プロ野球 OB投手資料ブログ

昔の投手の情報を書きたいと思ってます

西田亨

2017-01-23 22:46:39 | 日記
1960年

大毎は投手陣強化をはかって東映から西田の移籍補強に成功した。ところが首、足の故障から二軍生活を続け、もっぱら治療に専念していた。その西田が二年ぶりにマウンドに立った。試合前ブルペンのピッチングに目をやってみると、ゆっくりとしたペースで、長い時間(およそ二十分)をかけウオームアップしていた。普通の投手なら十ー十五分くらいのところである。本来のピッチングを考え出しながら、やっているようにもみえた。速い球はほとんど投げてなく、もっぱらコーナーにボールを集め、肩をあたためているふうであった。プレーボールとなったが、案にたがわずスピードボールはなかった。ところが打者一巡の三回まで1本外飛があっただけで、あとはみな内野ゴロであった。カーブ、シュート、シンカーとことごとくボールを低目に集めコーナーをうまくついていた。とくにカーブを内外角にうまくコントロールしていたのが目立った。速球がないためチェンジアップを勝負に使って打者のタイミングをはずしていた。四、五、七、八回安打を許したが、走者を出してからのピッチングが実にうまかった。間の取り方、打者とのかけ引きもなかなか堂にいっていた。二年間もマウンドを離れるとカンを取り戻すのに相当苦労するものだが、西田の場合、立派に元に戻っていた。前半、味方の5点リードで楽な気持ちで投げられたのも好投できた原因の一つだが、終始慎重に自己のペースで投げたことが完投できた最大の原因だと思う。いま一つスピードが身につけばオニに金棒となる。投球数109球だったが、九回完投では普通だと思う。

今季初登板のビル西田が完投勝利を飾った。報道陣に「おめでとうだネ」と自分から話しだし「シュートとスロードロップがよかった。きのう登板を命じられたが完投できるとは思わなかった。四、五回なら押えられると思っていたが・・・。後半は疲れた」と、かたことの日本語でたて続けにしゃべる。大毎の安部社長、和田代表もわざわざダッグアウトまできて握手するという喜び方。
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大矢根博臣

2017-01-23 22:18:41 | 日記
1960年

4勝のうち3つが巨人からあげた勝ち星。杉下監督が「巨人戦用の投手を作らなければ・・・」といっていたが、この試合で大矢根の右腕に巨人キラーのレッテルを大きくはることができたと思う。前夜は本郷の宿舎で珍しく九時をまわるとマッサージをして、しんみょうに床についたという。プレート度胸では彼の右に出るものはいないといわれていても、こと巨人戦、首位争いに直接ひびくとあれば、よほど慎重にこの試合にそなえたのであろう。この日の彼得意のシュート、スライダーが巨人打者をようしゃなく切り落としていった。立ちあがりややこれが高目に浮くきらいがあったが、味方の先取点とともに回を追って巨人キラーの本領が発揮された。とくに威力を発揮したのはシュートで与那嶺、王、国松といった左打者にはこのタマがものをいった。そしてもっともマークする長嶋にはシュートで攻めたあと、外角へのスライダーで泳がせている。大矢根が迎えたピンチといえば、四回国松にホームラン性の大飛球を右翼に打たれたときであろう。1-0後の内角高目のストレート、これは国松がもっとも得意とするタマである。おそらく投げた瞬間ハッとしたことであろう。幸い風向きは逆、しかも森の美技でこのピンチから一瞬にして抜け出すことができた。あとはシリに帆をかけるがごとくさっさと走った。巨人打線の歯車はいたずらにカラ回りするだけ。巨人は二度どころか、つづけて三度、大矢根にニエ湯を飲まされた。大矢根の右腕を見るとくの字のように曲がっている。シュートを多く投げるためにもう真っすぐにはもどらないのだ。「それでもいいさ。巨人を倒して、ことし優勝すればいいではないか」きっと大矢根はそう思っているに違いない。
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大石正彦

