12月に、かかりつけの歯医者から
定期検診のハガキが来ていた。
これまでは検診日が書いてあったが、
今回は書いてなかった。
「電話予約して下さい」ということだったので、
ついつい面倒くさくてほっといた。
半年に1度というのはちょっと多すぎる。
それでも気になったので、
土曜日に電話して、今日診察を受けに行った。
受付で診察内容を書くようにいわれた。
その用紙には、
「なぜ来たのですか」
「どのような診察を希望しますか」
「どこが悪いのですか」
「痛いところ以外も治療しますか」
などと書いてある。
おそらくこれは、
歯が痛くて初めて来た人のためのものだろう、
とは思うが、腑に落ちない。
私みたいな、
定期検診を受ける人のための用紙があってもいい。
「なぜ来たのですか」と問われても、
「ハガキが来たから」としか書きようもない。
「どこが悪いのですか」といわれても、
自分では悪いところはないと思っているのだ。
「痛いところ以外も治療しますか」
に至っては、「おれは痛いところなどない」
と大声出したくなってしまった。
「何か相談したいことはありますか」
というところに、
「ここで入れていただいたブリッジの歯がとがっていて、
いつも気になり舌で触ってしまう。
気にしなければいいのですが、
2年弱我慢していても、どうしてもだめです」
ということを書いた。
私の名前が呼ばれて、診察椅子に坐る。
歯医者がさっそく
「どこがとがっているのですか?」と訊いてきた。
(あなたが入れたんじゃないか)
とこころの中で突っ込みを入れた。
「左側の下の奥歯です」
それから彼は、そのとがったところを削りはじめた。
10分ほどかかって終わった。
舌で触ると前より丸くなった。
これでこのブリッジが気にならなくなるかな。
それから私の全部の歯のチェックをはじめた。
終わって口を濯ぎ、左を見ると、
液晶のディスプレーとパソコンがあった。
カメラもあった。
すると歯医者がいった。
「現在の歯の状態を写真に撮ります」
U字型のプラスティックのツールで両側から唇を押さえ、
歯が丸見えの状態で写真を撮った。
これはちょっときつかった。
シャッター音がしないのでデジカメだなと思った。
カメラからフロッピーのようなものを抜いて、
パソコンに入れ、
すぐにディスプレーに私の歯の写真を表示させた。
実に汚い口の中だった。
歯茎は上がっちゃってるし、
歯の裏側の歯ブラシの届かないところには、
食べ物の滓があった。
それをひとつひとつマウスの矢印で指し、
歯医者は解説する。
「歯茎はきれいですが、
虫歯になりかけているところがありますね」
目の前にこんな“証拠写真”をつきつけられては、
私は何も抵抗できない。
今までは、歯医者が口の中の歯をとがったもので触り、
「こことここに虫歯があります」
なんていっていても私は見えないから、
「ほんとかな」なんてなんて思ってた。
デジカメがこんなところに使われるとは…。
きっとカメラメーカーが考えたんだろうな。
でも、こうして自分の目で確認できることはいい。
これからしばらく歯の治療が続きそうだ。
なんだかんだいっても、
この歯医者を私は一番気に入っている。
土曜日に、所沢地方総合卸売市場に行った。
楽家でいつも一緒になるTさんが働いていて、
先週飲んでるときに、
「一度、来てよ。仕事手伝って」
なんていわれていた。
私は、過去に生協で販売の仕事をしていたので、
ものを売る商売に興味がある。
市場とはどんなところか見てみたかった。
市場は、
関越高速道路の所沢インターチェンジの近くにあった。
行ってみてびっくりした。
建物が大きくて、駐車場も広かった。
大雑把だが、建物は100メートルはあった。
その半分ぐらいにお店があり、
残りはだだっ広い空間になっていて、
いろいろな野菜やみかんの箱が積んであった。
フォークリフトが忙しく動き回っていた。
ここに集まった野菜などが、
所沢近辺のスーパーや八百屋に並ぶという。
Tさんの店は、野菜が主な商品だ。
加工食品も置いてあった。
所沢周辺の食品を扱う店や居酒屋などの業者が
お客さんだ。
土曜日には、一般の人も買いに来る。
