若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

アウトリーチと私的領域/公的領域の区別

2020年10月31日 | 地方議会・地方政治
どうもこんばんは、若年寄です。

今回は、数年前の新聞記事がツイッターで流れてきたので、それをお題に「私的領域の保護とアウトリーチ福祉」について考えてみます。元ネタの新聞記事は、日本学術会議の任命拒否で話題となった6人の一人、加藤陽子氏が「私的領域と公的領域」について書いた文章です。(今回、日本学術会議には触れません。)

【私的領域の擁護】

国家が国民の私的領域を侵そうとしている 加藤陽子さん - 2017衆議院選挙(衆院選):朝日新聞デジタル 2017年10月6日
======【引用ここから】======
 世界中で国家と国民の関係が大きく変化しています。ここで国家とは行政府を意味します。世界では、国民の側が国家に「NO」を突きつけましたが、日本では国家の側から国民との関係を急速に変えた点が特徴的。今の混沌(こんとん)の理由も、ここにあります。
 戦後日本が培った原理に、「私的領域」と「公的領域」の明確な区別があります。近代立憲国家として必須のこの原理に、安倍政権は第一次の時から首相主導で手をつけ始めました。
 2006年に60年ぶりに改正された教育基本法では、前文の「真理と平和を希求」が「真理と正義を希求」に修正されました。「平和」は一義的ですが、「正義」の内容は価値観によって違い、国家が定義すべきものではありません。
 明治の日本が学んだ西欧の憲法は、過去の宗教戦争の惨禍に学び、国民の思想や信条に国家の側は介入しないという良識を確立していました。だから、教育勅語という精神的支柱の必要性が説かれたとき、明治憲法の実質的起草者だった井上毅(こわし)は「君主は臣民の良心の自由に干渉」すべきでないとして反対しました。
 結局、教育勅語は出されましたが、国務大臣が副署しないことで、政治上の命令でなくなった。国家は国民の「私的領域」に立ち入るべきではないとの良識が、この段階では保たれていたのです。

======【引用ここまで】======

日本が培ってきたはずの私的領域と公的領域の明確な区別が、近年崩れつつあります。

国家は国民の私的領域に立ち入るべきではない、全くもってそのとおりです。
私的領域と公的領域は明確に区別すべき、全くもってそのとおりです。
井上毅は、君主は臣民の良心の自由に干渉すべきでないと主張しました。

国家・行政府が国民の私的領域に立ち入ってはならないのです。

【私的領域の範囲は?】

ではここで、私的領域とは、思想・良心・内心の自由に限られるものでしょうか。それとも、財産権、プライバシー権、家族関係といったものも含まれる概念と捉えるべきでしょうか。

私的領域を思想・良心・内心の自由に限定して捉えた時、公的領域はそれ以外という事になります。財産権、プライバシー権、家族関係等が公的領域となれば、行政府の管轄となり、管理・介入・指導・干渉の対象となります。この考え方を採用した場合、行政府は、個人の思想には介入しませんが生活には介入することになります。

「行政府は思想・良心・内心には立ち入りませんが、あなたの所有地に立ち入り生活状況を監視し介入します」というのは、実際のところ、私的領域/公的領域の区別を無意味にします。行動は思想の表れであるので、行動を監視し生活に介入できるのであれば、結局のところ思想そのものへの介入が可能になります。

思想・良心・内心の自由は、私有財産の保障が無ければ空虚なものとなります。財産権が保障されていなければ、思想に基づく表現行為も容易に制約できてしまいます。表現の自由はそもそも財産権の派生でしかない、という見方もできます。また、私的領域という日本語からは、私的な生活空間が含まれると考えるのが自然です。こうした観点から、私的領域の保障のためには、思想・良心・内心に限らず、財産権・プライバシー権、家族関係等も含めて捉え、これらをひっくるめた私生活全般に対し行政府は立ち入るべきでない、という考え方が、私的領域/公的領域の区別の重要なポイントになってきます。(うろ覚えですが、ハンナ・アーレントも、私的領域をかなり広く捉えていたように思います。)

【アウトリーチ】

さて、昨今、福祉・介護分野においては「アウトリーチ」という考え方が蔓延しています。

アウトリーチ | 介護用語集 | 老人ホーム選びのパートナー ベネッセの介護相談室
======【引用ここから】======
本来は「手を差し伸べる」または「手を伸ばして取る」という意味。援助が必要な状態であるにもかかわらず要請をしない人たちに対して、支援者のほうから家庭などに出向いて手を差し伸べる「積極的な取り組み」のことをいう。
======【引用ここまで】======

福祉や介護の分野では、様々な論者が論者ごとに「あるべき生活水準」「あるべき生活様式」を設定し、これに適合しない生活をしているケースを全て掘り起こし、国民全員に漏れなく、健康で文化的な最低限度の生活をさせるのが行政の責務だ、という意見が幅をきかせています。そのための取り組みが、アウトリーチです。

こうしたアウトリーチの取り組みを、近隣住民や私的団体が行っている段階では、お節介で済むかもしれません。しかし、私的団体が自治体に繋いだり、あるいは、自治体が直接家庭を訪問して介入したりするようになると、私的領域/公的領域の問題が生じます。

アウトリーチ論が全面的に肯定された場合、全住民の生活が自治体の担当者の監視下に置かれます。プライバシーや自己決定権といったものが大きく後退し、個人の生活は公的領域に取り込まれてしまいます。

Aさん本人は現状を良しとしていても、第三者が
「私の考える『あるべき生活水準』に、Aさんの生活は達していない」
と判断し、Aさんの家の中に調査員が入り込み、行政や介護サービス事業者ら多くの人がAさんの生活に介入し、その費用を行政府に負担させるという事例が、介護分野を中心に多発しています。

また、特定の業種について、事業者に対し「廃業しろ」と声高に叫び、その業種の従業員に対し「辞めて福祉を使え」と主張する差別主義者・藤田孝典氏のように、独立生計を立てていた人の生活や仕事に干渉しわざわざ自治体に依存させようと斡旋し、その過程で手数料や補助金を得ようとする活動家も存在します。

アウトリーチの名の下に、私的領域は行政府の介入を受けています。個人の自由を守る防波堤が、アウトリーチ論によって穴を開けられています。

【申請主義の再評価】

アウトリーチを全面的に肯定した場合、行政府は網羅的に生活実態の調査し情報を収集する根拠を得ることになります。
「支援を必要とする人全てに、申請を待たず、行政の側から福祉サービスを漏れなく提供しよう」
という理屈は、優しいようでいて非常に危険です。支援を必要とする人全てに公的福祉サービスを提供するためには、全ての人の生活実態を把握することが原理的に必要になります。「サービスを必要としていそうな人」を洗い出すためには、全ての人の生活情報を持っていなければならないからです。

これに対し、私的領域/公的領域の区別という、戦後日本で培われた原理を福祉分野に適用したのが「申請主義」です。すなわち、個人の私生活へ行政は不干渉とするのを原則としつつ、税金を原資として行政府が用意した給付メニューを利用したい場合は、当事者からの申請によらなければならないとする考え方です。

この申請主義であれば、当事者からの申請がなければ行政府による生活への介入は行われません。給付要件に該当するかどうかの調査も申請者に対してのみ行われることになり、プライバシー権の侵害もある程度抑えられます。

申請主義に対しては、
「公的福祉サービスを受けたいのに受けられない人が出てくる」
「自分の受けられる福祉制度がどれか、有るのかどうか分からない」
といった批判があります。

これについては、
「制度や申請方法を知る手段を増やす」
とか、
「役所の営業時間を伸ばす」
といった対処法が考えられますが、あくまで申請主義の枠組みの中で取り組むべきです。

【行政府の肥大化】

申請主義の場合は、申請者に対し、役所が把握している基本情報と申請書に書かれた生活情報とを照らし合わせて、福祉サービスの条件に該当するかどうかが判断されます。

他方、アウトリーチの場合は、全住民に対し、福祉サービスの条件に該当するかどうかを役所が網羅的に調べることになります。

申請主義とアウトリーチとを比べると、福祉サービスの給付件数・金額ともにアウトリーチの方が増える事になります。加えて、網羅的に調べるのですから、人件費を中心とした調査費用が膨らむことになります。

もし、他の公共事業を見直しして、
「福祉サービスAをアウトリーチで実施するために、別の福祉サービスBを廃止し、そこで浮いた人手と費用をAに回そう」
といった予算の組み替えをするのであれば、歳出の膨張をある程度は抑えることができます。

しかし、アウトリーチを主張する人々から、そういった意見を聞いたことがありません。福祉予算総額は膨らむ一方であり、同時に、行政府の権限と裁量も膨らんでいます。福祉メニューはどんどん増えて細分化・複雑化しています。左派も民族右派も、「福祉を拡充しろ」「きめ細かい福祉を」の一辺倒です。

冒頭、加藤陽子氏は
「国家が国民の私的領域を侵そうとしている」
と嘆いていましたが、これは安倍政権下だから生じた問題ではなく、きめ細かな福祉行政を望む国民が自分の首を絞めていただけの話です。福祉分野を中心に、行政府による私的領域への介入を大幅に認めてしまい、むしろ国民が国家からの介入を積極的に求めた結果、国家による思想・良心の自由への侵害のハードルが下がってしまったのです。
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市議会と居眠りに関するエトセトラ

2020年10月27日 | 地方議会・地方政治
どうもこんばんは、若年寄です。

今回は、市議会開会中に議員が居眠りをしていて、市長がツイッターでつぶやく。これに議会が反発して全員協議会を開き市長を呼び出して・・・というニュースをお題に。

安芸高田市長、市議会から「どう喝」 ツイッターで市議の居眠り指摘後 「敵に回すなら政策に反対するぞ」 | 中国新聞デジタル
======【引用ここから】======
石丸市長は9月25日、一般質問で市議の1人がいびきをかいて寝ていたとツイッターで指摘した。今月1日には、前日の定例会閉会後の市議会全員協議会に呼び出されたとし、「議会の批判をするな、選挙前に騒ぐな、事情を補足してやれ、敵に回すなら政策に反対するぞ、と説得?恫喝(どうかつ)?あり」と投稿。「これが普通かどうかわかりませんが、実態なのは確かです」と書き込んだ。
======【引用ここまで】======

この話題についてツイッター上の反応をざっくり見た感じでは、
「議員は議会で議論をするのが仕事で、そのために高い議員報酬を貰っているのに、居眠りなんてけしからん」
という論調が多かったように思います。

けしからんとお怒りになるのも分からなくはないのですが、ちょっと違った視点を提示したいと思います。

【居眠り議員がいるから一般質問できる】

今回の居眠りが問題となった場面は、記事にもあるとおり、本会議における「一般質問」においてです。

一般質問とは何かというと、市議会の本会議において、市政における課題や特定の事業について議員側がテーマを絞って質問し、市長や幹部職員がそれに答えるというものです。この一般質問は、条例案や予算案といった議案とは異なり、議決の対象とはなりません。

一般質問の質問者となった議員は、議会ごとに定められた質問時間や発言回数の中で市長や職員に対し質問するのですが、では問題です。
質問者以外の議員はその質問時間中に何をしているのでしょうか?

質問した議員に対し反論しているのでしょうか。
質問した議員を後押しするための補足説明をしているのでしょうか。
回答した市長にダメ出ししているのでしょうか。

正解は、何もしていません。

何もできません。議論に参加できるわけではありません。質問者と市長のやり取りを聞いて、どちらが優勢だったかジャッジする場面が出てくるわけでもありません。ただただ、ひたすらジッとしているしかありません。
(ヤジが飛び交う市議会もあるかもしれませんが、それは正式な発言ではありません。)

質問者一人あたりの持ち時間が1時間とすれば、その間、質問者と市長とのやり取りを終わるのをただ待っているだけなのです。質問者である議員にとってその1時間は、市長に対し公の場で言いたい放題に言える貴重な1時間なのですが、他の議員にとってはする事の無い1時間です。

他の議員にとって、質問者の設定したテーマが自分も取り組んでいるものであれば、
「何を質問してどんな答弁が出てくるのだろう?」
「質問者はきちんと市長から言質をとることができるか?」
と意欲をもってやり取りを聞いていられると思います。

あるいは、会派(政党や支持団体、考え方ごとに集まった議員のグループ)の中で質問テーマを練って分担して質問している内容であれば、
「会派でテーマを練る際、私も気になっていた。市長はどう答えるのか?」
と、我が事として興味をもって聞いていられると思います。

しかし、質問テーマが興味のないものであったり、前の日に前の質問者が既に同じテーマで質問していたり、一般質問と言いつつ個別事例についての陳情活動であったり・・・・となると、他の議員からすれば、退屈でしかないというのは十分に理解できます。

※参照
議員はなぜ居眠りをしてしまうのか | 西東京市議会議員 田村ひろゆき | いいね!西東京
======【引用ここから】======
ただ、そうなってしまう理由もわからなくはないのです。というのも、3日目ともなると、同じ内容の質問が出てくることがあります。すると、一言一句同じ答弁が繰り返されます。原稿丸読みなので本当に一言一句同じです。別の会派が聞いたからやめますとしてもいいのですが、たいがい「すでに質問がありましたが」と前置きしつつ同じ質問を繰り返します。正直飽きます。
======【引用ここまで】======

そうすると、
「議論に参加できるわけではないし、その議論を経て採決が控えているわけでもないし、その場で何かすることがあるわけでなく、むしろ何もしてはいけない。なら欠席した方がマシだ」
という議員が出てきても、私は無理の無いことと思っています。

このように退屈な場面に嫌気がさして欠席してしまった議員が居たとします。そして、時には本当に体調等が悪くて欠席する議員も居るでしょう。欠席者の合計が半数を超えてしまうと、本会議は成立しません。議員の過半数が出席しなければ会議を開くことはできません。途中で退席してしまった場合も、過半数を下回れば本会議は止まってしまいます。

「質問議員の質問が程度の低い内容で、市長も通り一遍の答弁しかしないことも分かりきっている。退屈極まりない」
と思っている議員が、それでも本会議に出席し、目を瞑って質問中ずっと座り続けているからこそ、一般質問は成立しています。