2017-01-23 20:44:36 | 日記
1960年

ー現在の調子はどうか。

大石 いいね。体調ともにー。

ー好調の原因についてー。

大石 キャンプからずっと故障ひとつせず順調にやってきたこと。技術的にはコントロールがよくなっている。たとえば右打者なら外角へストレートかスライダーを投げてカウントをかせぐ。打ってもファウルになるからね。それでインザボールにしてからシュートで勝負する。大体ボクのピッチングは相手の目先を変えることにある。だからコンビネーションがよくなければカモになってしまう。それとウチのスタッフはみんなタイプが違っている。リリーフで成功しているのもそういったことが原因の一つだね。

ーいま投げているタマは?そして得意なのは?

大石 ストレート、カーブ、シュート、スライダーくらいかな。得意といっても力で押すピッチャーじゃないからこれというタマはない。しいていうならシュート。

ーどんなタイプの打者がニガ手か。それはだれか。

大石 コツコツ当ててくる人はいやだね。吉田(阪神)のようなタイプだ。ミートするのがうまいから、なかなかこちらの誘いに乗ってこない。(笑い)岡嶋(中日)もニガ手だな。油断してるとでっかいやつを打つからね。左のバッターもこわい。横から投げるピッチャーはだれだって好きじゃないよ。(笑い)もっとも好調なときはそれほど気にならない。内角へはずれるカーブやストレートでファウルさせておいて、シュートで打ちとればいい。巨人に2勝したのはそのピッチングがうまくいったからだ。

ーというと好きなタイプは逆に大振りしてくるバッター?

大石 どちらかといえばひっかけやすいからね。それだってひとつ間違えばスタンドへ直行だもの。こわいことには変わらないよ。(結局はどれもこれもいやになってしまった。しかし、これは技巧派の投手に共通した弱味ではないだろうか)

ー今シーズンの抱負についてー

大石 こんなにすべり出しのよかったことは入団以来(七年目)はじめてだ。でもこの調子がいつまでもつづくとは思っていない。いま5勝3敗だが、せめて最高の勝ち星をあげた三十二年の12勝(11敗)よりいい成績はあげたい。さいわいバックがはりきって点をとってくれるから六回まで3点に押えれば勝てる。調子のいいうちにドシドシ出てかせぎたいと思っている。
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宮崎晋一

2017-01-23 20:20:17 | 日記
1961年

中日ドラゴンズは、二十二日午後二時から中部日本新聞社貴賓室で高田代表、濃人監督が立ち会いのもとに、日鉄嘉穂のエース宮崎晋一投手(25)=1㍍75、75㌔、右投げ右打ち、久留米商出身=と正式契約したむね発表した。同投手は大洋、南海などに誘われていたが「プロで働くなら、濃人監督のもとでー」という強い希望から中日入りが実現したもの。すでに会社側とも円満に話しあいがついて退社。コミッショナーの認承があり次第、大体二十七日ごろから出場できる見込み。純アンダースローの変化球投手として、すぐに第一線での活躍が期待されている。背番号は47。

ー中日に入団した動機は?
日鉄二瀬当時から、濃人監督をよく知っていた。一度ぜひ、濃人さんのもとで働いてみたいと思っていた矢先に、話があったのでさっそく中日に入団したわけです。
ーいままで練習はやっていたか?
名古屋にくる前は、毎日約四十分くらいピッチングの練習をやってきたので、からだのコンディションは大丈夫だと思います。
ー下手投げだというがー。
投手は中学生当時からやっており高校にはいった年に先制にコーチされ下手投げをやりはじめた。いまのフォームになって、ちょうど十一年目になります。
ープロでやれる自信は?
プロ野球はときどき平和台で西鉄のゲームを見ただけ。セ・リーグのことはなにもわからない。とにかく、入団したからには、一生けんめいにやるだけです。

