若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

市有地の占有と、副市長の解職 ~行橋市の御家騒動~ 

2019年10月09日 | 地方議会・地方政治
【詳報】行橋市議による市有地不法占拠を巡る議会答弁 | 選報日本
======【引用ここから】======
質問者(下記枠内)は小坪慎也議員。
「行橋市議による私有地の不法占拠はあったのか?」

小森総務部長「平成27年の区画整理完了後から畑として使われている。顧問弁護士は不法な占有と」
松本副市長「顧問弁護士の判断で現場においては不法占拠という見解」

======【引用ここまで】======

この記事を読んで最初に感じたのが
「へぇ、ここの市役所に顧問弁護士がいたんだ!」
という驚きでした。

以前、当ブログにて、行橋市の使途不明金問題を取り上げたことがありました。この時に一連の報道を追いかけましたが、顧問弁護士が登場した場面を見た記憶がありません。

職員によって多額の使途不明金が発生した場合、他の自治体では、外部の弁護士や会計士の調査を経て、あるいは警察の捜査や裁判の状況を見て、当該職員に対し免職や停職といった懲戒処分を下しています。

ところがこの行橋市では、内部調査のみ。そして、文書訓告で済ませてしまっています。免職や停職と比べた時、文書訓告は遥かに軽い取り扱いです。
使途不明金疑惑の時に、顧問弁護士に調査を依頼していたら、果たしてどんな結果が出ていたでしょうか。

また、この使途不明金の調査に際し、行橋市は
実行委員会の文書は、市の情報公開の対象外
と判断し、領収書などを非開示扱いにし、情報公開請求や市議会委員会からの資料要求を断っています。この市の判断は、最高裁の考え方に明らかに反しています。
最高裁の見解を調べず、
「実行委員会の文書は非開示でいいですよ」
と意見する弁護士がいるでしょうか?

使途不明金疑惑の時、
顧問弁護士はいなかったのか、
顧問弁護士に相談しなかったのか、
顧問弁護士の意見を伏せ政治的判断を優先したのか、

前回の使途不明金疑惑の時は顧問弁護士の見解が出てこなかったのに、今回は顧問弁護士に相談しその見解を議場で紹介している、この差はどこにあるのでしょうか。

ここの行政は、誇りと威厳をもって、市民の方を向いて、多額の使途不明金を出した職員の処分を決定したのでしょうか。
また、二元代表制の一翼を担う市議会は、チェック機能を十分に果たし、この使途不明金の解明に全力を尽くしたのでしょうか。

【名誉毀損罪の可能性を考慮したのか】

さて。

刑法には「名誉毀損罪」というものがあります。

○刑法第二百三十条
「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。」


国会議員の場合、国会での発言については憲法第51条により民事上・刑事上の責任を免除されます。しかし、これは地方議会には当てはまりません。地方議員には憲法上の免責措置は適用されません。このため、地方議会において個人名を挙げてその人の名誉を傷つけた場合、上記の名誉毀損罪に問われる可能性があります。

この点を配慮し、
(2) 令和元年9月定例会 本会議3日目(R元.9.11)②小坪慎也議員一般質問 - YouTube
======【テキスト起こし】======
5分15秒頃
田中議長「議長から申し上げておきたいと思います。固有名詞につきましては、注意をしていただきたいと思います。」
5分45秒頃
田中議長「議場内での発言について、議長から申し上げます。特定個人名を発言する場合には、個人の人権やプライバシー等、十分配慮した上で発言を行うこととする、ということが議会運営委員会の申し合わせ事項で規定をされておりますので、注意いたします。
======【テキスト起こし】======

と注意喚起されています。
こういう慎重を要するものであるため、休憩をとり、議会運営委員会で検討し直すことは決して無駄ではないと思います。
ところが、冒頭の報道の続編を書いた記者は、

======【引用ここから】======
まさかの「休憩動議」連続提出

「議事妨害」行為

======【引用ここまで】======

として、本会議を中断し議会運営委員会の開催を求めた動議を「議事妨害」と評価しています。
国会と地方議会の差異を考えた時、議場外の出来事を、個人名を伴って取り扱うことに慎重になるのは当然のことです。
この記者の評価に、私は賛同できません。

【占有の違法性はどの程度か】

さてさて。

行橋市は、この令和元年9月11日時点で、市有地占有の違法性がどの程度のものか把握していたのでしょうか。田中市長は、市有地の管理のあり方を問われ、

「まことにごもっとも。異論はない。市民の通報で知ったことも職務怠慢で失態。管理不行届。市民に陳謝する」
「自ら処分する方向で検討する」

と、市長としての市有地管理責任について自らを処分する意向を述べていますが、およそ1ヶ月たった現時点で処分をしたという情報はなく、逆に、処分しないという発言をした報道すらあります。

土地占有にどの位の違法性があるのかを考える時、

土地管理に関する担当職員の承諾、黙認等があったのか、
市有地の一般的な管理のあり方と比較してどうなのか、
他に市有地が無断利用されているものは無いか、
あるいは借地契約が切れて無権限利用が放置されているものは無いか、
原状回復が容易なのかどうか、
土地の利用者が支払うべき土地利用料は幾らだったのか、
市が管理していた場合に市が負担すべき維持管理費は幾らだったのか、


といった諸要素があると思うのですが、これらを総合的に検討した上での「自ら処分する」発言だったのでしょうか。自らを処分しないという市長発言報道に照らすと、市長も、強い違法性があるような占有ではなかったと認めていると思えるのですが。

【副市長の解職】

さてさてさて。

こうした中、

2019年10月5日 西日本新聞
======【引用ここから】======
行橋市副市長の突然の解職 市長「信頼できず」 松本氏「理解されず」

 行橋市の松本英樹副市長(61)が田中純市長(73)から4日付の解職を通告されたのは、当日の朝だった。「君とは路線が違った」と告げられたという。辞職を勧めることもなく、突然の解職。田中市長は「辞職では甘い。私の意図を明確に伝えるため」と話す。市トップ2の間に、いったい何があったのか―。
 記者会見した田中市長は、解職理由について「この4、5年、彼が私の補助機関として機能しているか、不満だった。それが臨界点に達した」と語った。数日前に決心したという。
 市長が例示した小さな不満の積み重ねとは①市の政策を批判する言動が目立つ②議会で市長の方針に反する答弁や振る舞い③再建中のホテルを支援する企業の取締役に就任したが報告もなく何をしているか不明―など。「意思疎通できず、信頼できなくなった」のが最大の理由という。
 一方、松本氏は「外部で政策批判などするはずがない」と反論。「意思疎通がなかったのは確かだが、事実関係を確認してほしかった」と不満を漏らした。また、市職員出身の松本氏は、事業の進め方などで職員から相談を受けることも多く、職員側に立った対応が「市長が求める働き方とはずれがあったのだろう」とも語った。 (石黒雅史)

======【引用ここまで】======

今回の不法占有に関する議会答弁も、解職理由として挙がっている
②議会で市長の方針に反する答弁や振る舞い
の一例に当たると述べているのが、この一般質問を行った小坪市議。

【行橋市】市長が、副市長を解職。市長「補助機関としての役割を果たしていないと判断」 | 小坪しんやのHP〜行橋市議会議員

メモのやり取り等、振る舞いの部分に関しては、見た人の受け取り方次第なのかな、と思います。現場で生で見たら印象が違うのかもしれません。
では、答弁の内容はどうでしょうか。
例えば、

(2) 令和元年9月定例会 本会議3日目(R元.9.11)②小坪慎也議員一般質問 - YouTube
======【テキスト起こし】======
23分30秒頃
田中市長「・・・我々、行政が知りえたのが市民の方の通報によるということが、二重三重の意味で行政とすれば職務怠慢であり、ある種の失態であったと、管理の不行き届きであったという反省は十二分にして、重ねて市民の方に陳謝を申し上げたいと思っています。」

松本副市長「市長の発言のとおり、市の管理不行き届き、これがあったと思います。ただ、先ほど、前段で小坪議員の質問で、税金だとか賃借料の話がありましたけども、申し訳ない、そこの質問は前段の質問とちょっと矛盾しているんじゃないか、質問がですね、と思っています。なぜかといいますと、固定資産税ですから、個人の土地でないとかけられない。かけられないから公有地です。非課税。だから過去に遡ってかけられない、これは課税権の、忖度しているとか、そんなものでは全くありません。非課税だからかけられない。であればどうするかというと、先ほど総務部参事が答弁した、じゃあ賃借料で払っていただくということになります。ですから、私どもは、税金をまけるとかまけないとか、そんな話を我々はするつもりは全くありませんし、議員がそういう風におっしゃいましたけども、我々はそういうつもりで課税業務をやっているわけではありません。そこだけは言っておきます。」

======【テキスト起こし】======

・・・これが、市長の方針に反した答弁と言えるでしょうか。あくまでも市長答弁の補足の域を出ていないと思ったのは私だけでしょうか。市長答弁を補足するのは、まさに補助機関の役割と言えます。
これが市長の方針と反しているのであれば、市長は市有地の賃借料を払わせると同時に固定資産税を賦課しようとでもしていたのでしょうか。所有の意思の無い占有に時効取得は成立せず、市有地はあくまで市有地であり、固定資産税をかけることはできないという普通の話を補ったものが市長の方針に反するのであれば、市長の方針がそもそも誤っている可能性が出てきます。