【議員は有権者を映す鏡】

それでもまだ、けしからんと思う方も居ると思います。
「議員なんだから、ありとあらゆる市の公共事業、市政課題に関心を持って目を光らせておくべきだ。一般質問で他の議員が質問した項目、質問内容、答弁発言の全てを把握しておくべきだ。一般質問の最中に居眠りしている暇なんてあるか」
と。

しかし、市議会議員はそういった意識の高い有権者の票だけで当選しているわけではありません。市内の特定の地域の代表者、特定の業種の代弁者として、その地域、業種の票だけで当選する場合もあります、というか、その可能性が高いのです。国政でもワンイシュー政党が成立するように。

公立学校における教員の待遇改善・教育予算拡大を掲げ小中学校の教員票で当選する議員がいる一方で、公共工事の増加を掲げて建設業界の票で当選する議員がいます。他方、「うちの家の前の道路を舗装してくれ」といった声を届ける事を使命としてA地域住民の票で当選する議員がいて、B地域の経済振興を掲げてB地域住民の票で当選する議員がいます。

教員票で当選した議員にとって、公共工事増はそれほど関心あるテーマではありません。同様に、建設票で当選した議員は、教員待遇改善を、有権者からの付託を受けたテーマとは思っていないでしょう。合併前の旧A地域の票で当選した議員にとって、合併前旧B地域の事は他人事と思っているかもしれません。

そんな個別利害票を背負って議員になっている人に、自治体の行政課題全般に目を光らせろと要求しても、そりゃあなかなか難しいでしょう。そうした議員が一人で行う一般質問は個別業界・団体・地域の利害を代弁するものでしかなく、他の議員から見れば
「また自分の票田への利益誘導のための一般質問か。そういう事は個別に市長室で要望活動してればいいだろ。なんで一般質問の体裁で無関係な議員の時間を拘束するのか。」
ということにしかならないのです。

個別の地域、団体の要望のレベルから、議会と市長の二元代表制にふさわしい質問に脱皮させるためには、それなりの仕掛けが必要です。

【議員同士で勉強、議論を】

一般質問における居眠りは、今回の安芸高田市議会に始まったわけではなく、地方議会にとっては「あるある」ネタです。

【議員2万人のホンネ】同僚議員…この人、大丈夫か? | 注目の発言集 | NHK政治マガジン

この中から、私が注目する議員コメントをいくつか抜粋してみましょう。

======【抜粋ここから】======
「レベルが低い。居眠りは当り前、会議の欠席が多い人もいる。議案書や書類が読みこめない人、議場に置きっぱなしの人もいる」(40代男性議員)
「居眠りですが、一般質問の場合ですが、各議員が議題をつくり通告して持論を展開するので時々的外れや認識違いの内容のものがあり、黙って聞いているのが辛い時がある(居眠りしてしまうこと…)」(50代男性議員)
「会議で一般質問を4年間まったくしない議員がいること。質問もとんちんかんが多かったりと勉強しない議員が多い」(70代女性議員)
「『議員間討論』はほとんどない。更に、常任委員会での発言が制限された。また、本会議での『討論』も時間を1人20分に制限された。」
「議員間討論など、議員同士の活発な意見交換の場を、もっともっと増やしていただきたい」(60代男性議員)

======【抜粋ここまで】======

会派やグループで勉強会をして、市政のどの事業やどの予算支出に問題があるかを洗い出し、質問項目を整理して問い質すポイントを明確に絞り、内容の重複を避けるようにすれば、少なくともこの勉強会に携わった議員がこの一般質問の最中に居眠りをするような事はないでしょう。

私は、
「居眠りをする議員がけしからん」
という側面よりも、自分の支援者の個別利害を一般質問に持ち込む議員、一般質問の内容や焦点が定まっていないのでのらりくらりの答弁しか出てこないような質問をする議員、市長にヨイショしてお手盛りの答弁を貰って満足する議員、そうした質問者の側に大きな問題があると思っています。

定足数を満たすためだけにそこに座らされている議員を責めるのではなく、居眠りさせてしまう質問しかできない議員をこそ責めるべきです。そして、質問の水準や練度を上げるために有効な方法が、上記議員コメントで出てきた議員間の勉強会・意見交換です。

もし、市議会議員全員が一堂に会して勉強会を開いて議論をし、事務事業評価を行い、勉強会の内容を踏まえ議員ごとにテーマを割り振り、個別の議員ではなく議会として一般質問を行い、そこから出てくる市長側の答弁如何によっては市長提出予算案を大幅に減額する修正案を可決成立させてしまう・・・なんて事になれば、冒頭の安芸高田市の若き市長なんかは全く太刀打ちできなくなるでしょう。
ツイッターで
「説得?恫喝?」
なんて舐めた口を叩く余裕はなくなります。

就任直後の若い市長に舐められてネットで晒される、そんな態度を取られてしまうのは、居眠りする議員と居眠りさせてしまう程度の質問しか出来ない議員とがいて、
「そんな議員・議会に対してはのらりくらりとした答弁で躱せばOKだしテキトーな議会対応でOKだ」
と市長や幹部職員から思われていることの延長線上にあります。

安芸高田市議会の皆様、どうぞ議員間で勉強会をし、議論をし、市政に非効率・不公平な事務事業が山積している事を把握し、市長提出予算案・条例案に鋭く切り込んでください。市議選で当選したままでは、個別利害の代弁者から脱皮できません。個別利害を餌に切り崩して多数派工作が出来てしまえば、市長や幹部職員にとって市議会はお飾りでしかありません。そのレベルであれば市長や幹部職員から舐められっぱなしになります。

【追記:熊本市議会の緒方夕佳さんへ】

さて。

先ほども挙げた

【議員2万人のホンネ】同僚議員…この人、大丈夫か? | 注目の発言集 | NHK政治マガジン

の中に、面白いコメントがあったので最後にご紹介。

「・・・
また、いまだに、議員特権が横行していることも問題です。海外視察や、費用弁償(議会出席手当)、国保の助成上乗せした人間ドックの補助…これだけ市民の生活が苦しく、また市財政が逼迫している中、議員だからという理由で優遇される理由が分からない。
・・・」(女性市議)


メディアを利用して、市議である自分専用の託児室やベビーシッターを公費で用意しろ、と議会事務局に圧力をかけて特権的待遇を要求していた熊本市議会の緒方夕佳さん、大いに反省してください。
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県職員をWHOに派遣して、コネが出来て、その代金1億円なり ~ちと高くありませんか黒岩知事さん?~

2020年09月12日 | 地方議会・地方政治
どうもこんばんは、若年寄です。

地方自治体から職員が中央省庁へ出向したり、他の地方自治体へ派遣されることは珍しくないのですが、国連の機関へ派遣されるというのは非常に珍しいケース。
その国連に派遣された職員が、そのまま国連の職員になっちゃったという案件が発生しました。

関連情報は下に掲載しますが、時系列を先にまとめてみましょう。

======
〇2016年6月13日
 角由佳先任准教授が順天堂大学医学部附属浦安病院から、神奈川県政策局ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室に異動となり、神奈川県の技幹となる。
〇2016年12月
 角由佳技幹が、神奈川県から、スイス・ジュネーブの世界保健機関(WHO)本部の高齢化部局へ派遣される。派遣期間は2年を予定。
〇2017年7月18日
 神奈川県の黒岩知事が、ジョン・ベアード WHO(世界保健機関)エイジング・アンド・ライフコース部長と面談。これに同行したのが角由佳技幹。
〇2018年12月
 派遣予定期間の2年を経過。
〇2019年夏
 WHOから転職の勧誘。角由佳技幹は神奈川県に報告、相談していたとのこと。
〇2020年8月
 WHOの採用試験に合格。
〇2020年9月
 WHOの正規職員となる。

=======

県は角由佳氏に対し、給与負担などで計1億円超を支出してきたそうですが、県にとっての成果は「アプリの開発に助言をした」。
アプリを開発したのではなく、開発に際してWHO職員の立場から助言しただけ。
高い助言料だなぁと思わずにはいられません。

そもそも、神奈川県の「ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室」で勤務したのはわずか半年。
それから3年以上をWHOで過ごしています。

「ヘルスケア・ニューフロンティア」は、黒岩知事の目玉政策。その部署に、わざわざベテラン医師を採用して配置したんですよ。目的があって雇用して、ろくな成果もないまま半年で異動させるというのは非常に考えにくい。
しかも、この手の健康増進事業は、1年や2年で成果が出るようなものではありません。事業を実施し、プログラム実施前と実施後の利用者の健康状態の調査をし統計をとり、利用者の声を聞き、効果の有無を見極め、微調整を繰り返し、ある程度の期間をかけて健康に向けたプログラムを構築していく、そんな長期的スパンで実施する性質の代物です。
それを、しかも知事の目玉施策でわざわざ医師を採用して、半年でその人を外部に派遣する???

ここで、邪推が湧いてきます。

WHOで働きたいなと思った角由佳氏。
WHOで働くことはやぶさかではないが、費用までは持てないよ、という順天堂大学。
何か目立つことをしたいな、と思った黒岩知事。
この三者の思惑の中で、
「一旦、県職員として在籍し、その後に県からWHOへ派遣する形を採ろう。そうなれば費用は県負担」
という絵が出来上がったのではないか・・・というね。

そして、もともと医師であり優秀な能力を有していた角由佳氏に対し、WHOが
「派遣じゃなくて正規職員になりませんか?」
と勧誘するのは、そりゃあ当然の流れですし、角由佳氏がもともとWHOで働きたいと思っていたのであれば、この申し出を断るはずがありません。

問題は県の側です。
半年だけ県職員として働いて、3年間のWHOへの派遣費用を税金で負担し続け、議会に対しては
「派遣期間が終わったら県職員として再び働いてもらいますから」
と説明してきた県担当者、そして黒岩知事の責任が問われます。黒岩知事の見込み・見通しが甘かったのか、そもそもそういう話になっていたことを知っていたのか。

思惑はどうであれ、派遣期間3年について角由佳氏はほぼWHOの仕事しかしていないわけで、実質的には「神奈川県がWHOに運営費を拠出していた」という事になります。黒岩知事のええカッコしいのために1億円使って、それが果たして正当化されるのでしょうか。WHOにコネができたとして、そのコネがなければ得られない情報や技術なんてあるんでしょうか。

〇県が1億円超支出してWHOに派遣の職員、自己都合で退職し転職 9/10(木) 13:31配信 読売新聞オンライン
======【引用ここから】======
神奈川県が、独自の健康増進政策を進めるために必要だとして、2016年からスイス・ジュネーブの世界保健機関(WHO)本部に派遣した女性技幹(46)が自己都合で退職し、WHOに転職した。県は女性の給与負担などで計1億円超を支出してきたが、目に見える成果は乏しく、「いずれは県に戻り、WHOで得た最新の知見を還元してもらう」という計画も頓挫した。県議会では当初から、派遣の効果に懐疑的な見方があり、それでも推し進めた県の責任が問われそうだ。(佐藤竜一)
 県によると、女性は医師で、16年6月に県に採用され、半年後の12月からWHOの高齢化部門に派遣された。病気になる手前の状態「未病」の改善と最先端医療技術を融合させると掲げ、黒岩知事が力を入れる「ヘルスケア・ニューフロンティア政策」。この独自政策に、WHOの知見を生かす狙いだった。
 ジュネーブのWHO本部への女性の派遣を巡っては、県議会で度々、取り上げられてきた。それだけの効果が見込めるのか、女性が県に復帰する保証はないのではないか。そう懸念する県議もいたからだ。
 18年11月の県議会決算特別委員会では、鈴木秀志県議(公明)の質疑に対し、県は「派遣期間が終了した後は県に戻り、WHOで得た知見、人材ネットワークを最大限に活用していただく」と答弁。県職員として働くのは「規定路線」だと強調していた。
 ところが、女性は先月までにWHOの採用試験に合格。今月から正規職員となった。派遣期間中、WHOの高齢者施策のガイドライン策定などに携わり、WHO側から昨夏、転職の勧誘があったという。女性は無断で話を進めたわけではなく、県に報告、相談しており、県側は本人の意思を尊重せざるを得なかった。
 派遣の成果について県は、3月から一般向けにサービス提供を始めた「未病指標」への女性の関与を挙げる。アプリを使い、自分がどんな「未病」の状態にあるかを数値で確認できるというもので、女性はWHO職員の立場から助言したといい、県の担当者は「それが県民に対する一番のフィードバックだ」と話した。
 ただ、こうした成果は県関係者でも一部しか把握しておらず、ある県幹部は「WHOに行ったことは知っているが、何をしていたかは知らない」と明かす。

======【引用ここまで】======



〇救急診療科 | 順天堂大学医学部附属浦安病院
======【引用ここから】======
お知らせ

2016.06.13
角由佳先任准教授が神奈川県政策局ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室に異動となりました。

2016.11.02
角由佳前先任准教授が、12月より世界保健機関(WHO:World Health Organization,Geneva,Switzerland)に派遣されることが決定致しました。

======【引用ここまで】======



〇神奈川県、WHOに職員を派遣 高齢化対策で連携強化: 日本経済新聞2016年12月20日 7:00
======【引用ここから】======
神奈川県は19日、高齢化対策を促進する狙いで、医師免許を持つ職員をスイス・ジュネーブの世界保健機関(WHO)本部の高齢化部局に派遣した。県によると、日本の自治体による職員派遣は初めて。
派遣したのは、政策局ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室の角由佳技幹。期間は2年間を予定している。
高齢化に関する調査・分析や、高齢化対策の企画・立案などに携わる。世界各国の最新の知見を、県にフィードバックさせていくほか、県が進める健康関連の施策を、海外へと発信する役割も担う。
県とWHOは10月、高齢化分野などでの連携強化に向けた協定を締結している。

======【引用ここまで】======

〇写真で見る!「黒岩日記」  2017年7月18日 - 神奈川県ホームページ
======【引用ここから】======
平成29年7月18日(火曜) ジョン・ベアード WHO(世界保健機関)エイジング・アンド・ライフコース部長との面談

 WHO(世界保健機関)で世界の高齢化対策を担っている、ジョン・ベアード エイジング・アンド・ライフコース部長と面談しました。ベアード部長の同行者は、神奈川県から日本の地方自治体職員として初めてWHOへ派遣している角技幹です。

======【引用ここまで】======




黒岩知事がWHOの部長と面談して満面の笑み。
この笑顔の対価が、県民の税金から投じた1億円・・・高いですよねー。
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そもそも、副市長が二人も必要ですか?一人じゃダメなんですか?以前の二人体制の時は人件費に見合う働きをしていましたか?