なにしろ安い値段で売っている。
10時半頃に私が行くと、
「今頃来たの。もうほとんど終わっちゃったよ」
という。
私は、ちょっと失敗したなと思った。
なにしろ八王子のほうから朝帰りしたので、
その時間になってしまった。
そのことはTさんにいわなかった。
いいわけにしかならない。
しかし、
ぽっと行ってそこの商品を売るのは出来ないな、
と思った。
なにしろいろんなものがある。
値段が頭に入ってないと出来ない。
かえって迷惑かけてしまうだろう。
私は、仕入れてきた商品の搬入を手伝った。
11時過ぎ、店をそろそろ片づけているときに、
新所沢駅前のある居酒屋の経営者が来た。
ネギや里芋やその他の野菜を買っていった。
そのやりとりを聞いていても、
むずかしいと思った。
でも、商売って面白い。
Tさんは、昨年の9月に福祉関係の職場を辞めた。
そこの上の人と意見が合わなくて辞めたらしい。
今年の4月から自分で福祉の施設を作る。
それまでのつなぎとして市場で働いていた。
短期間によく市場の仕事をマスターしたな、
と感心する。
いつも楽家では、笑顔を振りまいてるのに、
市場でのTさんの表情は、きびしかった。
かっこよかった。
昨日は、以前の会社の同僚たちとの新年会だった。
場所は八王子。
私にとって初めて降りたところだった。
八王子があんなに賑やかな街だとは知らなかった。
3年前、われわれの勤めていた会社のリストラがあった。
東京にあった本社工場が、山梨に移転ということだった。
そして、親会社が経営から手を引き、社名が変わった。
社員の半分ぐらいが退職した。
昨日集まったのは8人だった。
私より12歳年下の者が2人、あとはもっと若い連中だ。
なぜか私はそういう若いひとたちと気が合っていた。
みな機械設計、電気設計、ソフト屋など技術者たちで、
現在もそれらの仕事をしていた。
退職したとき彼らはそれぞれ転職先が違っていたが、
昨日会って話を聞くと、2つの会社で働いていた。
転職した先でいいことがなく、
うまくいっていた者が誘って、
2つの会社に落ち着いたようだ。
ちょっぴり羨ましかった。
私は資材購買をやっていたなんの技術もない人間だ。
お呼びがないのは当然だ。
飲みはじめると、
さっきまでむかしの会社で仕事をしてきて飲んでいる、
という感じだった。
あの頃、よく仕事が終わってから
行きつけの飲み屋でのんだっけ。
しかし、みんな今でも楽ではないようだ。
半導体業界がどん底なので、一時帰休があるという。
私はかなり酔ってしまって帰るのが億劫になった。
Mっちゃんが「泊まって下さい」というので、
お世話になることにした。
彼とは、あの会社でバンドを組んでいた。
会社の年末の打ち上げパーティーで
演奏したことがあった。
現在、ヴァイオリン、パカッション、ギター、
という編成でバンドをやっているという。
今、リコーダーの人を入れたいと思っている、という。
「おれ、参加しようかな」というと、
「ぜひやりましょう。ケーナもいいな」と彼がいった。
今度、練習に行ってみよう。
こんなわけで昨日は九想話をサボってしまいました。
4位 九想 19点
着ぶくれし吾が子よちよちついてくる 4
年惜しむ雲の流れの速さかな 6
年暮るる手酌なれども豊かなり 9
大晦日、句会のことをまったく失念し、
寝る間際に作ったにしては、
そこそこの成績によろこんでいます。
「着ぶくれ」
「着ぶくれ」という季語から、
私の世界である“暗さ”が感じられない。
そうするとイメージがわかないのです。
イメージがわかないと句想が広がらない。
大人のひとの着ぶくれを句には出来なかった。
そんなことを考えているうちに、
息子たちの小さなときのことを思い出した。
2、3歳頃の冬、風邪を引かせてはいけないと思い、
沢山着せていた。
その着ぶくれの息子たちを、
「部屋の掃除をするから散歩にでも連れてって」
と女房にいわれ、
団地の隅の公園などによく行ったものだった。
おんなじ顔(なにしろ一卵性双生児なのだ)の
UとKが私のあとをついてくる。
とても可愛かった。
「年惜しむ」
去年は、私にとって最悪の年だった。
職場での昼休み、