濃人監督の話 宮崎君は下手投げといっても、ウチの石川、広島とは本質的にちがったピッチングをやる。長いシーズンを乗り切るために、いまの投手力ではコマが不足している。しかもチームの調子があまりよくないときだけに宮崎の入団は、投手力に新風を送りこむ意味でも大きなプラスだと思う。もちろん石本コーチも、私も大丈夫やれるという確信をもっている。とにかく、この春久しぶりにピッチングを見たのだが、以前にくらべコントロールが非常によくなっている点が一番目についた。

高田代表の話 日鉄嘉穂の好意で、宮崎投手を獲得できた。ピッチングについては大丈夫ーという折り紙つきだし、本人もしっかりしているので、ウチの大きな戦力になるものと期待している。

昭和十一年二月五日、福岡県久留米市生まれ。小学校五年生のときから野球をやりはじめ、久留米商を経て二十九年日鉄嘉穂に入社。以後同チームの主戦投手としてことしで八年目になる。その間、三十二年には全国炭鉱大会で優勝に貢献。また都市対抗の補強選手として三十一年(日鉄二瀬)三十五年(東洋高圧)に出場している。昨年の成績は15勝5敗。六人姉弟の末っ子である。
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山崎正之

2017-01-22 22:42:35 | 日記
1965年

山崎正が見事なピッチングを見せた。フォーク・ボールを武器に内外角をカーブ、シュートでたんねんに攻め、6安打を許したはしたが、10三振を奪って1点に押え切った。山崎正の勝利は巨人時代の三十六年八月三十一日の対大洋戦以来のもので、同年五月十八日の国鉄戦についでプロ入り二度目の完投勝利。この山崎正が好投できた原因は、初回から見せた東映の猛攻であった。トップの西園寺から五番の萩原まで安打を連ねて3点を奪い、15球で井上をKO、代わった与田からも二、三回に山崎正、毒島の本塁打で追加点をあげた。

スイッチ・ヒッターというのはあっても、投手、野手(打者)どれでもというスイッチ選手は珍しい。ところが、東映の山崎正は、投手を断念して打者に、そしてことし五月中旬、投手に再転向をすすめられてからも外野を守り、代打、代走で出場していた。その山崎正が、みごと四年ぶりに完投勝利をやってのけた。かつて巨人の藤本英雄選手(現姓中上)が肩を痛めて外野に転向、また投手に逆もどりして完全試合をやったことはあるが、当の中上氏は「僕の場合は、投手から外野をやってすぐ足をネンザした。野手としてはほんのわずか。こうなったら投手でもう一度やるしかなかった。だから山崎正君のケースとは違う」という。四年ぶりの奇跡ともいえる復活。当の山崎正は「完投できるとは思わなかった」というが、五回の無死二、三塁、六回の一死一、二塁の二度のピンチにバーマ、玉造、ロイ、和田ら主力打者五人をから振りの三振に仕止めたピッチングはみごとだった。そして、打者としてのユメを捨て切れなかった山崎正の心に、勝利は大きな波紋をえがいた。「僕の今後は監督さんが決めること・・・」といいながらも「きょうは夢中で投げたが、打者の顔色がわかり、思うところに投げられるようになれば・・・投手だと必ず出られるからね」と意欲をみせてきた。しかし多田コーチはいう「もっと研究することだ。とくに直球のコントロールを身につけることだ」この1勝を生かすも殺すも、山崎自身の今後の努力にかかっていることだけはたしかである。この山崎正が二足のワラジを投手一本で進めるようになったとき「投手は九人目の打者」という言葉も生きてくる。
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青木宥明