2020年08月07日 | 地方議会・地方政治
前回記事の続編となります。

副市長人事案に市議会が不同意 行橋市 /福岡 毎日新聞2020年7月31日 地方版


そもそも、副市長って何なのでしょうか。

【副市長にかかる人件費】


○お知らせします 行橋市職員の給与
======【抜粋ここから】======
■特別職の報酬等の状況(平成31年4月1日現在)

副市長 
 給料・報酬月額  708,000円
 期末手当 6月期 1.675月分
      12月期 1.675月分
        計 3.35 月分

======【抜粋ここまで】======

行橋市の場合、副市長の給料は期末手当を合わせて年間10,867,800円となります。

加えて、副市長は常勤の特別職であるため、市町村職員共済組合に加入します。共済組合は一般企業で言うところの厚生年金・健康保険と同じものであり、労使折半ということで、事業主(地方自治体)が保険料の半額を負担金として支払います。社会保険の自治体負担をざっくり15%程度と考えたとき、計算すると約160万円。

給料と社会保険の事業主負担を合わせると、年間で約1,250万円かかる試算になります。

副市長一人の人件費が、年間約1,250万円。
二人置けば年間2,500万円です。
全て税金です。

【副市長の人数】

この副市長の人数については、地方自治法に規定があります。

○地方自治法
============
第百六十一条 都道府県に副知事を、市町村に副市町村長を置く。ただし、条例で置かないことができる。
2 副知事及び副市町村長の定数は、条例で定める。

============

副市長を何人置くか、そもそも置くか置かないかについては、自治体ごとに判断し条例で規定する仕組みです。
実際、各自治体はどのくらいの人数を置いているのでしょうか。

○副知事・副市町村長の定数に関する調 (平成30年4月1日現在) 総務省

都道府県の場合、副知事の定数は平均で2.1人。

1,741ある市町村では、副市町村長の定数は平均で1.2人。ほとんどの市町村では副市町村長を一人置き、指定都市などの大きな所では複数置く傾向にあります。また、条例定数を一人としているが実際には副市町村長を置いていないケースや、条例定数を二人としているが実際には一人しか置いていないケースなどもあります。

そんな中、福岡県にある人口7万人程度の自治体・行橋市は、副市長の条例定数を二人としていました。
それを前回、利権副市長を解職して副市長一人体制とました。
今また二人体制にしようとしたわけですが、二人にすることで年1,250万円の追加費用が生じるのですから、その金額に見合うだけの具体的かつ明確な理由を聞きたいところです。
さて、行橋市の田中純市長はどう答えるのでしょうか。

【杜撰な市長答弁】

副市長の解職は市長の専権事項ですが、副市長の選任には議会の同意が必要です。
そのため、選任しようとする市長としては、議員に対し
・二人目の副市長ポストが必要であること
・選任しようとする対象者を選んだ理由

を説明しなければいけません。

特に今回の場合、
・条例改正して副市長の定数を二人に増やしたのはこの市長。
・二人いた副市長のうち一人を解職して一人体制にしたのもこの市長。

という背景があるため、人事案に同意を求める市長としては、平身低頭、
「副市長が一人だったこの期間中、具体的に~~~の面で業務に支障や不都合がありまして、そこで今回、再び二人体制にしたいと思います。皆さんご同意お願いします。」
という説明をするのが筋です。

では、実際にどういう説明をしたのかを見てみましょう。

======【テキスト起こし】======
36:30~
鳥井田幸生議員
「全国に1,500か1,700かあります自治体でですね、人口73,000人の自治体の中でですね、二人副市長制を採っているところはありません。我々も、前回まで21人の議員でやっておりました。一人欠が出ました、死亡によってです。区長連合会から、それで十分できるじゃないかという指摘の下に、20人という形で4月12日の選挙を迎えました。私が感じるところは、先ほどから言ってますけど、『市長の補佐』『市長の補佐』『忙しい』と。過去ずっと、市長・副市長は1名体制でやってきたわけです。私は、それだけ業務が多くなったとは全く思っていません。逆に問いたい、能力不足ですか。捌けないんですか。補佐、補佐、言葉は良いです、しかし、市民は何なんでしょうか。この議会に対して20人という定数削減を求めています。執行部側は、頑としてそれを実行しようとしません。これは市民が望んでいる姿なんでしょうか。そのあたりを踏まえたところで、市長は、今回提案されたものですけど、どうなんでしょうか市長、そのあたりの考え方をお聞きしたいと思います。」
田中純市長
「お答え申し上げます。議員定数の問題と、副市長2名制とは、次元の全く違う議論だという具合に感じております。したがって、鳥井田議員の質問に対しては、次元の違う話だというお答えで申し上げさせていただきます。」

======【テキスト起こし】======

・・・これ、同意を求める人の答弁じゃないですよね。
こんな不誠実な説明をして、議員達が同意をすると思ったのでしょうか。
この田中純市長の議会軽視は今に始まったことではありませんが、これはひどい。

歳出の見直しは自治体に常に課されている至上命題であり、議会側は議員定数削減という形でひとつの成果を出しています。
これに対し、市長側は、副市長2名体制、人件費1,250万円増という施策を打ち出したわけです。市長の能力不足なのか、前にいた二人の副市長の能力不足なのか、市長が徒に業務量を増やして対処できなくなったからなのか、いずれにせよ1,250万円の人件費を投じるのですから、定数削減をし人件費抑制に努めた議会側と対比されるのは当然のことです。
「次元の違う話だ」と言うこの市長の頭の次元が低いと言わざるを得ません。

この市長の説明で、年間1,250万円、4年任期で5,000万円のヘッドハンティングにGOサインを出せる人が居たら、その人は金銭感覚が狂っています。
もし、この田中純市長が、
「議員おっしゃる通り、仕事の捌けない私の能力不足を補うために副市長が二人必要なので、是非ご理解ください。」
って言っていたら、まだ可愛げがあったんですけどね。

======【テキスト起こし】======
44:00~
瓦川由美議員
「市長にお尋ねをしたいと思いますが、今回の副市長に、どのようなことを要望し、どのようなことを期待をされているのかを教えていただきたいと思います。」
田中純市長
「お答え申し上げます。何度も先程来、えー執行部の方から答弁させていただいておりますけど、副市長職とは市長の補助機関ということで明確に法に定められております。つまり、市長を補助する機関でありますので、所管は、大雑把には所管は決めておりますけれども、具体的には、都度都度、まして今現在の我が行政当局の方はいわゆる縦割りをできるだけ排する形で、プロジェクトごと、あるいは全体を総括しながら俯瞰しながら問題を解決していく指針を基本的に強く持っているつもりでございますので、組織図に書いたとおりに全部縦割りでやっていくという考えは持っておりません。したがって、二人の副市長の間では、問題が起きた都度、どちらかの所管であると、この案件では6割一人の副市長で4割ぐらいのウエイトでもう一人の副市長ということがありえるわけでありまして、縦割りでルーティーン的にいけるところは縦割りで組織図のままで分担していただこうと思っておりますけど、問題によっては共同しながら、あるいは私も入れてもらって三者で共同しながらやっていくということでございます。」

======【テキスト起こし】======

「縦割りを排す」と言いながら、基本的には副市長二人に組織図にあるいくつかの部をそれぞれ分担させる、これは縦割りそのものですどうもありがとうございました。
副市長一人が全ての部の業務を総括・監督し、市長を補佐するのであれば、縦割りは排されることになります。ところが、副市長が二人いて組織図に沿った所管を有しているのであれば、問題が起きた都度、これはどちらの副市長が担当するかを調整しなければなりません。調整役の調整が必要になってきます。

年間1,250万円の人件費を費やして、一人の副市長の下に総括されていた市役所の業務をわざわざ縦に割るという愚挙。全国的に見て中小規模の自治体であれば副市長一人体制のところがほとんどであり、この自治体においても過去一人体制だったのですから、二人にしなければいけない明確な理由を市長は示すべきです。

「縦割りを排す → 副市長は二人必要」
という市長のロジックは破綻しています。
どうしても新しい人を副市長にしたいのなら、今いる副市長も解職して、新しい人で副市長一人体制を敷くべきです。

【部制の廃止】

話は変わりますが、行革に目を向けてみましょう。

『平成の大合併』の後、少子高齢化・人口減少社会を見据えて、多くの自治体で行政組織のスリム化、事務の効率化に取り組んできました。税収や地方交付税が減少しても自治体財政が持続できるよう、各自治体で様々な取組がされてきました。

その一つとして挙げられるのが、「部制の廃止」です。

○村上市 組織再編計画(案)(前期計画)
======【引用ここから】======
① 部制の廃止
行財政改革の計画期間である今後8年間の中で、356人の職員が定年退職し3割の補充に留めることから、全体で249人の減を予定しており、市の人口についても今後減少が予測される中で、組織規模、人口規模に見合った組織を作るため、また、いわゆる頭でっかちな組織を避けるためにも管理職を減らし、スリム化を図るために平成23年度から部制を廃止します。

======【引用ここまで】======

○銚子市 平成30年6月 市議会定例会 市長あいさつ
======【引用ここから】======
行政組織再編、部制から課制へ
 4月から部制から課制に移行し、市役所の組織が大きく変わりました。この議会から新たに答弁に加わる課長も多くいますが、よろしくお願い致します。課制移行に伴う効果と課題を検証しながら、組織改変の目的であるスピード感をもった意思決定、コミュニケーションの円滑化、業務の効率化、市民サービスの向上に繋げてまいります。

======【引用ここまで】======

多くの市町村では、市町村長、副市町村長の下に部、課、係という組織が置かれており、その中で

 部長 ー 課長 ー 係長 ー ヒラ職員

という職員の階層、稟議のラインが設定されています。
ここで、部という枠組みを無くしてしまえば、職員の階層が

 課長 ー 係長 ー ヒラ職員

とシンプルになり、稟議書に印鑑を押す人数が減るので意思決定がスムーズになります。また、部長は職員中で最も高給になっているのが常なので、このポストを廃止すればその分人件費の削減、抑制につながります。

【船頭多くして船山に上る】

話は行橋市に戻ります。

行橋市では部制を廃止した、かと言えばそうではありません。各部長ポストは健在。
しかも・・・

○平成30年6月第10回行橋市議会 定例会会議録(第1日)
======【引用ここから】======
 最初に、機構改革について、でございます。
本定例会に条例改正案を上程させていただいておりますが、8月に機構改革に着手したいと考えております。
 主な内容といたしましては、政策実現しやすい体制づくりのため、政策部署の充実を図るとともに、各種政策・各部間の調整役及びまとめ役も担う市長公室を新設する予定でございます。

======【引用ここまで】======

○行橋市事務分掌条例
============
(部の設置)
第2条 市の内部組織として、次に掲げる部を置く。
(1) 市長公室
(2) 総務部
(3) 市民部
(4) 福祉部
(5) 都市整備部
(6) 産業振興部
(7) 環境水道部

============

○行橋市職員の職の設置に関する規則
============
別表1 事務職員及び技術職員の職
 1 公室長及び部長

============

と、わざわざ、調整役・まとめ役の部を新設しているんです。
各部間の調整・まとめを行う市長公室の長を部長級ポストとして追加し、さらに、

○行橋市事務分掌条例施行規則
============
(役付職員)
第5条
4 前3項のほか、市長公室秘書課に市長が推進する政策に関する事務及び各部との調整を図る者として、政策調整監を置くことができる。

============

と、その下に調整役の役付職員を別枠で置いています。

各部を横断的に統括する副市長を二人置き、
各部のまとめ役の部長級ポストを新設し、
その下に各部との調整を図る役付職員を置く。

調整役ばかり、こんなに要らないでしょう?

