1967年
大相撲の親方衆が、もっと早く目をつけていたら、いまごろシコを踏んでいるかもしれない。とにかく「すごいな…」とため息が出るほどの巨体だ。188㌢、84㌔。いますぐプロに飛び込んでも外人を除けば一番のセイタカノッポ。中学時代、クラスメートは「お前のそばによると枯れ木のように見える」といって、いつも3㍍ほど離れて歩いたそうだ。「ガールフレンドなんてボクには…」とテレるのも、どうやらこの長身がウイーク・ポイントらしい。だが巨体をユニホームに包むとだれでもホレる。別人になる。ノロノロ運転ではない。すばらしい身のこなしを見せるのだ。昨年の夏、甲子園のマウンドを踏んだ。スカウトの目は彼に集中した。が、ピッチング以上に目を見張ったのが動きだ。バント処理のときのダッシュ力。ダイナミックなランニング。「まだ二年だし、あの動きならピッチングもグンとよくなる」そう確信してスカウトたちは、ことしを待っていたわけだ。パーフェクト、ノーヒットノーラン、奪三振ーそれから県下に残るような記録はない。重い豪速球を持ちながら…。とシロウト目に考えてみたくなるが母校の森本監督は笑って答えた。「まだまだ野球レベルの低い奈良ではね。三振を絶対しちゃいけない、という変な風習があるんです。だから植村が投げると他校の選手はバントばっかり、ひどいときは一試合で二十近くもしてきたチームがありましたね。これじゃ植村だって記録もなにもあったもんじゃない」早くからプロ入りの意思を固め「それが自分の進む道」と悟っていた。奈良の王子中学から県下でも有数の名門校郡山へ優秀な成績でパスした。というか頭のほうもキレる。メガネの裏で、キラリと光る目に、意思の強さがのぞいた。「セ・リーグのチームには、なんとなくひかれていましたからね。カープにお世話になります。プロは未知の世界ですからどこまでやれるかわかりませんが、努力の二字だけは忘れません」狭い郡山の町はいま植村のカープ入りの話で持ち切りだ。ボツボツ、ガールフレンドの申し込みも出てきている。「奈良では森中(大洋)以来の大物やさかいがんばってもらわんと…」と地元の期待も大きい。188㌢、84㌔、右投げ右打ち、18歳。
広島・木庭スカウト いちだんとまた身長がのびた。真上からオーバーハンドで投げおろすストレートは角度があって威力十分だ。それに球質が重い。巨人の金田よりも5㌢も高い本格派の投手だ。高校のときはゲームではほとんどカーブを投げていなかった。ストレートだけで押さえきれるのだから、いうことはない。中学時代は砲丸投げの選手をしていたと聞いているが大柄ながら敏しょうなところがあるのも、そのせいだろう。足も速い方だし、バネがある。一口にいえばサラブレッドだ。大分商の河原よりもいいだろう。
広島カープは、四日午後一時半から広島市基町の球団事務所で奈良郡山高・植村秀明投手(18)=188㌢、85㌔、右投げ右打ち=の正式入団を発表した。植村は広島カープがドラフト会議で第二位に指名、木庭スカウトが交渉に当っていた。典型的なオーバースローの剛球投手で、広島カープの新人契約第二号。
植村投手の話 早く一軍に上がってがんばりたい。プロについては、自分としてはまだ不安なんですが、一日一日努力を欠かさないで乗り切っていきたい。現在のプロの投手で、見ていて気持ちがいいのが巨人の金田さん。ストレートで勝負ができる投手になりたい。
木庭スカウトの話 高校時代はストレート、シュートで勝負してきた。大柄であるが下半身も強いし、プロではもっと下半身を鍛えることだ。それによって球速もさらにますだろう。へんに変化球を覚えるよりも、速球で押す投手に成長してもらいたい。タイプは違うが村田(福山電波)に負けないだけのものを持っているし、球威が重い。