青空にめがけて煙草の煙を吹きかけていると、
思わぬ速さで雲が行くのが見える。
その雲の速さが、
年惜しむの感慨を加速させるようでした。
「手の字のつく句」は、
1/3にここに書いたように、
差し入れし手に火のような乳房かな
が最初に出来た句だった。
でも季語がないので断念し、
投句した句になった。
これが思いのほか選句され、とてもうれしかった。
へたなひとと飲んでるより、
ひとりのほうが楽しく酒が飲める。
そんなことを詠んだ句です。
むかしASAHIネットでやっていた
「第七句会」の仲間から二人目の芥川賞受賞者が出た。
ADSLにしてから、
私は朝日、毎日、読売新聞のホームページを見ている。
それらに16日夜の
芥川、直木賞選考会の結果が書いてあった。
そこにあの懐かしい長嶋有(俳号・肩甲)さんの姿があった。
彼は、この春文學界新人賞をとった。
(5/17九想話 文学界新人賞)
夏には芥川賞候補になった。
(7/18九想話 芥川賞候補)
そして今回の受賞。
すばらしいとしかいいようがない。
それにしても、
おれは何をやってるんだ。
今日は楽家に行きました。
けっこう飲んできた。
1時間ぐらいで帰ろうと思って行ったのですが、
11時過ぎまでいてしまった。
それで、今日は九想話を書く元気がありません。
7時20分ぐらいに行ったら、
「今、Sさんが帰っちゃった」
とマスターがいう。
会いたかった。
しばらくひとりで飲んでいた。
年暮るる手酌なれども豊かなり
これは、昨年末に投句した句ですが、
こんな気持ちで飲んでいた。
今日は句会の成績発表だった。
この句は、「手の字を入れる」という兼題で
句会の中で一番の句だった。
今日最高にいい出来事だった。
それ以外最悪の日だった。
ああ…、、もうだめです。
眠い。
しつれいします。
今日は仕事がうまく出来ずかなりまいってます。
私はつくづく製造の仕事が合わないなと落ち込こんでいる。
家に帰りたくない心境でした。
息子たちにも、祝日で休みだったハッピーな女房にも
顔を会わせたくなかった。
こころの中をさらすわけにいかないし、
かといって、明るく振る舞うことなどできない。
「ただいま」と帰って、あとはただ黙っていた。
ほとんど家族そろって夕食など食べることなどないのに、
今夜は皮肉にも全員集合だ。
いつもはテレビがついているが、なぜかついてない。
「UとKは、去年成人式だったっけ?」
昨日も女房がおれにいってたが、アホなことを訊く。
彼女には時間の感覚が薄い。
おれにもあてはまることですが…。
「そうだよ」という息子たち。
「そういえば、雪がすごく降ったよね」
そんなことはよく覚えてる女房だ。
「昨日の沖縄の成人式のやつらはひどかったな」
黙ってるつもりのおれが話していた。
会社で仕事が始まる前に、テレビで観ていた。
「おかしいよね。
成人式なんてやらなくてもいいのに」
と女房。
おれも同意する。
そのあと、女房の成人式への意見が続き、
それにおれと息子たちは相槌をうったり、
無視したりという時間が流れた。
こんな夕飯の時間だったけど、
家族はいいな、と思った。
明日、1日だけ生きられる。
2、3日前から無性に髪の毛がじゃまになった。
これはどうしてなのだろう。
1日に伸びる髪の毛の長さは決まっていて、
それもそんなに多くはないはずだ。
ところがある日突然、頭が鬱陶しくなる。
私の場合、
仕事中は作業帽をかぶっているのでよけいだ。
土曜日に散髪しようと考えていたが、仕事になった。
今週はがまんしよう、と思った。
今日10時頃起きて、
テレビを観たり新聞を読んでいても
頭が気になってしかたがなかった。
でも、1日しかない休日やりたいことが沢山ある。
明日は出勤なのです(世間は3連休だというのに)。
やっぱり来週にしよう、なんて、
女子駅伝をテレビで観ながら思っていた。
それでも、どうしても髪の毛が気になった。
行きつけの理髪店に電話をすると、
4時以降空いているという。
行くことにした。
4時10分前にロダンに行くと、
奥さんが準備して待っていた。
私は、ほとんど奥さんがやってくれる。
「正月はどこか行かれたんですか?」
と、私に準備しながら奥さんが話しかけてきた。