②議会で市長の方針に反する答弁や振る舞い」を理由として挙げるのであれば、具体的にいつのどの答弁なのか田中市長に聞いてみたいものです。①や③はよくわかりませんが、②を解職理由に含める辺り、この市長の器量・度量を窺い知ることができたような気がします。


(2019.10.27追記)
地方自治法
第百三十二条 普通地方公共団体の議会の会議又は委員会においては、議員は、無礼の言葉を使用し、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない。
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揺らぐ二元代表制の意義 ~修正案をめぐるあれこれ~

2019年07月20日 | 地方議会・地方政治

【議会における賛成・反対の基本的考え方】

事業A、事業Bが盛り込まれた補正予算案に対し、議決権を持つ議員が採るべき立場は次のようになります。

・事業A、Bのいずれも賛成の人:原案賛成

・事業Aには賛成だが事業Bに反対の人(Aの成立を重視):原案賛成

・事業Aには賛成だが事業Bに反対の人(Bを問題視):原案反対

・事業A、Bのいずれも反対の人:原案反対


次に。

補正予算案から事業Aだけを残し、事業Bを削る案を議員側で作成し提出することがあります。
これを修正案と呼びます。
修正案が提出されると、議員の採るべき選択肢は変わってきます。

・事業A、Bのいずれも賛成の人:原案賛成

・事業Aには賛成だが事業Bに反対の人(Aの成立を重視):修正案賛成

・事業Aには賛成だが事業Bに反対の人(Bをより問題視):修正案賛成

・事業A、Bのいずれも反対の人:原案反対・修正案反対


【議決と討論の対応関係】

議員が、議決に際し自分が採る立場を明らかにしつつ意見を述べることを、討論といいます。
事業Aを残し事業Bを削る修正案が提出された場合、討論も上記3つに対応した内容になるのが本来の姿です。

原案賛成の立場から討論を行うのであれば、その討論は「AもBも良いから原案に賛成」という内容になります。
修正案賛成の立場から討論を行うのであれば、その討論は「Aは良いがBが悪いから修正案に賛成だ」という内容になります。
修正案反対・原案反対の立場から討論を行うのであれば、「AもBも悪いから修正案にも原案にも賛成しない」という内容になります。

さてここで。

修正案賛成の人は「事業Aは良いけど事業Bはダメ」なスタンスです。このため、修正案賛成の立場を表明すると同時に、修正案に対する賛成討論で事業Bのみならず事業Aも非難する意見を述べるのは理屈に合いません。修正案の提出は、事業Aについては肯定し容認するということだからです。

他方、討論の中で「事業Aは必要だが事業Bは問題がある」と意見を述べるのであれば、原案賛成でなく修正案賛成の立場をとるのが理屈に合ったものとなります。修正案ではなく原案に対し賛成をするのであれば、「事業Aだけでなく事業Bも良いのだ」という討論内容にすべきです。

仮に、賛否の対象が原案のみであれば、

「事業Bは問題があるが事業Aの成立を考えれば原案賛成とせざるを得ない」

と主張することは理解できます。
しかし、事業Bを削る修正案が新たに加わった段階でなお

「事業Bは問題があるが事業Aの成立を考えれば原案賛成とせざるを得ない」

と述べるのは理屈に合いません。
これでは修正案賛成の理屈になってしまうからです。

以上を踏まえ、次の動画をご覧ください。



・・・いろいろとねじれています。

【緊張感の欠如】

さてさて。

議案の内容に誤りがあれば、提出した側から訂正の申し出があるか、議案の取り下げをするのが本来あるべき丁寧な対応です。ところが、この議会では議案を提出した市長は訂正を行わず、補正予算案は指摘されたミスを残したまま可決されました。
市長以下幹部職員らは
「議案書や説明資料に計数誤りがあっても、多数派を固めているから議案を押し通せる」
という票読みと驕りがあり、それで議案を上程したままにしたのでしょう。

市長以下幹部職員の中で
「市長提出議案の内容面について議会多数派の賛同を得ているとしても、その中に誤りがあれば修正や否決に賛同する議員が出てきて多数派が崩れるかもしれない」
と危機感を持つ者が、果たしていたのでしょうか。

【二元代表制の意義は】

アメリカでは過去何度か、予算案が議会で否決され、職員への給料や光熱費の支払いができず政府機関が閉鎖する事態が生じています。

(例 「米政府機関の一部閉鎖 予算失効で異例の今年3回目 2018.12.22」)

ここに二元代表制を採用している意義があります。議会が予算を否決すれば予算執行できません。この当然の理屈が、予算案を提出する行政側と審査する議会側の緊張感を生んでいます。

ところが、同じ二元代表制を採っていても、日本の地方公共団体はまるで違います。
仮に予算案が否決になっても、地方自治法によって義務的経費が執行できる等、抜け道がいくつか用意されています。
また、行政側が議会の多数派を握った地方議会では、議案における問題が表面化しても、ミスが指摘されても、議案は可決されてしまいます。補正予算案のミスを取り除く程度の、部分的な修正案すら退けられます。

アメリカの二元代表制と日本の二元代表制、緊張感の差は歴然です。
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クレーマー・クレーマー ~ 行政が全てを受け入れるわけじゃないんですよ ~

2019年05月31日 | 地方議会・地方政治
面白いニュースがありました。

「窓口対応お断り」50代男性に通告 佐賀・嬉野 - 毎日新聞
======【引用ここから】======
 窓口対応はお断り――。佐賀県嬉野市が市内に住む50代男性に対し、村上大祐市長名で一部を除く市役所での窓口対応を拒否する通知を出していたことが、弁護士などへの取材で判明した。識者は「行政が窓口対応を断る通知を出すのは異例で、通知に法的根拠は全くない。大人げない対応だ」と話している。

3月13日付の通知書で、市は男性に対して「貴殿の市に対する質問、意見などは、回数、所要時間、内容において、市の業務に著しい支障を与えてきた」と指摘。そのうえで▽市への質問は文書に限り、回答は文書で行う▽住民票や戸籍、保険、年金の窓口交付以外の対応は文書の受け取りだけに限る▽電話には一切応対しない――の3点を通知した。

======【引用ここまで】======


50代男性と嬉野市役所職員が電話で揉めて、役所窓口でも揉めて、カッとなった職員がとっさに
「もう来るな!!!」
と言ったのではありません。
「貴殿の市に対する質問、意見などは、回数、所要時間、内容において、市の業務に著しい支障を与えてきた」
と役所側から通知を出して「やりとりは文書で。窓口対応はしません」と伝えたのです。
口頭ではなくわざわざ文書通知という異例の対応だからこそ、こうして記事になったわけです。
ヘビーなクレーマーや何を言っても通じない人に対し、事実上の出禁対応をしている例は聞いたことがあるのですが、文書で通知したのは初耳です。

この通知文からは、嬉野市役所がこの50代男性一人に対し、窓口や電話での対応に相当な時間と人手を割いてきたんだろうと推測できます。
口頭でのやり取りでは埒が明かないと判断し、
「市への質問は文書に限り、回答は文書で行う」
という対応策を示したのでしょう。

【役所が間違えてるパターン】

さて。

住民と役所の職員が揉めた原因が、役所側のミスだったパターンは少なくありません。

法改正に沿った運用ができておらず旧法のままだった、とか、単純に集計を間違えてる、とか、システムエラーで印字されてる金額を間違えてる、とか。
そういう時は、さっと「お前じゃ話にならん、上を出せ」と言いましょう。

この場合なら、法改正未対応の経緯や金額の積算についての説明がありミスが分かるまでで30分、ミスを認めさせて訂正・謝罪させるのに30分、計1時間あれば話がつくんじゃないでしょうか。
もちろん、窓口対応お断りなんて通知は来ません。

【長時間かかるパターン】

次に、私がパッと思いついた「住民と職員が揉めて長時間かかるパターン」をいくつか挙げてみましょう。

1.都道府県庁や国の出先機関、あるいは国会議員に会って言うべき内容を、市町村役場の窓口で要求する。
2.自身の希望を通すため、住民が職員に対し違法な処理をするよう要求する。
3.引っ越してきた住民が、元自治体と現自治体との対応の違いを責め続ける。
4.住民の要求→職員の説明→「でも…」→「ですから…」→・・・の無限ループ。
5.弁護士に相談し裁判すべき民民の争いを「市役所が俺の側に立って解決しろ」とゴネる。
6.自分は何かしら公金からの補助を受けられると思い込んでいて、そういう補助メニューも何もない事を伝えると激昂する。
7.「みのもんたがそう言っていたからできるはずだ!」と言って職員の話を聞かない(『朝ズバッ!』全盛期)
8.天の声に導かれている。


・・・住民が役所に行った時に対峙する窓口職員は、基本的に、権限や裁量をほとんど持っていません(正規の職員ではなくパート職員や委託業者の可能性もあります)。そのため、住民が道理として正しいことを主張していても、現行の法律・政省令・条例・規則や、予算の制約を越えることはできません。

なので、
「○○ができないなんて、おかしいじゃないか!」
と何度言っても、最終的には
「法律でそうなっているので、それはできません」
「そういう事業は予算化されていません」
と言われます。役所が杓子定規と揶揄される所以でありますが、仕方のないこと。
役所の職員が内心「国の法律に問題があるよな~」と思っていたとしても、役所の職員ではどうしようもありません。