2017-01-22 21:12:50 | 日記
1960年

青木は八回から中村にかわるとさっさとベンチから飛び出てフロを浴びて帰りじたく。報道陣に囲まれた彼はきのう先発と聞いてびっくりしました。相手が中日さんですからねという彼は、その晩眠れなかったそうだ。先発は五月十二日以来のことだからムリもない。開幕早々トントンと勝ち星を五つならべて幸運な道を歩んだ彼は、最近ずっと二軍生活で練習に励んでいたという。そしてまず目方を落とすようと浜崎コーチにいわれ、いま75㌔ぐらいになった。これがかえってこの日のピッチングに役立ったわけだといわんばかり。ついていたんですよ。あんまりいいからといって書きたてられると弱いですよと逃げを打つ。井上にホームランされたのは自分ではインコースのシュートを投げたと思ったのですが、浜崎さんにあれはシュートではないと注意されましたと頭に手をやった。いまは僕の勝ちよりも優勝しなくてはねーとさっぱりしている。浜崎さんから太らないようにしろといわれて忠告を守り多摩川で走ってやせたのがよかったそうだ。ロッカーへ浜崎コーチ、水原監督が現れやせたのがいいのやといわれペコリと頭を下げた。青木は四月十九日対広島四回戦いらい二ヶ月ぶりの勝利を飾り6勝。

サイドからの変化球で中日打線をわずか2安打に押えた青木は、みごと先発投手の責を果した。外角へ流れる大きなカーブと、ひざもとへ落ち気味に決るシュートでゆさぶり投法。中日打線はポイントを見失った。とくにこの日、青木のピッチングで威力を発揮したのは右打者のひざもとをねらうシュートであろう。一時は多摩川ドッグ入りした青木が、ここまでに回復できたのはこのシュートに威力をとりもどしたからだ。しかもこの日のシュートは打者の手元にきてシンカー気味に沈む。中日の各打者はほとんどといってよいほどこのタマにひっかかった。四回森が放った三遊間の初安打はカーブであり、六回井上のホーマーはやや外角寄りのストレートだった。はじめにカーブで誘ってシュートで勝負する。中日打線が放った打球は外野に飛んだものわずか8球三塁方面への凡打が数多くあったことでもいかにこのシュートが有効だったかがうなずかれよう。
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牧勝彦・宮崎晋一

2017-01-22 19:57:53 | 日記
1961年

阪神が新人牧を先発に出せば中日も五回、二人目の河村が一点とられたあとの一死二、三塁のピンチに、新人宮崎投手をリリーフに起用した。宮崎は二十七日、後楽園の対国鉄五回戦でデビューしたが、地元中日球場ではこれが初登板。このピンチに立たされながら、三宅秀を2-3から三塁ゴロ藤本をセカンドフライに退け得点を与えなかった。そして六、七回と投げ、七回裏に代打小淵と交代したが、その間二回3分の2イニングで横山の安打1本だけ。かつての好投手武末(南海ー西鉄)ばりに真下から投げ上げる独特のフォームにげんわくされて阪神打者もとまどったかたちで、当りがぴたりととまってしまった。ここで宮崎が1点阪神に追加点をゆるしていたら小淵の3ランホーマーも生まれなかったのではないかー。とすると、この新人宮崎も、かくれたヒーローの一人だ。

徳永コーチの話 宮崎は国鉄戦のときよりもスピードがでてきた。きょうはシュートがよかったようだ。

試合前、両軍選手のメンバーを交換した本多コーチが、ベンチへ帰るなり「きょうは大アナだ」と大きな声でいった。というのは阪神の先発投手が予想外の新人牧だったからだ。牧は今シーズン豊橋工から阪神入りした一年生。キャンプ中から藤本コーチが期待はしていたが、一軍への登用のチャンスに恵まれず、もっぱらウエスタンリーグで、その腕をみがいていた。ところが二十七日甲子園の対西鉄戦四回戦に奪三振19の記録をたて、一躍脚光をあび、そしてこの日プロ入り初のリーグ戦登板となった牧は2イニング投げ、三回打者のとき交代したが一、二回ともピンチをきり抜けまずまずのでき。

牧投手の話 いつもより堅くなったが、運よく二回まで投げられた。ドロップを多く投げました。森さんの三振はドロップ、スクイズは山本さんのサインどおりに投げて、はずすことができました。
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伊藤幸男

