1965年
藤本総監督の再出馬以来、阪神のムードが見違えるように明るくなり、それにつれて成績も手のひらを返すようによくなった。ベテランも若手も、いきいきしているが、これは藤本総監督の、巧みな選手起用によるところが大きい。藤本総監督のファーム時代「藤本学校」と呼ばれる英才教育が行われた。いまそれが実を結び、ファームから一軍へ続々と優秀な若手が送り込まれている、左腕交告もその一人だ。杉下監督が昨年、交告を左投手陣の有望株と見込み力を注いでいたが、今春のキャンプ・イン初日で制球難のため失格のラク印を押され、以後一軍入りのチャンスがつかめなかった。藤本学校の校長である藤本総監督は、この使いものにならぬといわれた交告に手を加え、再び第一線に活用できるところまで仕立て直した。交告の欠点、制球難を解決するため、腕を止め目標を定めて投球するようフォームを改良した。フォームを手直しするとスピードが落ちるものだが、指導よろしくを得て交告の球速は少しも衰えなかった。六日の産経戦で交告は今シーズン初めて先発した。まだ及第点とはいえなかったが、一度は失格とされ、そのままファーム埋もれてしまうところなのに、一軍入りのチャンスをつかんだため、のびのびとしたピッチングが印象的だった。杉下監督に見込まれながらチャンスがつかめず、かえって杉下監督が去ってから開花した交告。皮肉な現象だが、これも藤本総監督がファーム時代から選手の力をつかみ、気心を知って、それを巧みに生かしているからほかならない。
藤本総監督の再出馬以来、阪神のムードが見違えるように明るくなり、それにつれて成績も手のひらを返すようによくなった。ベテランも若手も、いきいきしているが、これは藤本総監督の、巧みな選手起用によるところが大きい。藤本総監督のファーム時代「藤本学校」と呼ばれる英才教育が行われた。いまそれが実を結び、ファームから一軍へ続々と優秀な若手が送り込まれている、左腕交告もその一人だ。杉下監督が昨年、交告を左投手陣の有望株と見込み力を注いでいたが、今春のキャンプ・イン初日で制球難のため失格のラク印を押され、以後一軍入りのチャンスがつかめなかった。藤本学校の校長である藤本総監督は、この使いものにならぬといわれた交告に手を加え、再び第一線に活用できるところまで仕立て直した。交告の欠点、制球難を解決するため、腕を止め目標を定めて投球するようフォームを改良した。フォームを手直しするとスピードが落ちるものだが、指導よろしくを得て交告の球速は少しも衰えなかった。六日の産経戦で交告は今シーズン初めて先発した。まだ及第点とはいえなかったが、一度は失格とされ、そのままファーム埋もれてしまうところなのに、一軍入りのチャンスをつかんだため、のびのびとしたピッチングが印象的だった。杉下監督に見込まれながらチャンスがつかめず、かえって杉下監督が去ってから開花した交告。皮肉な現象だが、これも藤本総監督がファーム時代から選手の力をつかみ、気心を知って、それを巧みに生かしているからほかならない。