村上市で問題視されていた、管理職の多い「頭でっかちな組織」そのものです。もし仮に、この副市長二人、市長公室長、政策調整監の仲が良くないなんて事になれば、銚子市長が言っていた「スピード感をもった意思決定、コミュニケーションの円滑化」を妨げることになってしまいます。「船頭多くして船山に登る」状態です。

※ちなみに、宮若市では、部制の廃止に伴い従来の部次長を調整監としています

二人目の副市長を置くことで追加費用1,250万円がかかっていますが、それだけでなく、この市長公室長と政策調整監の人件費も含めたら、田中純市長になってから追加で幾ら増えたことでしょう。

(以下、稲川淳二風に)

全国的にですね、人口が減るのだから職員数や施設数もそれに合わせて減らしていかなきゃいけないと、多くの自治体は合理化に取り組んでいたんです。
団塊世代の退職のタイミングに合わせて職員のポストも見直し、新規採用数も絞り、使用頻度の低い公共施設を廃止したり地元に払い下げたりして、固定費の削減に努めていたんです。

そんな中、真逆の方向に突っ走る自治体があったんです。
ポストを増やす、職員採用一次試験で受験者全員を合格させる、新規施設を建てる、おまけに民間の美術館を今のタイミングでわざわざ市営にしてたんです。
走る方向が逆なんです。

おかしいなー、逆の方向に走っていってるなー、そうしたら背中がぞぞぞーっときたんで、ふと振り返って見ると、その自治体の姿が見えないんです。

よく見ると、財政の崖から転落してたんです。
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リケンは、つくれる ~ 行橋市前副市長に学ぶ便宜供与と役員就任 ~

2020年07月28日 | 地方議会・地方政治

【便宜その1 土地購入】

ある財団法人が、元宴会場の建物を所有していました。宴会場は経営が行き詰まって廃業したものです。財団法人から相談を受けた市役所は、この旧宴会場の建物を公民館とかに使えないかといろいろ調べたのですが、建築基準に適合していない違法建築だと分かりました。
この宴会場が建っていた土地は周囲を川と一方通行の道路で囲まれており、交通の便利が良いとは言えない場所です。
その後、建物は取り壊され、不便な跡地が残りました。

そんな土地を、市役所は買いました。市役所が防衛省から補助金を貰い、市役所はこの補助金を使ってこの土地を財団法人から購入したのです。この購入時点で、市役所は土地を何に使うか決めていませんでした。

平成25年9月第7回行橋市議会 定例会会議録(第3日)
======【引用ここから】======
◆2番(工藤政宏君)
 是非よろしく、お願いいたします。それから、ミラモーレ跡地ですけれども、1億2000万円の防衛補助で購入しました。できるだけ早い段階で、この後どのようにしていくのか、是非、市民の意見を早い段階で汲んで下さい。地元市民の意見を是非汲むようにお願いします。汲むつもりがあるかないかだけ、総務部長、お願いします。
○議長(城戸好光君)
 総務部長。
◎総務部長(松本英樹君)
 ここの土地の利用について、先程、市長答弁を行いました。基本的には、工藤議員が冒頭言いましたように、定住人口が減ってきます。実際、我々としては定住人口を増やす、交流人口を増やすということを考えないといけませんので、そういった部分での交流人口を増やすための施設を造る。その場合に、じゃ何をするかというところで、交流人口ですので、市内だけではなくて市外から沢山人を呼ぶわけですので、どういった形で意見を聴くか、まだこれははっきり決めておりませんけども、必要であれば、何らかの形で意見を聴くことも重要なのかなというふうには思っています。

======【引用ここまで】======

こんなこと通常あるのでしょうか?
ちょっと考えにくいんですよね。

まず、一般的な話で考えてみましょう。
自治体が道路や公共施設を建てる為に、個人や団体から土地を購入するというのはよくあります。
・特定の建物や設備を作る計画がある
・その計画の一環として用地が必要になる
・該当する土地を購入する

というのが普通の流れです。
こういう事業をする、これくらいの効果が見込める、だからここの土地がいる、事業総額は幾ら位で、土地を買うためにこの金額が必要で、だから予算に計上したい・・・という話があって然るべきです。

何をするか決まっていない土地を買うということは、この土地で何をするかはあまり重要でなく、土地を買う事そのものがこの土地購入の目的となっていたことを示唆しています。財団法人としては、宴会場の後の用途も定まらず、処分に困る土地を市が買い取ってくれたのだから美味しい話です。

【予算査定は機能していないの?】

通常であれば、事業担当課が
「この土地、何にするかはまだ決めてないんだけど購入したい」
と提案したところで、財務担当課が
「寝言は寝て言え。何を建てるか決まってない土地の購入費なんてOKを出せるか」
と予算査定で落としてしまうことでしょう。

しかし、このケースでは、何をするかほぼ白紙なのに購入しています。予算査定をどうやって通過できたのでしょうか。

ちなみにですが、議事録には、財団法人と交渉を行い土地購入手続きを進め、責任者として議会で答弁を行っている人物として「総務部長(松本英樹君)」という名前が登場します。この前後の議事録も読むと、この松本英樹総務部長(当時)が財団法人と交渉し、旧宴会場の管理、調査、解体、跡地購入に至る一連を主導していたことが窺えます。
この総務部長のポストは、予算査定を行う財政課の属する総務部の長、という立場にあります。

【便宜その2 美術館を半分受贈】

少子高齢社会、人口減少社会において自治体運営を持続可能なものとしていかなければならないという危機感は、多くの自治体が有しています。税収は減り、担い手が減っていく中で、施設の維持管理費を減らしていかなければ、自治体には財政破綻が待っています。公共施設数を増やすというのは自殺行為なのです、が・・・。

増田美術館 公設へ 館長が行橋市に土地・建物を寄贈 /福岡 毎日新聞2016年12月27日 地方版
======【引用ここから】======
 行橋市は26日、同市行事5にある増田美術館の館長、増田博さん(93)=同市神田町=が、同美術館の土地・建物を市に寄贈したことを明らかにした。増田さんは約60年間にわたって収集してきた横山大観や東山魁夷ら著名作家による日本画など194点(購入時総額約4億4600万円)を7月に市に寄贈し、22日の定例市議会最終日に同市の名誉市民第1号に決まっている。【荒木俊雄】
 増田さんは30歳ぐらいのころから美術品の収集を始め、建設会社経営の傍ら、2005年に増田美術館を開設。近代日本画では九州有数の展示内容・保管数を誇り、同美術館を管理する公益財団法人「増田美術・武道振興協会」(理事長=増田さん)所有の約150点を除く個人分を7月に市に寄贈していた。
 今回の寄贈は法人所有部分を除く、三つある展示室のうちの一つと事務室を含む鉄筋コンクリート造2階建て(延床面積約360平方メートル)と、駐車場を除く敷地約500平方メートル。関係者によると、同物件の今年の固定資産税評価額は建物が2850万円、土地が1370万円とされる。

======【引用ここまで】======

「財団法人理事長が、市へ、美術品と、美術館の半分を寄贈した」
一見美談のように見えますが、ここには問題が隠れています。

1.自治体の負担する維持管理費が増える。
2.権利関係が複雑になる。
3.美術館が増えるのではなく既存の美術館が公営になるだけなので、市民の美術品に触れる機会は大して変わらない。


(この内容については、以前に当ブログでまとめたものがありますので、そちらもご覧ください。
税金支出を増やす名誉市民 ~ 他人の金でパトロン気取り2 ~若年寄の遺言

これは、財団法人の側から見ると、
「運営方法はほぼそのままなのに、維持管理費は行政持ち」
という事になります。
実際、市役所側は毎年の維持管理費用に加え、必要に応じて追加費用を負担させられています。

平成29年3月第5回行橋市議会 定例会会議録(第2日)
======【引用ここから】======
新たに設置する美術館長の嘱託員報酬費といたしまして、217万2千円、美術館の管理運営委託料といたしまして411万8千円、並びに看板の書き換え料として63万円、合計692万円を計上いたしておりますが、この金額は市の負担経費と考えております。
 また開館に伴いまして、使用料等の収入でございますが、年間55万2千円を見込んで計上させていただいております。

======【引用ここまで】======

平成29年3月第5回行橋市議会 定例会会議録(第2日)
======【引用ここから】======
◎副市長(松本英樹君) 
 お答えいたします。まず、先ほどの説明が少し不十分なところがありましたので、改めて説明いたします。
 個人の方から寄附をいただいたもの、それからいま田中議員が言われるように、公益財団法人が所有する不動産、美術品がございます。市の条例をするに当たって、あの建物全体を市の美術館という位置づけの、今回の条例でありますので、当然そこには先方から借り受けるというものがございます。公益財団法人から見ると、公益財団法人の名義のまま市が美術館として運営する、これは公益財団上の問題も全くない。市としても一定程度の借り受けができるという条件のもとで全体を公の施設として設置することも、これも問題ないというところで、今回条例をあげていることを、まず前段でお話をしておきます。
 これからの費用負担ということでありますが、言いましたように、全体を市の美術館として設置をするわけですので、全体の必要経費としての算定が今回の金額でございます。

======【引用ここまで】======

令和元年9月第15回行橋市議会 定例会会議録(第5日)
======【引用ここから】======
 次に、文化課では、行橋市増田美術館の空調設備の更新にかかる経費219万8千円が増額補正されております。
======【引用ここまで】======

大赤字です。

施設は年数を経過すればするほど、空調、外壁、雨漏り、トイレ等の水回り、電気設備、様々なところで不具合が生じ追加費用が増えていきます。これを市役所が負担してくれるのですから、財団法人側としては美味しい話です。

この美術館は、財団法人名義の部分と理事長個人名義の部分から成り立っていいました。もし、この美術館について、理事長個人名義の部分を財団法人に譲渡したとしても、市役所からはお金を貰えません。美術館の空調設備が壊れようとも、市が何かしてくれるということはありません。

ところが、市役所が美術館のうち理事長個人名義の部分を引き受け、既存の美術館を公営にしたことにより、財団法人は市役所から管理料や空調設備の更新費用等を貰えるようになったのです。市役所側にとっては大赤字のお荷物、財団法人側からしたら経費負担軽減となったのですが、財団法人にとってこんな美味しい話がどこから湧いてきたのでしょうか。

この経緯が、先ほどの新聞記事の続きにあります。

増田美術館 公設へ 館長が行橋市に土地・建物を寄贈 /福岡 毎日新聞2016年12月27日 地方版
======【引用ここから】======
増田さんと親交のある松本英樹副市長によると、土地・建物の寄贈を思い付いたのは美術品を寄贈したころから。「市民に気軽に美術品に接する機会を増やしてほしい」という気持ちからだという。
 増田美術館の運営は当面現状のままで、松本副市長は「大変ありがたい贈り物。早ければ来年3月議会に公設施設として使用するための条例案を提案したい」と話している。

======【引用ここまで】======

市役所にとっての新たな財政負担を「大変ありがたい贈り物」と言い換える松本英樹副市長(当時)。そう、先述の松本英樹総務部長(当時)と同一人物です。
財団法人の理事長と親交のある松本英樹副市長(当時)が、寄贈を受けることを決め、管理運営方法を決め、美術館を公営にして維持管理費用を行政負担にすることを決めたわけです。

【見返り?取締役就任】

その後、松本氏は市長から副市長職を解職されたのですが、その解職理由を読んでみると・・

行橋市副市長の突然の解職 市長「信頼できず」 松本氏「理解されず」 2019年10月5日 西日本新聞
======【引用ここから】======
 市長が例示した小さな不満の積み重ねとは①市の政策を批判する言動が目立つ②議会で市長の方針に反する答弁や振る舞い③再建中のホテルを支援する企業の取締役に就任したが報告もなく何をしているか不明―など。「意思疎通できず、信頼できなくなった」のが最大の理由という。
======【引用ここまで】======


再建中のホテルを支援する企業の取締役に就任した
とありますが、どこの企業でしょうか。

京都ホテル、7月に営業一部再開 再生計画案を債権者可決 /福岡 毎日新聞2020年5月27日 地方版
======【引用ここから】======
 行橋市の老舗ホテル「京都(みやこ)ホテル」を経営し、民事再生法に基づき経営再建を進めている「京都館」が7月に同ホテルの営業を一部再開することが、関係者への取材で判明した。ホテルは改装と新型コロナウイルス感染拡大の影響で休業中だが、7月1日からビアガーデンの営業を始める予定だ。【松本昌樹】
 地裁小倉支部で22日に債権者集会があり、同社が提出した再生計画案が債権者の賛成多数で可決された。地裁小倉支部は再生計画を認可するとみられる。
 京都館は2019年7月、地裁小倉支部に民事再生法の適用を申請。負債総額は約3億4000万円で、申請前に支援企業への営業譲渡を決めるプレパッケージ型と呼ばれる手法で再建を進めていた。行橋市内を中心に不動産事業などを展開する「増田」がスポンサーとなって土地、建物を買い取り債務返済に充てるとともに、京都館を同社の100%子会社化して新経営陣が経営に当たる計画案を示していた。

======【引用ここまで】======

行橋市を中心に不動産業などを展開する「増田」が、ホテルの再建支援をするそうです。

官報決算データサービス
======【引用ここから】======
株式会社増田
企業情報
会社名 株式会社増田
代表者 代表取締役 増田 博
所在地 福岡県行橋市神田町6番24号

======【引用ここまで】======


この代表者・・・今回の財団法人の理事長と同一人物と思われます。

整理しましょう。

・松本氏が総務部長として財団法人の理事長と交渉し、市役所が財団法人から土地を購入する事を決めた。この土地は、購入時点で何を建てて何をするか決めていなかったことから、財団法人から購入する事そのものが目的だった可能性がある。
・松本氏が副市長として財団法人の理事長と交渉し、財団法人が運営する美術館のうち理事長個人名義の部分の寄付を受けた。この結果、美術館は市営となり、美術館の管理費や設備更新費用は市役所の負担となり、財団法人側はこうした費用負担を免れた。
・松本氏は副市長在職中、財団法人の理事長が代表を務めていた企業の取締役に就任した。


ここまでで生じた諸々の費用は全て市役所の負担、すなわち納税者の負担です。


【注意】

これを見て
「企業に便宜を図ったら、私にも役員ポストを用意してくれるかもしれない」
と思った地方公務員の人がいたら、注意が必要です。

副市長は特別職なので、地方自治法の請負制限規定に抵触さえしなければ、公職在職中であっても、企業の役員に就任することができます。
しかし、一般職の地方公務員の場合は地方公務員法の兼業禁止規定があるので、役所に在籍したまま役員就任というわけにはいきません。役所を退職してから役員に就任させてもらえるよう、将来の約束をしっかりと取り付けることが必要でしょう(マテ

【後任の副市長】

ところで、空席になっていた副市長職について後任候補が決まったようです。

行橋市副市長に元議長城戸氏 田中市長が意向表明
======【引用ここから】======
福岡県行橋市の田中純市長は30日、2人のうち1人が空席になっている副市長に、元市議会議長の城戸好光氏(70)を選任する意向を明らかにした。7月中旬に臨時市議会を招集して提案する。城戸氏は4月の市議選で7回目の当選を果たしたが、6月26日に辞職。これを受け市選管は10日に選挙会を開き、次点の藤本広美氏(73)=当選4回=の繰り上げ当選を決める予定。田中市長は、城戸氏の選任について、市長与党だった藤本氏の繰り上げ当選も「大きな要素」と語った。
======【引用ここまで】======

この市役所では、以前に職員が500万円の使途不明金を出したり、職員採用において1次の筆記試験を全員合格させたり、と不祥事が相次いでいたのですが、新たな選任を契機に不祥事体質を刷新できたら良いのです、が。

【2020.7.30追記 ~ 副市長人事案件否決される】

上記の臨時会が7月30日に開かれたそうですが・・・

賛成9票
反対8票
白票2票(反対とみなす)


となり、賛成少数で副市長人事案件が否決されました。
様々な箱物予算を可決し、使途不明金の監査請求を否決する等、まとまって動いてきた市長与党の結束に綻びが生じたようです。
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議会不要論を加速させる「行橋方式」 ~ 議会が閉会した翌日に政策的経費の補正予算を専決処分 ~