2017-01-22 17:34:09 | 日記
1962年

近鉄は十六日伊藤幸男投手(19)(大鉄高出、積水化学)の入団を発表した。身長1㍍79、体重75㌔、右投げ右打ち。上手投げの本格派でことしの都市対抗野球に日本新薬の補強選手で出場した。
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福原勝

2017-01-22 16:17:19 | 日記
1959年

ともかく前評判は凄かった。昨年度の甲子園大会で一番注目されていたが第一回戦の松阪商戦で、立ち上がり3四球とタイムリーであっさりと得点を許してしまった。甲子園初登板というので固くなったせいもあろうが、慌てたのはネット裏にいたスカウト連中、益田産業高の一年生のときからマークされ、正面切って勝負を挑み、無類の制球力を誇る福原が、晴れの甲子園で馬脚を現したのである。甲子園の第一回戦敗退で前評判は大分低下したが、福原自身の答弁は固くなっていたことも事実だが、打者を牛耳ろうとしたのがわるく、ことに四球を出したあとリキんだのが失敗だったといっていた。しかし、巨人と近鉄との引き抜きの手は激しく、夏の大会終了後、一段と激化した。なぜ近鉄を選んだかーそれは近鉄の投手力が非力であり、見るにしのびず働けば働き甲斐があると感じたこと。また近鉄のカラーがなんとなく好きになったという。非力みるにしのびずというあたりはそうとうな闘争心の所有者である。大洋との四回戦(オープン)で2イニング投げたが、正統派らしい、いいピッチングを見せた。林コーチの言葉を借りると普通に投げても、ナチュラル・シュートするから、バッターにとって打ちにくい。武器はシュートだが、新人投手としては及第点がつけられ、夏ごろから第一線に登場できるとのこと。渡辺主将も新人で使えるのは、河野と福原だと言明しているのをみても、高く評価されていることがわかる。典型的なファイト・マン。山陰の雪国育ちにしては珍しい性格で、福原も第一線で投げさせてもらうことが・・・とはっきりいってるくらいだから、負けん気の強いことはそうとなもの。本人自身スタミナをつけること。ピッチングが単調にならないことに重点をおいているというが、近鉄の契約第一号として、昨年十一月に早くも契約したという割り切りよう。基礎的にいい素質を持っているのだから、案外な伏兵的投手として注目される。
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中島淳一

2017-01-22 15:22:40 | 日記
1960年

大毎が初回四球の田宮をバントで送ったのはあまりに消極的だった。これに反し、西鉄は積極的であり、しかも的確な攻撃作戦をとった。西鉄の投手力弱体のせいもあろうが、前半は大量点をねらう作戦のほうが王道だと思う。二回豊田が本塁でスライディングすれば、この回先制点をあげられた。足をかばったのかもしれないが、すべった方がかえって危険は少ないものだ。とにかく西鉄としては大毎との戦力差を考えれば、取れるときはがっちり取らなければいけない。中島はカーブ、スライダーのコントロールが悪かった。風は右翼から左翼へ吹いていたし、山内が左へねらうことは中島にはわかっていながら好球を投じたのも制球が思うままにならなかったからだろう。一方、中西はさいきん好調ではあるが、西鉄に負けがこんでいることが頭にあるのか、中島同様不安定なピッチング。この中西にたいし、関口が2-0と追いこまれながら、きわどい外角へのスライダーを選んだすえ、中西に真ん中を投げこませて右前に適時打したのはうまかった。それにここで田辺を代打に送ったベンチの起用策も功を奏したし、川崎監督のこの日のサイ配ぶりは文句のつけどころがなかった。

稲尾はまだスピードが十分ではないが、中島が自信をもち、島原がベテランらしい安定した投球を取りもどしたのは大きなプラス。中島は得意のカーブが悪かった第一戦でも、シュート、スライダーで一応もちこたえるテクニックを覚えかけているのが心強い。島原は若い投手の多い西鉄ではやはり貴重である。「きっかけさえつかめば」と言っていた本人だから、これを機にベテランの味を期待したいものだ。もっともタフな畑を救援に回した起用法も、いまの持ちゴマでは最良の方法だろう。これで稲尾が球威を取り戻し若生、田中喜が出そろうとかなり強力なスタッフとなる。
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中島淳一