この場合、いくら粘っても要望は通りません。
1時間粘れば1時間の無駄、3日粘れば3日の無駄になります。
役所で長時間苦情を述べる時間と体力があるのなら、その時間と体力をもって地元選出国会議員の事務所に駆け込んで「法律がおかしい」と文句を言った方が、何らかの成果を得られる可能性は高くなるんじゃないでしょうか。

【何時間聞いたら努力と認められるのか】

さてさて。
冒頭の新聞記事には、識者コメントが掲載されています。

======【引用ここから】======
行政法に詳しい本田博利・元愛媛大法文学部教授は「行政機関として、窓口対応を断るのではなく、きちんと話を聞いて納得してもらう努力をすべきだ」と指摘している。【池田美欧、竹林静】
======【引用ここまで】======


取材を受け識者コメントを求められた元教授は、記者から今回の件の内容や背景を詳しく聞いたのでしょうか。
私が知りたいのはこんな当たり前すぎる一般論ではなく、今回のようなイレギュラーな事態を踏まえた
「どのくらい対応したら窓口対応を断って良いのか」
の基準・目安なんですよ。

仮に、嬉野市役所の通知文にある

「貴殿の市に対する質問、意見などは、回数、所要時間、内容において、市の業務に著しい支障を与えてきた」

が事実だったとしましょう。
50代男性と役所側は、既に何時間も幾日にもまたがって、窓口や電話で対応してきたはずです。このせいでカウンターが埋まり、他の住民を長時間待たせる事態も多発したことでしょう。
この元教授は、何時間話を聞いたら「納得してもらう努力をした、窓口対応を断っても仕方ない」と認めてくれるのでしょうか。気になるところです。
(それとも、元教授が基準・目安となる考え方を述べていたのに、記者が取材内容を記事にする過程で省略してしまったのでしょうか。)

※追記 参考になる文献
○対策の核心は「交渉を長期化させないこと」 法的対応も躊躇しない姿勢が重要 表参道法律事務所・弁護士 横山 雅文
=====【引用ここから】=====
 不当要求行為者となった人物に対しては通常の住民対応ではなく法的対応をとらなければならない。
 ここにいう法的対応とは、「不当要求行為者の言動を業務妨害行為と客観的に評価し、それを回避するための必要な措置を躊躇なく取ること」である。
 業務妨害行為を回避する措置といっても何も難しいことではない。職員が適切な初期対応をし、説明を尽くしているのに納得できないとして、毎日のように長電話を掛けてくる、あるいは、来庁して窓口に長時間居座って帰ろうとしないというような場合は、電話を切る、あるいは退去させるということである。端的に言えば、「彼らとの交渉を打ち切る」ということである。

=====【引用ここまで】=====
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少子高齢化社会で求められる小さな行政

2019年03月18日 | 地方議会・地方政治
私、一年前にこんな記事を書いておりました。

○相乗り僅差による歳出増大の懸念 ~ 行橋市長選挙後 雑感 ~ - 若年寄の遺言

すると一年後・・・

19年度予算案・行橋市/普建費2倍の55億 | 建設通信新聞Digital 2019-03-06
======【引用ここから】======
福岡県行橋市の2019年度予算案は、一般会計が前年度比13.0%増の312億4900万円となった。
======【引用ここまで】======

これを、予想的中と喜んで良いのでしょうか。
それとも将来の財政悪化を嘆くべきでしょうか。

過去の予算と見比べてみると、予算の膨張は一目瞭然です。

財政課 | 行橋市ホームページより抜粋
============
当初予算
・平成26年度 24,681,038千円
・平成27年度 26,052,349千円
・平成28年度 27,335,214千円
・平成29年度 27,445,626千円
・平成30年度 25,096,347千円

============

そして、

・平成31年度 31,249,000千円 ← イ マ コ コ ! !

【行政を小さくする必要性】

さて、アメリカでは、トランプ大統領が規制緩和について
1つ規制を導入したら2つ廃止する
という考え方を示しています。

少子化・高齢化著しい日本においても、この考え方を見習い、
「1つ新規の公共事業を起こしたら既存の公共事業を2つ廃止する」
といった取り組みをしなくては、政府・自治体の破綻を免れることはできないでしょう。
(年金に関しては、見方によっては既に破綻している状態です。)

少子化によって社会全体における現役世代・労働人口は減っていきます。
これは既定事項です。
現在の子供の数が減っていることから、10年後の労働人口を今から増やすことは物理的に不可能です。

仮に、今年、来年と出生率を上昇させることに成功したとしましょう。
それでも、この子供たちが現役世代になるまで20年はかかります。
このため、少なくとも向こう20年間については、

・高齢者の医療や介護に要する費用、人手
・子供の教育に要する費用、人手

を数の少ない現役世代が捻出しなくてはなりません。

少なくともこれから20年の間については、人口増加を前提とした施策はナンセンスです。
人口が減るという避けられない現実に対応した仕組みづくり、体質改善が必要です。

社会全体における労働人口が減るのだから、役所の職員数も当然減らしていかなければいけません。
評価制度や採用のあり方も変えていかなければいけません。
給与、昇給については国家公務員や大企業に準拠するのではなく地元中小企業の水準に合わせたものにする必要があり、待遇面でも非正規職員に寄せていく形での同一労働同一賃金化は避けられません。
民間における一人当たり生産性が劇的に向上しない限り、10年・20年スパンで見たら税収も当然減っていくわけですから。

今まで役所がやっていた事業を減らし、役所が管理していた建物やインフラを維持できる範囲に絞り、減少する税収の規模まで歳出を減らしていくことが肝要です。
同時に、役所の規制、役所への届出を要する事柄を極力なくし、役所からの補助金をなくしていくことで、民間の生産性を低下させる無駄な書類仕事を減らす必要があります。
こうした小さな積み上げができれば、人口減少時代においても社会はそれなりに持続できるでしょう。

社会全体のパイが小さくなっていく中で、行政による再配分には限界があります。
無い袖は振りようがありません。

むしろ、行政が再分配や非効率な公共投資を繰り返したことによって、民間の活力を削いでしまい、持続可能な発展を阻害した感があります。
行政にできることは、民間による起業家精神の発揮を邪魔しないという消極的姿勢のみです。

ところが、冒頭の自治体では逆に、管理する公共施設を増やし予算を増額させるという路線をとっています。

【現実に逆行する自治体】

では、予算を膨らました市長は、どのような認識なのでしょうか。

○平成31年3月定例会 本会議4日目(H31.3.13)西本国治議員一般質問 youtube動画

「10年後の財政状況の見込みを示してほしい」
と求める議員に対し、
「2~3年後は大丈夫。新規の事業を始め、公共投資によって人口増加を図る」
と答える市長。
しかし、その投資がどのように人口増につながり収入増につながるのか、という点について、現実味のある説明は出てきませんでした。

しかも。

日本全体では労働人口の増えようがないんです。
この自治体に限定して人口が微増したとしても、増加させた維持管理費を賄えるような税収増が見込めるでしょうか。
この動画の中では、図書館やパーキングエリア、海岸地域の整備など大掛かりな開発事業が挙がっていますが、この開発によって、どこにどのくらい人口が増えて税収が幾ら増えるかといった具体性に乏しいと言わざるを得ません。

もともと民間が不採算と見込んで事業していなかった場所や分野に役所が事業展開したところで、建設費や維持管理費に投じたお金は活きたものとはなりません。

「聞いたこともない自治体だしどうでもいいや。自分には関係ない」
と思った都会のアナタ。
それは違います。
建設費には政府からの補助金も投じられます。
その原資は国税です。
田舎の自治体が見込みの甘い道楽事業を開始すると、都会の住民の血税も費やされる構図になっています。

公共事業をすれば一時的な雇用が生じ、受注した企業は潤います。
しかし、それは一巡で終わります。
ケインズ的な「公共投資で経済のエンジンを回す」という主張が幅を利かせる時代は終わりました。
他方、マルクス的な「資本家の富を収奪して労働者に回す」という主張では、必要なものの生産が滞ってみんなが貧しくなるだけです。

それよりも、

地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門 木下斉 著


しょぼい起業で生きていく えらいてんちょう 著


に見られるような、自発的で無理のない小さな起業が一つでも多く増えることが重要です。
そんな中で自治体にできることは、お節介をすることなく自らの組織と予算をコンパクトにしていくこと、国に対し規制撤廃を求めること、くらいしか思いつきません。

「1つ規制を導入したら2つ廃止する」
「1つ新規の公共事業を起こしたら既存の公共事業を2つ廃止する」

これが、長い目で見て住民の為になる、行政がとるべき方向性だ、と私は考えています。
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政府機関が閉鎖するアメリカと、議会どこ吹く風の日本

2019年01月17日 | 地方議会・地方政治
議会が制度としてきちんと機能している例がこちら。

○米政府機関の閉鎖 過去最長21日間に 給与支払いも滞る | NHKニュース2019年1月12日
======【引用ここから】======
アメリカでは国境沿いの壁の建設をめぐるトランプ大統領と野党・民主党の対立で政府機関の一部閉鎖が続いています。閉鎖期間はこれまでで最も長かった記録に並び、職員への給与の支払いも滞っていて、今後、政権への反発が広がる可能性もあります。
アメリカでは、トランプ大統領が主張するメキシコとの国境沿いの壁の建設費を野党・民主党が認めず予算を成立させられないため、政府機関の一部の閉鎖が続いています。