大相撲の親方衆が、もっと早く目をつけていたら、いまごろシコを踏んでいるかもしれない。とにかく「すごいな…」とため息が出るほどの巨体だ。188㌢、84㌔。いますぐプロに飛び込んでも外人を除けば一番のセイタカノッポ。中学時代、クラスメートは「お前のそばによると枯れ木のように見える」といって、いつも3㍍ほど離れて歩いたそうだ。「ガールフレンドなんてボクには…」とテレるのも、どうやらこの長身がウイーク・ポイントらしい。だが巨体をユニホームに包むとだれでもホレる。別人になる。ノロノロ運転ではない。すばらしい身のこなしを見せるのだ。昨年の夏、甲子園のマウンドを踏んだ。スカウトの目は彼に集中した。が、ピッチング以上に目を見張ったのが動きだ。バント処理のときのダッシュ力。ダイナミックなランニング。「まだ二年だし、あの動きならピッチングもグンとよくなる」そう確信してスカウトたちは、ことしを待っていたわけだ。パーフェクト、ノーヒットノーラン、奪三振ーそれから県下に残るような記録はない。重い豪速球を持ちながら…。とシロウト目に考えてみたくなるが母校の森本監督は笑って答えた。「まだまだ野球レベルの低い奈良ではね。三振を絶対しちゃいけない、という変な風習があるんです。だから植村が投げると他校の選手はバントばっかり、ひどいときは一試合で二十近くもしてきたチームがありましたね。これじゃ植村だって記録もなにもあったもんじゃない」早くからプロ入りの意思を固め「それが自分の進む道」と悟っていた。奈良の王子中学から県下でも有数の名門校郡山へ優秀な成績でパスした。というか頭のほうもキレる。メガネの裏で、キラリと光る目に、意思の強さがのぞいた。「セ・リーグのチームには、なんとなくひかれていましたからね。カープにお世話になります。プロは未知の世界ですからどこまでやれるかわかりませんが、努力の二字だけは忘れません」狭い郡山の町はいま植村のカープ入りの話で持ち切りだ。ボツボツ、ガールフレンドの申し込みも出てきている。「奈良では森中(大洋)以来の大物やさかいがんばってもらわんと…」と地元の期待も大きい。188㌢、84㌔、右投げ右打ち、18歳。
広島・木庭スカウト いちだんとまた身長がのびた。真上からオーバーハンドで投げおろすストレートは角度があって威力十分だ。それに球質が重い。巨人の金田よりも5㌢も高い本格派の投手だ。高校のときはゲームではほとんどカーブを投げていなかった。ストレートだけで押さえきれるのだから、いうことはない。中学時代は砲丸投げの選手をしていたと聞いているが大柄ながら敏しょうなところがあるのも、そのせいだろう。足も速い方だし、バネがある。一口にいえばサラブレッドだ。大分商の河原よりもいいだろう。
広島カープは、四日午後一時半から広島市基町の球団事務所で奈良郡山高・植村秀明投手(18)=188㌢、85㌔、右投げ右打ち=の正式入団を発表した。植村は広島カープがドラフト会議で第二位に指名、木庭スカウトが交渉に当っていた。典型的なオーバースローの剛球投手で、広島カープの新人契約第二号。
植村投手の話 早く一軍に上がってがんばりたい。プロについては、自分としてはまだ不安なんですが、一日一日努力を欠かさないで乗り切っていきたい。現在のプロの投手で、見ていて気持ちがいいのが巨人の金田さん。ストレートで勝負ができる投手になりたい。
木庭スカウトの話 高校時代はストレート、シュートで勝負してきた。大柄であるが下半身も強いし、プロではもっと下半身を鍛えることだ。それによって球速もさらにますだろう。へんに変化球を覚えるよりも、速球で押す投手に成長してもらいたい。タイプは違うが村田(福山電波)に負けないだけのものを持っているし、球威が重い。