2020年05月13日 | 地方議会・地方政治
 前回記事の続編です。

「議会軽視だ」と主張するのは、今を置いて他に無い ~ 専決処分による新規事業 ~ 若年寄の遺言

 この自治体、政策的経費の補正をまた専決処分でやってしまいました。

行橋 休業支援で追加の協力金|NHK 北九州のニュース 2020年(令和2年)5月13日 水曜日
======【引用ここから】======
行橋市では、すでに県の休業要請に応じ、今月6日まで休業した市内の中小企業や小規模事業者に対し、独自の協力金を支給していますが、要請の期間が今月31日まで延長されたことを受けて、新たな協力金の支給を決めました。
今回の協力金は、今月18日から31日まで休業した場合に支給されます。
金額は、1店舗あたり20万円、複数の店舗を運営している場合は、40万円が上限となっていますが、これまでに協力金を受け取っているところは半額となります。
対象となるのは、これまでと同様、県が休業を要請している施設と要請には入っていない居酒屋や喫茶店などの食事を提供する施設に加え、新たに理髪店や美容室などが含まれます。
行橋市は、必要な予算およそ1億3000万円を12日、市長の専決処分で決定しました。
申請の受け付けは、委託を受けた行橋商工会議所で、13日から始まります。

======【引用ここまで】======

 ちなみに、この行橋市では、5月8日(金)と5月11日(月)に臨時議会が開かれています

 整理しましょう。

 ・5月 8日(金) 臨時会開会
 ・5月11日(月) 委員会審査、臨時会閉会
 ・5月12日(火) 休業協力金1億3千万円の補正予算を専決処分
 ・5月13日(水) 申請受け付け開始


 5月12日に行った補正の専決処分を1日前倒しして、5月11日まで開催されていた臨時議会に補正予算案として提出することが出来ない・・・というのは、通常考えられません。5月13日から申請受け付けを開始する事業について、5月11日の時点で経費の総額や中身の詳細を決めていなかったはずがありませんから。
 この時系列では、地方自治法第179条で定められた専決処分の要件、

 「普通地方公共団体の議会が成立しないとき」
 「第百十三条ただし書の場合においてなお会議を開くことができないとき」
 「普通地方公共団体の長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき」
 「議会において議決すべき事件を議決しないとき」

のいずれにも当てはまらないと考えます。違法の疑いのある専決処分と言えましょう。
ここの市長は、何を考えてかつての阿久根市級の暴挙に出たのでしょうか。
副市長や法務担当部局は何も意見しなかったのでしょうか。
まともな法律相談のできる顧問弁護士とかは居ないのでしょうか。(以前、土地占有問題の際には顧問弁護士が居たようですが、今は居ないのかもしれません。)

 もしこのやり方が許され、脱法的ではあるが合法であるという事になれば、ですよ。市長が、毎年、裁量の余地の無い義務的経費だけを計上した当初予算案を2月、3月の定例議会に提出し、とりあえず議決を受け、市長の意向を反映した政策的経費についてはその定例議会が閉会した翌日に専決処分で補正してしまえば良い、という事になりかねません。

 政策的経費の審議を行う機会を失い、議決権を行使できず、事後的な追認しかできないとなると、議会の必要性は著しく低下し、形骸化します。

【地方議会を縮小する思考実験】

 市長が政策的経費について度重なる専決処分を行い、議会が具体的な対抗策を取らず容認を繰り返す事で、議会の審議・議決は形式的なものと多くの人に認識されるようになります。その分、議会の地位は低下します。形式的な組織であれば、数十人も議員を置く必要はありません。

 議員定数の上限・下限について地方自治法上の縛りはなく、条例で定めることとなっています。いっその事、条例で議員を3人にしてしまったらどうでしょうか。

 議員定数を3人にして、うち1人を議長にするのです。これで一応、地方自治法が想定している合議制の体裁は整うと思います。
 本会議は、市長の応接室で行いましょう。委員会は設置せず、全議案を本会議で審議しましょう。3人の議員に対し市長が応接室で形式的に説明して、3人の議員が義務的経費だけを計上した当初予算案を議決し、あとは市長と議員とで談笑している光景をネットでアップするのです。裁量的・政策的な部分については、翌日、市長が専決処分で処理するのです。

 3人の議員が形式的に存在するだけであれば、議員の議会事務局を単独部署として設置する必要もなくなります。どこかの部署が片手間で議会業務を処理すれば足ります。広い本会議場は不要になります。委員会が無ければ、別途、委員会室を設ける必要もありません。会議時間も、配布する資料の部数も大幅に削減できます。

 議員報酬、職員給与、本会議場等の維持管理費、庁舎内のスペース、時間、諸々のものが省力化できます。超高齢社会、人口減少社会、アフターコロナ・ウィズコロナを考えた時、社会を支える現役世代の人手・時間・費用を形式的な業務に割く余力は、減ることはあっても増えることはまずありません。議会の実質的な意義・役割が薄れてくれば、不要論・削減論が出てくるのは避けられないでしょう。

 市長による政策的経費の専決処分という手法を議会が容認してしまうと、回り回って議会は自分の首を絞めてしまう事になります。市長提案条例・予算を時には否決する所に究極的には議会の存在意義がある訳で、追認するだけの形式的な機関であれば形式的な待遇で良いということになります。

【歳出増・収入減】

 ところで・・・

行橋 休業支援で追加の協力金|NHK 北九州のニュース 2020年(令和2年)5月13日 水曜日
======【引用ここから】======
行橋市の田中純市長は「たとえ県が休業要請を緩和することがあっても、市としては、今月一杯は休業要請を続けるつもりだ」と話していました。
======【引用ここまで】======

 補正予算を専決処分し何度も給付策を打ち出す一方で、個人や企業の活動を抑制して県全体より一歩進んだ休業要請を明言した行橋市。歳出が増え、休業要請延長でその分だけ事業者の収入が減り税収が減るのですから、財政悪化は避けられないでしょう。
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「議会軽視だ」と主張するのは、今を置いて他に無い ~ 専決処分による新規事業 ~

2020年04月19日 | 地方議会・地方政治
 役所は、強制力を背景に税金を徴収し、手間賃と職員の給料を差し引き、残った金を色んな形で配布します。
 財産を強制的に奪う行為は、本来なら強盗や恐喝といった犯罪になります。こうした、本来なら犯罪である徴税を正当化するために、
「租税とは、国家が市民に提供する生命と財産の保護に対する対価である」
「民主的に定められた手続きに則って徴収されたものは、国民の同意がされたものと擬制できる」
等等の理屈が考えられてきました。

 私は、
「同意の擬制は多数派による同意の強制だ、結局は同意なき収奪なのだから犯罪だ」
・・・と言いたい。
 私のような人間は少数派。圧倒的多数の人は、税金徴収は犯罪でないと受け止めていると思います。ただ、こうした圧倒的多数の人も、徴収手続きや、徴収した金の配布方法・対象・金額・時期については、適正に、民主的に定められるべきだ、と考えているはずです。

 民主的手続きには、議論を伴います。

 国会でも、新型コロナウイルス感染症対策や休業補償、臨時給付について連日のように議論がされています。今回、所得制限ありで1世帯30万円給付という政府案が、野党や連立与党内部からの批判を受けて撤回され、一律1人10万円給付という案に変更されました。
 補正予算案を撤回した事の是非、給付することそのものの是非はありますが、議論を行い、補正予算案を議決してから予算執行しようとする一連の流れは、一応、議論と手続きを踏まえたものと理解できます。

 ですが、これ ↓ は理解できません。

【突然始まる行橋市のバラマキ】


〇行橋市 休業協力に20万円支給|NHK 福岡のニュース 04月15日 18時00分
<記事より抜き書き>
 ・対象:県が休業を要請している施設 + 居酒屋や喫茶店など
 ・金額:1店舗20万円、2店舗以上40万円
 ・予算規模:1億円
 ・申請開始:4月16日
 ・対象となる休業期間:4月23日から5月6日まで


 この自治体では4月12日に市議の選挙があり、給付が決まった事が4月15日のニュースで報じられ、4月16日から実際に申請受付を始めています。
 その間、議論はなし。もちろん議決もしていないんですよね。

 議会で議論し審議すべきポイントは山ほどあります。

 ・支給対象を県が休業要請している施設に限るべきではないか。
 ・支給対象に居酒屋や喫茶店を加え、他の業種を加えなかったのは公平性を欠くのではないか。
 ・支給金額が高すぎるのではないか。予算規模が大きすぎるのではないか。
 ・財源はどうするのか。予算を組み替えるのか、国や県からの補助が付くのか、基金を取り崩すのか。
 ・給付するための手続きは整っているのか。審査や休業した事の確認はどうするのか。


 こうした論点を議論するために、議員は存在します。市長から提案理由を聞き、質疑を行い、委員会で事業の中身の説明を受け、質問や意見を述べ、議員間で討論を行い、多数決を行って予算は成立します。この議案審議は議員の大きな役割です。
 議会は常時開催されているわけではなく、定期的に開催されています。急ぎで補正予算を成立させたい、定例的な議会開催日を待つことができない、ということであれば、臨時議会を招集し、議会の一連のプロセスを経て議決を受け補正予算を成立させるという方法もあります。

 市長が4月15日に給付制度を固めたのであれば、そこで直ちに臨時議会の招集告示を出せば良いのです。7日後、あるいは緊急性を理由にもうちょっと早く開会日を設定すれば、臨時議会を開いて審議を経て議決を受けるということは十分可能です。このわずか数日すら待てなかったという合理的理由が、私には思いつきません。

 地方自治法第179条第1項には、緊急性のある場合に専決処分を行うことができるとする規定があります。ただ、上述のとおり、この案件が臨時議会を招集する暇が無い程の緊急性があるとはとても思えません。臨時議会を招集する手間を省き議会からの批判を避けるために行われた、脱法的な専決処分というのが私の印象です。義務的経費の支出とかではない、政策的な新規事業を専決処分するのは非常に乱暴です。市長が議会に諮らず一人で決めたというのは、まさに「独裁」です。

 税金の徴収・分配には、お金を強制的に集める点で強盗や恐喝と類似した犯罪の臭いが付きまといます。これを、辛うじて一般的に受け入れられる程度に浄化しているのが、民主的手続きです。税金の分配から民主的手続きを省いてしまったら、後に残るのは犯罪の臭いだけです。税金の正当性は大きく後退します。

【議員の存在意義は?】

 今回の休業補償に関する決定プロセスから、議員は排除されています。議員は事後的に報告を受けるのみ。
 先ほど述べたとおり、この自治体では市議選挙が行われたばかりです。新たな任期を迎えた議員達は、市長のこの「独裁」をどう捉えているのでしょうか。

 休業補償の内容の是非については、議員ごとに考えは異なるでしょう。
 ・今回の休業補償の在り方に賛成の人
 ・別の形の休業補償を想定していた人
 ・規模が大きすぎると考える人
 ・もっと支給額を増やすべきだと考える人
 ・対象選定が恣意的だと考える人
 ・そもそも休業補償に反対の人
と様々な考え方があって良いと思います。

 しかし、その決定プロセスに問題ないと思っている議員はいない。そう思いたいです。
 もし、
「市長の取り組みは素晴らしい!」
「スピード感のある対応だ!」
と諸手を挙げて無批判で称賛している議員がいたとしたら、その人は議員として議案の審議をする意思を放棄してしまったも同然。議決権も審議権も放棄して市長に賛意を示すだけであれば、議員でない一般市民でも出来ます。
二度と
「議会軽視だ!」
なんて言わないでくださいよ。

【4/20追記】

 そうこうしていたら、隣町からも。
苅田町が雇用維持へ独自の助成金|NHK 北九州のニュース
======【引用ここから】======
町内のおよそ750の事業所が対象になる見込みで、苅田町では必要な経費3億7500万円の補正予算を町長の専決処分で決定し、今月27日から申請の受け付けを開始することにしています。
======【引用ここまで】======

 行橋市も苅田町も、議員不要なんじゃないの?政策的な新規事業すら専決処分で行えるなら、何のために議員を置く必要があるの?

 他方、

福岡・上毛町、住民1人に2万円 所得制限なく一律給付|【西日本新聞ニュース】
======【引用ここから】======
 予算規模は約1億6千万円と見込み、町の貯金に当たる財政調整基金を財源に充てる。同基金の積立額は3月末時点で、22億6335万円。町は2万円給付を盛り込んだ本年度一般会計補正予算案を24日の臨時会に提案する。
======【引用ここまで】======

 そう、臨時会で良い。手続きとしては、これが王道。

【4/20追記2】

 行橋市の休業協力金、ホームページで見ようとしたら・・・



 産業振興部、とあります。
 産業振興部のトップは、4月に変わったばかり。


(2020年3月27日 西日本新聞)

 3月まで総務部総務課長だった方が、4月から産業振興部長になったとのこと。
 3月まで総務課長・・・

合格ライン操作は 実在する!?(1次筆記試験3割得点でも合格できる行橋市職員採用試験) - 若年寄の遺言

ここの登場人物だった方が、昇進されたようです。
前代未聞の「1次筆記試験受験者を全員合格させた採用試験」の実務の担当者が昇進するというのは、不思議なものです。
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それって「規制依存症」じゃない? ~ 香川県ネット・ゲーム依存症対策条例 ~

2020年03月18日 | 地方議会・地方政治
 議員提案条例。

 日頃から、議案として議会に提出された政策条例案を、その規定から生じる影響・効果、文言の解釈・運用を慎重に検討・審査し、有害無益な条例なら否決し、あるいは条例修正案を提示している地方議員は多くありません。大抵の地方議員は、「何かあっても知事の責任だし」と安易に考え、知事部局の説明をざっと聞いて、一つ二つ意見を述べて仕事をしたアピールだけをして条例を原案可決しているんじゃないか。そんな条例審査をしていても、条例を制定する能力は身に付きませんよ?
 そのせいか、議員提案で制定された対住民の政策条例は、制定過程が杜撰、根拠がテキトー、中身があいまい、というイメージを拭えません。

 このたび、香川県議会はまさにそのイメージを地で行く条例を制定しました。話題となっている『香川県ネット・ゲーム依存症対策条例』です。

香川県ネット・ゲーム規制条例案、可決 「県民をネット・ゲームから守る」2020年03月18日 11時45分 公開[谷井将人,ITmedia]

