と声を荒げることも無く身体検査をさせるままにしていたが、なにも出てこなかった。私は初老の男性があまりにも落ち着いているから、この人がスッた可能性があると思ってしまったが、彼は身体検査を受けながらも乗車時にすぐ傍にいたのはこの女性もだ、というようなことも言っている。
その女性とは、バルベリーニ駅のベンチで私のとなりに座った若い女性だった。私は乗車してからこの女性と正面に対するように立っていたのだが、「財布が無い!」と男性が言い出したときに男性の方を一切一瞥せず、ただ顔を伏せていた。周囲が騒ぎだしてなお振り返ろうとせず、ただじっとうつむいたままだった。
彼女がずっと顔を伏せていたのは、関わり合いたくなかった可能性も十分にある。とくにスリの犯罪などに身に覚えが無くとも、現場にいただけという理由で関わってしまったら面倒くさいことこの上ない。
テルミニ駅に到着すると大勢の人が乗降した。私も降りたのだがエスカレーターに乗っていると「目撃」したおばさんたちがおそらくその件についてだろう、話はじめた。
その事件はそれからどうなったかは分からない。ただ、私はホテルの下のバールで缶ビールを買って部屋に戻りつつ、まさか彼女だったなら、最初私が狙われていたのかもしれないとは思った。私の隣に座ったのは、旅行者である人間のポケットにあるかもしれない貴重品に当たりをつけるため!?
スリや置き引きの犯罪は、いかにも泥棒のような典型的なイメージの薄汚れたかっこうした人間が起こすというより、髪もきちんと整えいい服を着たこざっぱりしたいかにも普通の人が、平然とやってのけることが圧倒的に多いのである。事実、財布をスラれたと訴えたおじさんの周りに洗ってない服や体臭を漂わせているような人はいなかった。みんな、そんな薄汚い犯罪なんて起こしそうも無い、でも起こったのだ。(もちろん、疑われた初老の男性や、私の隣に座った女性がスリに及んだ犯人だと断定するつもりはありません。)
以上、都市ローマのマイナス面をつらつら書いたが、こういったことはおそらくほんの一例にすぎない。


早朝の地下鉄は空いていて比較的安全


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