======【引用ここまで】======

議会が予算案を可決しなければ、予算が成立しない。
予算が成立しなければ予算を執行できず、職員給与も支払えない。
結果、政府機関は閉鎖ということになる。

これは当然の姿。
予算が成立せず住民生活に支障が出れば
「否決した議会に責任がある」
ということになるし、住民生活に支障が出なければ
「閉鎖してる政府機関はそもそも不要だったのでは?」
ということになる。
そして、議会が否決しても予算の執行をすることができるということになれば
「じゃあ議会は何のためにある?」
という話になる。

では次は、異常な国の例を見てみよう。

【予算は否決、されど執行?】

○宮崎氏解釈を疑問視 法専門家「予算執行は義務」 - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース2019年1月16日
======【引用ここから】======
 資料の中で宮崎氏は、議会で予算が否決された場合に市町村長は「経費を支出することができる」という地方自治法177条の規定に触れている。この規定で市町村長は原案を執行することが「できる」のであって「議会で予算案が否決された事実を前に、これに反して市町村長が予算案を執行することは議会軽視であり、不適切である」としている。
 この見解について行政法が専門の井上禎男琉球大学法科大学院教授は「地方自治法177条の枠だけで、市町村長の判断を正当化することはできない」と指摘する。
 井上教授は「県民投票条例13条や地方自治法252条17の2を踏まえると、177条の解釈としては予算は義務的な執行と解釈せざるを得ない」と述べ、宮崎氏の解釈を否定した。「ほとんどの法学者は同様の意見だろう」とも指摘した。

======【引用ここまで】======

行政法の学者様が
「議会で予算が否決されても、予算の執行は義務だ。ほとんどの法学者は同様の意見だろう」
って言っちゃうお粗末さ。
この国では本当に議会制が採用されているのだろうか?

ちなみに、条文は、

============
地方自治法

第百七十七条 普通地方公共団体の議会において次に掲げる経費を削除し又は減額する議決をしたときは、その経費及びこれに伴う収入について、当該普通地方公共団体の長は、理由を示してこれを再議に付さなければならない
 一 法令により負担する経費、法律の規定に基づき当該行政庁の職権により命ずる経費その他の普通地方公共団体の義務に属する経費
 二 (略)
2 前項第一号の場合において、議会の議決がなお同号に掲げる経費を削除し又は減額したときは、当該普通地方公共団体の長は、その経費及びこれに伴う収入を予算に計上してその経費を支出することができる
============

予算案の中に自治体の義務的な経費があり、市議会はこれを否決した。
この時、市長は理由を述べて再度市議会に予算案を提出しなければならない、というのが地方自治法第177条第1項。
そして、再提出した予算案が否決されたとしても、市長は義務的な経費なら執行できるとしたのが第177条第2項。

【「できる」をどう読むか】

地方自治法の立法者は、アメリカのように議会が予算案を否決して役所が止まる事態を極度に恐れ、この条文を作ったのだろう。
役所が閉鎖しても住民生活に支障がなかったら、役所の面目丸潰れになってしまうから。

そんなお役所万歳な立法者でさえ、同じ条文の中に
「再議に付さなければならない」
という文言と、
「その経費を支出することができる」
という文言を並べている。
「~ならない」という義務を意味する表現と
「~できる」という裁量を認める表現をわざわざ使い分けているのだ。

自治体に課せられた義務を遂行するために必要な経費を予算案に盛り込んだが、議会で否決された。この時、義務的経費なんだから再度議会に提出して可決に持っていけるよう勝負しなさい、というのが第177条第1項。

ところが、議会は再度否決した。執行する予定だった予算は成立していないのだから、職員給与も何もかも支払いストップで役所閉鎖するのが本筋であるはず。
だが、地方自治法の立法者は「できる」という文言で義務的経費を支出する道を残した。これが第177条第2項。
お役所万歳な立法者ですら、議会による2度の予算案否決をそれなりに尊重すべきと考えたのだろう。最後は、議会制の尊重と義務の遂行とを天秤にかけた市長の政治的判断に委ねたと解すべきだ。

この「できる」という文言すら、新聞記事中の法学者が言う

「177条の解釈としては予算は義務的な執行と解釈せざるを得ない」

となると、じゃあ、議会による二度の予算案否決は何だったのか、議会による否決すら法律上拘束力が無く、義務的経費と名前がつけば議決の有無によらず支出しなければならないというのであれば、そもそも議会なんて要らないだろう、ということになる。
予算案を議会に提出せずに、
「あ、この予算?義務的経費ですよ?議会で否決されてもどうせ執行できるので、議会にかけても時間が無駄になるだけです。議会にかけることなく執行してますが何か文句でも?」
ということがまかり通るようになる。

これはさすがに乱暴だろうと思うんですけど、どうなんでしょうね琉球新報さん?
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ふるさと納税によるゾンビ企業の延命

2019年01月09日 | 地方議会・地方政治

【ふるさと納税がゾンビ企業を生んだ】

消えるはずだった商店がゾンビとなって生きながらえる、という恐ろしい話。

○ふるさと納税の裏側 その4 ガソリンスタンドがお礼の品で「売上1億円超」の“異常事態”(東海テレビ) - Yahoo!ニュース
======【引用ここから】======
(記者リポート)
「東海3県で2番目に多い寄付を集めた岐阜県・七宗町のページです。洗剤やジュースなど、七宗町と関係がなさそうなお礼の品が並んでいます」
 昨年度、18億円あまりを集めた、ふるさと納税「勝ち組」の七宗町。しかし、お礼の品は、日用品やスポーツ用品など、国が問題視しているような地元と関係のない品物がほとんどです。
 岐阜県七宗町で何が起きているのか…。早速、その現場を確かめに向かいました。

 七宗町は、岐阜県中部の山あいにある人口4000人の小さな町。まず訪ねたのは、サイトに名前が出ていた「お礼の品」の提供元の一つ。そこにあったのは、昔ながらの衣料品店。

Q.商売はやっているんですか?