【パブコメ結果が非開示!?】

さて。
 広く住民に影響のある政策条例を制定する場合、パブリックコメントを実施するのが一般的です。パブリックコメントでは、条例素案を公開し、意見を募り、結果を公開し、寄せられた意見に対し条例提案者が考え方を示し、必要に応じて条例素案を修正する、といったプロセスを経るのが通例です。場合によっては条例等でパブコメの手順を定めている自治体もあります。

 ところが、今回の条例制定に際して実施されたパブコメについては、議会事務局職員が編集した概要のみを公開しました。推し進めていた香川県議会の議長・大山一郎は、自身が委員長を務める「香川県ネット・ゲーム依存症対策に関する条例検討委員会」の委員に対しても

・意見用紙の開示対象:検討委員会の委員のみ
・場所:議会運営委員会室
・開示日時:3月18日(水)13時から3月19日(木)17時まで
・閲覧だけしか許可しない。写真や動画での撮影はもとより、メモも不可。

という、極めて前時代的な密室対応。外部への公開はもとより、パブコメを実施した条例検討委員会の委員にすら開示にここまで制限をかけているのです。

香川ゲーム規制、パブコメ全文を「採決後」に公開へ しかも「検討委限定・口外不可」―― 「これでは公開と言えない」と議員から怒り
これ公開って言う……?[池谷勇人,ねとらぼ]



こんな事がまかり通る香川県には、怖くて住めません。

 しかも、よく見てください。

条例案採決を知らせるニュースの配信時刻が、
2020年3月18日 11時45分

パブコメ意見の開示日時が、
3月18日13時から

 議会での採決前に、検討委員会の委員だった議員すらパブコメに寄せられた意見の現物を見る機会が無かった、というから更に驚きです。議会事務局の作成した概要が実際の原本と合っていたかどうかを検証することなく、議会事務局職員が抜粋し編集したものを見ただけで、議員は採決をしたわけです。議会事務局のフィルターをかける前と後とで、どう変わったかを知る事なく採決に臨んでいるのです。
 検討委員会委員長・香川県議会議長大山一郎は自分で現物を見ているか、議会事務局職員から状況報告を受けているはずです。
 大山一郎は「こりゃ賛成意見を動員して投稿させたのがバレてしまう」と思い、採決後での密室開示という判断に至ったのでしょうか。
 よほど開示が不都合だったのでしょうか。
 2000通の賛成意見の中で、同じ文面のものがどの位あったのでしょうか。
 ・・・情報開示に制限をかけると、こういった諸々の疑念を招きます。

 情報公開と個人情報保護は、両方とも重要です。ただ、パブコメは県議会として実施したものであり、県議会の構成員たる県議会議員は原本に触れて確認して集計する側の人間です。議会事務局職員はそうした集計作業等々を補佐する立場に過ぎません。個人情報に配慮するとしても、個人の特定に繋がるもの、誰が何を言ったかの特定に繋がる内容だけは口外しないよう、原本に接する委員に対し最小限の制限をかければ済むわけですが、大山一郎が委員へ出した通知からはそういった考慮をした形跡は見られません。

 判断材料たるパブコメの意見原本を、大山一郎と支配下にある議会事務局職員だけが見て、他の議員、検討委員会委員には採決後に開示する・・・「独裁」に近い状態です。少なくとも、判断材料を制限して他の議員の判断を妨げています。そんな独裁県・香川には怖くて住めません。

【パブコメの賛成意見にツッコミ】

 次に、議会事務局が編集した
香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(仮称)(素案)について提出されたご意見とそれに対する考え方

を見てみましょう。

 これを読んで最初に不思議に思ったのが、「賛成意見はそのまま掲載、反対意見に対しては無理筋であっても反論」というスタイルです。このスタイルから、検討委員会委員長・議会事務局の「どうしても賛成に誘導したい」という強い意思を感じます。

 寄せられた賛成意見、これがまた程度が低い。これを紹介するとともに、せっかくですから、検討委員会委員長や議会事務局がしなかった反論をしてみましょう。

======【引用ここから】======
01 子どもが色々な情報に触れることは大事なことと思うが、それは画面を通してだけではないと思う。平日の学校からの帰宅時間と就寝時間(22時)を考えれば、どう考えてもゲームに割ける時間は1時間程度まで。反発する声が沢山あるようだが、そのほとんどは感情論のように思える。
======【引用ここまで】======

 子どもが「これはゲームよりも面白い、これはパソコンの画面から得られるよりも大事なことだ」と思えるような話、情報を、家族が提供してあげましょう。また、時間の制限も、生活習慣、リズム、親と過ごす時間等は家庭によって様々であるので、家庭ごとに判断すれば良いものです。
 地方自治のキーワードの一つに、「補完性の原則」というものがあります。個人でできるものは個人でする。個人でできないものは家庭でする。家庭でできないものは地域でする。地域でできないものは基礎自治体でする。基礎自治体でできないものは広域自治体でする。広域自治体でできないものは中央政府でする・・・という考え方です。

 香川県議会は、この「補完性の原則」を無視し、家庭でできることを、段階をすっ飛ばして広域自治体たる香川県として条例化したわけです。県内の各家庭、地域、市町村、教育委員会の取り組みや個別の事情を無視して県内統一ルールを設定しましたが、果たしてどれだけの必要性・合理性があったのでしょうか。

======【引用ここから】======
02 子どもたちのネット・ゲーム依存症を減らせるきっかけになればいいと思う。強制力がないとしても、ゲームのことだけではなく子どもたちが親や社会と決めたルール・約束を守らなければならないと少しでも感じてくれたらいいと思う。それ以上に、逆もしかりで僕たち大人たちが子どもたちの手本となるように、今以上に社会のルールを守っていく姿を子どもたちに示していかなければならないと思う。
======【引用ここまで】======

 パブリックコメントで寄せられた意見を、議決権を持つ議員全員で共有し、これに対する検討を十分に行ったうえで条例案採決に臨みましょう、というのは、ルール以前の常識・道理と言ってよいでしょう。この条例制定過程において、香川県議会・大山一郎はそういった物の道理を踏みにじったわけですが、これを見た子ども達はさぞかしルールを守ることの重要性を感じ取ることでしょう(皮肉ですよ)。

 なお、今回成立した条例は「社会のルール」と呼べるようなものではありません。形式的には香川県議会が決めたルールに過ぎず、実質的には大山一郎の情報統制の下、独裁的に決められたルールなのです。

======【引用ここから】======
03 ゲーム規制に関して、賛成。一日60分、休日90分も妥当である。子どもは夜9時、10時までも就寝時間だと思うので、当たり前だと思う。うちの子は小学4年生と中学1年だが、兄弟で一日60分と決めている。お互い譲り合って時間をうまく使っていると思う。小学生の子どもの同じクラスにはゲームを夜中までしていたり、夜中にこっそり起き出してゲームをしていたりする子もいると言っていた。なので、授業中に寝ていることもあるそうだ。特に、18条の時間で区切ることが節度ある生活習慣に繋がると感じている。
======【引用ここまで】======

 条例を制定して、「ゲームを夜中までしていたり、夜中にこっそり起き出してゲームをしていたりする子」がゲームをしなくなるでしょうか。条例が子どもを教育するのではありません。家庭です。家庭ごとに、家庭の実情に応じて実効性のあるルールを決めるべきものです。
 県統一ルールが条例として出来上がったわけですが、「夜中にこっそり起き出してゲームをする子」にどうやって対処するのでしょうか。県職員が夜中に訪問するのでしょうか。職員の時間外勤務手当が跳ね上がりそうですね。

======【引用ここから】======
04 ネット依存症対策条例に大賛成である。理由は、「①ネット・ゲームに使う時間に相当する時間の分だけ、子どもの心身の成長および学力向上に必要な時間がそがれてしまう。②スマホ等の画面を凝視することにより、成長期の子どもの視力低下を招く。③ネット・ゲーム事業者による積極的なネット依存症対策が見られない。」である。
======【引用ここまで】======

 ①ネットやゲームに使う時間と、運動や勉強に使う時間と、どのように配分するかは家庭で判断すれば良いのであって、それを県条例で規制して良い理由が見当たりません。
 ②一点を凝視することにより成長期の子どもの視力低下を防ぐ、という立法理由であれば、長時間の読書等も規制対象となりかねません。再考を求めます。
 ③ネット事業者によるネット依存症対策が無いのであれば、まず家庭でどう対応するか考えましょう。
 なお、ゲーム・ネット依存症の人間からゲームやネットを取り上げて、それで問題が解決するのでしょうか。浮いた時間を勉強や運動に向けてくれれば良いですが、浮いた時間をずっと天井を眺めて過ごす、テレビを見て過ごす、眠って過ごす、あるいは別の依存症になってしまう、非行や犯罪に走ってしまう、いろいろな危険性が考えられます。県条例がないと子どものネット・ゲーム時間を制限できない、と言う程度の親の下では、ゲームを制限しても他の問題が吹き上がるでしょう。

======【引用ここから】======
05 保護者も子ども達も、そして教育現場も香川県の条例を一つの目安や指針として、携帯電話やゲームの使用について今一度しっかりと考えるべきだと思う。
======【引用ここまで】======

 まともな保護者であれば、既に、ネットやゲームに子どもがどう接するべきかをよく考えていると思います。県条例が無ければ考えるきっかけが無い、ということはありません。

======【引用ここから】======
06 家庭内規制に苦労している。行政が規制を設けてくれれば、堂々と「香川県の子どもはだめという決まりがある」と言うことができる。親としてこれほど心強いものはない。
======【引用ここまで】======

 親から「条例で禁止されているからダメ」という理屈を聞いた子どもは、親を馬鹿にして今後親の指導を聞かなくなる恐れがあります。例えば、ネットを制限されて暇だからずっとテレビを見ている子どもを親が叱っても、「はぁ?それ県の条例に書いてる?書いて無いなら黙ってててよ」と反論されたらおしまいです。
 親子の関係性から子どもの行為を諭すのではなく「〇〇がダメと言っているからダメ」と外部の権威を借りるのは、かえって親の威厳、説得力を失わせることになります。

======【引用ここから】======
07 ルールを定めることによる罰則があるわけではなく、あくまでも目安であって、それに基づき家庭内でルールを定めることが必要。
======【引用ここまで】======

 家庭内のルールで足りることを、なぜわざわざ県条例で規制したのでしょうか。なぜこの意見が、条例による規制に賛成として位置づけられるのでしょうか。

======【引用ここから】======
08 守る・守らないは各ご家庭のお心がけ次第というところは大きいと思うが、一つの目安や指針として具体的に記されている部分は大変参考になると思う。
======【引用ここまで】======

 各家庭でルール化する際の目安をそれぞれの市町村で示す、位ならまだ許容範囲かもしれませんが、県が条例で規制するのはまた別次元の話です。

======【引用ここから】======
09 一応、基準を示すことで子どもへの指導がしやすくなると思われる。
======【引用ここまで】======

 県条例が無いと子どもへの指導ができないような親は、県条例があってもダメでしょう。

======【引用ここから】======
10 時間による区切り(18条)は必要だと思う。
11 第18条は必ず入れてほしい。

======【引用ここまで】======

 時間の区切りを、子どもと家族でよく話し合ってルール化しましょう。県条例ではなくて。

======【引用ここから】======
12 子どもがゲームをやめられず困っている。時間制限は必要だと考える。
======【引用ここまで】======

 県条例で時間制限しても、多分、あなたの子どもはゲームをやめられませんよ。県条例の問題ではありません、あなたの親としての指導力の問題です。

======【引用ここから】======
13 周囲でゲームをやめられない子どもの話をよく聞く。時間による区切りは必要である。
======【引用ここまで】======

 県議会の情報統制の下ではなく、子どもと家族でよく話し合って時間のルールを決めましょう。

======【引用ここから】======
14 時間による制限がないと際限なくやってしまうものなので。
======【引用ここまで】======

 あなたはそういうだらしのない人なんですね。

======【引用ここから】======
15 依存症を防ぐ良い条例だと思う。時間制限は子どもには特に大切である。
======【引用ここまで】======

 香川県で育った子どもが、小・中・高校まで一律の時間制限を受け続け、大学や就職で県外へ出た瞬間に「香川県の抑圧」から解放されてゲームにハマり、かえって重度の依存症になる・・・というケースが増えないことを祈ります。

======【引用ここから】======
16 規則がないのでついネットをしてしまう。条例があれば守らないといけないと思う。
======【引用ここまで】======

 どうやって条例を守らせるんでしょうか。結局のところ、家庭でどう対処するかを考えるしかありません。

======【引用ここから】======
17 みんながやっているので長くやってしまう。みんなが条例を守れば時間を決めてやれると思う。
======【引用ここまで】======

 「みんなが条例を守れば」という絵に描いた餅。

======【引用ここから】======
18 条例制定後の啓発(子どものスマートフォン使用等の制限のかけ方)をわかりやすく保護者に伝えることが重要だと考える。
======【引用ここまで】======

 すいません、それを「誰が」保護者に伝えるんですか?