そうか、九想話は読んでいないんだな、と思った。
読んでいれば、私の正月のようすは分かる。
11月に来たとき、
九想話のURLを書いたカードを渡していた。
「田舎に行って、おふくろに会ってきました」
と私は応えた。
しばらく互いの母親のことの会話が続いた。
きっと最初は九想庵を見てくれただろうが、
続けて見てはくれないだろうな、九想話なんて、
と思いひとり納得した。
息子さんがパソコンが好きで、
散髪してもらっているとき、
よくパソコンやインターネットの話題になった。
奥さんもその影響でインターネットを
よく覗いているということだった。
髪がカットされ、シャンプーが終わり、
椅子の背もたれが倒される。
顔にシャボンをぬってもらっているうちに、
私の記憶は遠のき、熟睡体制に入った。
耳かきの動きで目が覚めた。
ああ…、終わってしまった。
私は顔を剃ってもらうときが一番好きだ。
あの剃刀の刃が、肌を滑る快感。
むかし、それが怖くて、
15、6年ほど床屋に行かなかった。
独身のときは自分で髪を切り、
結婚してからは、女房にやらせていた。
最後の仕上げをしているとき、
「ホームページよく見てますよ」
と奥さんがいった。
「そうですか。うれしいな」
「赤くなったディスプレー直りました?」
「いや、直らないんで、
これから物置に使わないで置いてある
ディスプレーと交換しようと思ってるんです」
お金を払いロダンを出た。
外は春のような暖かさだ。
私は、こころまでぽっかぽかに暖かかった。
(まだ、ディスプレーは交換してない。
赤くなると横っ面ひっぱたいてます)
昨日、パソコンを立ち上げると、
ディスプレーが赤みがかっていた。
見づらくて困った。
このディスプレーは、
今使ってる前のパソコンを買ったときに
ついていたものだ。
丸4年は使っている。
壊れたか、しょうがねぇな、と思った。
ディスプレーの設定を変えてみたが直らない。
しょうがなしにその赤い画面でいろいろやっていると、
息子が来た。
「U、まいったよ。
ディスプレーがこんなになっちゃった」
というと、
「おれのもたまになるよ。
たたいたりすると直るよ」という。
むかしのテレビじゃないんだから、
たたいて直るわけないないよな、と思ったけど、
横っちょをたたいたらいつもの状態に戻った。
私はあきれかえってひとり笑ってしまった。
そのあと腹がたった。
なんでマニュアルに書いてないんだ。
「画面の状態がおかしくなったときは、
故障と思う前に、
まず、ディスプレーの横っちょを
ひっぱたいて下さい。
ときどき直ることがあります」と。
しかし、しばらくするとまた画面が赤くなる。
そのたびにディスプレーをひっぱたたいている。
キーボードうったり、ディスプレーたたいたり、
焼酎の入ったグラスを持ったり、
パソコンの前にいる私の両手は忙しいです。
昨日の朝日新聞の西埼玉版に、
「携帯で話すふり食い逃げ重ね60回」
という記事があった。
「携帯電話で話すふりをして店外に出、
そのまま逃げて無銭飲食を繰り返したとして、
所沢署は9日、
**容疑者(52)を詐欺の疑いで逮捕した」
という書き出しだった。
私はこの記事を読んで、
(こいつだな、楽家で飲み逃げしたのは)
と思った。
昨年末、楽家で無銭飲食をした奴がいた。
楽家に「WANTED」として、
そいつの似顔絵を描いたものが貼ってあった。
マスターは漫画家で、
ある業界紙の4コマ漫画を描いているぐらいだから、
その似顔絵はよく似ているらしい。
さんざん飲み食いして、
突然ケータイで話しはじめ、
そのまま外に出て帰ってこなかった。
そいつは、なかなかの役者で、
飲んでいるときに、
「これから友だちと会うんだけど、
電話こないな。なにやってんだろう」
なんて話をして伏線をはっていたらしい。
「携帯電話で話しながら店外に出る人をたまたま見かけ、
警戒する様子が店員に見受けられなかったことから
犯行を思いついた」
と記事に書いてあった。
そうだよな。これはよく見かけることだ。
なかなか人間観察眼のある奴だなと感心した。
こいつなんか、
俳句でもやればいい句を作れるかもしれない。