衣料品店の女性:
「もう全然だめなもんで、もうやめようかなとなったんですが、こういうの(ふるさと納税)であれだもんで…」

~~~~~~(中略)~~~~~~
同・女性:
「ここらへんのものはなにもないから(岐阜県)高山市のハムとか、飛騨(牛)カレーとか。ハチミツは(愛知県の)安城市のものですし」

Q.七宗町のものは?

同・女性:
「七宗は物産何もないんです。お米くらいですね」

 この店では、町役場からの誘いを受けて「お礼の品」の提供をスタート。もともと衣料品以外にも、贈答品を扱っていたことから、食品や家具など幅広い商品をお礼の品にしています。
 廃業を考えていた店に突如飛び込んだ、ふるさと納税の恩恵。
 年末のピークには、北海道から沖縄まで1週間に200個ほどの商品を発送すると言います。

======【引用ここまで】======

ふるさと納税が、本来なら廃業するはずだった店を生きながらえさせてしまった。
補助金や公的融資によって「ゾンビ企業」が生み出されることは知られているが、ふるさと納税でも同様のことが起きている好例と言えよう。
ふるさと納税は形を変えた悪しき補助金行政の一種である。

【税金の非効率さを加速するふるさと納税】

都会の住民が、住所地の自治体に住民税を払う。

その税金は、くだらない事業や非効率な事業、民業圧迫となる事業に費やされる可能性が大きい。行政は市場と比べるとはるかに非効率だ。
しかし、時には、こうしたダメ事業にではなく、現状では自治体にしかできないインフラ整備(渋滞する公道の整備・拡幅や老朽水道管の交換等)に投じられ、自分達の生活水準の維持・向上につながることもある。

(※ 道路や上下水道が民営化され個人や企業の所有になるのが望ましいが、現状、自治体が道路や上下水道を所有しているため、所有者として為すべき維持管理として自治体が税金を投じるのはやむを得ない面もあろう。)

ここで、ふるさと納税によってその税金は都会から田舎の自治体へ移ったとする。

ふるさと納税の一部は、旧態依然で経営の傾いていた田舎の衣料品店の延命に投じられ、残りの部分が田舎の自治体の収入となる。そして、都会の自治体と似たような比率で、田舎のダメ事業と有用な事業に分配される。

ふるさと納税をしなかった場合、都会の住民が払った住民税は、都会の自治体のダメ事業と有用な事業に投じられる。
他方、ふるさと納税をした場合、ふるさと納税に係る手数料、配送料や職員人件費といった本来なら不要だった経費を発生させ、田舎のゾンビ企業を生み出した後、その残りが田舎の自治体のダメ事業とインフラ整備に分配される。ゾンビ延命分だけ無駄が増えることになる。

【有用な事業が目減りする】

仮に、自治体の事業のうち、
「 ダメ事業 : 有用な事業 = 8 : 2 」
となっていて、ふるさと納税の返礼率が3割だったとしよう。

都会のA市住民が田舎のB町へ合計20億円分のふるさと納税をした場合、まず、A市から20億円の税収が消え、ダメ事業16億円分と有用な事業4億円分が消える。
そして、田舎のB町に入った20億円のうち、6億円が田舎の衣料品店に支払われてゾンビ化する。非効率な衣料品店が補助金によって延命されることになる。
残り14億円のうち、11億2千万円がダメ事業に投じられ、2億8千万円だけが有用な事業に投じられる。

 ダメ事業16億 + 有用な事業4億 
⇒ ゾンビ延命6億 + ダメ事業11億2千万 + 有用な事業2億8千万

ということになる。
実際には、B町職員の人件費やサイト運営会社への委託料等も支払わなければならないため、有用な事業に投じられるお金は更に目減りする。

【ふるさと納税をする際の注意】

元々行政は市場よりも資源分配が非効率であるのに、ふるさと納税はゾンビ企業の延命の分だけ行政の非効率さを増してしまう。
民間分野が行政分野よりも優れている点として、
「失敗した事業者が市場から退場することで、効率性を保つ」
という点が挙げられるが、ふるさと納税によるゾンビ企業の延命はこの利点を後退させてしまう。

田舎では旧態依然とした衣料品店がゾンビとして温存され、市場による効率化が阻まれる。
一方、都会では税収が消えてしまい、開かずの踏み切りや慢性的な渋滞などの解消が遠のいていく。

あぁ、早くこの制度が終わってほしい。


もしあなたが、ふるさと納税をするのであれば、

1.寄付金の使途を指定できる自治体を選ぶ。
2.事業の目的や方法が明確で詳細になっている。
3.事業の目的が適正で、事業の方法が効率的かどうかをきちんと見極める。

の3点に十分気を付けよう。
事業の指定をしないと、税金の持つ非効率さを増してしまうことになる。
また、「子育て応援」のようなフワッとした美辞麗句に惑わされないよう気を付けてほしい。

事業の中身を見極めた上で寄付金の使途を指定して、ダメ事業と有用な事業の割合が8:2から7:3位になれば、ふるさと納税の弊害を緩和することができる。


・・・って言っても、みんな、返礼品目当てだけでふるさと納税をするんでしょ?
事業を見極めるって言うほど簡単じゃないしね。
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恥も外聞もないiPad自治体 ~ふるさと納税を巡る総務省 vs 行橋市~

2018年12月04日 | 地方議会・地方政治

【自己負担が低すぎることによる歪み】

以前、当ブログではふるさと納税を

歪な補助金行政

として批判対象に挙げてきた。
特に、イベリコ豚や都内一流ホテルのランチといった、市外の品をふるさと納税のリストに並べる悪質な自治体を強く批判してきた。
そのため、返礼品を地場産品に限定するなど、ふるさと納税を縮小・廃止の方向に進むことを願ってきた。

利用者の自己負担2,000円で数十万円のカタログギフトを貰えるこの制度。
自己負担が低いということは、医療や介護に見られる
「自己負担1割で利用できます」
と同様、需要と供給のバランスを崩してしまう。

 ・医療 → 一部の医師の長時間勤務、特定の診療科の不足、高齢者の不必要な受診による医療費負担増
 ・介護 → 介護職員の低賃金、介護離職、保険料負担の倍増

といったように、自己負担を意図的に低く抑えることで需要が過剰になり、別の場所で無理が生じてしまう。
制度が長期間続けば続くほど、こうした需給バランスを崩したことによる弊害は大きくなる。

【見かけ2,000円ポッキリのゆがみ】

ふるさと納税では、実質2,000円の自己負担で高額商品を貰える。
この仕組みは、高級なイメージをやっとの思いで定着させることに成功した商品(例えば高級和牛など)を、役所が補助金を付けて安売りしているのとほぼ同じことを意味する。
せっかくブランドイメージを定着させても、一度、高額商品を2,000円でゲットした消費者は、今後、同じ商品や似たような商品を定価で買うことに抵抗を示すかもしれない。
ふるさと納税が盛んになればなるほど、
「定価で買わずに、来年のふるさと納税で貰おう」
と考える人も増えるだろう。

また、ふるさと納税が盛んになればなるほど、ふるさと納税対象外の類似商品は競争上ハンデを負わされることになる。

商品Aは、定価20,000円。役所からふるさと納税返礼品の指定を受けている。消費者は実質2,000円で買うことができ、業者は役所から定価分の代金を受け取る。役所は他の役所へ納税されるはずの金をかすめ取って業者へ支払い、この残りが役所の収入となる。

商品Bは、役所から返礼品の指定を受けていない。従来は定価18,000円でBを販売していたのだが、赤字覚悟で半額にしてもAには対抗できない。なんせAの見かけの負担は2000円だから。

ふるさと納税返礼品としての指定を受けることで、業者は営業努力無しで商品を売りさばくことができるようになる。
この状態が長く続けば、業者の意識は商品開発や営業といった対消費者向けの努力よりも、返礼品指定をする役所の担当者の意向把握に重きを置くようになる。

「消費者に気に入ってもらうよりも、ふるさと納税の返礼品として採用されるよう役所に取り入ろう」
と、消費者の動向よりも役人の意向が気になるようになれば、商品の質はいずれ悪化する。

複数の自治体がお互いにこれをやると、補助金をバラ撒いての品質劣化競争になってしまう。
自治体が減税や無駄な事業の削減をせず、自治体間で金を取り合ってその金で業者に補助金をやる、こんなことを続けていてはジリ貧の将来しかない。

寄付金額に関わらず、地場産の2,000円程度のものを返礼品として用意するのであれば、弊害はまだ小さい。
「あくまで地元PRなんです。」
という理屈も成り立つだろう。
しかし、海外産の食材や海外メーカーの工業製品、高額な商品を返礼品として贈ることを正当化する理屈は皆無と言っていいだろう。

【ふるさと納税へのブレーキと、恥を知らない市長】

総務省は、ふるさと納税の返礼率を3割以下に抑えるとともに、返礼品を地場産品に限定するよう各自治体に要請した。

そもそも、ふるさと納税を開始した総務省は許されるものではない。
(その意味で、始めた時の総務大臣であった菅官房長官は、責任を取って直ちに内閣を去るべきである。)
しかし、まだまだ廃止には程遠いものの、総務省が制度のクズっぷりを自覚して軌道修正を始めた点は評価できる。

ところが・・・

○返礼にiPad、ふるさと納税が急増 市は「地場産品」 - ライブドアニュース
======【引用ここから】======
福岡県行橋市へのふるさと納税による寄付額が飛躍的に伸びている。
   ~~~~~(中略)~~~~~
10月末現在の今年度の寄付額による返礼品人気ベスト3は(1)iPad(寄付額4億4千万円)(2)アップルウォッチ(1億2千万円)(3)アップルTV(3300万円)と、行橋の特産品ではないアップル製品が独占。特にiPadは2カ月ほどでトップに躍り出た。

 返礼品については、総務省が「寄付額の3割以下」「地場産品」を自治体に求めている。豪華返礼品を見直す自治体もあり、佐賀県みやき町は8月にiPadなどを取り下げた。行橋市では3割以下は守ってきたが、地場産品の見直しは保留。田中純市長は「我々は市内の企業や個人が業として扱っている物は地場産品というくくりでやってきた。ルールが明確化されたら、それに従う」と説明している。

======【引用ここまで】======

何なんだこの自治体は。

何なんだこの市長コメントは。

総務省から「地場産品に限定してね」と言われた後になって、海外大企業の製品をふるさと納税で取り扱う。
 この無神経さ、
 往生際の悪さ、
 火事場泥棒感。

「市内企業が取り扱う物は地場産品」

なんて、よくこんな屁理屈を記者に話せたもんだ。

大企業であるAppleの製品にに補助金を出して販促するというのは、再分配政策としても最低の部類に入るだろう。一般の納税者の金を大企業の製品の販売促進のための補助金にするという、極めて逆進性の高い手法である。

ただただ呆れるばかりである。
呆れているのは私だけではない。

https://twitter.com/Jin115/status/1069380965644943361


○福岡県行橋市が『iPad』を返礼品にして“ふるさと納税”荒稼ぎ!アップルストアすら無いのに「iPadは地場産品」と言い張るwww : オレ的ゲーム速報@刃


https://twitter.com/shoji_lawyer/status/1069136872335540230


「何でもありになる」
「恥も外聞もない」
「開いた口が塞がらない」

と、酷評のオンパレード。

この市長が得たふるさと納税の収入は、全国民に広く浅く損失を押し付けた結果生じたものだ。
おまけに、市場における価格メカニズムをゆがめ、税制の逆進性を強めた。
この責めは何らかの形で負うべきである。

さて。

「返礼品は地場産品に限る」
と釘をさすも、真っ向から無視された形の総務省。
このまま黙ってるのかな?
どんなペナルティを課すのかな?