 賛成意見全体を通じて、規制に対する信仰心の篤さが目立ちます。動員とは言え、2000通を超える賛成コメントが寄せられた事実は「条例に書けば、書いたとおりの事が実現する」という幼稚な信仰がいかに世間に広まっているかを示すものです。

 規制をどう遵守させるか、そのためのコストはどのくらいなのか、遵守させることが可能なのか、規制を遵守させることが望ましいことなのか、規制をする前に考えるべきことは山積みです。
 「とにかく公権力で規制しよう」「規制させないとだめだ」「規制したい」と安易に発想する大山一郎や2000人の賛成意見を送った人達は、子どもをゲーム・ネット依存症から守るためと主張していますが、当のご本人たちが「規制依存症」から抜け出せなくなっているのではないでしょうか。


【追記】

香川ゲーム規制条例、検討委に聞く「議員すら見られないパブコメ」のおかしさ 「400件の反対意見」は県に届かなかったのか
 この記事に登場する、ゲーム規制条例反対派の日本共産党の「秋山時貞議員」ですが、

主張内容の真っ当さもさることながら、そのイケメンっっぷりと言ったら。
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合格ライン操作は 実在する!?(1次筆記試験3割得点でも合格できる行橋市職員採用試験)

2020年03月07日 | 地方議会・地方政治
海賊A「ワンピース、ひとつなぎの大秘宝なんておとぎ話だろ?」

海賊B「グランドラインを進んでいっても何もねぇよ。」

海賊C「まだあんな話に騙されてる海賊がいるのかっはっはっは」

いいえ、


「ワンピースは 実在する!!!」

カッコいいですよね、白ひげの名シーンです。

【令和元年度行橋市職員採用試験の怪】

さて、本題。

行政関係者なら誰もがきっと「そりゃいくらなんでもやりすぎだ」と思うであろう、不審な出来事が起きていました。


35:30頃から~
会議録はこちら↓
行橋市議会 令和元年12月 定例会(第16回) 12月09日-02号
======【引用ここから】======
◆16番(鳥井田幸生君)
(~~~省略~~~)
 それとですね、続けて職員の採用問題についてです。令和元年、ことしですね、職員の採用試験がございました。初級・上級とも、ほぼ同数の応募者数があっているようでございます。しかしですね、聞くところによれば、初級職員は一次試験において、ボーダーラインを設置した関係上、合格者数が11名ですか、なっております。ところが上級職に関してはですね、受験者数が一次試験において全員合格したということになっていますけど、これは事実なんでしょうか、まずお聞かせ願いたいと思います。
(~~~省略~~~)
◆16番(鳥井田幸生君) 
 そうすると私が言ったように上級職員に関してはですね、一次試験を受けた方が全員合格ということで、これは間違いないわけですよね。
                (総務部長、頷く)
なんでこのようなことが起きるんでしょうか。

======【引用ここまで】======

 市役所職員の採用試験で、
一次試験を受けた方が全員合格
・・・・・・やばい、この市役所やばい。

 全国津々浦々で、国家公務員や都道府県職員、市区町村職員の採用試験が行われています。多少のスタイルの差こそあれ、1次でマークシートを中心とした筆記試験、2次・3次で論文や面接、討論という形が一般的です。

 1次筆記試験は、受験者の意欲・適性・コミュニケーション能力とは別に、職務を遂行する上で必要な知識・教養・処理能力を持っているかどうかを確認するために行うものです。1次筆記試験は、「〇点取ったら1次合格」という絶対評価のラインを設定するか、相対評価として「受験者の上位〇%を1次合格」というルールを設定するかのどちらかが行われます。あるいは、上位〇%を合格とするとしつつ、「教養科目・専門科目それぞれ最低限この点数は取ってほしい」という足切りラインも設定しておく絶対評価・相対評価合わせ技のような形を採用するところもあります。

 数十人、数百人が受ける1次筆記試験で、受験者全員を合格させるなんてことはありえません。相対評価ルールであれば、全員合格は皆無です。また、絶対評価ルールであれば、受験者全員がその設定ラインを超えてくれば全員合格となりますが、毎年実施している試験で同じ程度のラインを設定していれば、そういうことはまず起こりません。

(小規模町村や職種限定の試験において、最終合格1人の枠に対し、1次筆記試験を2人が受けて2人とも1次合格する、ということはあります。ただこれは少人数であるが故の例外。)

 しかし、行橋市では
「1次筆記試験受験者 全員合格」
という事態が生じました。これは極めて異常なことです。

【他団体の例】

 他の公務員採用試験ではどうなっているでしょうか。
 google検索で引っかかったものを幾つかご紹介。

〇平成31年度(令和元年度)福津市正規職員採用試験(前期)結果状況
======【抜粋ここから】======
行政事務A(大卒程度)第1次試験 受験者数156人 合格者数49人
======【抜粋ここまで】======

〇【医師以外】令和元年度吹田市職員採用候補者試験(5月実施)実施状況
======【抜粋ここから】======
一般事務 事務A 受験者数605人 1次試験合格者数225人
======【抜粋ここまで】======

〇令和元年度 佐賀県職員採用試験実施状況
======【抜粋ここから】======
大卒程度 行政 第1次試験受験者数175人 第1次試験合格者数82人
======【抜粋ここまで】======

〇南魚沼市 令和元年度職員採用試験の実施状況
======【抜粋ここから】======
大学卒業程度一般行政1 1次試験受験者28人 1次試験合格者14人
======【抜粋ここまで】======

〇宇多津町 令和元年度職員採用試験受験状況について
======【抜粋ここから】======
一般行政事務(大卒程度) 一次試験受験者26人 合格者21人
======【抜粋ここまで】======

 当たり前なんですけど、1次筆記試験で合格する人、不合格となる人がいます。(それなりの人数規模の試験で、受験者全員が1次筆記試験を合格した例があったら教えてください。)
 こうした一般的な運用例を見た後で、改めて行橋市のものを見てみましょう。

〇令和元年度 行橋市職員採用試験結果
======【抜粋ここから】======
上級 事務職 1次受験者29人 1次合格者29人
======【抜粋ここまで】======

 ・・・うん、やっぱり違和感しかない。1次試験の意味がない。
 足切り、学力選別という機能を、1次筆記試験が全く果たしていないのです。こうやって比較してみると、異常さが際立ちます。

 この市の過去の結果とも比べてみましょうか。

〇平成30年度 行橋市職員採用試験結果
======【抜粋ここから】======
上級 事務職 1次受験者31人 1次合格者14人
======【抜粋ここまで】======

〇平成29年度 行橋市職員採用試験結果
======【抜粋ここから】======
上級 事務職 1次受験者31人 1次合格者20人
======【抜粋ここまで】======

〇平成28年度 行橋市職員採用試験結果
======【抜粋ここから】======
上級 事務職 1次受験者12人 1次合格者8人
======【抜粋ここまで】======

 他の年度の試験は、きちんと筆記試験でふるいにかけています。令和元年度のみ、1次の筆記試験が無意味になってしまっているのです。
 私が学生の頃、地域で最も偏差値の低い高校では「入試に行って名前を書けば合格した」なんて事が嘘か本当か言われていましたが、1次筆記試験で全員合格というのはそういうことです。

 これについて、冒頭の市議会でのやりとりを再度見てみましょう。

行橋市議会 令和元年12月 定例会(第16回) 12月09日-02号
======【引用ここから】======
◆16番(鳥井田幸生君)
同じ公務員の採用においてですね、上級職・初級職、それぞれあるわけでしょうけど、事務職に対してですね。片や一次試験にボーダーラインを設置しながら、片方では全員合格と。理解に苦しむんですね。一次試験が何のために行われているのか。何のためにやるのか。
 私は議員ですけど、この結果について、受験者の本人も親も理解に苦しむんじゃないですかね。市長、一次試験は何のためにあるんですか、答弁を願います。
○議長(田中建一君) 
 田中市長。
◎市長(田中純君) 
 お答え申し上げます。議員の御質問の趣旨が分からない。つまり100人受けて100人合格したら、それはおかしいんですか。
           (鳥井田君「おかしいでしょ」の声あり)
どうしておかしいですか。100人受けて100人とも同点だったらどうしますか。全員合格でしょ、二次試験、三次試験があるんだから。そりゃ100人受けて100人全員同点だったとは言いませんけども、同点者が数名いれば、当然同じ数の人がいても、それは全然論理上、不思議ではないと思いますが、いかがでしょうか。
----(中略)----
来年、100人受けて全員0点なら全員落としますよ。試験とはそういうものでしょ。
======【引用ここまで】======

 田中純市長は、先ほど例え話で出した「入試を受けに行って名前を書けば合格した」レベルの高校・大学の出身なのかと思いきや、この答弁レベルで京都大学卒というから驚きです。

 そう思わせるくらい、この市長答弁はひどい。全く説明になっていません。
 受験者全員同点とか受験者全員0点とか、確率的に、あるいは実務的にあり得ない仮定の事象を挙げて感情的に反論している姿は、行政トップの答弁として0点です。
 筆記試験を実施して、仮に下位70%集団が1~3点差でだんご状態になっていたとしても、その中のどこかで線引きをするシビアさが必要です。そのシビアさが試験の公正さを保っています。1点に笑い1点に泣く、それが試験というものです。

 1次試験受験者全員を合格させた行橋市長の決定について、納得できない受験者もきっと居るでしょう。筆記試験が最初の関門と思って試験勉強をして臨んだにもかかわらず
「実は1次筆記試験は飾りで無意味でしたー。2次以降の論文、面接、討論だけで決めますー」
なんて結果を見たら、
「何この市役所、ふざけてるの?」
「筆記試験がお飾りなら、最初から試験対策する必要無かった」
と思うでしょうし、
「筆記試験の結果を操作したんだろうか?」
といった疑念に駆られることでしょう。
筆記試験の出来は良かったのに、最終合格を逃した受験者が
「筆記試験の下位だった受験者を最終合格させるため、市は筆記試験合格ラインを操作して、その下位受験者を最終合格させた結果自分は落とされたのでは?」
と思っても不思議ではありません。

 数点の差の中に受験者が集中していたとしても、その僅かな差の中でラインを引くのが試験実施者の責務です。これが出来ないということは公正な試験が出来ない団体なので、そもそも採用試験を辞めてしまった方がいいと思います。

 追及していた議員が、
市長、一次試験は何のためにあるんですか
と問うたのは、まさにその通りです。

【3割得点で筆記試験合格できる市役所】

 では実際、得点の状況はどうだったのでしょうか。
 次の市議会3月定例会で、驚愕の事実が出てきました。


======【テキスト起こし】======
41:20頃~
工藤政宏議員これ僕情報公開請求で、令和元年度の行橋市職員採用試験、第1次試験の得点表、これを出して貰いました。
 29人受けて、合格ラインがご丁寧にも合格ライン29名の下に引いてあります。これ僕が引いたんじゃないですよ。出てきた情報にこうやって引いてくれているんです。29人受けて29人合格なんです。
 点数これだけ開きがありますよ。おそらく200点満点中ですかね。1位が168点、2位が155点、下の方を見ますと25位83点、26位83点、27位65点、28位60点、29位58点ですよ。相当な点数の開きがあります。
 これどういうことなんですか市長。
『100人受けて100合格したらそれはおかしいんですか。100人受けて100人とも同点だったらどうします。』
これ実情全然そんなことないですよ。

======【テキスト起こし】======

 例えば、例年、ボーダーラインを6割正解で設定し、それで、30人受験者がいて15人合格する、という結果が出ていたとします。例年通り6割正解をボーダーラインにしていたところ、令和元年度だけ、受験者全員が8割、9割正解をした・・・というのであれば、全員合格もあり得ます。こうした状況であれば、12月定例会での
100人受けて100合格したらそれはおかしいんですか。100人受けて100人とも同点だったらどうします。
という田中純市長の答弁も成り立ちます。

 しかし蓋を開けてみれば、200点満点中、1位168点、29位58点、その間にバラツキがある試験結果です。ごくごく一般的な試験結果です。受験者全員が同点で優秀だったという田中純市長の言っていたイレギュラーな事例ではありません。過去の試験状況に照らしても、不自然さは際立っています。この令和元年度試験だけボーダーラインを意図的に低く設定しなければ、全員合格という事態は生じません。市長が「ボーダーラインを25%得点にしろ」と指示しない限り、この結果を生じさせることは不可能です。

 この市役所、今年はさぞや優秀な職員を採用できたことでしょう(皮肉ですよ?)。
 1次筆記試験の合格ラインを3割正解よりも下に引いた合理的説明、できるんですか田中純市長さん?

 職員採用は、生涯賃金2億とも3億とも言われる人件費が投じられる、ある意味で巨額の公共事業です。しかも、よほどの事が無い限り自治体は倒産せず、職員の身分保障も手厚くなっています。このため、「公務員試験でコネ採用があるのではないか?」「あの職員は地元有力者が市長に頼み込んだのではないか」等の疑惑は昔からいろんなところで囁かれています。
 試験において有力者の関係する受験者を贔屓しようとした時、面接や討論であれば面接官の主観で左右できる為、贔屓するのは比較的容易です。複数いる面接官のうちの一人に頼んで高得点を付けてもらうようにするのは、ちょっとした有力者なら出来るかもしれません。この場合、市長がコネ採用を知らないまま終わるという事もあり得るでしょう。
 しかし、1次筆記試験のボーダーラインを極端に下げることは、市長が許可を出さないと実施できません。仮に、人事担当部長・課長クラスの人が今年だけ1次筆記試験のボーダーを3割弱で設定しようとしても、市長が「なんでそんな筆記試験の出来の悪い受験者まで面接するんだ?例年通りのボーダーラインにしろ」と一喝すればそれまでですから。

 どのくらい市長に近い人の頼みだったのでしょうか。

【受験者への謝罪を】

 さて。
 このブログをなぜ今回書こうと思ったのか。

 それは、

医学部不正入試、東京医大に受験料返還義務…対象は女子だけで2800人に : 国内 : ニュース : 読売新聞オンライン

というニュースが入ったからです。
 背景や構図に違いはあるものの、事前の告知なく不正な処理をして受験者に不利益を与え、社会に不信感を持たせてしまったのは同じです。
 東京医大には受験料返還が命じられました。
 行橋市も、市長による公式の謝罪はもとより、受験料返還、今年度試験の白紙撤回と再試験の実施、あるいは、今年度不合格者は来年度の筆記試験免除といった措置を検討すべきではないでしょうか。

公務員試験にコネ採用はある!?コネでも落ちた国家や地方受験者はいる? | 現役公務員ママの本音とリアル
======【引用ここから】======
・筆記試験はコネが影響する余地なし
 筆記試験を実施する段階では、コネが影響する余地はありません。
 この段階でコネなどが影響するとすれば、それは採点の不正操作にあたります。
 間違いなく、トップニュースで報じられるレベルです。

======【引用ここまで】======
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綾瀬市議会に学ぶ議会報編集のあり方

