プロ野球 OB投手資料ブログ

昔の投手の情報を書きたいと思ってます

太田武

2017-12-13 19:46:03 | 日記
1954年

空谷が去年の夏の選手権のヒーローなら、太田(伏見高)は春の選抜のヒーロー。彼にとってはじめての桧舞台の選抜一回戦早々に三振奪取の新記録をつくったばかりか、大会を通じての戦後最高の三振奪取王となるなど、伏見の活躍は初優勝した洲本高よりめざましかった。一回戦は今度中日に入った田原の北海高を3-0で破って奪った三振は17(大会新記録)二回戦は平安高を三振12を奪って3-2で降し、三回戦は柳井高に延長十一回三振13を奪って21-1で凱歌をあげた。このときの相手投手は今度南海でともにマウンドを踏むことになった戸川である。このときの相手投手は今度南海でともにマウンドを踏むこととなった戸川である。準決勝では連投の疲れが出てか球威がなくなり3-1で浪華商に負けた。しかし6三振を奪って四試合で48三振(戦後最高)の記録を作ったのである。もともと連投は投手力を重視してチームを選考するので好投手が多い。昨年のこの太田をはじめ中下(浪商)北口(洲本)山本(済々黌)戸川(柳井)田原(北海)中山(中京)と一流投手が集ったが、大会後の優秀選手選考委員会で太田は北口、中下、山本、戸川とともに優秀投手に選ばれたが、断然彼の票が多かったと聞いている。太田はまったくのドロップ投手で、ドロップをウィニング・ショットにしているというより、攻め道具に使っているといった方がいい。配球の比率はドロップ六、速球四ぐらいだが、選抜のときなどは七分ぐらいまでドロップを多投していた。ブレーキはそれほど鋭いとは思えないがインドロの大きさとコントロールはすばらしい。しかしそれを投げすぎて自ら武器を武器でなくしてしまっていることが多く、ドロップに頼りすぎているのでドロップを打たれると次の手がなくて自滅してしまう。彼の育ての親、伏見高辻監督(立命大OB)が「太田はドロップと同じ位の威力のある武器を持っている。サウスポー独特のアウトシュートで、外角いっぱいにホップするからそうたやすく打たれない」と私に語ったことがある。選抜のときなぜこれを活用しなかったかいまでもわからない。プロではこのシュートを活用しなければならない。フォームにも無理がある。身体を後に落しすぎるので左が伸びきってしまい、スナップの切れが悪くなっている。これをなんとかカバーしようと腕を無理に巻き込むので苦しいフォームとなり、選抜後肘を痛めてしまった。幸い全快したというから二度と肘をこわさぬようフォームとコンビネーションに研究をつんでほしい。第二の柚木の素質を十分に持っているだけにとくにこの点を望みたい。彼の父は大阪鉄道局でお召列車の機関手をつとめている。五尺七寸五分、十七貫五百。十八歳、背番号34。

南海は昨シーズン半ばに泉陽高の中村大成投手をとって成功したが、太田君も中村君以上に働ける逸材だと思う。昨春の選抜大会のドロップの冴えには少なからず驚いた。ブレーキは特に鋭いとは思わなかったが、コントロールの正確さ、落下度の大きさは超高校級。自分の武器を少し乱用しすぎるきらいがあり、そのためか昨夏一度左肘をこわしている。肘の方はすっかりなおったというからこの機会にピッチングに工夫をこらせば素質はあるのだから南海が望んでいるように柚木君の後継者になれるだろう。
コメント
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