これを機に、悪質な自治体についてはふるさと納税による増収分の倍額だけ地方交付税を削減すれば良いと思う。
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公開質問状への(個人的)回答 ~熊本市議会のトラブルメーカー緒方氏騒動続編~

2018年10月12日 | 地方議会・地方政治
前回記事で
「熊本市自治基本条例をより良くする会」の公開質問状が出されたら、コメントしてしまいそう。
と書いていたところ、その公開質問状がネットでアップされてました。

○みんなではぐくむ会: 議長と懲罰特別委員長に公開質問状提出
はい、釣られましょう。
前回までのシリーズで述べたことの焼き直しになってしまいますが、質問ごとにコメントしてみます。

(今回の記事は、熊本市議会宛ての公開質問に対し、これを素材に外部の個人が勝手に回答風なものを作ってみたものです。組織・団体を代表するものではありません。)

【議長の注意をきかない緒方氏】

======【引用ここから】======
質問1)今回の懲罰について、「会議規則に具体的に禁止する旨規定されていない」のに、懲罰を行なった理由は?
======【引用ここまで】======
回答1)
地方自治法には、議長の権限についての規定があります。この中で、議事整理権・秩序保持権と呼ばれるものがあります。議長には、議場の秩序保持を目的として1次的に議員の発言、行為を制止し、退席させることが認められています。議員が議会の品位を尊重することは議会の秩序を保つことにつながり、円滑な議事運営や市民の議会への信頼向上に資するものと考えます。

ここで、「秩序」や「品位」といった文言は、幅広い意味内容を含む包括的なものです。秩序を保つために必要な措置や品位を欠くと判断される行為について、予め網羅的に条文化することはできません。このため、秩序保持権を有する議長や会議規則の審査を行う議会運営委員会において、問題が生じた場合にその都度解釈し判断する必要があります。

今回、議場において議長は、緒方氏の飴を舐めながらの登壇・発言は品位を欠く不適切な行為と考え、熊本市議会会議規則第134条に抵触するものとして注意しました。また、会議規則の審査を所管事項とする議会運営委員会も開催され、改めて緒方氏に対し謝罪の意思の確認が行われています。このように、緒方氏は議長から議場において、また議会運営委員会においても注意を受けたにも関わらず、それに対する反省の弁や意思を示しませんでした。さらに、議長がその行為を止めたにもかかわらず、緒方氏は改めませんでした。

このように、議長の注意、制止に従わなかった緒方氏に対し、地方自治法第135条第1項第2号及び熊本市議会会議規則第143条に基づき懲罰としての陳謝文による陳謝が決定されたものと理解しています。
そして、緒方氏がこの陳謝文による陳謝も拒んだことから、地方自治法第135条第1項第3号に基づき、懲罰として1日の出席停止が決定されたものです。

緒方氏が議長に対し事前に了承を得ていれば、あるいは、注意を受けたその時点で謝罪し飴を舐めるのを中止していれば、懲罰にまで至ることはなかったのにと思うと非常に残念です。

============
○地方自治法
第百二十九条 普通地方公共団体の議会の会議中この法律又は会議規則に違反しその他議場の秩序を乱す議員があるときは、議長は、これを制止し、又は発言を取り消させ、その命令に従わないときは、その日の会議が終るまで発言を禁止し、又は議場の外に退去させることができる。

第百三十五条 懲罰は、左の通りとする。
 一 公開の議場における戒告
 二 公開の議場における陳謝
 三 一定期間の出席停止
 四 除名

○熊本市議会会議規則
(品位の尊重)
第134条 議員は、議会の品位を重んじなければならない。
(戒告又は陳謝の方法)
第143条 懲罰のうち公開の議場における戒告又は陳謝は、議会の定める戒告文又は陳謝文によって行うものとする。

============

【せめて事前了承を得ましょう、社会人として】

======【引用ここから】======
質問2)緒方議員の「咳が出ていたため、咳の発作が出ないように、議事がスムーズに侵攻するようにのど飴をなめていた」行為が、「議会の品位の尊重に明らかに抵触する」と判断された理由は?
======【引用ここまで】======
回答2)
物を食べながら人に相対して会話するという行為は一般にマナー違反とされ、品位を欠くものと考えられています。やむを得ない場合は、会話する相手の了承を得た上で行うべきものです。

議場で登壇し発言する際、登壇する議員は、傍聴者、庁舎モニターでの視聴者、インターネットでの視聴者を意識し、議会の品位を保持するよう配慮する必要があります。このため、物を食べながら発言することは極力避けるべきと考えられます。仮に、飴を舐めて登壇し発言する必要性があるならば、せめてその旨を事前に議長に伝えて了承を得て、議長から議場にいる議員や市長その他幹部職員、傍聴者等に対しその説明がなされた上で、発言を始めるべきと考えます。
こうした事前説明が無ければ、傍聴者等は

「よくわからないけど、飴を舐めながら長時間発言している無礼な議員がいる」

としか理解のしようがありません。これを放置することは、市民の議会に対する信頼を損なうことになります。事前了承が無いまま飴を舐めながら登壇、発言したことは、議会の品位の尊重を求める会議規則の規定に抵触するものと理解しています。緒方氏に対し議長が注意し改めるよう求めたことは、議会の品位を保つ上で必要な措置であったと考えられます。

【除名と出席停止は程度が違う】

======【引用ここから】======
質問3)「熊本市議会会議規則」は上位法に当たる「地方自治法」に基づいて解釈運用しなければならないが、熊本市議会、懲罰特別委員会及び議会事務局の解釈と運用は地方自治法に基づいていないと考えますが、見解をお示しください。

 *地方自治法132条「品位の保持」、同133条「侮辱に対する措置」や札幌高裁判決『「無礼の言葉」や「議会の品位」要件は厳格に解されなければならず、またそれを客観的判断を下したと解し得ない限り、たとえ議会が主観的に判断して懲罰を科したとしてもそれは違法な処分で取り消しを免れない』を参照して検討したか?

======【引用ここまで】======
回答3)
回答1)で述べたとおり、地方自治法に基づいた議事運営であったと考えます。

なお、札幌高裁判決は懲罰としての除名の違法性を争ったものであり、出席停止については議会の自律の観点から原則として司法判断の対象外とされています。例外的に、議場外の発言や行為を指して出席停止とされた場合や、出席停止に伴い議員報酬減額がなされた場合については、出席停止であっても司法判断の対象となる可能性がありますが、いずれも今回の場合には該当しません。

【懲罰の段階】

======【引用ここから】======
質問4)恣意的に規則を解釈し、懲罰に値する要件を欠いた理由で、地方自治法に反する手続きで懲戒処分を行ったことについて、懲罰委員会と議会に瑕疵があると考えるがどうか?
======【引用ここまで】======
回答4)
議場における注意、議会運営委員会における注意があり、これに対し謝罪しなかったことから懲罰としての陳謝文による陳謝という判断がなされ、これすら拒んだことから懲罰としての出席停止に至ったという流れが前提にあると理解しています。地方自治法・会議規則に沿ったものであり、手続きに瑕疵はないと考えます。

======【引用ここから】======
質問5)議会運営委員会や本会議で緒方議員本人の弁明・説明・釈明の機会を保証しなかった理由は?
======【引用ここまで】======
回答5)
議会運営委員会で緒方氏に対し謝罪の意思があるのかどうか確認がなされ、その際に事情の説明をする機会もあったかと思います。

======【引用ここから】======
質問6)「のど飴を口に含んで登壇したこと」を理由に党院停止の懲罰は適切であったとお考えか?
======【引用ここまで】======
回答6)
上記回答で述べたとおり、「のど飴を口に含んで登壇したこと」のみならず、議長の指示に従わず、議会の決定にも従わず、議場における秩序維持に著しく反したという出席停止に至る一連の過程があったことをご理解ください。

【請願権と、議員の発言の機会とは別物】

======【引用ここから】======
質問7)緒方議員の質問権と討論権は市民の請願権と一体になったもの。緒方議員の質問と討論を懲罰で奪った議会の決定は、市民の請願権の侵害に当り不当な排除と考えますが見解をお示しください。
======【引用ここまで】======
回答7)
団体からの請願書については、請願法及び地方自治法に基づき適切に処理されています。具体的には、地方自治法第124条に基づき緒方氏の紹介により請願書が熊本市議会に提出され、請願法第5条に基づき受理され、本会議で委員会付託された後、地方自治法第109条第2項に基づき議会運営委員会で審査されています。

他方、会議規則に基づき行われる議員の質疑・討論については、その発言によって請願の内容が分かりやすくなるという一定の効果が認められます。しかし、質疑・討論は請願者とは別人格である議員が行うものであって、請願権と質疑・討論とは一体のものではありません。最終的には、個々の議員が請願書を読み内容を把握した後に賛否を判断し表決に臨むのであって、質疑・討論の発言内容は判断材料の一つに過ぎません。

また、請願の手続きとして、質疑、討論が不可欠の要素として定められているわけではありません。会議規則においても、一定の場合に発言通告が無効となることが予定されています。

なお、緒方氏の質疑の発言通告に、
請願を採択すべきでは
という文言が複数見られますが、質疑の中でこの内容の発言をすることは会議規則に違反するものであることを申し添えます。

============
○熊本市議会会議規則
(発言の通告及び順序)
第50条
4 発言の通告をした者が欠席したとき又は発言の順位に当たっても発言しないとき若しくは議場に現在しないときは、当該通告は効力を失う。
(質疑における意見の禁止)
第53条 議員は、質疑に当たっては、自己の意見を述べることができない。