2017-01-22 15:07:02 | 日記
投球フォーム・・・オーバー・ハンド・サイドハンド

球種・・・ストレート、スライダー、カーブ、シュート、ナックル

1960年

大毎は、遊撃柳田の二塁悪投がもとで、また先制された。内野のエラーはいつも頭の痛いkとおだ。しかし三平はスピード豊かなストレートと鋭いカーブで三回以後を封じた。七回先頭打者にヒットされると小野にバトンを渡した。ランナーを出すとわずかにスピードが落ちるが、小野を助けてことしは働きそうだ。中島もサイド・ハンドとオーバー・ハンドからのカーブで七回まで好投した。田宮に2本ホームランされたが、いずれもイン・コース、ベルトあたりのストレートとカーブであった。中島の若さもあるが田宮の老巧さに負けたというべきだろう。これ以外はまったく乗ずるスキを与えなかったのはりっぱである。八回の3点で勝負が決まったが、投手リレーの差が勝敗のポイントであった。八回中島がワン・アウト後バッター田宮を迎えるとホームランされているので、左の団野にリリーフさせた。田宮・榎本と左打者がつづくので、川崎監督はこの二人だけのつもりで出したのだろうが、団野もまだ若い。田宮を歩かせ、榎本にヒットされて降板した。そのあと田中喜が絶好球を山内に3ラン・ホーマーをかまされてしまった。川崎監督が考えすぎたともいえるが、策にたよりすぎたというべきだろう。大毎は、七回三平が安打されるとすかさず小野を立てたのに比べ好投している中島を代えたい気持ちはわかるが、代える投手を誤った。勝敗を別にして両先発の三平と中島がこれだけ投げたことは大きな収穫である。
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中島淳一・玉造陽二

2017-01-22 14:52:58 | 日記
1960年

中島でミサイル打線を相手に七回までよく持ちこたえた。四回山内に一発かまされた2ラン一本だけ、畑にマウンドをゆずるまでわずか4安打に押えていた。八回代打坂本に右翼打されてマウンドを降りたが、そのまま通路へ出てきてたばこをすぱり、すぱり。もう少しで完投できたねと報道陣に水を向けられると「いやだめですよ、とりわけいいできでもなかったです。立ち上がりに四球を出しながら一発をくらわなかったからどうにか持ちこたえた。いつもならあそこでおしまいになったところだ」とハニかんだ笑いをたたえながらまたたばこをうまそうにふかしていた。健投の中島にこの日は打線の援護射撃もあった。三回左中間に二塁打して先取点の足場をつくり、六回2-1からの劣勢から逆転の口火を切る右前安打を放った玉造の打棒が、ことさら光っていた。「二本目のヒットも内角高目の球、ボクは左翼にばかりしか打てないとおぼえられてしまったので、つとめて引っぱるようにしている」という。この日の右前安打はまさにその研究の成果というべきだろう。「ことしのうちはボクたち中堅ががん張らないといけない、全試合に出ているのはボクだけだから、とくに責任を感じる」と意気さかん。
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石川緑

2017-01-22 11:08:43 | 日記
1960年

ミドリ愛称から受ける感じとは反対に、タフな体力の持ち主だ。広島よりスピードはあり、シュートも鋭いものを持っている。球質はオーバーハンドの投手とほぼ似ているが、これがアンダーハンド気味なフォームから打者の手もとにきて変化するので打ちにくい。四月二十四日、中日球場で巨人をわずか1安打に完封したのは記憶に新しいところ、苦手といわれる左打者にも外角低目へシュートで攻め、この投法の弱点をさらけだすことなく、みごと巨人打者をなで切りにした。また昨年までの無制球が影をひそめ、そのうえ最近はスローカーブでタイミングをはずすなどピッチングの内容にも一段と幅がみられるようになってきた。これは実戦に数多く登板することによって自ら会得した、とうといものであり、これが現在の成績をあげる大きなキメ手となっている。最近の試合では登板につぐ登板でさすがの石川も疲労気味だが、児玉、伊奈などのカムバックに見逃しがつくまではがん張らなくてはなるまい。

