1960年
二十六日夜、伊豆方面の新婚旅行から帰ったばかりである。そこで圭子夫人(24)といっしょの写真を注文したらちょっとテレていた。昨春(法大四年)湿性ロクマク炎で入院、春のシーズンを棒に振った牧野だが、すっかり元気になっている。学生時代より体がひとまわり大きくなった感じさえする。「体に自信が持てるようになったからこそプロ入りにふみ切った。大学を卒業したときやれる自信があれば真っすぐプロ入りしたろうが、病気をしてしまったので・・・。しかしすっかり回復したところへ、私と同じような経験をした法大の先輩である戸倉さんが親身になってすすめてくれたので気持ちがきまった」そうだ。そして「もちろん投手としてやっていきたい」といっている。夏の都市対抗予選前に肩ならし程度のピッチングをはじめ、九月にはいってからぼつぼつ本格的に投げこんできた。十一月の産業対抗では登板できるコンディションを作りあげた。「よく学生時代にくらべてどうか?ということを聞かれるが、自分ではよくわからない。ただ、球がよくのびているときは自分でもわかるものだが、そういう球がまだないからかも知れない。しかし投げられる体になったということだけでもうれしい」いまの目標はまずスピードをつけること。プロのゲームを見てなおさらそれを感じているらしい。「なんといっても速い球に威力がなければプロでは投げられない。技巧派といわれる投手でも一応速い球は持っている。変化球と速い球の割合の違いで本格派と技巧派にわかれているだけだ。自分のいままでの投手経験からいってもいちばん打たれないのはストレートに威力があったときだ。ピッチングはやはり速い球が中心になっていかなければウソだと思う」速い球と同時に研究したいのがシュートで山内(大毎)をおさえることだという。「山内さんはまったくシュート打ちがうまい。だから山内さんでも打てないようなシュートをマスターすれば、まず大丈夫だといってもいい」圭子夫人とは法大時代からのつき合いだが「野球は数回見ただけでわからない」(圭子夫人の話)そうだ。牧野は「あまり野球にくわしくて細かい神経を使ってもらうよりは、その方がありがたい」と早くも息の合ったバッテリーぶりを見せている。明春、五日に西下、ホーム・グラウンド西宮球場に近い宝塚に新居をかまえる。それまで、牧野はトレーニング、サカナ釣り、猟銃を肩に歩きまわる。ちょっと太りすぎたからだ。牧野のスタート準備は着々と進んでいる。
日本石油・水野捕手の話「法大で牧野とバッテリーを組んだのはボクが四年、牧野が二年のときである。それから四年、ことしの産業対抗で牧野の球を受けてまず感じたのはスピードが落ちたことだ。もっとも牧野のコンディションを考えればそれもムリはないと思う。学生時代にくらべて腹が出て、腰のまわりにもぜい肉がついている。そのため上体が乗らず、腰もきれない。従って腕がさがる。というより昔のように上から投げられる体ではないのでどうしてもスピードがないわけだ。スライダー、シュートなど変化球の切れはそんなに悪くなかったが、スピードがないから六分程度のピッチングというところ。しかし、これが牧野の実力ではない。自分でもやる気になっているから、これからのトレーニングで腰や、腰のまわりのぜい肉を落とせば大いに期待できる。シーズン前半はムリとしても、後半にはきっと牧野らしいピッチングをみせてくれるだろう。またいまの牧野にとってムリに仕上げを急ぐことは禁物だと思う」
出身校 成田高ー法大。 身長、体重、きき腕 1㍍74、80㌔、右投右打。
生年月日 昭和十二年十一月九日。
現住所 千葉県印旛郡栄町安食三七一一。 背番号 未定。
二十六日夜、伊豆方面の新婚旅行から帰ったばかりである。そこで圭子夫人(24)といっしょの写真を注文したらちょっとテレていた。昨春(法大四年)湿性ロクマク炎で入院、春のシーズンを棒に振った牧野だが、すっかり元気になっている。学生時代より体がひとまわり大きくなった感じさえする。「体に自信が持てるようになったからこそプロ入りにふみ切った。大学を卒業したときやれる自信があれば真っすぐプロ入りしたろうが、病気をしてしまったので・・・。しかしすっかり回復したところへ、私と同じような経験をした法大の先輩である戸倉さんが親身になってすすめてくれたので気持ちがきまった」そうだ。そして「もちろん投手としてやっていきたい」といっている。夏の都市対抗予選前に肩ならし程度のピッチングをはじめ、九月にはいってからぼつぼつ本格的に投げこんできた。十一月の産業対抗では登板できるコンディションを作りあげた。「よく学生時代にくらべてどうか?ということを聞かれるが、自分ではよくわからない。ただ、球がよくのびているときは自分でもわかるものだが、そういう球がまだないからかも知れない。しかし投げられる体になったということだけでもうれしい」いまの目標はまずスピードをつけること。プロのゲームを見てなおさらそれを感じているらしい。「なんといっても速い球に威力がなければプロでは投げられない。技巧派といわれる投手でも一応速い球は持っている。変化球と速い球の割合の違いで本格派と技巧派にわかれているだけだ。自分のいままでの投手経験からいってもいちばん打たれないのはストレートに威力があったときだ。ピッチングはやはり速い球が中心になっていかなければウソだと思う」速い球と同時に研究したいのがシュートで山内(大毎)をおさえることだという。「山内さんはまったくシュート打ちがうまい。だから山内さんでも打てないようなシュートをマスターすれば、まず大丈夫だといってもいい」圭子夫人とは法大時代からのつき合いだが「野球は数回見ただけでわからない」(圭子夫人の話)そうだ。牧野は「あまり野球にくわしくて細かい神経を使ってもらうよりは、その方がありがたい」と早くも息の合ったバッテリーぶりを見せている。明春、五日に西下、ホーム・グラウンド西宮球場に近い宝塚に新居をかまえる。それまで、牧野はトレーニング、サカナ釣り、猟銃を肩に歩きまわる。ちょっと太りすぎたからだ。牧野のスタート準備は着々と進んでいる。
日本石油・水野捕手の話「法大で牧野とバッテリーを組んだのはボクが四年、牧野が二年のときである。それから四年、ことしの産業対抗で牧野の球を受けてまず感じたのはスピードが落ちたことだ。もっとも牧野のコンディションを考えればそれもムリはないと思う。学生時代にくらべて腹が出て、腰のまわりにもぜい肉がついている。そのため上体が乗らず、腰もきれない。従って腕がさがる。というより昔のように上から投げられる体ではないのでどうしてもスピードがないわけだ。スライダー、シュートなど変化球の切れはそんなに悪くなかったが、スピードがないから六分程度のピッチングというところ。しかし、これが牧野の実力ではない。自分でもやる気になっているから、これからのトレーニングで腰や、腰のまわりのぜい肉を落とせば大いに期待できる。シーズン前半はムリとしても、後半にはきっと牧野らしいピッチングをみせてくれるだろう。またいまの牧野にとってムリに仕上げを急ぐことは禁物だと思う」
出身校 成田高ー法大。 身長、体重、きき腕 1㍍74、80㌔、右投右打。
生年月日 昭和十二年十一月九日。
現住所 千葉県印旛郡栄町安食三七一一。 背番号 未定。