============

【請願は終わりました。やり直しは無理筋】

======【引用ここから】======
質問8)本会議を招集し、中断された議会運営委員長に対する緒方議員の質問を再開し、緒方議員による賛成討論を行い、再度、採決等の手続きがなされることが、正統な手続きを経た上の決定と言えますが、見解をお示しください。
======【引用ここまで】======
回答8)
上記回答のとおり、正当な手続きに沿って請願の受理、委員会付託、審査、委員長報告、表決が行われています。質疑の中断、討論の省略についても、発言予定者が出席停止になった以上はやむを得ないものと考えます。

また、地方自治法における再議を行うのも難しいのではないでしょうか。

======【引用ここから】======
質問9)議会運営委員会では当会の7つの請願について十分な審議がされていないため、委員会にさしもどし「再審議」を行うべきと考えます。見解をお示しください。
======【引用ここまで】======
回答9)
繰り返しになりますが、正当な手続きに沿って請願の表決まで終了しています。このため、議会運営委員会への審査のさしもどしは不可能であると考えます。


【委員会審査が不十分であるという点について】

熊本市議会の会議録を見る限り、議会運営委員会の審査方法は

 ・案件を会派へ持ち帰り、会派内で協議することを議運委員間で確認する。
     ↓
 ・議運委員が会派で内容を伝え、会派内で協議し、会派としての意見をまとめる。
     ↓
 ・委員会で議運委員が会派の意見を報告する。
     ↓
 ・会派ごとの意見に相違があれば、再度会派へ案件を持ち帰る。

という流れになっているものと推察されます。

議運委員が会派選出となっていることから、議運での審査は、その場で議論を戦わせるというよりも、会派間のすり合わせが中心となっているようです。このため、審査の中身が見えづらく、決定までのスピード感を欠いている印象は否めません。ただ、審査の中身が見えづらくスピード感に欠けているということは、表決まで終わった案件を議運へ差し戻す理由にはなりません。

現状の議会運営委員会の構成や審査方法の中で請願内容の採択を目指すのであれば、緒方氏は何をすべきであったのでしょうか。

これについては、緒方氏が、他会派の議員が協議を行う場に趣旨説明に赴き、内容について理解を深めてもらい、賛同してもらうようお願いすることが必要であろうかと思います。採択には過半数の賛成が必要であるため、複数の会派を回ってお願いに行くべきです。そのためには、日ごろから他会派であっても友好関係を築いておくことが不可欠です。

逆に、紹介議員である緒方氏が飴を舐めながら演壇で長時間演説を行い他の議員の反感を煽ったことは、請願の不採択に向けた最短ルートであったということが言えます。

このため、当ブログとしては

緒方氏は議員に向いていない。
『熊本市自治基本条例をより良くする会』は紹介議員の選択を誤った。

という意見を述べて、今回の記事を終わります。
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熊本の緒方夕佳氏を通して地方自治法と会議規則を眺めてみよう

2018年10月06日 | 地方議会・地方政治
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熊本市議会の緒方氏が引き起こした騒動を通して、改めて地方自治法や会議規則を読み直す機会を得ました。この点で、緒方氏には感謝しています。
そして、緒方氏本人が騒動当日のことを書いたブログがありましたので、これを題材にしたうえで本シリーズを一旦終わりにしようと思います。
(あ、でも、「熊本市自治基本条例をより良くする会」の公開質問状が出されたら、コメントしてしまいそう。)


白日の下で  緒方ゆうか Official Blog Site 「不服従」
======【引用ここから】======
今回も咳が出ないように議場に入った時には龍角散のど飴を含んでおり、一個目が切れて、二個目を自席に戻った時に含みました。口に含んだのをみて、なのか、口の中に入っているのに気づいたのかは指摘したご本人たちに聞いてみないとわかりませんが、二個目が口に入っている時に「飴を食べているぞ!」「飴を出させろ!」「ルールに従わなんて指摘しとるなら、あたが飲食禁止の規定ば守らなんでしょうが!」「飲食禁止!」などのヤジがあり「飴を出させろ!」の声がどうしようもなく高まって議長が議会を止め、暫時休憩にしました。
======【引用ここまで】======

誰にも断りを入れることなく1時間の質疑中のど飴を舐めながら発言をし続け、自席に戻り、二個目の飴をくわえて質疑を再開した緒方氏。
この品位を欠いた行為に気づいた他の議員は、次の規定に基づき、議長の注意を喚起することができます。

地方自治法
======【引用ここから】======
第一三一条 議場の秩序を乱し又は会議を妨害するものがあるときは、議員は、議長の注意を喚起することができる。
======【引用ここまで】======

「飴を出させろ!」は、議長への注意喚起という位置づけと考えます。

はい、次。

白日の下で  緒方ゆうか Official Blog Site 「不服従」
======【引用ここから】======
議会の「品位の保持」は地方自治法に規定されています。
「第一三二条 普通地方公共団体の議会の会議又は委員会においては、議員は、無礼の言葉を使用し、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない。」http://www.houko.com/00/01/S22/067.HTM#s2.6.9 とあります。つまり、咳が出ないようにのど飴を口に含むことは議会の品位を軽んじることではありません。

======【引用ここまで】======

もう一度地方自治法を読んでみましょう。

地方自治法
======【引用ここから】======
第一二九条 普通地方公共団体の議会の会議中この法律又は会議規則に違反しその他議場の秩序を乱す議員があるときは、議長は、これを制止し、又は発言を取り消させ、その命令に従わないときは、その日の会議が終るまで発言を禁止し、又は議場の外に退去させることができる。

第一三一条 議場の秩序を乱し又は会議を妨害するものがあるときは、議員は、議長の注意を喚起することができる。

======【引用ここまで】======

緒方氏が引用した第一三二条と、私が引用した第一二九条、第一三一条を合わせて読んだ上で、次の条文を見てください。

熊本市議会会議規則
======【引用ここから】======
(品位の尊重)
第134条 議員は、議会の品位を重んじなければならない。

======【引用ここまで】======

緒方氏は、
「地方自治法は品位の問題を『無礼の言葉』『他人の私生活にわたる言論』に限定している。」
と主張したいのかもしれません。しかし、地方自治法は「秩序を乱す議員の制止」を規定しています。地方自治法をうけての会議規則です。議会の品位は、無礼な発言や秩序を乱す行為を防ぐことで達成されるものと包括的に解釈すべきでしょう。
少なくとも、品位尊重の対象を言論に限定すべき理由はありません。

なお、熊本市の共産党市議団が「懲罰までは必要なかった」との反省コメントを出していますが、そのコメントの中でも

2018年9月議会最終日の緒方夕佳議員の懲罰について
======【引用ここから】======
本会議の質疑は真剣な論戦の場であることを踏まえ、飴を舐めての登壇や発言は、不適切であると考え、行為の中止と反省を求めました。緒方議員は議場において、議長がその行為を止めたにもかかわらず、止めずに、本会議ならびに議会運営委員会の場において、それに対する反省の弁や意思を示しませんでした。仮に風邪などで体調が悪い場合であっても、議長に断って発言するか、服薬等で対応するなど、常識の範囲で行動すべきであったと考えます。
======【引用ここまで】======

として、飴を舐めて演壇で発言したことから反省の意思を示さなかったことまでの緒方氏の一連の行為について、非常識・不適切であったと述べています。

はい、次。

白日の下で  緒方ゆうか Official Blog Site 「不服従」
======【引用ここから】======
*懲罰には4種類あります。私に最初に課された「陳謝」はあちらが用意した「陳謝文」を強制的に皆の前で見せしめのように読ませることでした。心にもないことを読むように強要するのは人権侵害にあたるのではないでしょうか。このような処罰が議会に存在するのは大問題です。
======【引用ここまで】======

懲罰としての陳謝は、議会の定める陳謝文によって行うことが会議規則で定められています。

熊本市議会会議規則
======【引用ここから】======
(戒告又は陳謝の方法)
第143条 懲罰のうち公開の議場における戒告又は陳謝は、議会の定める戒告文又は陳謝文によって行うものとする。

======【引用ここまで】======

会議規則によって定められた方法が嫌だとしても、その会議規則を定めているのはあなた達議員です。
緒方氏は
「私は、議会の定めた会議規則に従いません。しかし、市民は議会の定めた条例に従え。」
とおっしゃるのでしょうか。
住民税や固定資産税、国保・介護の保険料は市民にとって重い負担です。この金額や支払方法は、議決された条例に基づいています。
市民は

「生活が苦しくて支払えない!」
「緒方の議員報酬1000万円に充てられるくらいなら、金をドブに捨てた方がましだ!」

と主張して滞納しても、条例に基づき市から強制的に徴収されてしまいます。
みんな嫌なんです。無理やりなんです。
なのに、その条例を定めた議員が、同じように議会で定められた会議規則に従わない姿を見た時、市民はどう思うでしょうか。
議員が会議規則に従わないということは、市民の条例に対する信用を毀損する行為です。

なお、のど飴を舐めながら質疑していたことに対し注意を受けたが謝罪しなかった、という一連の行為は、いずれも議場内での出来事です。
最終的な処分も除名処分ではなく出席停止であったことから、司法審査の対象とはならないでしょう。
このことから、

白日の下で  緒方ゆうか Official Blog Site 「不服従」
======【引用ここから】======
どこに訴えると人権侵害であるという判断をしてもらえるのでしょう?ご存知の方はおしらせください。
======【引用ここまで】======