2019年11月21日 | 地方議会・地方政治
ある自治体が、近隣の、あるいは類似規模の複数自治体に対し、

「〇〇の事務について、どう処理しています?」
「法第△条の解釈、運用についてどうされてます?」

といった照会をかけ、回答を貰うというのは、様々な部署で行われている

「役所あるある」

の一つです。

こうした照会については、明確な根拠規定があるものの他、回答する義務がありません。
回答しなくても、法的なペナルティは多分ありません。
照会・回答事務は、同じような境遇にあって対処方法に悩んでいる自治体間・職員間の、

「困った時はお互い様」

的な精神、紳士協定の上に成り立っています。

職員としては正直なところ、外部からの照会に回答するのは面倒くさい。
場合によっては数年前の段ボール箱から書類を発掘して確認する、なんて事をしなきゃいけません。
手間だし、うろ覚えで適当に回答してしまおうか、あるいは無回答で回答してしまおうか、なんて魔がさすこともあります。

ただ、自分も疑義が生じた時に他団体に照会文書や電話で問い合わせすることがあります。
それなら、他所から尋ねられた時も誠実に答えておこう、と考え直すわけです。

なお、毎回というわけではありませんが、この手の照会をする際には、

「こちらでは〇〇という運用をしていますが、貴団体ではどのようにされていますか?」

と、自分の団体での運用方法や考え方を示した上で、相手に問うスタイルも多くあります。
この運用例も、この手の照会・回答事務には、似たような境遇・悩み・迷いを抱えた者同士での、ある種の紳士協定が背景にあることを示している、と私は考えます。

【調査票が公開される、ということ】

さて。

「神奈川県にある綾瀬市議会の事務局が、福岡県にある行橋市議会の事務局へ宛てて調査票を送り回答を求めている」

という事例が、こちらのブログで紹介されています。

【地方議会の闇③】議会事務局アタック、動き始めた地方議会。政治家の戦い方と連携の参考事例【ワクワクした人はシェア】 | 小坪しんやのHP〜行橋市議会議員

今回の場合、照会文書に添付されていたであろう調査票がそれぞれの市議を経由して上記ブログに公開されており、さらに、

======【引用ここから】======
回答は「公式のもの」でありますから、綾瀬の事務局を通じて笠間議員の元に届くことでしょう。
公式のものでありますから、笠間議員もネットに公開するでしょうし、私もBlogに掲載させて頂きます。

======【引用ここまで】======

と、回答が公開されることまで予告・明言されています。
こうなると、単なる面倒くささとは性質が異なります。

冒頭であげた、自治体間・職員間の紳士協定に基づく照会・回答とは言えなさそうです。

通常の照会・回答とは異なるこうしたケースにおいて、照会をかけた綾瀬市議会の側ではどう対処しているのでしょうか。
例えば、議事運営や議会報の編集過程において、ここで登場した笠間議員にまつわるトラブルがあったとして、その具体的なケースについて他議会事務局から照会があったら、綾瀬市議会事務局はどの程度まで突っ込んで回答するのでしょうか。
気になるところです。

また、今回の件をきっかけにして

「綾瀬市議会からの照会に回答したら、綾瀬市議会議員を通じて外部にその回答が公開される」

とイメージが付いてしまった場合、綾瀬市議会事務局は今後やりにくいだろうなぁ、というのは想像に難くありません。
一歩突っ込んだ内々の本音、肌感覚といったものを他議会事務局と共有することが難しくなり、公開されても差し支えない建前論だけが綾瀬市には届くように・・・ならなければ良いのですが。

【議会報を編集する、ということ】

突然ですが、上記ブログにて登場する笠間議員の一般質問を、綾瀬市議会の議事録から引っ張って読んでみましょう。

綾瀬市 平成30年9月定例会 09月25日-04号
======【引用ここから】======
◆10番(笠間昇君) いつどこでどのような事案が発生するかわかりませんので、ぜひともいろいろときめ細かく、特に執行部のほうは気を配ってあげてください。よろしくお願いします。
 それで、庁舎内には警備会社のカメラが設置されていると思います。これは防犯カメラというんですか、防犯カメラを設置していますよといった表示とかあるかと思います。銀行とかで想像すると、防犯カメラ設置と書いてあるだけでもかなり抑止効果があるのではないのかと思うんですが、こちらのほうはどう考えておりますか。安全確保という面から、そちらのほうの表示ということについてはいかがお考えでしょうか。よろしくお願いします。
○副議長(比留川政彦君) 総務部長。
◎総務部長(駒井利明君) 市役所には現在、警備業務で使用するカメラが設置されておりますが、こちらのほうにつきましては、カメラ設置という表示は現在のところ行っておりません。ただ、カメラが設置されていることを表示することで暴力行為の抑止効果につながるのではないかとも考えておりますので、今後、職員や来庁者の安全確保のために、例えばカメラ作動中などの表示を行ってまいりたいと、このように考えております。
○副議長(比留川政彦君) 笠間 昇議員。
◆10番(笠間昇君) 先ほど登壇したときにお話しした金沢市とか横浜市の中区役所とかは、事件があった後、かなり防犯カメラを多く設置し直したということも聞いております。ということは、防犯カメラというとちょっとはばかりがあるんだったら、管理カメラとかビデオというものをつけるということは抑止効果があるという、他市の例ではありますが、そういったことが見えるのかなと思いますので、ぜひともそこは検討していただきたいと思います。
 今度は職員の安全管理とかトラブル防止、今、抑止のためにも市で表示するだけでなく、録画画像の権限を持っていくのはどうかなと思います。しっかりと映像の権利というんですか、映像権、こちらのほうの権限を持つべきではないのかと思うのですが、そちらはどう考えているか。よろしくお願いいたします。
○副議長(比留川政彦君) 総務部長。
◎総務部長(駒井利明君) 市庁舎に設置されておりますカメラにつきましては、市から警備業務を請け負っている事業者が機械警備の一環として設置しているものでございます。このカメラは主に警備事業者が庁舎出入り口付近や通路部分を監視し、侵入者や残留者の状況把握、盗難等の犯罪防止の目的で使用しておりますもので、カメラの映像や記録は警備事業者の情報となっております。したがいまして、市が映像情報の閲覧やデータを取得することはできず、確認が必要な場合には警備事業者に確認していただき、市はこの警備事業者から文書で報告を受ける、このような形となっております。また、犯罪が発生したときには、捜査上、必要な場合に限り、警備事業者から直接警察に情報を提供することになります。
 職員の安全管理や庁舎内でのトラブル防止のために、カメラ映像などの情報を市が取得することも必要ではないかという御質問でございますが、警備事業者からの報告や警察への捜査協力によりまして、映像情報を市が持たなくてもそのような効果は得ておりますので、またさらには不必要な個人情報を市が取得することになってしまうことは、個人情報保護の観点からも好ましくないと考えております。したがいまして今のところカメラの映像情報を市が取得する考えはございません。
○副議長(比留川政彦君) 笠間 昇議員。
◆10番(笠間昇君) 今までとちょっと流れは違ったところから聞きたいんですが、もし庁舎内で役所の職員が何か不正を疑われるような事案が発生した場合は、市民がそれを発見したときに、あそこでやっていたはずだから映像を見せてくれと言ったときは、変わらなく対応できるというんだったら、それは確認してもらえるのかどうか。今の話だと警察を通してくれとか、警備会社を通してくれとなるんですけど、余りにもちょっと責任をよそにやり過ぎてるんじゃないかとも思うんですが、そこのところはどう考えているのか、お聞かせください。
○副議長(比留川政彦君) 総務部長。
◎総務部長(駒井利明君) 映像情報の入手につきましては、個人情報保護という観点から、個人情報保護審査会にかけて、その許可を得なければならないという手続がございます。現在、庁内に設置しておりますカメラにつきましては、この手続をとっておりませんので、もし仮にそのような事例があった場合には警備会社のほうに確認をさせまして、状況によっては警察に通報するなりの対応をしていくような形になろうかと考えております。

======【引用ここまで】======

これを、『あやせ市議会だより』に掲載すると、こうなります。

あやせ市議会だより 平成30年11月15日号
======【引用ここから】======
Q 防犯カメラには、暴力抑止効果があるため、警備会社が設置するカメラの映像は、市が権限を持つべきでは。
A 個人情報の観点から、現時点では、市が映像情報を取得する考えはない。

======【引用ここまで】======

あらスッキリ。

原稿ママの掲載はしていません。
単純な抜粋でもありません。

原文を大胆に切り貼り修正しています。
市議会だよりは紙面に限りがあるため、会議録原文を圧縮し、かつ、読み手である市民がパッと読んで意味が通じるよう修正するのは必要であり、編集者として当然あるべき行為と言えます。
時には省略した主語を補い、複数の発言にまたがる単語をつなぎ合わせ、てにをはを整え、指示語や繰り返しの表現を元に戻し、話し言葉や倒置法になっている部分を整理し、『あやせ市議会だより』だけを目にする読者に誤解、曲解されないよう意味を伝える、編集の腕がここにはあります。

どのテーマを掲載するかの指定は質問者がするかもしれません。
しかし、上記のように議事録を圧縮し、削除し、紙面の形にする責務と権限は、最終的には個々の議員ではなく、発行元たる綾瀬市議会、そして編集を担当する議会報編集委員会にあります。
綾瀬市議会の会議規則や各種内規を確認してはいませんが、議会報の表紙に発行者・編集者が明記されている以上、そう捉えるのが自然でしょう。

調査票の1問目にあった
「記事の内容を修正する動き」
との箇所は、議会報編集委員会の責任において行うべき編集作業に当然含まれているものと考えます。

質問票に対する答えは、綾瀬市議会において『会議録』を修正した後に『あやせ市議会だより』に掲載している方法から推し量れば、概ね分かるだろうと思います。
どうでしょうか、笠間議員さん。

【圧縮上手な綾瀬市と、圧縮下手な行橋市】

綾瀬市議会では、上記のように膨大な議事録の中からポイントを抜き出し、文章を整理した上で議会報に掲載しています。
限られたスペースの中で、議員が何を問い、行政側が何を答えたのかが分かるよう焦点が絞られており、密度の濃い記事になっています。

他方、行橋市議会ではどうでしょうか。

【地方議会の闇④】野党会派のダブルスタンダード、議会便りにおいて市議の実名を出した例はあった。【笑った人はシェア】
======【引用ここから】======
市議側(この場合は工藤市議)が、他の市議の名前を出している。
そもそも村岡市議に関しては、市長の勘違いであり完全な流れ弾だ。


-----(議会報ここから)-----
議員 ・・・今年1月13日、市長の市政報告があった。これは政治活動か、選挙活動か。
市長 選挙活動です。
議員 おかしい。告示前。選挙活動と言うなら大きなミス。
市長 訂正する。選挙活動ではない。
議員 市長スピーチ。「私ども、麻生マシンという末端に行橋という小さな小さな歯車が組み込まれたと認識。今後とも麻生マシンの小さな小さな歯車として、行橋を京築のメイン都市にしていくことを誓い、2期目のお願いとする。選挙では、よろしく支持の程お願い申し上げ、挨拶にかえさせていただく」。後半は選挙依頼。麻生副総理だからじゃない。どの国会議員の名前があっても、何回もほにゃららマシン、小さな歯車という言葉が出るのはどうなのか。司会は。
市長 村岡議員だったような気がします。
議員 井上副議長です。
市長 あっ、そうですか。
議員 二元代表制の本旨を考えた時、御自身の市政報告を副議長にお願いするのは、やはり違う。ある種の距離を置くように努めるべき。市長は絶大な権力を持つ訳だから、その辺は配慮すべき。

-----(議会報ここまで)-----

しかも、この場合は、単に市長の勘違いだ。
だったら村岡市議の名前ぐらい消してやればよかったろうに。

======【引用ここまで】======

この指摘は、まさにそのとおり。
個人名なのだから、編集段階で議会報からは消してやればよかったろうに、と私も思います。

(余談ですが、この市議会だよりからは、政治活動と選挙運動に関する市長の認識の低さが窺えます。
告示日前の市政報告を選挙活動と言ってしまうし、政治活動であったにも関わらず「選挙ではよろしくお願いします」と言っちゃうし。
選挙のお願いをする市政報告会って、公選法で禁止されている事前運動じゃないんでしょうか。)

本題に戻り。

『あやせ市議会だより』と比較すると、個人名の使用の他にも気づく点があります。
綾瀬市議会は文章を圧縮・削除・整理し再構築しているのに対し、行橋市議会ではそういった作業をせずに原文から抜き書きしている印象を受けます。

話し言葉はそのまま。
言い間違い、勘違いはそのまま。
倒置法もそのまま。

なので、議会報としては読みにくいのです。

今回、綾瀬市議会が行橋市議会に対して照会文と調査票を送っているわけですが、逆に、行橋市議会が綾瀬市議会に対して議会報掲載文の会議録圧縮方法や修正ルールを学ぶために照会文を送ったり、視察に行って教えを乞うてはどうでしょうか。

【議会報編集の留意点】

議会報を編集するにあたって、様々な点に配慮しなければなりません。
その一つが、綾瀬市議会のように、内容や文章を整理圧縮し限られた紙面を有効に使って情報を伝えることです。

他に配慮すべきなのが、

○地方自治法
第百三十二条 普通地方公共団体の議会の会議又は委員会においては、議員は、無礼の言葉を使用し、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない。


仮に会期中の議長の発言取消命令や議員の発言取消、訂正申出に対する許可が無かったとしても、この規定に抵触するおそれのある会議録の箇所をわざわざ引用するのは避けるべきです。

編集者が、会議録に掲載された発言を、改めて議会報に掲載し広く知らせる行為によって、人の名誉を毀損した場合、刑法上の名誉棄損や民法上の損害賠償が成立する可能性はあると思います。
ましてや、その内容が議員活動の枠外で私人としてのものであれば、猶更です。

なお、この条文の背景には、

○日本国憲法
第五十一条 両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。


の反対解釈があります。
つまり、国会議員の発言は憲法の規定によって民法上・刑法上の責任を免除されますが、地方議員の発言は免責されない点を考えなければいけません。
地方議会においては、名誉棄損等のトラブルを避ける配慮が求められます。




【これから】

・・・さて。

爆破予告事件でおかしな決議を出して道を踏み外した行橋市議会は、個人攻撃の応酬で道を踏み外し続けるのでしょうか。
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