デカダンとラーニング!?
パソコンの勉強と、西洋絵画や廃墟趣味について思うこと。
 



森本あんり著『反知性主義:アメリカが生んだ「熱病」の正体』(新潮選書)読了。

なんておもしろい本なんだろうというのが読了直後の率直な感想。数ヶ月前にニューヨークからアメリカを知るといったテーマの本を読みその中の、「脱ヨーロッパ運動の帰結」がアメリカという国ときくだけでは物足りない、「結局アメリカという国はどうしてああなんだ?」という疑問が払拭されてなかったこともあり、そのもやもやした部分を『反知性主義』はかなり的確に説明してくれているように思った。
反知性主義の概要を知ると、著書の中にある映画「ペーパー・ムーン」のみならず、個人的に好きな映画監督フランク・キャプラの作品も随分と見方が変わるように思う。本を読んで、フランク・キャプラの作品の素朴で自分の判断を大事にする主人公が、勧善懲悪を実現させるにしては知性を発揮しないキャラ設定になっている理由が分かった気がした。『オペラハット』や『スミス都へ行く』、『素晴らしき哉、人生!』といった作品の主人公たちはいかにもアメリカのキリスト教が生み出した反知性主義に満ちているように感じるのである。
恐慌を引きずる1930年代の暗い雰囲気のアメリカに、フランク・キャプラの作品が与えた影響は第五次信仰復興とまではいかぬまでも多くのアメリカ人の心を救ったような気がしてならない。きっと当時の人々には作品を通して監督自身のたたき上げの人生を垣間見ていたことだろうし、なかには巡回伝道の牧師たちに届けられた「感謝の手紙」に類したような内容の手紙を監督に送った人もいたことだろう。そういった光景がなんだか容易に感じ取れそうな、リアリティを感じさせるところも森本氏の『反知性主義』のすぐれたところではないか、と思う。

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