との問いに対しては、

「市議として、熊本市議会で『議会の定める陳謝文による陳謝を定めた規定は人権侵害だ』という理由で会議規則の改正を議員提案する方法がある」

という回答になります。

はい、次。

白日の下で  緒方ゆうか Official Blog Site 「不服従」
======【引用ここから】======
*議員の発言権を奪ったことの重大さ。そしてそれに気づいていない議員諸氏。
議員の役割は市民のために話す事です。ですから、「発言権」を奪われたら何も残りません。この権利を奪うことは、代弁される市民の権利を奪うことです。どうもこのことがよく理解されていない様で、のど飴を理由にこの最重要の権利が剥奪されてしまいました。

======【引用ここまで】======

緒方氏に対しては、議員として発言権を行使する機会は与えられていました。現に1時間もこれを行使していました。
通常、会議には時間が限られていることから、

「議員一人につき発言は○○分まで」
「会派を代表して発言する議員に、会派人数に応じて発言時間を与える」

といった内部ルールを定めていることが多いかと思います。
49人の議員がいて、その中で一人会派の緒方氏に対し1時間も発言を認める熊本市議会は寛大だなぁ、というのが私の印象です。

ところで、もし緒方氏が自分の発言権の重要さを認識しており、自分の発言を通して市民の声を代弁することへの使命感を有していたなら、なぜ、議会運営委員会で問われた時点で謝罪しなかったのでしょうか。あるいは、陳謝文の朗読をせずに
風邪で咳の発作を止めるために喉の薬を口に含んでいましたが、それがどなたかのご気分を害したのであればお断り申し上げます。
などと、謝罪というより挑発に近い発言をしたのでしょうか。早い段階で謝罪していれば、質疑を再開することができたのにも関わらず、です。

緒方氏は、「自分の中の不快感」と「市民の声の代弁」の二つを天秤にかけ、自分の中の不快感を抑えきれずに謝罪拒否を選択しました。
それだけのことです。

はい、次。

白日の下で  緒方ゆうか Official Blog Site 「不服従」
======【引用ここから】======
イギリスのメイ首相が演壇で水を飲みながらも、咳が止まらなくなり、閣僚の一人がのど飴を手渡してくれるという場面があります。https://www.bbc.com/japanese/41507970 国籍、人種などを問わず、咳が出るときはのど飴が有効であり、文化の問題ではありません。
======【引用ここまで】======

演説中に咳が止まらなくなり、水を飲んでも止まらず、閣僚の一人がのど飴を渡してくれました。そして、首相が閣僚に対し一言ジョークと謝意を述べた後、のど飴を舐めながら演説を再開しています。

この一連のやりとりを見ているからこそ、聴衆ものど飴を舐めながらの演説に納得するのであり、TPOをわきまえたものとして品位は保たれているのです。「のど飴を舐めていた」という断片を切り取るのではなく、咳をこらえようとするメイ首相の姿、聴衆から進められて初めてのど飴をくわえたといった流れを理解したいものです。

もし、メイ首相が何の説明もせず、冒頭からのど飴を舐めながら演説していたらどうなったでしょうか。見ている側からすれば、全く印象は異なります。
イギリスのメディアも
「保守党大会の権威が失墜。いつからフードコートでのお喋りになったのか」
くらいの批判をしたことでしょう。
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熊本市 子連れ市議会/あめ玉市議会Q&A(という名の個人的雑感)

2018年10月04日 | 地方議会・地方政治
(このまとめは若年寄の個人的見解であり、特定の団体・組織を代表するものではありません。)

【Q1.あめ玉ひとつでいきなり出席停止は酷すぎるのではないか?】

A1.あめ玉ひとつでいきなり、ということではありません。
緒方夕佳氏があめ玉をくわえたまま演壇で演説をするという品位を欠く行為に対し、議会側からまず注意がありましたが緒方氏は謝罪しませんでした。
このため、議会は会議規則に基づき懲罰としての陳謝文朗読を決定しましたが、緒方氏はこれも拒否しました。陳謝文による陳謝は会議規則に定められた方法であることから、緒方氏の行為は明白な規則違反ということになります。
このため最終的に出席停止処分が出されたという、段階的な手順を踏んでのものです。

【Q2.出席停止は、保守政党・男性議員による子育てママへのイジメではないか?】

A2.今回の懲罰特別委員会の設置や懲罰内容の決定については、男女や会派の別を問わず全会一致で可決されています。子育て支援に熱心な政党の会派や他の女性議員も、緒方氏の一連の言動を問題視しているということです。
品位を欠いた行為に対する最初の注意の時点で、適切に謝罪していれば、議会の空転も出席停止も無かったと思われます。

【Q3.のどあめごときで8時間も休止するな】

A3.本会議中にイレギュラーな事態が生じ、これに対応するために議会運営委員会を開いて協議するとなると、1回につき準備等を含めて30分くらい要してしまうことがあります。ましてや、滅多に発生しない懲罰特別委員会の設置、開催となると、開催のたびに手順確認、資料作成、会派内の協議等で相当な時間を要します。議会運営委員会、懲罰特別委員会を複数回開催しなければならない状況となったことで、結果として当初予定されていた議事日程が8時間休止になったものです。
確かに、手続きが煩雑であるという印象は拭えません。しかし、本会議での議決はそのまま自治体全体の意思決定、または議会という機関の意思決定となるために、本会議の運営には厳格な手続きが定められているものです。

【Q4.請願の質疑の途中で緒方氏を退席させ、質疑を中断したまま表決を行ったのは請願権の侵害ではないか?】

A4.今回の請願は、請願権に基づき紹介議員を介して本会議で議題とされた後、所管する委員会に付託されました。委員会での審査を経て審査結果が本会議で報告され、表決に至りました。
一方、請願の委員会審査報告に対する質疑は議員の発言権の一環として実施されるものであり、請願権の一環として必ず質疑が行われなければならないというものではありません。質疑の途中で発言者が出席停止となったのは発言者の事情によるものであって、請願者の請願権侵害には当たりません。

【Q5.赤ちゃんを連れて議場に入るのをなぜ拒否したのか?】

A5.議場は、議題となった議案について説明を受け、質疑、討論、表決などを行う場所であって、子供の世話や高齢者の介護をするための場所ではありません。そのための設備もありません。熊本市議会事務局からは「議員がベビーシッターを手配して、会議中は議員控室で子供を見てもらったらどうか」という回答がなされています。
同じような対応をとった議会として、沖縄県北谷町議会があります。議員控室を保育スペースとして使用することを認め、会議中は議員が手配した有償ボランティアに子どもを預けるという対応をとっています。

【Q6.自費でベビーシッターを手配するのではなく、議会側が手配してあげるべきでは?】

A6.熊本市議会議員には1年間で議員報酬約1000万円が支給され、さらに議員活動に対する補助金として政務活動費が年240万円支給されています。一般の子育て世代の親とは異なり、緒方氏に対しては議員として十分すぎる金額が支払われています。緒方氏の要望に応じ税金で議員用ベビーシッター代や議員用託児室の整備費用を支出することは、過剰な議員特権と評価されるおそれがあります。

【Q7.ニュージーランドのアーダーン首相は国連に赤ちゃんを連れて出席していた。これが国際水準ではないのか?】

A7.アーダーン首相は事前に国連側に相談し、赤ちゃんに対し特別な身分証を発行してもらっていました。事前の相談・了承が必要なのは国際的に共通しています。
しかも、緒方氏はルールを作る立場の人間であるにも関わらず、事前に赤ちゃんを議場に連れて入るためのルールが無いまま無許可で強行しました。赤ちゃんを議場に連れて入ること自体が問題視されたというよりも、こうした緒方氏の政治姿勢が問題視されています。

【Q8.イギリスのメディアは、子連れ市議会/あめ玉市議会における議会側の対応を批判している。やはり前時代的な対応ではないか?】

A8.イギリスでは、ロンドンを除く地方議会の議員は無報酬(手当てのみ有)の名誉職という扱いになっています。イギリスのメディアは「地方議員=無報酬」という自国でのイメージに基づいて語っている可能性はないでしょうか。
このイメージに基づき、
「無報酬で頑張ってるんだから、会議時くらい議会側でベビーシッターを手配しても良いのでは。」
という誤った認識が形成されていないでしょうか。
熊本市議会議員の待遇を知ったら
「そんなに報酬を貰っているなら、ベビーシッターは議員側で手配し自費で対応して当然だ。」
と考えるのではないでしょうか。

また、イギリスのメイ首相が党大会演説中に咳が出て、財務大臣から渡されたのど飴を舐めながら演説を続けたということがあったようです。
Blomberg

これは、党大会における首相演説というメインの最中で首相が咳き込みだし、水を飲んでも咳が止まらないことから、財務大臣が見かねてのど飴を差し出すほどの場面。飴を舐めながらの演説がやむを得ない状況であるのは明らかです。緒方氏とはまず状況が違います。
また、周囲の聴衆に
「飴を舐めながらの演説でも、この人の演説をもっと聴きたい、最後まで聴きたい。」
と思わせたメイ首相の人柄や演説内容も背景にあるのだと思います。
少なくとも、
「いつまでこの演説を続けるのか。喉が痛いなら早く演説止めたらいいのに。」
という周囲の反感を買ってはいなかったでしょう。
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