石川緑の話 いま疲れている。肉体的にでなく、クロスしたゲームが多いので精神的にまいっている。調子としては悪いことはない。いやなチームはコツコツくる国鉄。これからの問題は打者のかけひきを覚えることだ。15勝くらいは記録したい。
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大崎隆雄

2017-01-22 09:16:43 | 日記
1961年

スタンドから「どうして打てないんだ」と巨人打線にヤジがとぶほど、大崎のカーブのコントロールがすばらしかった。プロ入り初の巨人の試合に11三振を奪い、無安打に押えたのだからさぞうれしかったろう。真っ先に出迎える谷口コーチ、これにつづく三原監督とナインの握手を受けながら、帽子をとって何度もおじぎをする。その額は玉の汗でいっぱいだ。「きょうはカーブのコントロールが非常によかった。その反対にシュートが悪かった。二十六日の中日戦にでたときは、逆にシュートがよくてカーブが悪かった。全くむずかしいですね」勝負度胸のよいのは定評のあるところ。五回は長嶋を三球三振させて平然としていた。「あれはカーブ、カーブ、ドロップのコンビネーションで投げた。八回は2点差があると思うとつい気がゆるんでしまって。でも低めにはずれるカーブに長嶋さんが手を出してくれたので、助かった」首位打者の長嶋も新人の大崎に手が出ない。「きょうの三振は六つでしょ」と聞き返し「11だよ」といわれると「え!そんなに多かったのですか。やっぱり、あがっていたんだなあ」と笑って逃げてしまった。ほんとうにあがっていたのか、おとぼけなのか、その点に新人らしいはにかみを残していた。四月二十四日に十九歳の誕生日を迎えたばかり、多摩川等々力の合宿の個室にいるが、東京では次兄賢雄さん(法大野球部)が相談相手だ。京都の実家からは「好きなようにやりなさい」と何もいってこないという。大崎がノビノビと投げまくっているのは、家族の無言の声援があるからだろう。
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石川緑

2017-01-22 08:53:08 | 日記
1960年

この日の石川の投球は実に素晴らしかった。快投という形容がぴったりあてはまる。無安打、無得点の大記録を寸前で逸したとはいえ、巨人打線をきりきり舞いさせた投球は立派であった。一回まず土屋を三振させて好調なすべりをみせたが、正直なところ、打者が一巡した四回あたりが成否の大きなポイントとみられた。ことに老練な与那嶺、当っている王の両左打者に対するコースとコンビネーションが注目された。ところが外角へ大きなシュートをかませながら、イン・コースを緩急二種のカーブと伸びのあるストレートできめつけた。イン・ローを攻め抜くだけの球力があれば下手投げの投手は左打者に弱いという定説は成り立たないであろう。これまでの石川緑にはアウト・ローで伸びのストレートがなかった。シンカーを有効に生かすには、伸びのあるストレートとのミックスが絶対条件である。スピードを殺したアウト・カーブも、引きつけの足りない打者の泳ぎ(上半身)を誘って成功した。五回のトップ打者長嶋に二ゴロを打たせたシュートも威力があった。いずれにしても、再三痛い目にあわされながら(一軍のゲームで)黙々として努力、一歩一歩築きあげてきただけに、この日のピッチングは今後の彼に相当大きな自信を植えつけるであろう。相手が巨人であったからなおさらだ。だが走者のいるときのピッチング(投手としてのフィールディング)打者とのかけひきなどまだまだ身につける課題が多い。
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